わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

騙しのテクニック14 古さを知る3(科学的方法3)

2014-06-30 19:37:49 | 騙しのテクニック
5) C-14法、TL法、以外の機器を用いた方法。(前回の続きです。)

 ② 中性子放射化分析法(NAA法)。

  焼き物の胎土を構成する元素の分析から、その産地を特定する事が出来る方法です。

  微量成分の分析法として優れている為、良く利用されている方法です。

  昔は、各地の窯場で生産される焼き物は、その土地の土(磁土)を使いました。各地の土は、

  同じような成分であっても、微量な成分構成に差があります。その違いを検出する方法です。

  ) 原理。

   a) 安定している元素の原子核に、加速器や原子炉で作られた中性子を衝突させます。

    中性子を原子核に吸収させて、不安定な原子核にする事を「放射化」と言います。

   b) この不安定な原子核は、崩壊(放射性壊変)をして、再び安定な核に変わります。

   c) 放射性核種が壊変し、原子核数が半分になるのに要する時間は常に一定であり、

     これを半減期と呼びます。

     注: 放射性核種とは、自然に放射線を放出して崩壊し、他の原子核に変わる原子核の

      事です。自然界に存在する天然放射性核種(ウラン等)と、人工放射性核種とがあり

      ます。

     半減期は核種に固有であり、また壊変に伴って放出される放射線のエネルギーも核種に

     固有になっています。

    d) それ故、半減期と放射線のエネルギーを測定する事により、核種(元素の種類)が

     判り、更に放射線の強度を測定する事により、核種の量(原子核の個数)を決める事

     ができます。

  ) 放射化分析法における利点。

   a) 試料の形状に制約がなく,少量の試料で多元素を同時に分析する事が可能です。

     特に焼き物に於いては、胎土の構成元素の比率や、微量元素の測定が可能になります。

     胎土の微量元素の量を詳細に比較できる事で、胎土の産地が特定できます。

   b) 化学操作を行わないので、不純物の混入の恐れが少ないです。

   c) 試料を破壊せずに分析でき、試料の化学組成の高感度分析を行うことができます。

  ) 放射化分析法の利用例。

    「古九谷」が加賀の九谷で作られた物か、肥前の有田で作られた物かの論争が長く続いて

    いましたが、この分析方法から「有田産」と判明しました。

 ③ 紫外線照射法(BL法)。

  塗料を使った共色直しの贋作は多発しており、数年たっても変色しない塗料も登場してきて

  います。それを見抜くのも容易ではないとの事です。紫外線照射法は暗い場所で、ブラック

  ライト(近紫外線)を当てると言う、簡単な方法で見破る事が出来ます。

  ) 原理。

   一般に塗料には、蛍光物質が含まれています。暗所で紫外線を当てると、塗料を塗った部分は

   白っぽく発光します。

  ) 紫外線は「近紫外線」と呼ばれる、可視光線と紫外線の中間の波長ですので、人の眼には

    無害との事です。

  ) ブラックライト(BL)の光自体は、人間の目にほとんど見えません。

    BLを当てた物体はその中の蛍光体だけが発光するため、非破壊検査に使われるます。

  ) 但し、最近では、蛍光体の入っていない塗料もありますので、これには使えません。

  ) このライトは容易に入手が出来ます。電球型と蛍光灯タイプがあり、千数百円~一万円

    程度の価格です。

6) 古陶磁に測定機器を使う事に付いて。

 ① 上記の検査で使う機器は、個人で持てる物と、持てない物があります。

   規模の大きい物や、自分では検査できず、専門家に依頼する事が多いです。

   各大学や研究機関が保有する特殊の機械です。それ故、誰でも簡単に検査に掛ける事は出来

   ません。

 ② 重要な部分は人間が担当しています。

  試料の採取と選定、機器の操作、データの収集と解析など人手に頼っています。

  最終的な決定は、人間が行う事に成ります。

 ③ 現在の機器には、風化の具合や古色の様子を読み取る事さえ出来る、機器も登場しているとの

  事です。

以下次回に続きます。
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騙しのテクニック13 古さを知る2(科学的方法2)

2014-06-29 16:18:26 | 騙しのテクニック
3) 熱ルミネッセンス法(TL法)

 C-14法が放射性炭素を測定するのに対し、TL法は無機物の鉱物を試料にする測定方法です。

 陶磁器は当然、石英や長石などを多量に含みますので、直接年代が測定できます。

 ① 原理。

  ) 石英や長石、蛍石など自然界にある鉱物は、天然に存在する放射線(天然ラジウム、

   ウラン、宇宙線など)の影響で、電子エネルギーを蓄えています。

  ) 自然の鉱物は加熱すると蛍光を発します。特に蛍石は顕著です。

   これを「熱ルミネッセンス(加熱発光)」と言います。

  ) 但し500℃以上に加熱すると、蓄えらえたエネルギーは発散され、発光が止まります。

    しかし、加熱温度が下がると、自然界の影響で再びエネルギーが蓄積始めます。

    即ち、500℃以上で蓄積がリセットされる訳です。

 ② 焼き物への利用。

  ) 焼き物は必ず500℃以上で焼かれています。それ故、リセット後のエネルギーの蓄積

   度合いによって、数百年~数千年前に焼かれた事が判明します。

   リセット後のヘネルギー量は、500℃以上で再加熱し、出てきた光の強度を測定して行い

   ます。実際には、蓄積された放射線量を光の強度から計算し、現地での推定年間放射線量で

   割る事により、加熱されてからの時間が解かります。

   但し、その焼き物が屋外又は、屋内にあったかによって、自然から受ける放射線の量が変化

   しますので、その保管場所や発掘状態によって、数十年の誤差が生じるといわれています。

    注: 福島の原子力発電所の事故で、屋内と屋外では被爆量に差がある事は、自明な事です

      同様の事が言える訳です。

  ) この測定方法では、現代の作品から古い時代の作品まで判別できます。

    又、前回お話した「C-14法」の測定方法と併用できれば、より正確な時代が特定されます。

  ) この測定方法の成功例として、長石成分を測定した結果、新潟県六日町の須恵器の出土

    品が、大阪府堺市の陶邑古窯群で焼成された事が判明し、その伝播ルートも特定できた

    そうです。

  ) 熱ルミネッセンス法を逆手に取った贋作。

    この方法は絶対的なものではありません。贋作に予め人工的にⅩ線を照射し、検査を誤魔

    化した事例も報告されています。

4)  光ルミネッセンス(OSL)法

   鉱物結晶に光を照射した時に、波長の異なる光が放出されることを利用して年代を測定する

   方法です。焼き物や堆積物に普通に含有される石英や長石結晶から、放出される光を測定し

   ます。 実際の年代測定の手法は、上記TL法と同じですが、試料の採取時にできるだけ日光

   などの光を受けないようにする必要があります。

   この方法では、鉱物結晶が光を受けなくなってからの年数がわかるので、地中にあった発掘品や、

   土壌をはじめ、各種堆積物の直接的な年代測が可能です。

5) 上記以外の機器を用いた方法。

  古陶磁では何処で作られた物であるかが、判明する事で贋作を見破る事が可能になります。

  昔は土の有る処に窯を築き、当地の土を使っていますので、名前と土が一致して当然です。

  しかし、しばしば名前と産地が一致しない場合、「材料の元素分析法」を用いると陶磁器の

  生産地を知る事ができます。「材料の元素分析法」には以下の方法があります。

 ①  蛍光X線分析法(XPF法)

  ) 原理。

    試料にX線を当てると、原子中の電子が飛び出します。その空いた部分に外側の電子が入り

    ます。その時その元素特有のエネルギーのX線が放出されます。

    注: 原子核を中心に電子が複数の軌道を周回しています。軌道には定まった数の電子が

      存在し、抜けた穴にはその外側の軌道上にある電子が、入り込みます。

  ) 陶磁器の場合、胎土や釉の構成元素を分析する事ができます。

    特に胎土の分析から、何処の土(産地)かが判ります。

  ) この方法が注目される様になったのは、加藤唐九郎氏が関係したとする「永仁の壷」

    事件によります。

     注: 「永仁の壷事件」とは、1959年重要文化財に指定された、鎌倉時代の古陶が、

      「蛍光X線分析法」によって現代の材料(特に灰釉)である事が判明し、1961年重文の

      指定が取り消された事件です。

 ② 中性子放射化分析法(NAA法)。

以下次回に続きます。
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騙しのテクニック12 古さを知る1(科学的方法1)

2014-06-28 16:15:47 | 騙しのテクニック
古陶磁器を扱う場合、当然、何時ごろ何処で作られたかが問題になります。

鑑定家は、器形や文様の様式、土の種類更には、制作方法の違いや焼きの違いなど、ご自分の経験

から割り出して、判断しているのが普通です。(これらに付いては、順次お話しする予定です。)

しかし、考古学など学術的に研究する場合、客観的なデータとして、科学的方法が取られています。

特に近年、測定器を用いてある程度の制作年代が特定出来る様になり、従来の経験による技法と

あいまって、より古さを正確に(但し誤差はあります)知る事が出来る様になりました。

以下、科学的方法についてお話します。

1) C-14法(放射性炭素法)

   Cは炭素(カーボン)の原子記号です。数字は原子量(重さ)を表します。

 ① 原理

  ) 空気中には炭酸ガスが含まれます。(炭酸ガスは炭素と酸素の結合物です。=CO2)

   炭素にはC-12と、極僅かのC-14(放射性炭素)が一定量存在しています。

   植物は光合成により炭素を吸収し、動物は餌や呼吸と共に体内に取り入れいます。

  ) 生物(有機物)が死ぬ事で、この吸収は停止しますが、C-14は原子崩壊を起こし徐々に

    減少して行きます。C-14の半減期(半分になる期間)は5730年で、規則的に減少します。

    尚、C-12は減少しません。

  ) C-14とC-12の量の比率から、その生命体が何時死んだのかが解かります。

    生命体には、植物や動物の骨、植物や動物から作られた繊維、衣類、麦や米などの炭化物

    (こげ、燃え残り)、植物から採取した物漆、貝殻などが含まれます。

 ②  C-14法の応用。

   陶磁器は有機物ではありません(無機物です)ので、炭素を含みません。それ故直接測定する

   事は出来ません。但し、土器などの場合には、使用時の「こげ」や「吹きこぼれ」など有機物

   が付着してうる場合には、直接測定可能です。

   実際には、以下の間接的な方法で測定しています。

  ) 古陶磁器と共に出土した有機物から推定する。

   a) 発掘品は、ゴミ捨て場(物原、貝塚など)から見つかる事も多いです。そこには、獣や魚

    の骨、木製の日用品の木片、貝殻なども見つかります。同じ地層から出土したこれらから、

    年代が測定されます。

   b) 縄文や弥生式住居跡から、当時使用していた土器などが出土する事は、稀ではありません

     木の実や穀物などの貯蔵用の壷などには、その名残がある場合あります。煮炊き用に

     使われた土器にも有機物の残渣(ざんさ)がある場合、これらも利用できます。

  ) 古陶磁器に添えてある箱、布類から推定する。

    大切に保管されている陶磁器は、布に包まれ、箱に入っているのが普通です。

    箱には書付の紙がある場合もあり、紐もあります。これら植物由来の炭素から年代が推定

    されます。

2) AMS法(加速器質量分析)

  近年、微量の炭素の試料で測定される方法が用いられています。

  従来のC-14法では2~3gの試料が必要でしたが、その千分の一以下の1mg程度で測定可能の

  方法です。しかも一時間と短時間で測定できるのが強みです。

  但し、試料が微量である為、他の影響を受け易いとの事です。又、炭素の無い場合には利用

  出来ません。

  近年、この測定法を用いた結果、弥生時代の始めが定説より、500年さかのぼる(古い)

  事が判明しました。

3) 熱ルミネッセンス法(TL法)

 以下次回に続きます。
  
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騙しのテクニック11 擦(スリ)切 

2014-06-27 21:43:48 | 騙しのテクニック
一見完品に見える物が、実は大きな傷物である事があります。

擦り切りとは、割れ等の大きな傷がある焼き物の悪い部分を切り取り、補修を施し全く別の完品に

仕上げる騙し(贋作)の技法です。口縁の小さな欠けであれば、その部分を補修する方が得策です。

擦り切を行う元の作品は、この手間隙を掛けても良い程の価値のある作品でなければ成りません。

欠陥を除去する事で、より商品価値を上げる事ができます。

但し、大切な物を作り直して再び使うと言うのであれば、必ずしも問題に成る訳ではあります。

尚、擦り切の技法を施した物は、本来の形ではありませんが、胎土、釉や文様、焼きは本物ですので

完全な贋作とは言えない面もあります。

1) 無釉の作品に多い傾向です。

 ① 切り取った部分は当然釉が掛かっていません。それ故、施釉陶器では切り取った事は一目瞭然

  ですので、切り取り部には何かの処置を施し、カムフラージする必要があります。

   カムフラージュとは: 漆を塗ったり、共色の付いた接着剤を塗るなどの方法もあります。 

  ・ 磁器の場合は、切り取った部分を丁寧に仕上げると、施釉された様に見えます。

 ② 土器や焼締め陶器であれば、無釉ですので擦り切った部分も目立つ事は有りません。

 ③ 擦り切の技法を施した物は、施釉陶磁器の作品にも多く存在します。

2) 擦り切の方法。

 ① 口縁や頸(くび)の部分が破損して欠けた場合、欠けた部分の最下段で切り取るのが一般的

   です。多くの場合は水平に切り取りますが、形に応じて切り方を変化する場合があります。

 ② 土器などの軟陶であれば、糸鋸(いとのこ)で容易に切り取り、紙やすりで切り口を磨き

   上げれば完成に成ります。

 ③ 高温で焼成した作品は、胎土が焼締まっている為、任意の場所を容易には切り離す事は、

   結構難しいです。「ダイヤモンドやすり」や「グラインダー」等を使うとより容易ですが、

   やり方によっては、必要以上に割れ部を広げる危険性もあります。

3) 擦り切の例

 ① 把手の付いた水差し(水注)の注ぎ口や把手部分が大きく破損した場合、徳利に仕上げる。

  ) 注ぎ口を本体根元部分より切り離します。把手は上下二箇所で本体に取り付けられて

    いますがこの二箇所を切り離します。

  ) 注ぎ口は本体に孔があきますので、埋める必要があり、把手部分は孔が有りませんので

     切り口を綺麗に仕上げれば良いです。

     注: 「孔」は貫通したあなで、「穴」は行き止まりの有るあなを意味します。

  ) 施釉陶磁器であれば、補修後、釉を掛けて二度焼きします。

 ② 大きな鉢の上部(口縁部)を擦切し、手頃の抹茶々碗に仕上げる。

  好みの位置で擦切し、切口部は共色で施釉したり、覆輪を掛けたりします。

  ・ 著名な茶碗に「十文字井戸」(三井文庫蔵)があります。これは古田織部が大き過ぎる

    大井戸茶碗を縦横十文字に挽き切、寸詰めしたものです。

 ③ 徳利の銅から上を切り取り、下部を塩笥(しおげ)形茶碗や、鉄鉢形茶碗にする場合があり

   ます。

  ・ 国の重要文化財の三島芋頭(いもがしら)の水指も、大徳利の下半分と見なされています。

 ④ 瓢箪形の瓶のくびれ部で擦り切、下部を壷とした作品もあります。

   李朝の口縁部に釉の無い物が多く有るそうですが、その中の幾つかは擦り切と思われています

 ⑤ 茶碗の高台部を擦り切、別の高台を接着した物も見つかっています。

   その他、壊れた耳を擦り切、耳無しの壷に仕上げる。片口の上部を擦り切、茶碗に仕上げる。

4) 擦り切を見破る。

 ① 口縁部の釉の状態や、曲面に不自然さは無いか。

 ② 凹み部の上下の繋がりに違和感は無いか。

 ③ 見込み部の発色と外側の発色に大きな違いが無いか。

   見込み部に釉の掛け外しがあれば、袋物(壷、徳利類)の擦り切の可能性があります。

 以下次回に続きます。
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騙しのテクニック10 二度焼き 4

2014-06-26 20:34:10 | 騙しのテクニック
前にもお話した様に、再焼成で後赤絵以外では、全面的に釉を熔かし直しますので、上手に焼けば、

風化や古色は全て無くなります。但し、胎土、造形、釉、文様はそのまま本物ですので、見慣れない

人では、二度焼きを見破る事は困難と言われています。

二度焼きされる作品は、温度が上昇せずに焼き損じた発掘品や、焼成中に大きな割れや傷付いた

作品群、物原(ゴミ捨て場)からの発掘品などであり完品はありません。そのままでは、ほとんど

価値がありませんので、二度焼きや補修によって、商品価値を高める事が出来ます。

6) 二度焼きのまとめ。

  二度焼きの特徴には以下のものがあります。

 ① 「カセ」や「染み」が無く、釉に光沢があり、真新しい感じになります。

   又、表面に「摩れ」や「擦り傷」も全く見られません。

   但し、この状態では新作と見られますので、人工的な古色が着けられています。

   それ故、人工的な古色付けを見破る必要もあります。

 ② 釉に「ニュウ(ひび)」が無く、その下の胎土に細い「ニュウ」が見える。

   但し、「窯傷」と呼ばれる、焼成前や素焼中に発生した傷の場合にも、同様な現象が起こり

   ます。両方の「ニュウ」を比べると、前者の場合が直線的なのに対し、後者はやや蛇行して

   いる場合があります。又、窯傷の場合には、軟らかい内に出来た為、底割れや欠けた部分が

   「スパット」綺麗に成っていない場合が多いですので、傷の状態で判断できる事も多いです。

 ③ 「欠け」や「ホツ」の周囲の全体が、熔けた釉で丸味を帯び、鋭利な角部分が出ていません。

 ④ 釉が黒ずみ、汚れた感じがします。これは、元の作品が不燃性の物質が残っていたからです。

   更に、複数個の大小の泡状の突起が、表出する場合があります。

 ⑤ 後絵では、現代人が好む兎(うさぎ)、水鳥、魚、桜、家、人物、舟などの文様が多いです。

 ⑥ 後絵の絵付けが「ぎこちなく」熟練した職人が描いた感じがなく、当時の絵付けと微妙に

   雰囲気が異なります。

 ⑦ 自然にこびりついた土銹(どしゅう)が無い。特に貫入に入り込んだ土銹や釉の表面に半透明

   状の薄い幕の土銹も無く、綺麗な状態の物は、二度焼きと思って間違い無い様です。

 ⑧ 二度焼きの場合、新たに釉を補充する場合と、補充しない方法があります。

   補充すると、オリジナルの釉と同じ成分にする必要がありますので、一般には補充しない事が

   多いです。補充しない場合、二度焼きの際、釉が若干素地(特に陶器の場合)に吸収される為

   透明釉がやや褐色になる場合があります。又、陶器の場合は「ニュウ」がより大きく広がり

   まので、「ニュウ」が埋まる事はありません。「ニュウ」を隠す為には、釉を追加しています。

 ⑨ 上絵付けの作品の再燃焼(二度焼き)は、磁器の作品がほとんどです。それ故、貫入も少なく

   比較的古色や汚れは付き難いですので、昔の絵の具を使い、絵柄も当時の模様を使った場合、

   上絵を追加しても、ほとんど見破る事は困難との事です。

   注: 当ブログでは、「二度焼き」を再焼成の意味で使っています。本来この言葉は、上絵付

    けの際の錦窯で焼成する事を指す言葉との事ですので、当ブログの上絵の「二度焼き」

    は「三度焼き」が正式な言葉となります。

以下次回に続きます。
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騙しのテクニック9 二度焼き 3

2014-06-25 17:39:30 | 騙しのテクニック
5) 後絵後の二度焼き。

 ③ 無地の古陶磁に後染付けする。

  釉面に染付け用の絵の具(コバルト、呉須)で、絵を描き高温で再焼成すると、以下の様に

  成ります。

  ) 釉が熔けますので、釉の上に描いた絵が、若干流れると考えられますが、ほとんど流れる

    事は無い場合もある様です。但し、釉の流れ易さや、再焼成温度によっては、若干流れ、

    絵が滲む場合もあります。

  ) 筆で描いた絵は、釉の下に描いた通りに定着し、釉も絵の上を完全に覆います。

  ) 釉は艶(つや)や透明感が増します。

  ) 「カセ」や「貫入」に着いた汚れが可燃性の場合は、綺麗に無くなりますが、非可燃性の

    汚れは釉に取り込まれ、釉を汚す事に成ります。

  ) 陶器の「ニュウ」は再焼成で、広がり太くなる事が多いですが、磁器の場合には陶器程

    の変化はありません。

   ) こびり付いた土銹(どしょう)は無くなる場合が多いです。

 ④ 後色絵、後赤絵、後金彩に付いて。

  ) 無地や古染付けの陶磁器、又は上絵や金彩が薄くなったり、絵が剥落してしまった物を、

   商品価値を高める為に、後絵で赤絵(色絵)を施し、色絵窯(錦窯)を使い800℃程度の温度で

   再度焼成する方法です。尚、後で述べる様に、窯に入れずに後絵を施す方法もあります。

  ) 後絵の技法その物は、通常の上絵付けと同様ですので、困難でありません。

   但し、焼き物が焼かれた当時と同じ色調の絵の具が手に入る事と、描かれている絵の具と同じ

   絵の具が調合できる事、更には、同じ描き方(描き振り)が出来るかが難問に成ります。

   a) 白磁皿に柿右衛門様式の後絵施した偽の作品が、多く出回っている様です。

    図柄も柿右衛門様式で描かれていますが、色調や描写方法もオリジナルとは異なる様で、

    目の肥えた人には、後絵と解かるそうです。

   b) 染付けのみの磁器に、部分的に色絵で後絵を施した作品も多く存在しています。

    これらの作品では、染付けのみで絵が完成している為、後絵が邪魔になっている場合が多く

    構図的にも、不自然さが出るとの事です。(後絵が蛇足になっている)

   c) 本体が作られた時代と、絵柄が一致しない物もある。

    白磁の壷や大徳利などに、元禄美人を描がいてある物があるそうですが、壷や徳利の作ら

    れた時代(様式から判断する)と元禄美人がが流行した時代に「ズレ」があり不自然です。

  ) 窯に入れない方法。

   a) 「焼継ぎ」の方法。

    幕末から昭和初期まで盛んに行われていた方法で、現在ではほとんど見る事がなくなった

    方法です。「ニュウや割れ」などの傷を、低い温度で熔着する方法で、最も強力な接着

    方法と言われています。主に、大切な食器類の補修に使われ、茶陶器の直しには使われて

    いないとの事です。この方法で、後色絵を焼き付けます。

    後色絵の上に、白玉粉(鉛ガラスの粉、楽焼用の釉に使用)を置き、ガスバーナー等で

    加熱し焼き付けます。新たなガラス部分が盛り上がったり、上絵に泡が生じ易く、色調も

    異なる為、真作とは大きく異なります。

   b) 硬質ワックスを用いた後上絵付け。

    色絵の中で、本物の緑、黄、紫、藍色は、ガラス質で盛り上がった感じになっています。

    熔した硬質ワックスに絵の具を混ぜ、垂らす様にして作品に落として行きます。筆塗り

    同様の曲線も描く事が出来、色調や透明感や盛り上がり感も自然に見えます。

    更に、薄く塗る事で赤や黒などの色や、汚れや黒ずみ等の古色を付ける事も可能です。

    硬度も強く、爪で押しても凹む事はありません。

    ・ タイ、インドネシア、中国南部などの東南アジアを中心に、安南赤絵、呉須赤絵、

     明朝赤絵などの作品に多く見られるものです。

   c) 塗料を用いて色絵を描く。

     最も簡便な方法ですが、その場限りの誤魔化した物です。

     強い接着力は無く、布で強く拭いたり、爪で擦ると剥がれます。

     使われる色は、赤、黒、金など盛り上がりの無い平たい線が多いです。

以下次回に続きます。
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騙しのテクニック8 二度焼き 2

2014-06-24 17:51:36 | 騙しのテクニック
4) 二度焼き(二度窯、再焼成)に付いて。

 ④ 二度焼きを見分ける。

  二度焼きされた作品かどうかは、見極めが難しいと言われています。

  基本的には、新しく作られた陶磁器と同様になりますので、古さは無くなり、欠点も少なく

  なります。そこで、二度焼きした作品には、人工的に古色を付ける場合があります。

  次の状態の作品は、二度焼きの疑いがあります。(あくまでも疑いです。)

  ) 「ホツ」(ちいさな欠け)が、釉で埋められている。

    再焼成する事で、釉は液化する事になり、小さな「ホツ」も周囲の釉が流れ込む事になり

    ます。

  ) 「欠け」の角部が釉で丸味を帯びている。

     「欠け」の断面に施釉すれば、断面にも釉が掛かりますので、その様な事はしません。

     すれば直ぐに二度焼きが「バレ」て仕舞うからです。

  ) 細い「ニュウ」(ひび)が釉の下に見える。
   
    「ニュウ」の隙間にも釉は流れ落ちてきます。その為、釉の下に「ニュウ」が入る事に

     なります。最初の焼成後に「ニュウ」が出来たのならば釉の下にはありません。

  ) 虫食い(釉のみが剥がれている状態)の縁に丸味が認められる。

  ) 釉の表面に気泡状の「ブツブツ」が、噴き出している。

    風化によって出来たと思われる、釉下の空洞に空気が入り込み、再焼成の際膨張して、

    釉を持ち上げた結果です。

  ) 煙状の染み(しみ)が釉の裏や表面に現れている。

    貫入などの汚れが、消失する事なく残る場合、その汚れは釉の中に薄く拡散します。

    その為、染みが発生します。

  ) 磁器の再焼成では、釉の表面が不安定になり、所々は艶(つや)が出、他の部分では

   「ザラツキ」が出る場合があります。

5) 後絵後の二度焼き。

  無地の陶磁器に、鉄絵や染付け、赤絵(色絵)を施す場合や、絵のある陶磁器に更に絵を追加

  する方法があります。絵付け後に焼成する事で、商品価値を高める騙しの方法です。

 ① 無地の陶器に鉄絵を施し、再焼成する。

  ) 筆を使い、鬼板や弁柄で器に絵を描いていきます。一度焼成された作品の上に絵を付ける

   には、絵の具が載る様に、前準備(処理)が必要になります。但し、釉に風化によ「カセ」が

   有る場合には、処理する必要が無い場合も多いです。

  ) 絵柄は自由に選べますが、当時描かれていた物や、時代に関係ない草花文様が多い様です

  ) 再焼成(二度焼き)する事で以下の状態に成ります。

   a) 釉は自然な艶(つや)が出て、風化による「カセ」も消えてしまいます。

   b) 鉄絵の部分は、下絵付けした場合と同様に、釉の中に取り込まれ、不自然さは感じられ

     ないとの事です。

   c) 「ホツ」や「欠け」の状態は、上記の場合と同じです。

 ② 鉄絵の作品に鉄絵を追加して、再焼成。

  ) オリジナルの絵と追加した絵の筆使いに差があれば、違和感を感じますし、鉄絵の濃度も

    比較検討の対象になります。又、全体の絵の構想が追加した絵の為に、統一感が損なわれ

    ている場合には、当然後絵と見なされ易いです。

  ) 一般に、再焼成ではオリジナルの下絵も、よりはっきりと出現します。それ故、鉄絵の

    みの追加は、意外と難しい技術です。

  ) オリジナルの絵と追加の鉄絵は伴に、釉の下にある様に見えますので、違和感はあり

    ません。釉も艶を取り戻します。

 ③ 無地の陶器に後染付け。

以下次回に続きます。
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騙しのテクニック7 二度焼き 1

2014-06-23 21:55:15 | 騙しのテクニック
4) 二度焼(二度窯、再焼成)に付いて。

  真贋には、全くの贋作と見られる物以外に、半真半贋とも言える作品も存在します。

  即ち、本物を素材にして、まるで本物の様に見せ掛ける技法です。

  半真半贋には、二度焼きの技法と、後絵の技法があります。

 ① 二度焼きとは。

   商品価値の低い作品を再度高温で焼成する事で、欠点(都合の悪い所)を補修し、商品価値を

   高める為に行います。

   素材と成るのは、発掘品が多いです。二度焼きは全て良い方向になる訳ではありません。

   再焼成中に、窯の中で爆発したり、素地中の気泡や水分が膨張し、表面を凸凹させる危険性を

   含んでいます。 しかし、二度焼きは、近年特に多く行われていると言われています。

 ② 二度焼きの目的。

  ) 古陶は前回お話した様に、経年変化により表面が風化し「ガサガサ」とカセた状態に

   成ます。特に長い間地中に埋没していた、発掘品に出る現象です。

   又、釉面が白濁し下絵が不鮮明になったり、褪色(たいしょく)し見栄えも悪くなるのが

   普通です。これらの焼き物は、当然商品価値も低くなります。

   この様な場合、もう一度窯に入れて焼成する事で、釉を熔かし光沢を増す事ができます。

  ) 釉を再度熔かす事で、透明感を増し、染付けなどの下絵も鮮やかに蘇らせる事も可能に

   成ります。

  ) 二度焼きする事で、傷やニュウ(ひび)を目立たなくさせます。

   但し、再焼成する事で、傷やニユウが拡大する恐れも多いです。

  ) 新たな贋作より、本物に近い為、本物に見せる事が可能に成ります。

   即ち、胎土や土見部は本物ですし、造形や釉も真作その物ですので、真作に見せる事が可能に

   なります。

  ) 二度焼きは簡単に出来、手間も掛りません。

   必要な温度まで加熱するだけですので、小型の窯で焼成でき、手間も掛りません。

   但し、基本的には素材と同じ温度で、再焼成する必要があります。但し素材が焼き不足の

   場合には、素材以上の温度で焼く必要があります。

  ) 材料は安価で容易に入手可能との事です。

 ③ 二度焼きの効果。

   必ずしも、下記の効果で出る訳ではありませんが、次の事が起こります。

  ) 完全に以前の艶(つや)を取り戻します。

  ) 若干釉の色が変化する。古陶の焼かれた窯の雰囲気と、再焼成された雰囲気は全く同じ

     では有りません。それ故、釉の色が焼く前と焼いた後では、若干異なる場合が多いです。

  ) 再焼成で、釉が熔けニュウ(ひび)に流れ込み、ニュウの断面が丸味を帯びます。

    同様に「欠け」た部分の断面も、釉により丸みがでます。

  ) 「カセ」ていた表面が熔け、手触りが滑らかになる。

  ) 貫入が無くなる。又は、貫入の表情が変化する。

  ) 白化粧土が薄くなる場合があります。

     刷毛目や粉引きなどの白化粧土が、胎土に吸い込まれる様になり、白い色がくすみ

     白化粧土が薄くかかった状態になる場合があります。

  ) 一般には、汚れは取れる事が多いですが、逆に、汚れが全体に広がる場合があります。

    即ち、塵(ちり)やほこり、手垢(てあか)等の有機物は、高熱で消失し綺麗に無くなり

    ますが、泥(又は土)などが貫入に入り込んでいる場合、燃えずに残り釉に混ざり込んで

    釉を汚す事もあります。

  ・ 以上まとめると、釉面は光沢が出て、より良好になります。釉の色が若干変化します。

   「欠け」やニュウは、窯キズ風になり、断面は丸くなります。更に土銹(どしゅう)や汚れは

   消失します。

 ④ 二度焼きを見分ける。

以下次回に続きます。

  

    

  
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騙しのテクニック6 古色付け 5 

2014-06-22 21:59:38 | 騙しのテクニック
3) 伝世品の経年変化

 ② 伝世品の経年変化の特徴。

  ) 汚れと染み(しみ)について。

    伝世品には必づと言って良い程、染みと貫入の汚れ、地肌や釉面の色付き、場合に

    よっては、雨漏りと呼ばれる汚れ(よごれ)が有ります。但し磁器製品には少なく、陶器

    で多く見られる現象です。

   a) 汚れの種類。

    イ) 茶渋は、湯呑みや抹茶々碗に多く見れれますが、漂白剤などの洗剤を使い、比較的

      容易に、取り除く事が可能です。

    ロ) 油汚れは、油入に使われていた器を、徳利などの容器として使用した場合に起こり

      ます。 この場合、漂白剤では完全に取り除く事は出来ません。例え一時的に匂いが

      消えた様に見えても、お燗(かん)をすると、再び臭う物です。

    ハ) 雨漏り(あまもり)は、不定形の染みで、釉だけでなく胎土を通して表面まで出て

      きた汚れです。特に萩茶碗の様に、砂気を含む胎土や、焼きの甘い作品など吸水性に

      富んだ作品に多く出る現象です。雨漏りは、長く使う事で徐々に現れます。

      雨漏りは「景色」の一部と見なされ、雨漏りの無い粉引きは、つまらない物と言う人も

      います。

      又、白化粧土は胎土より、色が染み易い為、粉引、刷毛目、三島などの作品に染みや

      雨漏りが発生し易いです。

    ニ) 経年変化により、器全体が変色する。

      細かい貫入全体に汚れが入ると、器全体の色が濃くなった様に見えてきます。

  b) 人為的に、汚れや染みを付ける。

     古く見える物が、必ずしも古い物とは限りません。むしろ、古く見える物ほど人為的な

     方法で処理した物で、本当に古い物はそれ程古くは見えない(古さを感じさせない)と

     言われています。

   イ) 濃い紅茶や煎茶の中に一週間も漬けておくだけで、数十年~数百年分の古色を付ける

     事が可能との事です。

   ロ) 茶渋を付ける方法に、透明な漆(うるし)を見込み部や茶巾擦り部に薄っすらと

     塗る方法があります。一般に茶渋は漂白剤で取り除けますが、漆では簡単に除去する

     事は出来ません。

   ニ) 雨漏りを付ける方法は、頻繁に使い込む事です。粉引茶碗などは、三年も使い込めば

      雨漏り状態を作り出せる場合があります。当然、胎土の違い、焼きの甘さ、化粧土の

      濃さと厚みなどによって差がでます。但し三年程度では、表面の化粧土には汚れが浸透

      しますが、胎土までは浸透しない為、自然の雨漏りとは、見た目で異なるそうです。

  c) 古色は、「新古や真偽の決め手」に成りません。

    古色は一般の人が思うほど以上に、簡単に付ける事ができます。

    茶渋などは、濡れた布で拭けば取れ易いですし、貫入の汚れや染みは漂白剤で取り除けます

    自然風化に見せかけるには、紙ヤスリで削ったり、弗化(フッカ)水素などの薬品で

    「カセ」を作り出す事が可能です。その他、煙で燻したり、土を擦り込めたりして、簡単に

    古色を付ける事が出来ます。それ故、古色に惑わされない事です。

4) 二度焼(二度窯、再焼成)に付いて。

以下次回に続きます。
      
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騙しのテクニック5 古色付け 4 

2014-06-21 21:39:55 | 騙しのテクニック
3) 伝世品の経年変化

 ① 発掘品と伝世品では、経年変化に差があります。

 ② 伝世品の経年変化の特徴。

  ) ホツとニュウに付いて。

   a) ホツとは「欠け」の小さな物の事です。ニュウとは「ヒビ」の事です。

    但し、「ニュウ」は釉と胎土の両方に入った「ヒビ」で裏側まで達している状態です。

    古陶磁にはホツとニュウがある物が多く、茶陶では漆などで補修する場合が多いです。

    金継(金直し)も良く行われる補修方法です。

   b) 「欠け」や「ニュウ」などの傷が何時頃出来たかは、「欠け」の断面や「ニュウ」の色の

    濃さなどで判断できます。即ち、「欠け」の周囲の角が丸みを帯びている場合や、胎土が

    黒く変色している場合は、「欠け」てからの時間が長い事になります。

    「ニュウ」の入った部分の色が周囲より濃い場合には、時間が経過している事を表し、

    さほど周囲の色と違いが無く淡い色の場合は、比較的新しいです。

    但し、同時に複数個の「ニュウ」が入った場合でも、「ニュウ」が太い程濃い色になり、

    細い程淡く見えます。

  c) 「時代ニュウ」に付いて。

    長年の使用で加熱冷却を繰り返し、膨張収縮を繰り返した結果、素地内部の応力により、

    「ニュウ」が入る現象です。 唐津、萩、井戸茶碗などに、比較的多く現れます。

    「人工的ニュウ」が直線的で一気に起こったのに対し、蛇行して少しずつ延びた様子が

     伺えます。著名な作品に「小井戸茶碗 銘 六地蔵(泉屋博古館蔵)」や「老僧井戸」

     などがあり、十数本の「ニュウ」が口縁から平行に下に向かって延びていますが、一定の

     所で止まっています。

  d) 人工的に「欠け」を作り、古色付けする場合があります。

    一般に、欠けやニュウがある事は、マイナスに評価されます。しかし実際には以下の事例が

    ある様です。完品の信楽の大壷が中々買い手が付かないので、店主が故意に口縁を欠いて

    店頭に並べたら、直ぐに売れたそうです。

    又、新陶の抹茶々碗の口縁の一部を故意に欠き、漆で接着し金継で補修して古陶に見せ掛

    ける場合もある様です。逆に、無傷の作品に、金継を施しあたかも補修した様に見せかける

    事もあります。 金継前の状態を確認する為、補修部分を取り除いたら、無傷であった事が

    判明した例も有った様です。

    尚、金継が施された著名な抹茶々碗に、重要文化財の楽茶碗 銘「雪峯(せっぽう)」

    畠山美術館蔵、があります。

  e) 人工的に「ニュウ」を付ける。

    「欠け」を作る事は比較的容易ですが、「ニュウ」を作るのは比較的困難な様です。

    但し、先の細い木槌などで、口縁部を連続的に叩くと、徐々にひび(ニュウ)を入れる

    事が可能よ様ですが、磁器では無理のようです。「ニュウ」の断面に古色を付ける為、

    土を擦り込んだり、紅茶などを流し込む場合もある様です。

  f) 「ニュウ」は傷ですが「貫入」と「地貫入」は傷では有りません。

   ・ 貫入(かんにゅう)は、釉層にのみに細かい「ヒビ」 が入る現象です。

    釉と胎土との収縮差が原因で、一般に陶器に見られる現象です。窯出の際にあるもの、

    窯出し後冷える間に発生するもの、長年使用していると自然に発生するものと三種類あり

    ます。

   ・ 「地貫入」とは、数本の長い「ヒビ」が釉の表面を走る現象で、「貫入」が器全体に

    広がるのとは、区別されます。「貫入」が口縁から入るのに対し、「地貫入」釉層が薄い

    口縁部まで延びていない事が多いです。

   ・ いずれも、永い使用で色素が沈着し古陶の味わいを醸し出しています。

     当然、これの効果を狙った、贋作も多いです。

  ) 汚れと染みについて。

以下次回に続きます。

        

    
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