5) 梅花皮(かいらぎ)について
前回 釉の「ちぢれ」に付いて述べましたが、この現象を積極的に評価し、取り入れた物に、
茶道の抹茶々碗、特に井戸茶碗があります。
茶碗の一部分のみ、特に高台際に出します。この「ちぢれ」を梅花皮と言い、珍重します。
・ 梅花皮を、器全体に出す事は、それほど難しい事では無い様ですが、高台際にのみ
出すのは、それなりの工夫が、必要です。
前回述べたように、「ちぢれ」は、素地(土)と釉の収縮に差(釉が多く縮む)がある為に
起こります。
・ 茶碗の腰から下に、梅花皮が出るのは、高台部分と器本体との温度差と、言われていますが、
その信憑性は不明です。
即ち、高台は棚板に接している為、器本体より温度が低く、その温度差が20℃程度
有ると、梅花皮が出来るとの事です。
実際には、以下の方法を取る事が多いです。
① 高台削りの際、削った所のみに、梅花皮を出す方法
目の粗い土を削ると、粒子が起きて「ささくれ」が起こります。
「ささくれ」立つと、釉も均等に載らず、濃淡が出来、厚く塗れた部分の釉が寄り集まり、
周囲の薄い釉が、引っ張られて、梅花皮が出来ると、考えられています。
a) 縮緬皺とは、砂気の多い土や、粒子の粗い土を削ると、削った面が「ささくれ」立ちます。
この面を縮緬皺(ちりめんしわ)と呼びます。特に抹茶々碗の高台際や、高台内に出します。
・ 梅花皮を出すには、縮緬皺を作る事が大事な、要素です。
b) 施釉すると、縮緬皺の、凸凹に釉が入り込みます。焼成すると、土と釉は膨張します。
その際、土と釉の接している所の、バランスが崩れ、部分的に釉の、過不足が生じます。
その結果、釉の多い所には、より釉が集まり、梅花皮状に成ります。
② 梅花皮向きの土を使う。
梅花皮は、土が大きく作用します。それなりの土を見つける事です。
・ ポイントは、砂気の多い土を使う事です。(例、唐津の土)
又、粒子の粗い土を使う事です。
③ 焼成温度に付いて
梅花皮を出すには、1230℃~1250℃位が良いと言われています。
温度が高過ぎても、釉が熔けすぎて、出ないそうです。
④ 釉の長石の種類を換える
長石と土の相性で、出方も変化します。長石の種類や、分量を適宜変化させ、
色々試して下さい。
尚、色々な方(陶芸家など)がそれなりの工夫をし、良い梅花皮を出そうとしていますが、
土の種類、窯の種類、燃料、窯の焚き方、焼成温度、削りの仕方、カンナの種類などによって、
出方が違います。
色々説明はしていますが、参考程度にした方が、無難です。
御自分で、試行錯誤をし、自分なりの方法を見つけて下さい。
陶芸釉薬の失敗と対策
皮かいらぎ 梅花
3) 釉飛びに付いて
焼成中に、作品の一部が小さい片となって、欠けて飛んでしまう場合が有ります。
特に、尖った端や、鋭角的な部分に多く見られる、現象で、釉飛びと言います。
原因は、素地が釉より、大きく縮む為です。
対策
① 釉飛び対策には、素地の収縮を少なくする事です。
a) 素地の素焼温度を高くし、素地を予め収縮させて置く。
b) 素地(はい土)に「シャモット」を入れて、収縮率を少なくする。
又、焼成後、完成した作品が、大きく壊れる事が有ります。
これは、単に収縮の差の問題ではなく、作品の制作中に、何らかの内部歪(ひずみ)が残り、
焼成で高温に曝された為、より歪が大きくなり、なんらかの衝撃で、大きく壊れると、
考えられています。
4) 「ちぢれ」、「虫食い」に付いて
素地よりも釉の方が、大きく縮む場合には、「ちぢれ」、「虫食い」を起します。
「ちぢれ」は、加熱が急速に行われると、素地中の水蒸気が急激に増加し、
釉を浮き上がらせます。 特に低火度の釉に出やすいです。
・ 「ちぢれ」対策には、
a) 素焼温度を高くし、吸水性を少なくする。
b) 施釉で、素地は水を吸います。本焼きは、急激な温度上昇を抑え、蒸気を発散させます。
c) 素地の汚れを、取り除く。
d) ある種の顔料での、下絵付けで、「ちぢれ」が発生します。
ピンク、コバルト、クロムなどの顔料で、厚く描いたり、粘着性が少ない場合に起こります。
顔料に、透明釉や、化学のり「C M C」を添加します。
そして厚く塗らない事で、予防できます。
e) 施釉した際、表面にピンホールが出る場合が有ります。
このまま本焼きすると、ピンホールが大きくなり、「虫食い」を起す事が有ります。
このピンホールは、その周囲を指でなぜ、消します。
又、施釉から窯詰めまでの間に、釉が浮き上がったり、「はげ」たり、薄くなるなどの
問題が起こります。 確認してから、窯詰めをします。
f) 釉の収縮を大きくする原因に、釉の原料を、細かく粉砕し過ぎる事も有ります、
微粉末の方が、均一に綺麗に熔けますが、縮みは大きくなります。
・ 「虫食い」はピンホールよりも、大きく釉が逃げる現象です。
一作品に、複数個の「虫食い」が出来るのが、普通です。
一種類の釉でも起きますが、流動性の違う釉や、縮み率の違う釉を、二重掛けすると、
起き易いです。
・ 対策は、釉に適度の流動性を持たせます。そして、なるべく均一に施釉します。
特に、筆や刷毛で釉を塗ると、釉の厚みが不均一になりがちです。
均一に成る施釉の仕方を、選択して下さい。
a) 流動性が少なく、部分的に厚塗りすると、釉が寄り集まり、その周囲に「虫食い」を起しま。
b) 流動性が大きいと、釉が流れ落ちる際、引っ張られ、部分的に釉が薄くなり、
釉が逃げ、「虫食い」が起こる事も有ります。
尚、 「ちぢれ」や、「虫食い」は、場合によっては、欠点ではなく、景色として珍重される
事も有ります。
今回の記事は、前回の「釉はげ」と重複する所が有りますが、ご了承ください。
陶芸釉薬の失敗と対策
釉飛び ちじれ
焼成中に、作品の一部が小さい片となって、欠けて飛んでしまう場合が有ります。
特に、尖った端や、鋭角的な部分に多く見られる、現象で、釉飛びと言います。
原因は、素地が釉より、大きく縮む為です。
対策
① 釉飛び対策には、素地の収縮を少なくする事です。
a) 素地の素焼温度を高くし、素地を予め収縮させて置く。
b) 素地(はい土)に「シャモット」を入れて、収縮率を少なくする。
又、焼成後、完成した作品が、大きく壊れる事が有ります。
これは、単に収縮の差の問題ではなく、作品の制作中に、何らかの内部歪(ひずみ)が残り、
焼成で高温に曝された為、より歪が大きくなり、なんらかの衝撃で、大きく壊れると、
考えられています。
4) 「ちぢれ」、「虫食い」に付いて
素地よりも釉の方が、大きく縮む場合には、「ちぢれ」、「虫食い」を起します。
「ちぢれ」は、加熱が急速に行われると、素地中の水蒸気が急激に増加し、
釉を浮き上がらせます。 特に低火度の釉に出やすいです。
・ 「ちぢれ」対策には、
a) 素焼温度を高くし、吸水性を少なくする。
b) 施釉で、素地は水を吸います。本焼きは、急激な温度上昇を抑え、蒸気を発散させます。
c) 素地の汚れを、取り除く。
d) ある種の顔料での、下絵付けで、「ちぢれ」が発生します。
ピンク、コバルト、クロムなどの顔料で、厚く描いたり、粘着性が少ない場合に起こります。
顔料に、透明釉や、化学のり「C M C」を添加します。
そして厚く塗らない事で、予防できます。
e) 施釉した際、表面にピンホールが出る場合が有ります。
このまま本焼きすると、ピンホールが大きくなり、「虫食い」を起す事が有ります。
このピンホールは、その周囲を指でなぜ、消します。
又、施釉から窯詰めまでの間に、釉が浮き上がったり、「はげ」たり、薄くなるなどの
問題が起こります。 確認してから、窯詰めをします。
f) 釉の収縮を大きくする原因に、釉の原料を、細かく粉砕し過ぎる事も有ります、
微粉末の方が、均一に綺麗に熔けますが、縮みは大きくなります。
・ 「虫食い」はピンホールよりも、大きく釉が逃げる現象です。
一作品に、複数個の「虫食い」が出来るのが、普通です。
一種類の釉でも起きますが、流動性の違う釉や、縮み率の違う釉を、二重掛けすると、
起き易いです。
・ 対策は、釉に適度の流動性を持たせます。そして、なるべく均一に施釉します。
特に、筆や刷毛で釉を塗ると、釉の厚みが不均一になりがちです。
均一に成る施釉の仕方を、選択して下さい。
a) 流動性が少なく、部分的に厚塗りすると、釉が寄り集まり、その周囲に「虫食い」を起しま。
b) 流動性が大きいと、釉が流れ落ちる際、引っ張られ、部分的に釉が薄くなり、
釉が逃げ、「虫食い」が起こる事も有ります。
尚、 「ちぢれ」や、「虫食い」は、場合によっては、欠点ではなく、景色として珍重される
事も有ります。
今回の記事は、前回の「釉はげ」と重複する所が有りますが、ご了承ください。
陶芸釉薬の失敗と対策
釉飛び ちじれ
1) 良い釉とは?
一般に良い釉と言われる為には、以下の要件を満たす物です。
① 焼成後、作品の表面が平滑で、貫入や気泡が無い事。
(但し、前回説明した、装飾性の有る、貫入釉や亀裂釉を除く)
② 良好な耐久性の有るガラスが、均一に表面を覆う事。
③ 素地と密着し、剥がれず、使用に対しても、十分耐える事。
④ 熔けて流れ落ちず、棚板に影響を与えない事。
⑤ 機械的、化学的にも十分、強度が有る事。
⑥ 製作中、施釉中、及び使用中でも、無害で有る事。
などです。
実際の失敗とは、以下の様な現象が起きる事です。
釉はげ、釉飛び、ちじれ、釉が煮える、釉の流れ過ぎ、その他です。
2) 釉はげに付いて
① 一般に素地を素焼してから、釉を掛けますが、生の素地に施釉する場合が有ります。
生素地に直接、施釉すると、乾燥中に釉が剥がれ落ちる事が有ります。
これは、生素地が、施釉する事により、水を吸います。釉は直ぐに乾きますが、生素地は
乾燥しながら縮み、釉が素地から浮き上がり、剥がれ落ちる為です。
対策
a) 釉に可塑性の大きい粘土を、加えるたり、アラビアゴムや、デキストリンを加えます。
b) 釉を寝かせると、付着力が増します。 又、化学のり「C M C」を釉に加えます。
② 素焼後の施釉した場合でも、乾燥後や、焼成後に釉が剥がれます。
これは、素地表面に、「ほこり」や「ちり」、「手の油」などが残り、釉が素地に密着しない為です。
又、釉の濃度が濃い場合にも、施釉後、徐々に剥がれる場合が有ります。
対策
a) 素焼の終わった作品は、なるべく素手で触らない様にします。
b) 素焼後の作品は、「ほこり」や「ちり」の掛からない場所に置くか、施釉する直前に、
作品を軽く水洗いしたり、水拭きして「ほこり」などを取り除きます。
c) 釉の原料をあまり微粉砕せず、長く寝かさない事です。
寝かせ過ぎた釉は、一度乾燥後、200~300℃で仮焼すると良いと言われています。
d) 釉の濃度を濃くしない事です。
釉を厚く掛けたい場合は、薄い釉を2~3度重ね塗りします。
陶芸釉薬の失敗と対策
釉はげ
一般に良い釉と言われる為には、以下の要件を満たす物です。
① 焼成後、作品の表面が平滑で、貫入や気泡が無い事。
(但し、前回説明した、装飾性の有る、貫入釉や亀裂釉を除く)
② 良好な耐久性の有るガラスが、均一に表面を覆う事。
③ 素地と密着し、剥がれず、使用に対しても、十分耐える事。
④ 熔けて流れ落ちず、棚板に影響を与えない事。
⑤ 機械的、化学的にも十分、強度が有る事。
⑥ 製作中、施釉中、及び使用中でも、無害で有る事。
などです。
実際の失敗とは、以下の様な現象が起きる事です。
釉はげ、釉飛び、ちじれ、釉が煮える、釉の流れ過ぎ、その他です。
2) 釉はげに付いて
① 一般に素地を素焼してから、釉を掛けますが、生の素地に施釉する場合が有ります。
生素地に直接、施釉すると、乾燥中に釉が剥がれ落ちる事が有ります。
これは、生素地が、施釉する事により、水を吸います。釉は直ぐに乾きますが、生素地は
乾燥しながら縮み、釉が素地から浮き上がり、剥がれ落ちる為です。
対策
a) 釉に可塑性の大きい粘土を、加えるたり、アラビアゴムや、デキストリンを加えます。
b) 釉を寝かせると、付着力が増します。 又、化学のり「C M C」を釉に加えます。
② 素焼後の施釉した場合でも、乾燥後や、焼成後に釉が剥がれます。
これは、素地表面に、「ほこり」や「ちり」、「手の油」などが残り、釉が素地に密着しない為です。
又、釉の濃度が濃い場合にも、施釉後、徐々に剥がれる場合が有ります。
対策
a) 素焼の終わった作品は、なるべく素手で触らない様にします。
b) 素焼後の作品は、「ほこり」や「ちり」の掛からない場所に置くか、施釉する直前に、
作品を軽く水洗いしたり、水拭きして「ほこり」などを取り除きます。
c) 釉の原料をあまり微粉砕せず、長く寝かさない事です。
寝かせ過ぎた釉は、一度乾燥後、200~300℃で仮焼すると良いと言われています。
d) 釉の濃度を濃くしない事です。
釉を厚く掛けたい場合は、薄い釉を2~3度重ね塗りします。
陶芸釉薬の失敗と対策
釉はげ
薩摩焼、粟田焼、相馬焼、青磁釉、貫入志野焼など、釉の表面に「ヒビ」の入った焼物が有ります。
本来ならば、釉に貫入(ヒビ)が入る事は、好ましく無いのですが、上記の焼物は、逆に
この「ヒビ」が特徴と成っていて、一つの見所となっています。
尚 亀裂釉や鮫肌釉、柚子肌釉、かいらぎ釉、虫食いなども、欠点を逆に特徴に変えています。
1) 貫入釉、亀裂釉に付いて
① 釉に貫入が入るのは、素地と釉の収縮率の差に、よる物です。
即ち、窯の冷却時、釉の縮む割合が、素地に比べて、大きい為に起こります。
② 収縮差が、同じならば、釉に「ヒビ」は入りません。やや差が有ると、貫入が入り、
その差が大きいと、亀裂が入ります。
③ 貫入や亀裂を作る方法は、以下の方法が有ります。
a) 釉を厚く掛ける。例 青磁釉は、薄く2~3度掛けると良い。
b) 「ヒビ」が出来る様な、素地や釉を作る。
即ち、素地には、石灰を除き、石英を減らします。
釉には、アルカリ分(K2O、Na2O)を多くし、アルミナ分(Al2O3)を少なくします。
④ 逆に貫入を無くすには、珪酸を微粉末にし、添加したり、酸化錫を加えます。
⑤ K2O、Na2O の多い亀裂釉に、リチュウム(Li2O)を加えると、更に見事な亀裂釉に成ります。
2) 「ヒビ」、亀裂の着色方法
「ヒビ」や亀裂を、着色で、より引き立てる方法があります。
a) 焼成した作品に、墨を染込ませる。又、弁柄を刷り込み、赤く着色させる。
b) 砂糖溶液を染込ませ、低温で焼き、炭化させる。
砂糖溶液に漬けてから、硫酸で洗い、黒くする。
c) コバルト溶液に漬けてから、再焼成すると、青く着色されます。
3) スネーク・スキン(蛇皮)釉
表面張力の大きい釉を使い、表面全体に、釉の「めくれ」を起させ、装飾効果を狙った物です。
井戸茶碗の「かいらぎ」の様な模様や、釉が盛り上がり、島の様な模様に成ります。
a) マグネシアとアルミナは、表面張力を増加させる、有力な添加剤です。
b) 釉に生(なま)粘土を多量に入れると、乾燥時に、亀裂が入り、焼成時に、釉が熔け、
亀裂部分が、「めくれ」スネーク・スキンに成ります。
陶芸釉薬の話
貫入釉 亀裂釉 蛇皮釉
本来ならば、釉に貫入(ヒビ)が入る事は、好ましく無いのですが、上記の焼物は、逆に
この「ヒビ」が特徴と成っていて、一つの見所となっています。
尚 亀裂釉や鮫肌釉、柚子肌釉、かいらぎ釉、虫食いなども、欠点を逆に特徴に変えています。
1) 貫入釉、亀裂釉に付いて
① 釉に貫入が入るのは、素地と釉の収縮率の差に、よる物です。
即ち、窯の冷却時、釉の縮む割合が、素地に比べて、大きい為に起こります。
② 収縮差が、同じならば、釉に「ヒビ」は入りません。やや差が有ると、貫入が入り、
その差が大きいと、亀裂が入ります。
③ 貫入や亀裂を作る方法は、以下の方法が有ります。
a) 釉を厚く掛ける。例 青磁釉は、薄く2~3度掛けると良い。
b) 「ヒビ」が出来る様な、素地や釉を作る。
即ち、素地には、石灰を除き、石英を減らします。
釉には、アルカリ分(K2O、Na2O)を多くし、アルミナ分(Al2O3)を少なくします。
④ 逆に貫入を無くすには、珪酸を微粉末にし、添加したり、酸化錫を加えます。
⑤ K2O、Na2O の多い亀裂釉に、リチュウム(Li2O)を加えると、更に見事な亀裂釉に成ります。
2) 「ヒビ」、亀裂の着色方法
「ヒビ」や亀裂を、着色で、より引き立てる方法があります。
a) 焼成した作品に、墨を染込ませる。又、弁柄を刷り込み、赤く着色させる。
b) 砂糖溶液を染込ませ、低温で焼き、炭化させる。
砂糖溶液に漬けてから、硫酸で洗い、黒くする。
c) コバルト溶液に漬けてから、再焼成すると、青く着色されます。
3) スネーク・スキン(蛇皮)釉
表面張力の大きい釉を使い、表面全体に、釉の「めくれ」を起させ、装飾効果を狙った物です。
井戸茶碗の「かいらぎ」の様な模様や、釉が盛り上がり、島の様な模様に成ります。
a) マグネシアとアルミナは、表面張力を増加させる、有力な添加剤です。
b) 釉に生(なま)粘土を多量に入れると、乾燥時に、亀裂が入り、焼成時に、釉が熔け、
亀裂部分が、「めくれ」スネーク・スキンに成ります。
陶芸釉薬の話
貫入釉 亀裂釉 蛇皮釉
1) チタン結晶釉
① チタンによる結晶釉は、珪酸亜鉛よりも、簡単に出来ます。
② 結晶した物質は、チタン石(CaO.SiO2.TiO2)と呼ばれ、小さな針状の結晶が、
大量に出来ます。
③ 結晶が生成される、温度範囲は、1,320℃~820℃です。
調合例
a) 石粉: 35、 珪石: 25、 石灰石: 20、 酸化チタン: 10、 酸化鉄(Fe2O3): 10
注記、石粉とは、長石の半分解物で、大部分は、長石ですが、珪酸を10%程度含んでいます。
三河石粉、波佐見石、釜戸石粉、千倉石などが、有ります。
2) マンガン結晶釉
① 酸化マンガンと亜鉛華を一緒に使うと、亜鉛華とアルカリ、亜鉛華とチタンの組み合わせより、
良い結果が出ます。(例 マンガン:亜鉛華=1:10程度)
調合例
a) 長石: 33、 珪石: 40、 石灰石: 27、 酸化マンガン: 10~15
b) 長石: 50、 珪石: 17、 石灰石: 9、 酸化マンガン:9、 酸化鉄: 5
c) 石粉: 41、 珪石: 40、 石灰石: 12、 酸化マンガン: 29
又、マンガンを、酸化銅や、酸化コバルトに置き換えても、多色の結晶釉に成ります。
3) その他、特殊な結晶釉
耀変天目釉 : 国宝の抹茶茶碗で、その組成は、未解明です。
油滴天目釉 : 酸化鉄による、結晶釉です。
4) 結晶促進剤
① 酸化タングステン、酸化モリブデン、酸化バナジウムは、少量添加すると、
結晶を促進します。特に酸化モリブデンが、一番効果が有ります。
② 酸化リチウムは、リチウム鉱物でも、結晶化を促進します。
5) その他
① 釉掛けの方法は、一度掛け(生釉、フリット)以外に、施釉した表面に、「種」を植え付けたり、
表面に、「種」をスプレー掛けで二重掛けする方法も有ります。
陶芸釉薬の種類
チタン結晶釉薬 マンガン釉薬
① チタンによる結晶釉は、珪酸亜鉛よりも、簡単に出来ます。
② 結晶した物質は、チタン石(CaO.SiO2.TiO2)と呼ばれ、小さな針状の結晶が、
大量に出来ます。
③ 結晶が生成される、温度範囲は、1,320℃~820℃です。
調合例
a) 石粉: 35、 珪石: 25、 石灰石: 20、 酸化チタン: 10、 酸化鉄(Fe2O3): 10
注記、石粉とは、長石の半分解物で、大部分は、長石ですが、珪酸を10%程度含んでいます。
三河石粉、波佐見石、釜戸石粉、千倉石などが、有ります。
2) マンガン結晶釉
① 酸化マンガンと亜鉛華を一緒に使うと、亜鉛華とアルカリ、亜鉛華とチタンの組み合わせより、
良い結果が出ます。(例 マンガン:亜鉛華=1:10程度)
調合例
a) 長石: 33、 珪石: 40、 石灰石: 27、 酸化マンガン: 10~15
b) 長石: 50、 珪石: 17、 石灰石: 9、 酸化マンガン:9、 酸化鉄: 5
c) 石粉: 41、 珪石: 40、 石灰石: 12、 酸化マンガン: 29
又、マンガンを、酸化銅や、酸化コバルトに置き換えても、多色の結晶釉に成ります。
3) その他、特殊な結晶釉
耀変天目釉 : 国宝の抹茶茶碗で、その組成は、未解明です。
油滴天目釉 : 酸化鉄による、結晶釉です。
4) 結晶促進剤
① 酸化タングステン、酸化モリブデン、酸化バナジウムは、少量添加すると、
結晶を促進します。特に酸化モリブデンが、一番効果が有ります。
② 酸化リチウムは、リチウム鉱物でも、結晶化を促進します。
5) その他
① 釉掛けの方法は、一度掛け(生釉、フリット)以外に、施釉した表面に、「種」を植え付けたり、
表面に、「種」をスプレー掛けで二重掛けする方法も有ります。
陶芸釉薬の種類
チタン結晶釉薬 マンガン釉薬
亜鉛結晶釉の続きを、述べます。
3) 着色剤による、結晶釉に付いて
結晶釉は、金属などを添加する事により、色々な色や文様を表します。
① 少量のニッケルや、コバルト、チタン、マンガン、黒浜(砂鉄)などを入れると、
特異の色を、発色します。
ニッケルは青、 コバルトは紫藍、 (ニッケル+チタン)は黄色に青の結晶が、出ます。
② 調合例
前回 1)-① - a)、b)で、基礎釉に亜鉛華を添加した、調合例を記述しましたが、
この釉に、各種の金属を混ぜていきます。すると、以下の様に発色します。
イ) チタン:
a) の釉に、酸化チタン(TiO2): 5%で、乳白地に「淡黄灰色」の結晶
ロ) マンガン:
a) の釉に、酸化マンガン(MnO2): 5%で、紫茶地に「ピンク」の結晶
ハ) 黒浜(砂鉄):
a) の釉に、黒浜: 30%で、褐色地に「金色梨地」の結晶
b) の釉に、黒浜: 30%で、黄茶地に「金梨地」の結晶
二) コバルト:
b) の釉に、酸化コバルト: 20%で、「藍色に淡紫、又はピンク」の結晶
(参考資料:入門やきものの化学、田賀井秀夫著、共立出版社)
4) 窯の焚き方
・ 結晶釉は釉の調合も大切ですが、一番大事な事は、窯の焚き方です。
・ 一般に、酸化炎で焼成し、徐冷却で結晶の発生を、促進させます。
・ 当然、窯の大きさ、窯の壁の厚さ、作品の量、窯詰めの仕方、徐冷却の操作の有無、
などによって、作品の良し悪しが、左右されます。
a) 窯が大きい程、冷却スピードは遅くなります。
b) 窯の壁の厚さも、厚い程遅くなります。
c) 作品の量が多い程、ゆっくり冷えます。
d) 同じ窯の中でも、場所によって、冷え方も違います。
即ち、窯の最上部が、一番冷め難いです。又、壁に近い程、冷めが速いです。
以上の事柄を考慮して、窯詰めを行います。
尚、同じ窯で、結晶釉以外の作品を、同時に焼成する場合が多いと、思います。
その際にも、どの位置が最適かを、見つけてください。
e) 結晶の発達する、温度範囲は、200℃~300℃位有ります。
窯の容積が小さい物や、壁の厚さが、薄い窯などは、冷却スピードが速いため、
再点火などで、窯を暖めながら、冷やします。(一定温度に保つ必要は有りません)
陶芸の釉薬について
3) 着色剤による、結晶釉に付いて
結晶釉は、金属などを添加する事により、色々な色や文様を表します。
① 少量のニッケルや、コバルト、チタン、マンガン、黒浜(砂鉄)などを入れると、
特異の色を、発色します。
ニッケルは青、 コバルトは紫藍、 (ニッケル+チタン)は黄色に青の結晶が、出ます。
② 調合例
前回 1)-① - a)、b)で、基礎釉に亜鉛華を添加した、調合例を記述しましたが、
この釉に、各種の金属を混ぜていきます。すると、以下の様に発色します。
イ) チタン:
a) の釉に、酸化チタン(TiO2): 5%で、乳白地に「淡黄灰色」の結晶
ロ) マンガン:
a) の釉に、酸化マンガン(MnO2): 5%で、紫茶地に「ピンク」の結晶
ハ) 黒浜(砂鉄):
a) の釉に、黒浜: 30%で、褐色地に「金色梨地」の結晶
b) の釉に、黒浜: 30%で、黄茶地に「金梨地」の結晶
二) コバルト:
b) の釉に、酸化コバルト: 20%で、「藍色に淡紫、又はピンク」の結晶
(参考資料:入門やきものの化学、田賀井秀夫著、共立出版社)
4) 窯の焚き方
・ 結晶釉は釉の調合も大切ですが、一番大事な事は、窯の焚き方です。
・ 一般に、酸化炎で焼成し、徐冷却で結晶の発生を、促進させます。
・ 当然、窯の大きさ、窯の壁の厚さ、作品の量、窯詰めの仕方、徐冷却の操作の有無、
などによって、作品の良し悪しが、左右されます。
a) 窯が大きい程、冷却スピードは遅くなります。
b) 窯の壁の厚さも、厚い程遅くなります。
c) 作品の量が多い程、ゆっくり冷えます。
d) 同じ窯の中でも、場所によって、冷え方も違います。
即ち、窯の最上部が、一番冷め難いです。又、壁に近い程、冷めが速いです。
以上の事柄を考慮して、窯詰めを行います。
尚、同じ窯で、結晶釉以外の作品を、同時に焼成する場合が多いと、思います。
その際にも、どの位置が最適かを、見つけてください。
e) 結晶の発達する、温度範囲は、200℃~300℃位有ります。
窯の容積が小さい物や、壁の厚さが、薄い窯などは、冷却スピードが速いため、
再点火などで、窯を暖めながら、冷やします。(一定温度に保つ必要は有りません)
陶芸の釉薬について
結晶釉は、釉の表面などに出来た結晶が、肉眼で確認できる釉の、総称です。
結晶とは、焼成後、窯が冷え、液体から固体に変化する途中で、核(種=たね)を中心として、
金属などが寄り集まり、段々大きく成長した物で、その周囲の釉とは、違う文様を呈する物です。
それ故 以下の事が重要な、事柄に成ります。
・ 核に成る「種」の材料
・ 「種」を植えつける方法
・ 結晶釉に適する基礎釉
・ 窯を冷やす速度や、結晶の成長する温度範囲
大きな結晶を作る核に成る、一般的な酸化物は、亜鉛、チタン、酸化マンガン、鉄です。
その他、酸化タングステン、酸化ビスマス、酸化リチウムなどが有ります。
1) 亜鉛結晶釉に付いて
① 亜鉛は亜鉛華(ZnO)を、添加すると、大きな扇状の珪酸亜鉛と言う、結晶が出来ます。
調合例 (亜鉛結晶釉の基礎釉)
a) 長石:50、 藁灰:20、 天草陶石:15、 いす灰:20、 亜鉛華:5
b) 長石:30、 藁灰:40、 いす灰:30
上の基礎釉に、亜鉛華:50を配合します。
② アルカリ成分に、亜鉛華にソーダ(KaO+Na2O)を加えると、より美しい結晶釉に成ります。
調合例 0.3~0.6 ZnO、 0.7~0.4 KNaO
(注: KNaO は K2O と Na2O の混合物です。)
③ 硼珪酸(硼酸+珪酸)に亜鉛華を加えても、結晶釉に成ります。
④ 釉は、生釉又は亜鉛華をフリットに入れる、方法が有ります。
結晶の出方に、大きな違いは有りません。
・ 又、高温で焼いた亜鉛華を粉砕し、その小さな粒子を、施釉した表面に植え付ける
事によって、結晶文様を大きく、成長させる方法も有ります。
⑤ 徐冷却で、結晶が発達する、温度範囲は、SK-8(1250℃)の釉で、
1,050℃~750℃の範囲です。
尚、焼成温度が高過ぎると、結晶の発達は少なくなります。
又、低く過ぎると(Sk-6a以下)、結晶が群生し、滑らかな、艶消し釉に成ります。
2) 釉の性質について
① 結晶が成長する為には、釉の粘度が小さい(流動性が大きい)方が良いです。
② 一般にアルミナ(Al2O3)成分と、シリカ(SiO2)成分が少なく、亜鉛が多い組成の所に
結晶が生成されます。
アルミナ成分 は、結晶化を妨害しますので、なるべく少量にします。
調合例
{0.2 KnaO, 0.6 ZnO, 0.1MgO, 0.1 CaO}:0.25 Al2O3 :2.0 SiO2
③ 釉のアルカリ成分では、Na2O、K2O、MgO、MnO、FeO、ZnO が適し、BaO、PbO は
適しません。
④ 釉の材料が変化すれば、当然結晶が発達する、温度範囲も変化します。
冷却が速過ぎると、艶消し状になり、遅過ぎると、粗い結晶に成ります。
陶芸の釉薬について
結晶とは、焼成後、窯が冷え、液体から固体に変化する途中で、核(種=たね)を中心として、
金属などが寄り集まり、段々大きく成長した物で、その周囲の釉とは、違う文様を呈する物です。
それ故 以下の事が重要な、事柄に成ります。
・ 核に成る「種」の材料
・ 「種」を植えつける方法
・ 結晶釉に適する基礎釉
・ 窯を冷やす速度や、結晶の成長する温度範囲
大きな結晶を作る核に成る、一般的な酸化物は、亜鉛、チタン、酸化マンガン、鉄です。
その他、酸化タングステン、酸化ビスマス、酸化リチウムなどが有ります。
1) 亜鉛結晶釉に付いて
① 亜鉛は亜鉛華(ZnO)を、添加すると、大きな扇状の珪酸亜鉛と言う、結晶が出来ます。
調合例 (亜鉛結晶釉の基礎釉)
a) 長石:50、 藁灰:20、 天草陶石:15、 いす灰:20、 亜鉛華:5
b) 長石:30、 藁灰:40、 いす灰:30
上の基礎釉に、亜鉛華:50を配合します。
② アルカリ成分に、亜鉛華にソーダ(KaO+Na2O)を加えると、より美しい結晶釉に成ります。
調合例 0.3~0.6 ZnO、 0.7~0.4 KNaO
(注: KNaO は K2O と Na2O の混合物です。)
③ 硼珪酸(硼酸+珪酸)に亜鉛華を加えても、結晶釉に成ります。
④ 釉は、生釉又は亜鉛華をフリットに入れる、方法が有ります。
結晶の出方に、大きな違いは有りません。
・ 又、高温で焼いた亜鉛華を粉砕し、その小さな粒子を、施釉した表面に植え付ける
事によって、結晶文様を大きく、成長させる方法も有ります。
⑤ 徐冷却で、結晶が発達する、温度範囲は、SK-8(1250℃)の釉で、
1,050℃~750℃の範囲です。
尚、焼成温度が高過ぎると、結晶の発達は少なくなります。
又、低く過ぎると(Sk-6a以下)、結晶が群生し、滑らかな、艶消し釉に成ります。
2) 釉の性質について
① 結晶が成長する為には、釉の粘度が小さい(流動性が大きい)方が良いです。
② 一般にアルミナ(Al2O3)成分と、シリカ(SiO2)成分が少なく、亜鉛が多い組成の所に
結晶が生成されます。
アルミナ成分 は、結晶化を妨害しますので、なるべく少量にします。
調合例
{0.2 KnaO, 0.6 ZnO, 0.1MgO, 0.1 CaO}:0.25 Al2O3 :2.0 SiO2
③ 釉のアルカリ成分では、Na2O、K2O、MgO、MnO、FeO、ZnO が適し、BaO、PbO は
適しません。
④ 釉の材料が変化すれば、当然結晶が発達する、温度範囲も変化します。
冷却が速過ぎると、艶消し状になり、遅過ぎると、粗い結晶に成ります。
陶芸の釉薬について
艶消し釉(マット釉)は、顕微鏡でなければ見えない、小さな結晶が出来ています。
又 釉の表面の乱反射による物で、釉は不透明、半透明です。
ガラス質は、素地と釉の境界面に、多少存在するだけです。
(尚 結晶釉は、釉の表面や、釉の中に目で見える、大きな結晶が出来ている釉です。)
1) 艶消し(マット)釉に付いて
① 一般的にマット釉を作る方法は、石灰(石)を多量に添加する事です。
石灰を釉の安定範囲以上に添加すると、焼成後、石灰が灰長石と言う、
細かい結晶が出来ます。それ故、マット釉に成ります。
a) 良好なマット釉は以下の調合と言われています。 (ジェーゲル式)
(0.3 K2O・0.7 CaO)・2.5 Al2O3・12SiO2 (単位はモル)
② 滑石(ロウ石、タルク)を8~30%添加しても、マット釉に成ります。
又、酸化錫を用いると、良いマット釉を作る事が出来ます。
アルミナ成分を増し、珪酸を減らす方向にすれば、良いマットに成ると言います。
調合例
a) 長石:30、 珪石:17、 石灰石:23、 滑石:30
b) 長石:55、 いす灰:30、 藁灰:10、 酸化錫:10
c) 長石:30、 いす灰:30、 藁灰:40、 酸化錫:5
③ 徐冷却について
結晶を成長させるには、ゆっくり冷却します。
又 施釉も厚めに掛けます。 (葉書き3枚程度=0.5mm~1.0mm)
④ マット釉の種類
鳳凰マット、チタンマット、ジルコンマット、錫マット、藁灰マット、バリウムマット、
タルクマット、亜鉛マット、その他 白マット、黒マット、青銅マット、鉄マットなど
上記の様に、前回乳濁釉で取上げた材料と、同じ物が使われています。
・ 乳濁釉との差は、Al2O3 とSiO2 との比(割合)の違いです。
乳濁釉: Al2O3 を少なくし、SiO2 を多くする。 (例、0.4:5.0 モル)
マット釉: Al2O3 を多くし、SiO2 を少なくする。 (例、0.5:2.5 モル)
注: Al2O3は「アルミナ成分」で、カオリン等に多く含まれます。
SiO2は「シリカ成分」で、珪石、藁灰等に多く含まれます。
陶芸の釉薬 乳濁釉
又 釉の表面の乱反射による物で、釉は不透明、半透明です。
ガラス質は、素地と釉の境界面に、多少存在するだけです。
(尚 結晶釉は、釉の表面や、釉の中に目で見える、大きな結晶が出来ている釉です。)
1) 艶消し(マット)釉に付いて
① 一般的にマット釉を作る方法は、石灰(石)を多量に添加する事です。
石灰を釉の安定範囲以上に添加すると、焼成後、石灰が灰長石と言う、
細かい結晶が出来ます。それ故、マット釉に成ります。
a) 良好なマット釉は以下の調合と言われています。 (ジェーゲル式)
(0.3 K2O・0.7 CaO)・2.5 Al2O3・12SiO2 (単位はモル)
② 滑石(ロウ石、タルク)を8~30%添加しても、マット釉に成ります。
又、酸化錫を用いると、良いマット釉を作る事が出来ます。
アルミナ成分を増し、珪酸を減らす方向にすれば、良いマットに成ると言います。
調合例
a) 長石:30、 珪石:17、 石灰石:23、 滑石:30
b) 長石:55、 いす灰:30、 藁灰:10、 酸化錫:10
c) 長石:30、 いす灰:30、 藁灰:40、 酸化錫:5
③ 徐冷却について
結晶を成長させるには、ゆっくり冷却します。
又 施釉も厚めに掛けます。 (葉書き3枚程度=0.5mm~1.0mm)
④ マット釉の種類
鳳凰マット、チタンマット、ジルコンマット、錫マット、藁灰マット、バリウムマット、
タルクマット、亜鉛マット、その他 白マット、黒マット、青銅マット、鉄マットなど
上記の様に、前回乳濁釉で取上げた材料と、同じ物が使われています。
・ 乳濁釉との差は、Al2O3 とSiO2 との比(割合)の違いです。
乳濁釉: Al2O3 を少なくし、SiO2 を多くする。 (例、0.4:5.0 モル)
マット釉: Al2O3 を多くし、SiO2 を少なくする。 (例、0.5:2.5 モル)
注: Al2O3は「アルミナ成分」で、カオリン等に多く含まれます。
SiO2は「シリカ成分」で、珪石、藁灰等に多く含まれます。
陶芸の釉薬 乳濁釉
失透とは、透明でない釉の総称で、乳濁釉や艶消し釉、結晶釉を言います。
・ 失透していて、表面が表面に光沢のある釉を、失透釉と言います。
・ 失透には、釉の中のガラスの中に、微細な結晶が浮遊している状態(結晶釉)と、
ガラスでありながら、成分がお互いに、熔けて混ざら無い状態(分相)が有ります。
・ 分相による失透を、乳濁と言います。
又 失透であるが、表面に光沢の無い釉を、特に艶消し釉と呼びます。
艶消し釉も一種の結晶釉ですが、特に結晶が大きく成長した釉を、結晶釉と呼びます。
1) 灰による乳濁釉に付いて
① 乳濁釉と言われる釉には、以下の物が有ります。
藁(わら)白釉、籾殻(もみがら)釉、糠(ぬか)白釉、卯の斑釉、白萩釉など。
藁灰や籾殻灰などの、珪酸分の多い灰を使うと、釉は乳濁します。
(卯の斑は、鵜の糞、兎の斑などの当て字を、使う事の有ります。)
・ 蛇足ですが、藁は稲の茎の部分で、籾殻は、実(米)の殻の部分、糠は精米時に出る
米に付着している粉です。
何れも焼くと、真っ黒な灰と成ります。それ故、生の灰釉は、真っ黒ですが、
焼成すると、真っ白に成ります。
(一般に釉は、生と焼きの後では、色が変わりますが、これらは、代表的な例です。)
② 調合例
a) 藁白釉: 長石:50、 石灰石:10、 藁灰:40
b) 籾殻釉: 長石:20、 土灰:30、 籾殻灰:50
: 長石:30、 土灰:40、 籾殻灰:30
c) 白萩釉: 三雲長石:20、 藁灰:50、 土灰:30
: 三雲長石:30、 石灰石:30、 藁灰:40
: 陶石:30~40、 藁灰:20~40、 土灰:30~40
③ 灰類は、水洗いしない方が、良いと言われています。
・ 灰の中に、水に溶けるアルカリ分を、含んだままで調合した方が、釉の中にたくさんの、
泡が発生し、乳白効果が上がると言います。
・ 籾殻灰は、良く焼かないで(完全に白くしないで)炭素分を残します。
又、細かく粉砕し過ぎない事です。
釉が熔ける際、炭素から出る気泡が、乳白化に寄与します。
2) 添加物による乳濁釉
基礎釉に、乳濁剤を、加えて乳濁釉を造ります。
a) 乳濁剤には、亜鉛華、 酸化錫、錫灰、酸名チタン、骨灰、ジルコン(SiO2.ZrO2)、
ジルコニア(ZrO2)、酸化セリウム、燐などが有ります。
b) これらの物質は、釉に殆ど熔けず、乱反射を起し、乳濁と成ります。
陶芸の釉薬 失透釉
・ 失透していて、表面が表面に光沢のある釉を、失透釉と言います。
・ 失透には、釉の中のガラスの中に、微細な結晶が浮遊している状態(結晶釉)と、
ガラスでありながら、成分がお互いに、熔けて混ざら無い状態(分相)が有ります。
・ 分相による失透を、乳濁と言います。
又 失透であるが、表面に光沢の無い釉を、特に艶消し釉と呼びます。
艶消し釉も一種の結晶釉ですが、特に結晶が大きく成長した釉を、結晶釉と呼びます。
1) 灰による乳濁釉に付いて
① 乳濁釉と言われる釉には、以下の物が有ります。
藁(わら)白釉、籾殻(もみがら)釉、糠(ぬか)白釉、卯の斑釉、白萩釉など。
藁灰や籾殻灰などの、珪酸分の多い灰を使うと、釉は乳濁します。
(卯の斑は、鵜の糞、兎の斑などの当て字を、使う事の有ります。)
・ 蛇足ですが、藁は稲の茎の部分で、籾殻は、実(米)の殻の部分、糠は精米時に出る
米に付着している粉です。
何れも焼くと、真っ黒な灰と成ります。それ故、生の灰釉は、真っ黒ですが、
焼成すると、真っ白に成ります。
(一般に釉は、生と焼きの後では、色が変わりますが、これらは、代表的な例です。)
② 調合例
a) 藁白釉: 長石:50、 石灰石:10、 藁灰:40
b) 籾殻釉: 長石:20、 土灰:30、 籾殻灰:50
: 長石:30、 土灰:40、 籾殻灰:30
c) 白萩釉: 三雲長石:20、 藁灰:50、 土灰:30
: 三雲長石:30、 石灰石:30、 藁灰:40
: 陶石:30~40、 藁灰:20~40、 土灰:30~40
③ 灰類は、水洗いしない方が、良いと言われています。
・ 灰の中に、水に溶けるアルカリ分を、含んだままで調合した方が、釉の中にたくさんの、
泡が発生し、乳白効果が上がると言います。
・ 籾殻灰は、良く焼かないで(完全に白くしないで)炭素分を残します。
又、細かく粉砕し過ぎない事です。
釉が熔ける際、炭素から出る気泡が、乳白化に寄与します。
2) 添加物による乳濁釉
基礎釉に、乳濁剤を、加えて乳濁釉を造ります。
a) 乳濁剤には、亜鉛華、 酸化錫、錫灰、酸名チタン、骨灰、ジルコン(SiO2.ZrO2)、
ジルコニア(ZrO2)、酸化セリウム、燐などが有ります。
b) これらの物質は、釉に殆ど熔けず、乱反射を起し、乳濁と成ります。
陶芸の釉薬 失透釉
酸化クロムを添加した釉は、緑釉、うぐいす釉、黄橙釉、小豆赤釉に成ります。
1 緑釉、うぐいす釉
・ 酸化クロムは、銅や鉄と違い、釉に熔けません。
・ クロムの添加量によって、「深緑」から「うぐいす色」まで、安定した色を出します。
還元焼成すると、綺麗な色に成ります。
・ 釉の質感は、銅の緑色とは、かなり違い、透明感が無く、クロムが釉に浮ている状態です。
① 調合例 (単位はgです、全体を100gとした場合)
a) 長石:41、 珪石:30、 石灰石:20、 カオリン:9、
b) 長石:42、 珪石:31、 石灰石:13、 カオリン:9、 亜鉛華:5
c) 長石:39、 珪石:29、 石灰石:12、 カオリン:8、 炭酸バリウム:12
以上の原料に、酸化クロムを外割りで、0.5~5%程度添加します。
・ クロムを減らすと、明るい緑になり、増やすと緑が濃く成ります。
2) クロム赤釉 (小豆赤釉)
・ 少量の酸化クロムと、酸化錫を添加すると、クロム赤釉が出来ます。
・ マグネシウム釉は、赤くなり難いです。石灰釉より、バリウム釉の方が、赤く出ます。
・ 焼成は、酸化炎が適し、中性炎でも赤く成ります。、
還元炎で焼成すると、釉が若干乳濁し、萌黄色~緑色に成ります。
① 調合例 (単位はg)
a) 長石:34、 珪石:36、 石灰石:16、 カオリン:13
b) 長石:33、 珪石:34、 石灰石:10、 カオリン:12、 炭酸バリウム:10
上の調合に、酸化クロム:0.1~0.3、 酸化錫を3~6を添加します。
(参考資料 津坂和秀著、「釉薬基礎ノート」双葉社)
陶芸の釉薬 クロム釉
1 緑釉、うぐいす釉
・ 酸化クロムは、銅や鉄と違い、釉に熔けません。
・ クロムの添加量によって、「深緑」から「うぐいす色」まで、安定した色を出します。
還元焼成すると、綺麗な色に成ります。
・ 釉の質感は、銅の緑色とは、かなり違い、透明感が無く、クロムが釉に浮ている状態です。
① 調合例 (単位はgです、全体を100gとした場合)
a) 長石:41、 珪石:30、 石灰石:20、 カオリン:9、
b) 長石:42、 珪石:31、 石灰石:13、 カオリン:9、 亜鉛華:5
c) 長石:39、 珪石:29、 石灰石:12、 カオリン:8、 炭酸バリウム:12
以上の原料に、酸化クロムを外割りで、0.5~5%程度添加します。
・ クロムを減らすと、明るい緑になり、増やすと緑が濃く成ります。
2) クロム赤釉 (小豆赤釉)
・ 少量の酸化クロムと、酸化錫を添加すると、クロム赤釉が出来ます。
・ マグネシウム釉は、赤くなり難いです。石灰釉より、バリウム釉の方が、赤く出ます。
・ 焼成は、酸化炎が適し、中性炎でも赤く成ります。、
還元炎で焼成すると、釉が若干乳濁し、萌黄色~緑色に成ります。
① 調合例 (単位はg)
a) 長石:34、 珪石:36、 石灰石:16、 カオリン:13
b) 長石:33、 珪石:34、 石灰石:10、 カオリン:12、 炭酸バリウム:10
上の調合に、酸化クロム:0.1~0.3、 酸化錫を3~6を添加します。
(参考資料 津坂和秀著、「釉薬基礎ノート」双葉社)
陶芸の釉薬 クロム釉