わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

釉の原料7(着色剤2)

2011-04-30 22:11:14 | 焼き物の材料(原料とトラブル)
色釉は、無色の釉に、顔料(着色剤)を加えて作ります。

3) 緑釉: (青)織部釉、青銅釉、緑釉、青緑釉、青萩釉、ビードロ釉などが有ります。

   緑色の釉は、酸化銅や、炭酸銅を使う事が、多いです。但し、青磁の青緑は、銅を使う事も

   有りますが、ほとんどの場合、鉄分で発色させます。

 ① 銅は酸化と還元焼成では、大きく異なります。緑色は、酸化焼成で、還元焼成では、赤、ピンク、

   更には、紫色に成る事も有ります。還元で赤くなる釉に、辰砂(しんしゃ)釉が有ります。

   尚、辰砂については、赤色で述べます。

 ② 酸化銅や炭酸銅の割合は、3%以下がで十分です。 但し、銅は高温に成ると、どんどん

   揮発しますので、多めに入れる様にします。

 ③ 銅が揮発する為、焼成で注意する事は、銅釉の側(そば)に、銅釉以外の作品を置かない事です。

   銅が揮発し、隣の作品に移り、汚して仕舞う為です。

4) 赤色: 辰砂、銅赤、陶赤、赤結晶等が有ります。

 ① 辰砂釉の場合は、上記の様に、酸化銅などを使い、還元焼成します。銅の割合は0.5%程度で

   良いとも言われています。銅は高温に成ると、揮発しますので、酸化錫(5%以下)を添加すると

   揮発を抑えると伴に、辰砂の色を良くしてくれます。

   尚、強還元よりも、弱い還元又は、中性炎で焼成すると良いと、言う人もいます。

 ② 赤釉を作るには、酸化錫と酸化クロムを、釉の組成に添加します。

   又は、無色の組成の釉に酸化錫と、酸化クロムを混ぜ、仮焼してから、使います。

   但し、石灰や硼酸の多い、無鉛釉では、色が消える事も有ります。

5) 青い釉: トルコブルー、瑠璃(るり)、コバルト結晶等が有ります。

 ① トルコ青は、鮮明な青色で、アルカリ成分が多い釉で、発色します。

   酸化銅を3~4%程度添加して、使用します。(銅で鮮明な青色に発色するとは、驚きです。)

 ② コバルト化合物が入った釉が多いです。

   炭酸コバルト、石英、炭酸カリの混合物を、熔融させ、無色の釉に添加します。

6)黄色: 黄瀬戸釉、(黄)伊羅保釉など

 ① 黄瀬戸釉は、鉄分の多い灰を使った、釉です。当然単身では、灰は熔けませんから、長石などを

   加えます。又、長石の代わるに、赤土を使う事も有ります。

 ② 伊羅保釉(いらぼ)は、鉄分の多い結晶釉で、黄褐色や黄茶色をしています。

   土灰の他、藁灰、弁柄などを、加えます。

7) 海鼠(なまこ)釉

   斑紋(まだらもん)や流紋等、流動性を利用した釉です。

   色は、青、黒青、乳白など、趣のある色です。(昔の火鉢の色です。)

   土灰に酸化銅、コバルト、マンガン、酸化鉄などを、添加して作ります。

   配合の仕方によって、色も変化します。

釉の色は、千差万別です。又窯の焚き方によっても、大きく変化します。それ故、やり方に拠って、

必ずしも、上記の通りに行かない事に、ご注意下さい。

以上にて、「焼き物の原料」についての、話を終わります。

次回から、別のテーマでお話します。
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釉の原料6(着色剤1)

2011-04-29 21:37:56 | 焼き物の材料(原料とトラブル)
釉は作品に、着物を着せる行為とも言えます。

 「馬子にも衣装と」と言う諺が有りますが、どんな衣装にするかに拠って、作品の出来栄えが、

 大きく左右されます。おとなしい無難な色から、明るい色、奇抜な色彩など、釉として使われている

 種類は、万の単位ほど有ると言います。特に、色が付く事により、装飾性が倍加します。

 釉の材料によって、所定の色が出る物ですが、着色剤(顔料)を添加する事により、より好みの

 色を作りだす事が出来ます。以下色順に、述べて行きます。

1) 白い釉: 白天目、藁白、糠白、卯の斑、乳白、白萩、志野等が有ります。又、白鳳マット等の

    艶消し釉や、乳濁の釉も有ります。

 ① 藁白、糠白、卯の斑、白萩などは、前回お話した、禾本科の灰を、添加する事により、得る事が

   出来ます。白くて、流れ易い釉にするには、長石の代わりに、陶石を用いれば良いです。

 ② 白天目や志野釉などは、石粉(長石の半分解物)に、鉄分の少ない灰(柞灰=いす灰)を混ぜます。

   カリ長石では、光沢が出過ぎ、ソーダ長石の方が、志野風に出来上がる様です。

 ③ 白い色を出す為に、亜鉛華(ZnO)、酸化錫(すず)、酸化チタンを添加する場合もあります。

2) 黒い釉: 黒天目、瀬戸黒、艶黒、黒マット、油滴天目など

   褐色の釉薬: 飴(あめ)、蕎麦(そば)、柿天目など

 ① 黒や褐色の釉には、鉄分(弁柄など)を、添加します。それ故これらを、鉄釉と言います。

  ) 黒色を出すには、酸化鉄、酸化マンガン、酸化コバルトを添加します。

     鉄分が8~10%位で、黒く成ります。土灰はマグネシア(MgO)を多く含み、黒色を出すのに

     適しています。更に灰には、マンガン、チタンなど不純物が含まれ、変化に富み趣のある

     釉になります。 黒には、褐色掛かった色と、紺色掛かった黒が有ります。

     前者では、石灰(CaO)が多く、後者では、石灰とマグネシア分を多くします。

  ) 褐色は、酸化鉄が3~6%入れるます。酸化バリウムを添加すると、色は濃く成ります。

     亜鉛華を入れると、茶色掛かった黄色から、チョコレート色まで、変化します。

     又、褐色や鈍い黄色釉の濃淡は、温度の変化に、敏感に反応します。

  ) 鉄釉は、素地の種類や、窯の種類や形、燃料、窯詰めの仕方、窯の焚き方等により、

     釉の表情が、非常に大きく変化します。

     又、釉を厚く掛ける事が多く、流動的に成り易く、色の濃淡に影響したり、熔け

     過ぎると、柿釉や、飴掛かった、斑(まだら)に成る事もあります。 

3) 緑釉: 織部釉、青銅釉、緑釉、青萩釉などが有ります。

以下次回に続きます。 
  
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釉の原料5(灰に付いて)

2011-04-28 21:53:34 | 焼き物の材料(原料とトラブル)
釉の原料についての、話を続けます。

 灰の作用により、自然釉として、発生した事からして、灰が釉の、原料に成るのは、当然です。

 但し、灰は種類により、取れた場所、取れた時期等で、組成が大きく変わる為、釉も大きく変化

 (窯変)し易いので、陶芸家は好んで使いますが、量産向けの作品には向きません。

  ・ 自然釉とは、窯が発達し、熱を閉じ込める事が、出来る様に成り、1000℃以上にする事が

    可能に成ります。その際、薪(まき)の灰が作品に降り注ぎ、灰の中の石灰やアルカリ成分が、

    素地中の珪酸分と、化学変化を起こし、一種の釉と成る事が、発見されます。

    この釉を自然釉と言います。その後、灰を調合する事により、釉が作られる様になります。
    
6) 灰には、特定の木から作った灰(木灰)や、雑木の灰の土灰、更には、藁(わら)等の禾本科

   から作った灰があります。尚、灰であればどんな灰でも、釉の原料(ガラス)に成ります。

 ① 木灰類: 木の種類は、松、杉、樫(かし)、楢(なら)、欅(けやき)などの木以外に、

   栗皮、橙(柑橘類)、椿、躑躅(つつじ)などの、樹木や樹皮など、多種類に渡ります。

  a) 同じ一本の木でも、根、幹、枝、葉によ拠って、成分が変化します。

    一般に、根は燐酸(りんさん)成分が、幹には珪酸分が、枝葉や樹皮には石灰分が多いです。

  b) 灰の作り方: 樹木や樹皮を完全に焼き、灰にします。この灰を細かく砕き、水に入れ、

    良く攪拌します。水に浮く物質は、ゴミ(不純物)など、灰以外の物ですので、取り除きます。

    更に数回、水簸(すいひ)を繰り返して、上澄み液を捨て、可溶性の塩基類を、流し去ります。

    これを、乾燥させれば、使用可能に成ります。

   ・ 但し、灰単体で使う事は少なく、長石や石粉、珪石などと一緒に使います。

  c) 木灰の成分は、石灰分が20~50%以上、禾本科ではシリカが80%以上有ります。

    その他、アルカリ、マンガン、マグネシア、鉄分、燐酸などが含まれます。

  d) ご自分で作る方もいますが、市販されてもいます。

    天然物と、合成物が有ります。天然物は、成分が一定しない為、材料を化学的に配合(合成)し、

    成分を安定化させて、本物に 類似させた物です。

 ② 土灰(どばい): 雑木の灰を集めた物ですが、他の木灰とは、成分が若干違いがあります。

   即ち、鉄分やマグネシア成分が多く、特にマグネシアは、4~10%程度含まれます。

   飴釉や天目釉など、鉄分の多い釉を作る際に、使用します。

 ③ 柞灰(いすはい): 鉄分の少ない灰で、有田焼き等の磁器用の白い釉に使います。

   九州の宮崎地方に、生えている柞(ゆす、ゆん)の木から、採れるそうです。

 ④ 藁灰(わらばい): 藁、籾殻(もみがら)、糠(ぬか)など、禾本科の灰は、70~80%の

   珪酸を含みます。 これらの灰は、釉を乳濁させる作用が有ります。

   藁白、糠白、鵜の斑などの、名前の付いた釉です。

以下次回に続きます。

   
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釉の原料4(アルカリと熔融剤2)

2011-04-27 21:38:47 | 焼き物の材料(原料とトラブル)
釉の原料についての、話を続けます。

5) 熔融剤について

  ②  アルカリ以外の熔融剤

  ) 昔から良く使われていた原料に、鉛の酸化物があります。

    手に入り易い事と、安価な事とで、一般に広く使われていましたが、現在では、鉛の有毒性の

    為、一部を除き、使用されなくなっています。(食品衛生上も、禁止されている様です。)

    尚、最も低い温度(600~800℃)では、酸化鉛が熔剤になっています。

  ) 硼酸(ほうさん)(化学式=H2BO3)

    硼酸はアルカリに似た、性質を持っており、鉛の様に有毒では有りません。

    尚、硼酸は硼砂から取る場合が、多いです。

    878℃で融解して無色透明のガラス状となり、多くの金属酸化物を、融解する性質を持つ為、

    釉薬の融剤として使われます。又、釉の原料としても、広く使われています。

    (ガラスに混ぜると、熱衝撃や化学的浸食に強い、耐熱ガラスなどの原料となります。)

     硼酸はアルカリに似た、性質を持っています。

     硼酸には以下の特徴があります。

   a) 着色酸化物に対して、強力な熔剤と成ります。

   b) 適量添加すると、熱膨張を抑えます。

   c) 低温で粘度の高い釉に成りますが、高温に成ると流動性が増し、流れや易い釉となります。

   d) 屈折率を増し、釉に光沢を与えます。

     更に、他の成分の結晶化を防ぎ、失透を起こしません。

   e) 熱や酸、アルカリなどに対して、化学的耐久性を改良する融剤です。
    
  ) 酸化亜鉛(亜鉛華)(化学式=ZnO )

    亜鉛華とも呼ばれ、白い粉末で、溶媒剤として用いられる他、乳濁させる作用があり、

    多量に加えると、亜鉛結晶釉になります。

    調合例

    透明釉の三号石灰釉(1230~1280℃)を、1200℃の光沢透明釉にする。

    三号釉100に対し、亜鉛華12を調合(重量比)します。 
 
   ) その他の熔融剤

    a) リチウム(炭酸リチウム)

      1%程度の量で、強い流動性を呈します。光沢を増し、ピンホールを防止します。

    b) 酸化鉄

      酸化鉄は、着色剤として鉄釉に、使用する事が多いですが、熔融剤としても、作用します。

     弁柄(酸化第二鉄)、四三酸化鉄(Fe3O4)、水酸化鉄、硫化鉄などがあります。

    c) 滑石(タルク )

      マグネシア成分を、多く含む物質で、生のまま、或いは、一度焼成したものが用いられる。

      媒熔剤としての他、タルク釉として、白さを増す場合に使われ、より多く加えると、

      乳濁します。

    d) 陶石は、熔融剤とはいいませんが、アルカリ成分と珪酸を、多く含む為、木灰等を、

     配合する事により、釉として使えます。

     尚、陶石とは、長石質の岩石が、風化等で半分解途中の、物質です。      

以下次回に続きます。
   
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釉の原料3(アルカリと熔融剤)

2011-04-26 22:58:41 | 焼き物の材料(原料とトラブル)
釉の原料についての、話を続けます。

5) 熔融剤について

   釉を熔け易くする為の材料を、熔融剤(フラクス=fluk)と言います。

   熔融剤には、アルカリ類と、その他の物質があります。

 ① アルカリ類

   アルカリとは、カリウム、ナトリウム、カルシウム、バリウム、リチウム等をさします。

   アルカリは、強力な熔融剤です。働きは、釉の熔ける温度を、調整すると伴に、釉の流動性を

   増します。更に、釉に光沢を与えます。

   種類によって、その働きは、若干差があります。

  ) 単一種のアルカリを使用するよりも、数種類(出来れば3種類)のアルカリを使うと、

    より強力に作用します。

  ) カリウム(カリ)は、長石釉で最も普通に用いられる、熔融剤です。

     ナトリウム(ソーダ)も、カリと同様な作用がありますが、カリより熔け易い釉を作り

     ますが、光沢の点では、やや劣ります。ソーダは、釉の膨張係数が、はなはだ大きい為、

     素地の膨張係数より大きくなると、貫入が入り易いです。

     尚、カリやソーダが増すと、光沢は出ますが、耐久性や風化に対する、抵抗性が減ります。

  ) カルシウム(石灰)は、全ての釉に含まれています。 石灰の働きは、

    a) 釉を硬くし、磨耗に対して、強くなります。

    b) 風化に対する抵抗性や、耐水性を増します。

    c) 他のアルカリよりも、膨張係数が、小さい特徴があります。

    d) 石灰が多量に入ると、耐火度が増し、更に、灰長石と言う細かい結晶が出て、艶消し釉に

      成ります。

    e) 石灰が過剰に入ると、気泡が発生しますが、珪酸を少量添加すれば、防げます。
   
      石灰石(炭酸カルシウム=CaCO3)を用いる事が多いです。

   ) マグネシウム(マグネシア)は、高温に成ると、著しく流動性を増します。

      又、釉の表面張力が大きく、幕を張った様な、感じになる事もあります。

      この性質を逆用して、装飾的に使用する方法もあります。

    ・ マグネシアが含まれる原料は、ドロマイト、マグネサイト、滑石等です。

    a) ドロマイトは、安価な材料で、貫入防止剤として利用されます。

    b) 滑石は、「ひび釉」を作るのに、適します。又、少量では光沢を与えますが、8~20%

      程度入ると、艶消し釉となります。

    c) 釉の沈殿防止剤として、軽マグと言う化学薬品が有りますが、これも、マグネシア化合物

      です。

   ) バリウムは、条件によっては、他のアルカリよりも、強力な熔融剤となります。

      又、光沢を増す事、耐火性がある事、艶消し釉としても、使われる事などは、上記原料に

      似ている性質です。

以下次回に続きます。

  
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釉の原料2(シリカ、アルミナ)

2011-04-25 22:33:28 | 焼き物の材料(原料とトラブル)
釉の原料についての、話を続けます。

3) 珪酸質原料

  地球上の岩石や粘土類の主成分は、珪酸です。珪酸はシリカと呼ばれ、化学式は(SiO2)で表します。

  単独では、珪石、珪砂、水晶などがあります。鉱物名は、石英です。

  ① その他の珪酸質物質

    木灰や、稲などの禾本科の灰(藁、籾殻、糠=ぬか)も、シリカを80%程度含みます。

    楽焼の釉の「日の岡」も、珪石の一種です。

    尚、塊状の珪石は、硬いですので、一度焼いて水に投げ入れれば、砕き易くなります。

  ② 釉としての珪酸質の働き

    珪酸質原料は、ガラスを構成する成分です。その為、釉には無くてはならない成分です。

    適量の珪酸質は、透光性を有し、良いガラス質を生成しますが、過不足に成ると、問題が

    発生します。適量は25~75%の間に、存在します。

   ) 多過ぎる場合

      完全に熔けずに、釉の内部に残り、艶消し釉に成ったり、釉面が荒れて、「あばた状」に 

      成ります。又、「釉飛び」や「釉はげ」の原因に成ります。

      尚、珪酸が多いほど、熔けにくい釉と成ります。

   ) 少な過ぎた場合

    a) ガラス質が少なく、素地の気孔に入り込めず、釉が素地から、流れ落ちてしまいます。 

    b) 素地に吸収されて仕舞い、釉としての働きが、無くなります。

    c) 釉が煮えて、気泡が発生します。又、貫入が出やすいです。
 
      特に、珪酸が少なく、粘土やカオリンが多いと、長石の量に関係なく、貫入が入ります。

4) アルミナ成分(長石質原料)

 ① 釉に於けるアルミナの役割は、釉を安定化する働きをします。

   即ち、釉の粘度を増し、流れを防止します。

   又、釉の硬さを増し、風化や化学的侵略に対して、強い抵抗性を有します。

   更に、色釉を作る時にも、重要な働きをします。
 
 ② アルミナ成分を多く含む物質は、長石や陶石、及びカオリンです。

   長石にはアルミナ以外に、シリカや、アルカリ成分も多く含みます。

   このアルカリ類の違いにより、以下の三種類の長石が存在します。

  ) 正長石: カリウム(KO2)を含む、長石です。

  ) 曹長石: ナトリウム(Na2O)を含む、長石です。

  ) 灰長石: 石灰(CaO)を含む、長石です。

   何れも、1550℃程度の融点を持ちますが、実際には、不純物を含む為、1250℃前後と

   成ります。成分の違いは、釉の性質の違いに現れます。

 ③ アルミナ成分が、極端に多くなると、急激に粘度が増し、気泡が釉の中に残ります。

 ④ 石粉(いしこ)について。

   石粉は長石の半分解物で、10%程度の珪酸を含みます。

   それ故、木灰を配合するだけで、釉として使う事が出来ます。

   石粉には、三河石粉、波佐見石粉、さば土、千倉石、釜戸石粉などがあります。

以下次回に続きます。

      
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釉の原料1(始めに)

2011-04-24 22:19:31 | 焼き物の材料(原料とトラブル)
釉の成分は、基本的には、素地土と同種の成分から出来ています。

素地との違いは、熔ける温度に差がある事です。その差は、少なくとも、100℃以上が必要で、

当然、釉の方が低く成ります。

1) 釉と成る為の基本的要件

  釉として、使用出来る為には、幾つかの要件が必要です。

  ① 原料は、ガラスと成る成分が基本になりなす。

    釉は一種のガラス質ですので、ガラスに成り易い成分、即ち、珪酸(シリカ、SiO2)、硼酸

    (B2O3)、酸化鉛(PbO)、リン酸(P2O3)等が原料に成ります。

  ② 所定の温度で、良く熔ける事。

    ガラス質成分を、溶け易くする物質を、熔剤と言い、主にアルカリ成分が入ります。

    陶芸では、楽焼釉の800~900℃程度から、磁器釉の焼成で1300℃以上で、良く

    熔ける釉が必要です。熔融温度は、釉の原料の値(分量)によって、変化します。

  ③ ガラス質を安定に保つ事。

    冷えて固まったガラスを、安定な状態に、保つ必要が有ります。

    安定とは、素地の表面に皮膜として密着し、剥がれ無い事と、硬度を持ち、機械的強度が

    ある事や、気体や液体を透過せず、強い酸やアルカリなどに対しても、耐久性がある事です。

   ・ 石灰成分(CaO)、アルミナ成分(Al2O3)、マグネシア(MgO)、リン酸などを、加える必要が

     あります。

  ④ 釉に色を付ける成分。

    釉には、色々な色が付いています。着色剤として、主に酸化金属(酸化鉄、酸化銅、酸化錫、

    酸化コバルト、酸化チタン等です。)を調合する事で、発色させています。

  以上の様に、原料を上手く調合(配合)して、釉を作る事に成ります。

 ・ これら原料を、細かく粉砕し、水に入れ良く攪拌してから、使う事に成ります。

2) ガラス化反応(熔ける状態)

   釉の原料が熔けるのには、単に温度だけでなく、焼成時間の長さも、大きく関係します。

   昇温と共に、原料は、化学的反応を受けて、質的変化(鉱物の組成変化)が起こります。

  ① 熔け易い原料より、順次熔解します。

    釉はある一定の温度で、いっせいに、熔ける(ガラス化する)訳ではありません。

    反応し易い物質から、順次ガラス化し、熔け難い物質を、熔かし込んで行き、やがて

    全体を、均一のガラス質に、変化させます。

  ② 素地に融着する理由

    熔けたガラスは、素地の隙間(気孔)に流れ込み、楔(くさび)の様に食い込みます。

    それ故、気孔が少ない場合や、施釉する前の素焼を、綺麗に磨き過ぎるのは、「釉はげ」の

    原因に成ります。 尚、釉と素地との化学的結合部分を、中間層と呼びます。

以下次回に続きます。
 
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焼き物の原料(坏土8)

2011-04-23 22:38:07 | 焼き物の材料(原料とトラブル)
坏土(はいど)の話を、続けます。

 5) 坏土の調整

 ② 配合調整

   ) 機械的、熱的衝撃に対して、弱い場合の配合調整

    a) 非可塑性(珪砂、シャモット等)の多い素地は、制作途中や、作品を移動途中でも、亀裂

    (割れ)が入る事があります。珪砂が多いと、粘度粒子間の結合力を、弱めるだけでなく、

     焼成中や冷却中に、珪砂が異常な膨張や、収縮を起こし、作品の「ゆがみ」の原因に成ります。

     更に、低い温度で焼成され、十分焼き締まっていない作品は、機械的強度が小さい(弱い)です。

   b) 多量のカオリンや耐火粘土などが、入っている素地では、機械的強度は少ないです。

   c) 石灰成分を25%以上含む素地は、機械的強度が弱く成ります。

     特に、石灰が40%以上を含む素地は、陶磁器の原料としては、不向きです。

     低い温度焼成では、石灰石(CaCO3)は石灰(CaO)に成りますが、石灰は湿気を吸収し、

     膨張します。その為、湿度の高い所に、長期間放置して置くと、素地が弱くなります。

   d) 対策として、素地に適量の珪酸砂や、粗いシャモットを入れると、粒子間に隙間(気孔)が

     出来、機械的や熱的衝撃に対して、強く成ります。

  ) 水漏れ(透水性)

    花瓶など、常に水を入れておく容器が、水漏れを起こす事が有ります。

    原因は、素地が焼締まっていない為です。

   a) 対策として、素地土を細かくする事と、焼成温度を高くする事です。

   b) 素地の軟化と焼結との、温度範囲が狭い場合、高温で焼成しても、水漏れを防ぐ事が出来ない

     場合が有ります。 ある温度で、一部が急速にガラス化して、焼結しても、他の部分では、

     多孔性が、残っている為です。

     この様な場合、「錫(すず)釉」や微細な「フリット釉」を使うと良いと、言われています。

   c) 石灰を多く含む素地では、微粉末にする事です。

     粒子が、600孔/平方cmでは粗く、1000孔/平方cm以下にする、必要が有ります。

  ) 「ぶく」の発生の予防

    「ぶく」とは: ピンホールが集合した状態に成る現象です。

   a) 素地に、水に溶ける塩基類が、入っている為で、水簸(すいひ)の不完全が原因に成ります。

    この塩基類は、素地を乾燥すると、表面に結晶として現れたり、粉を吹いた状態になります。

    この現象を、スカミング(発鼻現象)と言います。スカムは、ゆっくり乾燥する程、

    強く起こります。この状態で素焼すると、結晶などは、気孔の中に固着し、取れなく成ります。

    スカムが有ると、釉と素地の間に、隙間が出来、乾燥すると釉が剥がれたりします。

    ・ 塩基類とは、ナトリウム(ソーダ)、カリ、石灰、マグネシウム及び、硫酸塩で特に、

     硫酸石灰が、有害です。

   b) 成形に石膏型を、使う場合には、型を濡らした状態で、使用し無い事です。

     濡れた型から、微細な石膏の結晶が出て、作品の表面に転移する為で、これがスカムの

     原因に成るからです。尚、石膏は石灰(カルシウム)を多く含みます。

   c) 硫酸石灰の害を取り除くには、素地に炭酸バリウムを、0.25~0.5% 加えます。

  ) 焼成後の大きな割れ(破壊)

   a) 出来上がった作品が、数日後に、明確な理由も無く、大きく破損する事が有ります。

     又、熱湯程度の、急な温度の上昇で、割れることも有ります。

   b) 陶器素地に、微粉砕された石英が、多量に含まれる場合には、内部歪(応力)が強く出る

     傾向にあり、破壊を引き起こし易いと、言われています。

   c) 急激な温度変化で起こる割れ(破壊)は、石灰含有量が、比較的多い場合に、起こり易いです。

     骨灰などが、多く含まれる素地は、注意が必要です。

     煮沸する料理用容器(土鍋など)は、石灰を含まないか、多孔質の硬い素地を使います。

     又は、熱膨張率の非常に少ない、リチウム鉱物(ペタライトなど)を加えます。

     調合例として、ペタライト40%、粘土60%(市販の土鍋用土)

    ・ 熱伝導の悪い素地(緻密な焼固素地)も、急温急冷に対し、割れる事が有ります。

以上で、坏土の話を、終わります。

次回からは、釉の原料(材料)について、お話します。
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焼き物の原料(坏土7)

2011-04-22 21:47:09 | 焼き物の材料(原料とトラブル)
坏土(はいど)の話を、続けます。

 5) 坏土の調整

 ② 配合調整

   ) 焼成中に起こる変形、切れ、剥離(はくり)の予防

    a) 変形: 土は高温に成ると、若干軟化します。

      軟化する温度は、土の種類によって、違います。

      特に赤土の様に、酸化鉄や酸化金属を多く含む素地では、比較的低い温度で軟化し易いです。

      それ故、窯詰めの際に、作品の一部に重量(荷重)が、掛からない様にしたりしますが、

      それでも変形する場合には、配合調整する必要があります。

     ・ 対策は、微細な珪砂、カオリン、耐火粘土などを、10~20%加えます。

       但し、1100℃以上で、変形を起こす場合に、有効な方法で、それ以下で変形する

       土の場合には、余り役立ちません。

     ・ 焼成中に変形を起こす原因は、上記軟化以外に、焼成速度が遅過ぎる場合や、最終

       温度の「ねらし」時間が、長過ぎる場合です。

       この様な時、焼成温度を下げる事も、有効な方法です。

    b) 切れと剥離: 焼成技術よりも、素地に問題がある場合が多いです。

     イ) 可塑性の大きな素地を、急速に焼成(昇温)すると、剥離が起きます。

        即ち、粒子が細かく、可塑性の有る素地では、結晶水や遊離水が、緻密な素地を

        通過し難く、表面から水分が蒸発せずに、素地の内部に溜まり易く、昇温とともに、

        部分的な、小さな水蒸気爆発を起こし、剥離が起こります。

        特に、肉厚の厚い作品では、顕著です。

      ・ 大規模な剥離は、乾燥不十分や、空気が閉じ込められている為で、原因が違います。

     ロ) 同様な理由で、可塑性が大きい素地で作った、陶板は亀裂(割れ)が入り易いです。

        特に、石灰を多く含んだ素地は、冷却時に亀裂が入る事が多い様です。

        この亀裂の特徴は、一点を中心にして、枝状に割れが、広がる事です。

      ・ 又、石灰を多く含む素地では、一面のみに火が強く当ったり、逆に急冷時に、

         枝状亀裂が入ります。更に、粗い珪砂等が入っている場合にも、起こります。

     ハ) 焼成中に起こる亀裂は、冷却中の亀裂と、形状が異なります。

        即ち、冷却中では、枝状亀裂に対し、焼成中では、亀裂の幅が広く、切裂いた

        形状になります。

        又、焼成中の亀裂面がギザギザしており、色も表面と同じ様な色と成りますが、

         冷却中の亀裂は、ガラスを割った様に、鋭利になっています。

     二) 上記事項の予防としては、素地に、細かい珪砂、シャモット、セルベンを加えます。

   ) 機械的、熱的衝撃に対して、弱い場合の配合調整

以下次回に続きます。
 
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焼き物の原料(坏土6)

2011-04-21 22:41:25 | 焼き物の材料(原料とトラブル)
坏土(はいど)の話を、続けます。

 5) 坏土の調整

 ② 配合調整

   ) 「ゆがみ」の予防

     作品の「ゆがみ」は、製作過程や乾燥過程、更には、焼成過程でも、発生する現象です。

     ここでは、土が原因の場合の対処法に、限ってお話しますが、一応他の事項についても

     お話します。(以前お話しした事柄です。)

     ・ 製作過程: ロクロ作業での「振れ」。成形時や削り作業での、肉厚の不均一。

       土の締めが弱い。

     ・ 乾燥過程: 乾燥が早過ぎる。作品の一部のみが、先に乾燥する。

     ・ 焼成過程: 温度上昇が急。 一部分のみに、火が当たる。温度が高過ぎる。

    a) 成形した作品が、「ねじれ」や「ゆがみ」などの、歪(ひずみ)が発生する、主な原因は、

      やり方(作業方法)が悪い為ではなく、素地の組成が悪い時に、起こり易いです。

     イ) 第一の原因は、乾燥時の収縮率が大きい事、及び可塑性の大きい土を、使った為です。
 
      ・ 乾燥とは、粘土の粒子同士が、引っ張り合いながら、接近して行く現象です。

        それ故、弱い所は、引っ張られて、「ゆがみ」を生じます。

      ・ 収縮率と収縮量: 率は一定でも、作品の大きさによって、量は変化します。

        例えば、収縮率が10%とすれば、10cmの作品で、縮は1cmですが、30cmの

        作品ならば、3cmと成ります。(市販されている土は、12~13%が多いです)

        更に、作品は立体ですので、縦、横、高さで3乗に比例して、小さくなります。

      ・ 粒子が細かい程、可塑性が大きく、土の締りが弱くなります。

        例えば、信楽の「特漉し」は、「並漉し」よりも、粒子が細かく、大きく縮みます。

      ・ 赤土は、酸化鉄を含み、白い土より、収縮率が大きいです。

        それ故、粒子の粗い土と併用すると、良いでしょう。

      ・ 対処法は、珪砂、長石、シャモット、素地の焼き粉(セルベン)などの、非可塑性

        原料(除粘剤)を、加える事です。

     ロ) 上記除粘剤の、何を使うかは、品物の種類や欠点の大きさで、決めます。

      ・ 一番簡単な方法は、珪砂や可塑性の少ない土を、混入させる事です。

      ・ 調理用素地には、珪砂とシャモットを同時に入れます。

        シャモットは、比較的低温で、素地土と結合し、熱や力の衝撃に対し、強くします。

      ・ 粘着力の強過ぎる土には、同一組成の焼成粉砕物を入れます。

     ハ) 上手に調整出来れば、乾燥時に「ゆがみ」や「そり返る」事もなく、焼成後も硬さや
   
       強さを保つ事が出来ます。

    b) 乾燥時の「切れ」

     イ) 原因は上記事項と同じ、乾燥収縮が大き過ぎる時です。

      ・ 又、可塑性が強過ぎても、弱過ぎても、発生します。素地中の水分が、不均一に

        存在する場合にも起こります。即ち乾燥が均一に成らない為に、水分の多い所は弱く

        この所から「切れ」が発生します。

      ・ 素地の粘性が低い場合には、成形時その場所に、強い力が掛かり易く、乾燥時に

        力のバランスが崩れ、「切れ」が発生し易いです。

      ・ 「ねかし」が短い時も、「切れ」が出易いです。

        「ねかし」をする事は、粘土粒子間の結合力が増し、成形性も良くしてくれます。

以下次回に続きます。
            
        
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