わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

陶磁器と色彩 16 (色のイメージ7)

2010-12-30 21:21:58 | 陶磁器と色彩
今回が、「色彩の話」の、最終回に成ります。

10) 黒のイメージ

 ・ 古い時代に於いては、何れの国や文化でも、黒は低い身分の色と、見なされていました。

   黒い色は、物や、獣を焼いた時に、発生する「煤(すす)」や、黒い土によって、容易に手に入る

   染料でした、その為、身分の低い人の色と、されていた様です。

 ・ 我が国では、平安時代以降、西洋では中世以降、光沢のある黒が、使われる様になると、貴族階級の

   色として、珍重される様に成ります。

 ・ 特に茶道の抹茶茶碗などは、抹茶の緑と、器の黒の取り合わせが、鮮明で、美しく見えます。

   その他、器などでも、黒の「高級感」が好まれ、多く使われています。

 ・ 「漆黒(しっこく)」は、日本語の黒の中でも、最も暗い黒を、表現する色で、漆塗りの様に、

   艶のある色です。

 ① 黒は、夜の「闇」を表す色として、「恐怖」「死」「不吉」「邪悪」「孤独」「悲しみ」「陰鬱」

   「怒り」「不機嫌」等の負のイメージが、強いですが、それが逆に「強さ」「魔除」「生命の再生」と

    変化し、更に現代では、「高級感」「威厳」「厳粛」「高貴」「シック」「フォーマル」「おしゃれ」

    等の、肯定的なイメージと成っています。

   但し、現在でも、「黒幕」「ブラックマネー」など、負の言葉も多く存在します。

 ② 陶磁器に於ける黒は、鉄系の釉で、発色する物が多いです。

   黒天目、柚子肌黒天目、油滴天目、黒マット等が代表的な釉です。

11) 灰色(鼠色)のイメージ

   黒と白の中間の色ですので、黒の割合によって、明るい灰色から、暗い灰色まで存在します。

   白でも黒でもない色として、「はっきりし無い色」の、イメージが強いです。

 ① 「曖昧」「陰気」「控えめ」「不安」「疑惑」「不正」「憂鬱」など、余り良いイメージでは、

    有りませんでしたが、近年無彩色が、どんな色とも合う色として、見直されています。

 ② 灰色の釉は、余り見かけませんが、石灰系の透明釉を、還元焼成すると、灰色に成ります。

   土に灰色の顔料を、練り込んで、灰色の作品を作る方が、確実かも知れません。

12) 虹色のイメージ 

   我が国では虹は、七色と表現しますが、国や民族によって、色の数も変化しています。

   幾つもの色にも見える虹色は、全ての可視光線の波長を含み、「全てを含む」イメージと成ります。

  ① 「希望」「夢」「幸運」等、満ち足りたイメージです。

  ② 空に架かる虹は、古代人には、不思議な事とし、神からのメッセージと、受けたられていた

    様です。(協会のステンドグラスは、この虹の影響と、言われています。)

  ③ 釉としては、真珠釉や、ラスター釉と呼ばれる物で、見る方向によって、色が変化します。

    これは、表面に薄い膜が生じ、光の屈折や反射に、変化が出る為と、言われています。


色の好みは、十人十色と言われ、好き嫌いが出易い物です。

それ故、ほとんどの方は、作品に、色を塗る際に、戸惑います。作陶の際に、何色を使うかを、予め決めて

おきたい所ですが、実際には、施釉直前まで、決まらない事が、多い様です。


以上述べて来た事が、何かの役に立って頂ければ、有り難いです。これで、色彩の話を、終わります。

次回より、別のテーマで、お話したいと、思います。

  
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陶磁器と色彩 15 (色のイメージ6)

2010-12-29 22:34:19 | 陶磁器と色彩
 8) 紫のイメージ

  ・ 我が国の紫は、紫草(むらさき科の多年草)の根を、乾燥させた染料です。

    染色された紫は、青みを帯びています。

  ・ 西洋の染色は、貝紫の分泌液を使っています。(紀元前1500年頃には、使われていました。) 

    尚、西洋では、「パープル」は赤み掛かった色で、青みが強い紫を「バイオレット」と呼び区別

    しています。

  ・ 洋の東西を問わず、優雅で品が良く、高貴のイメージが有ります。 

  ・ 紫色は、好き嫌いの出易い色です。それ故、使い方に注意する必要があると、言われています。

  ① 「高貴」「高級」「正式」「神秘的」「不思議」「妖艶」「女性的」「大人」のイメージですが、

    「古典的」「不吉」「死」「病気」「派手」「低俗」「悪趣味」などの、否定的なイメージでも有ります。

  ② 自然界にある紫色は、肉の変化した色として、認識されます。即ち、人や動物の打ち身や死に伴う、

    紫斑(死斑)として、存在していました。それ故、「不吉」のイメージと成り、魔女の衣装も、

    黒の他、紫や緑が配色されています。

  ③ 古来より、身分の高い者の色とされ、紫の衣装が使われています。

    我が国でも、冠位十二階(603年に制定された、冠位制度)の第一番目に、大徳として、濃い

    紫色が、指定されています。(ちなみに第二位は、小徳と言い、薄めの紫色です。)

  ④ 紫草には、胃腸病や皮膚病、腫れ物の薬として、使用されていました。その為、歌舞伎などでは、

    頭に紫の鉢巻をして、病気を治療している事を、表しているとの事です。

  ⑤ 紫色の釉を、作る際には、以下の金属類を使用します。

    クロム(赤紫)、マンガン(青紫、紫、赤紫灰)、コバルト(青紫、赤紫)、ニッケル(紫、赤紫)

    銅(紫)、金(赤紫)などです。

 9) 白のイメージ

    白は昼間の色として、夜の黒と対比して意識されます。

    太陽の下、人は最も活動的な、状態に成ります。朝夕では太陽は、赤や橙の様に、暖かい感じの

    色をしていますが、真昼では白い光として、認識されます。

   ・ 太陽の透明な光は、反射すると、人の目には、白く見えます。それ故、白は太陽の色とも表現

     されます。

  ① 「純粋」「潔白」「無垢」「神聖」「清潔」「平和」「自由」などで、否定的なイメージは、

    「冷たい」「平凡」など、数は少ないです。

  ② 白は宗教とも、強く関っています。

    我が国の神道でも、穢れの無い白は、神官の衣装や神具、神棚などの白木など、白で統一されて

    います。 エジプトやインドに於いても、司祭者階級の衣装は、白です。

  ③ 白粉(おしろい)は、肌の色に関らず、白を基本としています。

    これは、素(す)の状態から、理想な状態を作りたいと言う、考えから来ているとの事です。

  ④ 釉としては、藁(わら)白、糠(ぬか)白、鵜の斑(うのふ)、白萩、乳濁釉、などの白い乳濁釉

    の他、カイラ釉(ちぢれた乳白色)、白マット(艶消しの白)などの、名前の釉が有ります。

 10) 黒のイメージ

以下次回に続きます。 
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陶磁器と色彩 14 (色のイメージ5)

2010-12-28 21:47:47 | 陶磁器と色彩
釉を使う場合、単色の釉を使う場合と、複数の釉を、重ね塗りする場合が有ります。

 (施釉する方法も、漬け掛け、流し掛け、吹き掛け、筆で塗る等の方法があり、その違いによって、

  問題の発生の仕方に、若干の差が出ます。)

 単色の場合は、ほとんど問題になりませんが、重ね合わせの場合、重ねる事による、色々な問題が発生

 して来ます。 以下問題点を、列挙します。

 ① 釉が剥がれる

  ) 塗り重ねる事により、釉が厚く掛かる為、焼成時に、釉が「ひけ」て仕舞い、素地の一部に、

     釉が掛からなく成ります。

   ・ 注: 「ひけ」とは、焼成後、窯の冷却時に、ガラス質が固まり始めると、厚掛けした部分に、

      釉が引張られて、回りの釉薬が、寄り集まる現象で、周囲の釉が素地から離れます。

   ・ 釉が厚くなると、焼成前でも、釉がめくれ、素地から、浮き上がる事が有ります。

     釉の濃度を薄めれば、大体は解決します。

  ) 釉の相性の違いによる。冷却時の縮み率は、釉によって違いが有ります。その差が大きいと

     縮の大きい方に、釉薬が引張られます。

     又、釉が熔けた時の、釉の粘性(流れやすさ)の差も、関係します。

     流れ易い釉は、どうしても、引っ張られたり、薄くなったりします。

 ② 重なった境目の色が、中間色ではない。

  ) 片身分けの様に、部分的に違う釉を、掛ける場合も多いです。その際、その境目には、両方の

     釉が二重に掛かる事が普通です。その境目の色は、思わぬ色(良い色ではない)に成る事が

     多いです。

  ) どちらを、先に塗るかによっても、発色は違います。当然、後に塗った色が、優先的に発色

     し易いですが、必ずしもそうとは、限りません。試し焼きして、塗る順序を決ます。

  ) 基本的には、釉同士を混ぜ合わせると、綺麗な色は出ませんので、注意が必要です。

  ) 釉は熔けて、ガラス質の液体と成りますので、幾ら分離して色を掛けても、お互いの領域に、

     侵略して行き、境界線が「ぼやけ」ます。

    この現象を防ぐには、絵付けや、練り込み土を、使うしかありません。

 
   前置きが、長くなりましたが、前回の続きを、述べます。    

7) 青のイメージ: 青色は、精神を安定させる、作用があります。

   世界中で、好まれる色の、「ベスト3」に入っています。

   青は空の色と、水の色を連想させる色で、自然の美の一つに成っています。

  ① 「爽やか」「神秘的」「冷静」「知的」「平和」「誠実、信頼」「真面目」のイメージです。

    否定的には「憂鬱(ゆううつ)」「冷たい」「遠い」などがあります。

  ② 青の色の範囲は、かなり広いです。

    濃い藍色から、明るいスカイブルー(空色)まで、色々な名前が付けられています。

    (藍色、ロイヤルブルー、ブルー、青、スカイブルー等が有ります。)

  ③ 下絵付けでは、「呉須」と呼ばれる色が代表的な、青と成ります。

    「呉須」には、色によって幾つかの名前があります。

    (古代呉須、墨呉須、紫呉須、青呉須、土呉須、焼貫呉須等です。)

     その外に、コバルトブルー、トルコブルー、カイヘキ等が有ります。

  ④ 青い釉には、瑠璃色、瑠璃海鼠(るりなまこ)、トルコブルー、空色、深青緑などが、有ります。

    いづれも、コバルト系の釉です。

 8) 紫のイメージ

以下次回に続きます。
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陶磁器と色彩 13 (色のイメージ4)

2010-12-27 22:14:27 | 陶磁器と色彩
同じ色であっても、光沢のある色と、光沢のない所謂、マットでは、色の印象が、かなり異なります。

光沢のある色は、光を反射し、明るく、「きらびやか」に見えます。マットでは、光を乱反射しますので、

「きらびやか」さは、有りませんが、「渋い」感じと成ります。

 色の好みは、人により違いますが、マット系の好きな方も、結構多いです。

  (但し、市販されている釉は、マット系は少ないです。)

 マット釉を施した物は勿論、光沢のある釉の和食器では、使用する前に、しばらく水に漬けて置くと、

 光沢が出て、見違える様に、生き生きした表情が、出て来ます。

 (勿論、器が油等を、浸み込み、汚す事を、防ぐ意味も有ります。)


 前回の話を、続けます。

 6) 緑のイメージ: 緑は色の名前だけで無く、近年では、自然その物を指す、言葉と成っています。

   特に環境問題が、大きく取上げられる様になると、その「シンボルカラー」と成っています。

  ① 緑色は、「安らぎ」「癒し」「落ち着き」「若さ」「新鮮」「安全」「平和」「再生」「生命力」等の

    イメージが有ります。

    一方「未熟で若い」「幼い」等、やや否定的な意味と、その他、西洋では、「不幸を招く色」「悪魔」

    「毒」「不実な愛」を表す、色とも言われています。

  ② 人類は初期の頃、森の中に住み、次第に草原へ、進出したと考えられています。

    それ故、緑は人類の故郷である、森の環境や、植物等を、思い浮かべます。

    実際に、樹木には、「フィトンチット」と呼ばれる、揮発性の物質を、発散させ、人のホルモンや

    血圧、脈拍に良い影響を与え、更に、抗菌作用もある事が判明し、緑は本当に人を、癒している

    ます。

  ③ 我が国では、緑には良いイメージが有ります。

   「緑の黒髪」の褒め言葉や、「嬰児(みどりご)」等の「生命力」、神様に捧げる、「榊(さかき)」等も、

    神聖な色とされています。

  ④ 西洋では、特に中性ヨーロッパでは、「混色を嫌う」キリスト教の影響で、緑が嫌われていた

    そうです。(当時単色で、緑色を出す染料が、少なく混色で、作られていた様です。)

    又、支配できない、自然の脅威から、「運命の力」「偶然に関るもの」等のイメージとなり、

    賭博の色とも、成って行きます。

    (ビリヤードの台に、緑が使われるのも、この賭博=賭け事を、表す為と言われています。)

 ⑤ 緑は、お金を象徴する色でもあり、アメリカのドル紙幣に、使われています。

   又、イスラム文化を、象徴する色とも言われ、キリスト教徒と、敵対し、支配できない民族の色と、

   言われています。

 ⑥ 釉で緑色を出すには、銅や酸化クロムを、利用します。

   代表的な釉は、織部釉や、青銅マット釉で、酸化焼成する事によって、得られます。

   その外、均窯釉、銅緑釉、緑色釉、松緑色釉、青磁(一般には鉄系)等が有ります。

 7) 青のイメージ

以下次回に続きます。
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陶磁器と色彩 12 (色のイメージ3)

2010-12-26 22:35:52 | 陶磁器と色彩
引き続き、各色のイメージに付いて、お話致します。

 4) 茶色のイメージ: 茶色の物は、身近な色として、存在していました。

    即ち、食物の色、食物の焦げた色、大地の色や、木の幹や枝の色、枯葉の色、動物の毛皮の色

    など、古来より、身近に有る、ありふれた色でもありました。

    尚、茶色は、黄色近辺から黒近辺まで、かなり広い範囲の色です。

  ① 「自然に多くある色」「落ち着いた感じ」「堅実」「安定、安心」「地道」「渋い」等の意味の

    他に、「保守的」「田舎っぽい」「平凡」「陰気」「おとなしい]「汚い、汚物」等の、負の

    イメージにも成っています。チャレンジ精神に、欠けたイメージです。

  ② 英語でも、栗色(マルーン)、胡桃(ウォルナット)、なめし皮(タン)、煤(ビスタ)、土の色

    (ローアンバー)など、身近なものから、茶色に名前が付けられています。

    近年「チョコレート色」や、「コーヒー色」、「ココア色」などの、名前も使われています。

  ③ 日本の家屋には、木の温もりである、茶色が、柱や床の他、家具などに、好んで、使用されて

    います。又、薄い茶色系の、「ベージュ色」も、衣服などに多く使われています。

  ④ 陶芸で使用される、絵付けの絵の具の、代表的な茶色は、「鬼板」です。

    鉄分以外に、多くの不純物を含む為、変化の有る茶色に成ります。薄いと茶色、濃いと黒に成り

    ます。釉としては、飴釉、柿釉が代表的な物です。何れも鉄系の釉薬です。

    その他、蕎麦(そば)釉、黒飴等、黒蕎麦などの名の、釉も有ります。

    (柿釉は、果物の柿の色が、オレンジ風なのに対し、もっと茶色に成ります。)

 5) 黄のイメージ: 洋の東西では、かなり違ったイメージを、持った色です。

    歴史や、宗教の違いによるものと、思われています。

   ① 黄色は、太陽の光であり、黄金の色でも有ります。

    それ故、「希望」「明朗」「喜び」「暖かさ」「躍動」「賑わい」「幸福」「富」のイメージ

    ですが、一方で、「幼稚」「軽率」「騒がしい」「注意」「嫉妬」「臆病」などの、悪いイメージ

    を、持たれる事も有ります。

   ・ 農耕民族では、穀物の実りの色と成ります。

   ・ 黄色は、人を明るく元気にさせる色で、集中力を、高める色でもあります。

  ② 中国の陰陽五行では、黄色は万物の中心にあり、太陽と富の象徴とされます。

    それ故、最高権力者の色とされ、王家の色として、一般には使用禁止で有ったそうです。

    仏教国では、僧侶の衣の色であり、大切な色とされて来ました。

  ③ 釉で代表的な黄色は、黄瀬戸とです。一説によると、豊臣秀吉の黄金趣味に合わせて、黄金に近い

    釉薬として、安土桃山に発明されたと、言われています。(灰を用いて、調合しました。)    

 6) 緑のイメージ:

以下次回に続きます。
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陶磁器と色彩 11 (色のイメージ2)

2010-12-25 21:41:31 | 陶磁器と色彩
焼き物に使われる色の数は、限られています。

高い温度で焼成する為、ペンキや絵画で使う絵の具類は、ほとんど使えません。

即ち、有機質では、燃えてしまい、色が出ませんので、無機質な物を、使う必要があり、色の種類に限界が

ある訳です。

焼き物に、色を付ける方法には、以下の四種類の方法があります。

 ① 絵付けによる方法、下又は、上絵付けの方法で、素焼又は、本焼き後に、絵の具で色を付けます。

  ) 下絵の具は、本焼きと同じ温度ですので、色数も少ないです。

  ) 上絵の具は、高くても900℃以下ですので、色数もやや多く成り、鮮やかな色になり易いです。

  ) 転写紙も、絵の具と同じ顔料で、印刷した物です。手書きか、印刷物かの違いだけです。

 ② 釉による色付けです。基本的には、ガラス質に、顔料を添加し、色を作り出し、表面を覆う事に

   なります。ご自分で、釉を調合されている方も、多いと思います。

 ③ 素地(粘土、磁土)に、顔料を混ぜ込み、色を出す方法です。

   素地その物に、混ぜる場合と、作品の表面のみに、色土を塗る方法(化粧掛け)が有ります。

 ④ 自然釉(薪の灰)を利用した、「焼しめ」、藁を巻いた「火襷」、葉をいぶして、表面を黒くする

   方法などが、有ります。

何れにしても、焼き物の色は、他の印刷物などの、色とは、大きく異なります。


 前置きが長くなりましたが、前回の続きを、述べます。

 2) ピンク: 今でこそ、ピンク色は、人気のある色ですが、濃い色が、珍重されていた時代には、

    薄い色のピンク(薄い桃色)は、身分の低い者の、衣装に使われていたそうです。

  ① ピンクのイメージは、「可愛い」「優しい」「女らしさ」「甘い」「若い」「幸せ」「色っぽい」

    などの、良い面と、「子供っぽい」「我がまま」「いやらしい」「意地悪」等の悪い面があります。

  ② ピンクは、刺激が少なく、弱い印象を与えます。その為、幼い子供の肌を連想させたり、花の

    甘い香りを連想させ、「幸福感」に繋がります。

    若い女性の、好きな色のベスト5に、必ず入る色とも、言われています。

  ③ ピンクの語源は、撫子(なでしこ)科の花の色で、淡い赤い色を、指しますが、現在では、濃い

    赤紫や、薔薇色(ばらいろ)をも、指しています。(ピンクの範囲は広がって来ています)

  ④ 我が国では、「ピンク映画」「ピンクサロン」「桃色遊戯」などは、大人の色、女体の色等を

    連想させる、言葉に成っています。

   それ故、ピンクの使い方によっては、上品にも、下品にも成る恐れが、多いですので、注意して使う

   必要があります。

  ⑤ ピンクの顔料には、練り込み用と、下絵付け用の、二種類が有ります。当然用途によって使い分

    ける必要が有ります。

    又、ピンク系の釉も、幾つか市販されていますが、酸化焼成用の物が多く、酸化還元どちらにも

    使用可能の物も有りますので、注意してください、酸化用を還元で焼成すると、透明釉の様に

    発色しません。

 3) 橙色: 赤と黄の中間の色で、その範囲はかなり広いようです。

    「黄色み」が弱く、暗くなると、茶色の一種に成ってしまいます。

   尚、熟れた果物の色として、英語では、果物の名前を、そのままに「オレンジ」色と、しています。

  ① 橙のイメージは、「明るい」「暖かい」「健康的」「楽しい」「親しみ易い」「社交的」などの、

    肯定的なものと、「安っぽい」「低俗」など、否定的に、受け取られる事が有ります。

  ②  橙系の色は、東洋的な色と、見られている様です。西洋では、むしろ茶色系が好まれ、今ひとつ

    人気がない色との事です。

  ③ オレンジ系の釉は、余り見かけませんが、クローム釉で、黄橙色を、発色するそうです。

 4) 茶色:

以下次回に続きます。

    
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陶磁器と色彩 10 (色のイメージ1)

2010-12-24 20:42:22 | 陶磁器と色彩
色に対して持つイメージは、文化、歴史、地域性、更に、宗教によっても、違いが有ります。

色のイメージには、3つの背景があると、言われています。

 ① 人類が体験してきた、歴史的背景

 ② 地域、文化、宗教などに、影響された、文化的背景

 ③ 各個人が体験してきた、個人的背景です。

 それ故、色に対するイメージは、全ての人に、当てはまる訳ではありませんが、或る程度の共通点が、

 見られます。

 ・ 色のイメージは、常に相反するイメージが存在し、より複雑にしています。

   例えば、「黒」は、原始の時代より、「闇」の体験から、「恐ろしい色」と思われて来ました。

   一方、「恐ろしさ」が、強さに変換され、「頼れる者」と、イメージが変化します。

 ・ 頼れる者のイメージは、、その人の身分階級を、表わす様に成ります。

   特に、時の権力者や、聖職者の衣の色で、上下関係を、表わしています。

  (現代でも、聖職者の紫色が、高貴な者を、表わす場合や、柔道の帯の色が、強さを表現しています。)

 前置きが長くなりましたが、色についてのイメージの、本題に入ります。

1) 赤: 明るい、愛情、歓喜などの、肯定的なイメージと、怒り、嫉妬、怖い等の、否定的

   イメージを持っています。興奮は、両方のイメージを、持っています。

 ① 赤色からの連想は、炎と太陽と、血の色です。これは全人類共通の、歴史的体験から来ています。

 ② 赤は又、呪術的(じゅうじゅつてき)な使い方をし、魔よけ(厄除け)や、治療が有ります。

   神社の鳥居は、赤く塗られています。これも「魔よけ」の、意味が有ります。

 ③ お化粧も、顔に赤い色を塗り、「魔よけ」をする事から、始まったと言われています。

   又、大事な局面で、赤い衣装を、身に着ける事が有ります。所謂、勝負服として、使用します。

   これは、自己を鼓舞する事と、適度の緊張感を、作り出す為、赤が適しているからと、言われて

   います。

 ④ 陶磁器で赤い色を使う場合は、下絵や上絵用の、絵の具として使用する場合と、赤い釉として

   使用する場合が有ります。

  ) 赤い絵の具は、主に鉄を成分としますが、金を使う事も有ります。

     絵の具は、濃淡を付けて描く事が出来ますが、なるべく他の色と、混色し無い様にします。

     (色を混ぜ合わせると、或る程度好みの色を、作る事は出来ますが、色の華やかさ「彩度」が

      なくなり、濁った色になり易いです。)

  ) 釉としての赤は、鉄を主成分とする物と、銅を主成分にする物が有ります。

   ・ 鉄系の釉は、鉄赤、陶赤、赤結晶釉などの、名前が付けられています。

     但し、この釉薬の赤い色は、上記の上、下絵の具の赤が、比較的真っ赤(鮮明な赤)であるのに

     対して、赤以外の色(黒、茶、黄など)を含み、鮮やかさに欠けた、赤と成ります。

     勿論、窯の中の、雰囲気によって、赤の色合いも、大きく変化します。
 
   ・ 銅系の赤い色は、「辰砂釉」が代表的な釉薬です。

     銅系の釉を、還元焼成する事により、得られ、やや赤紫的な、色が多いです。

     (但し、辰砂釉は、本物の辰砂では有りません。本物の辰砂は、水銀を含む、硫化鉱物で、

      古くから、我が国でも、産出しています。)

     「織部釉」は、酸化では、緑ですが、強還元で、鮮やかな赤い色に成ります。

  ) 皿や鉢類に、赤い釉を用いるのは、料理を引き立っせるよりも、料理の色を殺してしまう、

      恐れが多いです。花瓶や花瓶などでは、見かけますが、食器類には、不向きと思われます。

      但し、鉢などは、外側に赤い釉を使い、料理を盛る内側に、違う色を塗ると良いでしょう。

      上絵付けなどの、絵の具の赤は、皿や鉢などに、多く使われています。

    ・ 同じ赤と言っても、釉の赤と、絵の具の赤では、受ける感じが大きく異なります。

以下次回に続きます。  
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陶磁器と色彩 9 (光源の種類)

2010-12-23 21:23:32 | 陶磁器と色彩
3) 各光源について

   物の色を、如何に自然に見せる(太陽光と同じ)かは、その光源の「演色性」に、左右されます。

   以下、光源の種類と、色の見え方について、述べます。

  ① 白熱電球: エジソンが発明した、発熱電球は、1910年に、それまで使用していた、炭素系

    のフィラメントから、タングステン製に改良されます。

    タングステンは、融点が高く、温度を上昇させる事が、出来る様になりました。

    その結果、光も白く明るくなり、光量も増えました。但し、太陽光よりも、色温度が低い為、

    赤い色の割合が、多いです。即ち赤系統が多く、青系統が少ないですので、暖色が、生き生きと

    見えます。

    (尚、現在は、タングステンの蒸発を、抑える為に、不活性ガスが、封入されています。又、

     ハロゲン化合物を、封入した、ハロゲンランプも有ります。)

  ② 蛍光ランプ: 内側に蛍光塗料を塗った、細いガラス管に、アルゴンガスと水銀を入れ、管の

    両端の電極に、高電圧を加えた物で、アルゴンガスが放電を始め、次いで水銀が放電します。

    この放電は、紫外線を多量に発生させ、蛍光塗料に当たると、発光します。

   ) 白熱電球の、光のスペクトルが、連続的に変化しているのに対し、蛍光灯は、或る波長を

     特に強く発生させます。その為、色の見え方に差が出て来ます。

     即ち、赤系統が少なく、青系統が多く成りますので、赤がやや「くすんで」見え、涼しい
   
     (冷たい)感じの照明と成ります。

  ③ ナトリウムランプ: 光の色は、オレンジイエローのみですので、物の色を自然に見させる事は、

    不可能です。このランプが使われる理由は、単に、効率が良い為でさす。

  ④ キセノンランプ: 不活性ガスの、キセノンの中で、放電して得られます。

    光の波長も、紫外線から可視光線まで、連続して分布している為、太陽光に近似しています。

    その為、印刷用や、映写用、その他カメラのフラッシュなどに、利用されています。

  ⑤ 水銀ランプ: 水銀ガス中に放電させます。封入圧が高いと、可視光線を多く発生します。

    効率の良い、強い光ですので、広い場所や、競技場などで、多用されています。

  ⑥ LEDランプ: 半導体の、発光ダイオードを利用したランプです。

    1990年代に、青色発光ダイオードが開発され、LEDによる白色光照明が、市販に登場します。

   ) LED素子の帯域は、在来の光源に比べ、ずっと狭く、単一のLEDで、白色光を出す事はできず、

      白色LEDは2色(青と黄の補色)、又は3色(赤、青、緑の光の三原色)の光源を、組み合わせ

      白色にしています。3色の方が、「演色性」が良いのですが、高価な事やエネルギー効率が、
  
      良くありませんので、中々普及しません。

   ) 現在、市場で最も普及している物は、発光効率の高さから、青色LEDと黄色蛍光体を、組み

      合わせた、白色LEDです。 LED自身の青色光と、黄色蛍光体によって、青から黄色に変換

      された、黄色光が混ざる事により、白色光を、作り出しています。

     又、最近では、色の見え方(演色性)を改善する為、黄色蛍光体に、赤色蛍光体を加えた物や、

     黄色蛍光体の代わりに、緑色蛍光体と赤色蛍光体を、用いた白色LEDも実用化されています。

   ) 白色LEDでは、発光成分のほぼ全てが、可視光領域であり、紫外や赤外領域には無視できる

      程しか、発光していない為、電力の変換効率は、最大で34%と蛍光管の25%、白熱電球の10%と

      比べて効率が、かなり良いです。

 尚、光源のスペクトル以外に、光源の数や、面積(蛍光灯は線状、又は面状)によっても、見え方は、

 変化します。点光源では、陰が出や易く、「メリハリ」がついて見えます。蛍光灯では、部屋は明るいの

 ですが、陰影が不明確に成り、「まぶしさ」も発生しません。

次回は、各色についてお話します。

 光源の種類 
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陶磁器と色彩 8 (色彩と照明) 

2010-12-22 22:03:15 | 陶磁器と色彩
物の色は、その時に使っている、光源によって、非常に違って見えます。

それ故、色彩を、お話すしする際には、光源の事を抜きで論じる事は、出来ません。

一般に、色が正しく認識されるのは、太陽光線の基で、見る場合です。我々は、常に太陽光を、基準として

色を評価する事を、習慣にしています。

現在では、あらゆる場所で、人工照明が使われ、その基で、生活していますので、その影響でどの様に、

色彩が見えるかを、考える必要が有ります。

 1) 人工光源の種類

    夜は勿論、太陽光が届かない、家の中では、明かりが必要に成ります。

   ① 人類が、最初に手にしたのは、火を使う事です。

     木を松明(たいまつ)の様に、燃やして明かりとしました。その後、植物油(菜種油など)、

     動物油(ろうそく等)を使い、明かりを、取る様に成ります。この時代は、かなり長く続いて

     いました。130年程前までは、この方法でしかありませんでした。

   ② 近世に成ると、石油ランプや、ガス灯が登場します。

     電気エネギルギーを、利用した明かりに、アーク灯が有りますが、欠点が多く、余り利用され

     ませんでした。

   ③ 1879年に、エジソンが発明した、白熱電球によって、現在の照明文化が、発展します。

    火を使った明かりから、白熱電球までの明かりは、全て、熱を伴った、発光現象です。

    (太陽光線も、熱を伴う、光です。)

   ④ 熱源を伴わない照明には、「蛍光灯」が有ります。

    これは、放電を利用した、放電燈の一種で、水銀ランプなども、この種類に入ります。

    近頃は、LED照明が、多くなってきています。半導体(発光ダイオード)ですので、寿命が長く、

    エネルギー効率が良いので、「省エネ」と言われていますが、まだまだ高価ですので、これから

    普及する照明です。

 2) 色温度

   昔は、窯の内部の温度を、測定する方法は、色を見て判断しました。

   物の温度が上がると、その物から、光が発生します。この現象を、「温度放射」と言います。

   温度を上昇するに従い、波長の長い物(赤)から、波長の短い成分(青)が、多く成ります。

  ① 光の色は、次の様に変化します。

    (色温度が低い) 暗赤、赤、橙、黄、白、青白 (色温度が高い)

  ② 色温度と人間の温度感覚

   ) 色温度が5000K、以上ですと涼しく感じられます。
   
   ) 色温度が3000K、以下ですと、暖かく感じます。

   ) その中間の色温度では、暖かさや涼しさは、感じられません。

    注) Kの単位は、「ケルビン」で、0Kは、-273℃です。

       太陽の色温度は、6500Kと言われています。

       但しこの温度は、太陽その物の温度ではなく、地球上の昼間の光の色温度です。

 3) 各光源について

    物の色を、如何に自然に見せる(太陽光と同じ)かは、その光源の「演色性」に、左右されます。

 以下次回に続きます。

  色彩と照明
  
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陶磁器と色彩 7 (配色)

2010-12-21 21:39:24 | 陶磁器と色彩
前回までは、一つの色に関して、お話して来ましたが、幾つかの色を、組み合わせてた、物が多いです。

その基本的な配色について、お話致します。

1) 同時対比

  対比とは、ある色が、単体である場合と、複数の色と同時に存在する場合、違って見える事が有り

  ます。即ち、他の色の影響を受けた、結果です。この現象を、「色の対比」と言います。

  ① 色相対比: ある「色み」が、回りの色に影響され、周りの色に少近づいて見える、現象です。

  ② 明度対比: 隣り合う色の影響で、色の明るさが、変わった様に見える現象です。

    例えば、同じ灰色の紙を、黒い紙の上に置いた場合と、白い紙の上に置いた場合にでは、灰色の

    明暗さが違って見えます。黒い紙の上では、白っぽく、白い紙では黒っぽく見えます。

  ③ 彩度対比: 回りの色が、鮮やかな場合には、中の色は、鈍く見え、回りが鈍い色の場合には、

    鮮やかに、見える現象です。

  ④ 補色対比: 二つの色を、混ぜ合わせると、無彩色(グレー、黒)に成る色を、お互いに補色と

    言います。代表的な補色は、赤と緑、青と黄です。

    補色関係にある色を、配色すると、お互いの色を、引き立てる効果があります。

    一般に、「メリハリ」の有る配色と成り、「インパクト」が出て、看板や広告に効果的で、多く

    使われています。

  ⑤ 縁辺対比: 色と色が隣合う場合、その境目に現れる現象です。

    例: 四角い黒枡を間隔を開けて、白い紙の上に、並べた時にその境目に、灰色の丸い点が、
      
      現れて見えます。その他、境目に凹凸が出た様に、見える場合も有ります。

 2) 継時対比: ある色を見た後、違う色を見ると、最初に見た色の影響で、本来の色と、違って見える

    現象です。

 3) 同化: 対比とは逆に、色がお互いに溶け込み、近づいて見える現象です。

    対比と同様に、「色相の同化」「明度の同化」「彩度の同化」が有ります。

 4) 良く見える配色: 視認性、可読性、明視性があります。

    これらは、単に、その色だけでなく、背景の色や、照明の条件、見る距離や、環境によって、

    左右されます。

   ① 「視認性」とは、「見やすい」と言う事です。見るべき色と、背景の「明度差」が、重要な点と

     成ります。その他、照明が明るい事、距離も離れ過ぎない事も、影響します。

   ② 「可読性」とは、文字や数字等の、読み易さの事で、「明視性」とは、模様やマーク等の形が、

     見易い事をい言います。

     何れも、文字や図などの色と、背景と成る「地」の色との関係で決まり、明度差が大きい方が、

     明瞭に成ります。又、効果的にするには、無彩色の「地」に、有彩色で文字や図を、描いた方が

     良い様です。

  ③ リープマン効果: 明度差の無い、2色を配色すると、(例え、補色のか関係に有る色でも)

    境目が「ぼやけ」、「ギラツキ」が生じて、見ずらく成る現象です。

    この現象を、抑えるには、明度差を大きくするか、二色の間に、別の色を挟む事です。

    この間に挟む色を、「セパレーションカラー」と言います。

 5) 面積効果

    色を選ぶ場合、小さな、サンプルの色見本を見て、決る事が有ります。

    (例えば、部屋の壁紙を選ぶ場合などです。)

    見本色を、実際に使用して見ると、最初の感じと、かなり違った印象を、受ける事が、多いです。

    その原因は、同じ色でも、面積が広くなると、「明るく華やか」に、感じるからです。

    この現象を、面積効果と、呼んでいます。

次回は、「色彩と照明」について、述べます。

配色
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