わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

陶器の口造り

2010-05-30 13:28:16 | お茶と「茶の湯」と茶道具(茶陶)
茶道具に限らず、陶磁器の口造りは、重要な要素と成ります。

口(口縁、こうえん)の造り方によって、作品の表情は、大きく変ります。

一般に、磁器(石物)は、肉厚が薄い傾向にあり、陶器(土物)は、やや厚めにします。

口の薄い陶器は、貧弱に見える事と、磁器よりも、強度が落ちる為、厚く作る必要も、有るからです。

 ・ 口の造り方は、「こしき口」と「姥口」の、2種類が基本的です。

   「こしき口」は、凸状に、出っ張っている形で、「姥口」は、凹状にへこんだ、形です。

1) 口造りの種類  以下、代表的な、口造りを述べます。
   
 ① 玉縁(たまぶち)

   壷などやや重量の有る、大きな作品に、多い造りです。

   口縁の捻り返し(ひねりかえし)に、厚みを持たせ、丸みを帯びた、紐状の形です。

   捻り返しは、外側に捻ります。作品に応じて、捻る量を調節し、太い細いを、決めます。

 ② 端反(はたぞり)

   口縁を外側に反らせた形で、水(液体)を入れる容器(花瓶、徳利、茶碗など)に、

   多く見受けられます。液体が、自然と流れ出易い、形となります。

 ③ 直口(すぐくち)又は、立口(たちくち)

   胴から垂直に、真直ぐ立ち上がった形で、竹を真横に切った様な、感じです。

   最もシンプルな、形ですので、花入などに、好まれる方も、多いです。

 ④ 姥口(うばくち)

   蓋の有る焼き物の、蓋受け部分も、この形のものが、多いです。
   
   口の周辺が、高く盛り上がり、内側は一段低くなった形です。

   歯の無い老婆の 口を、連想させる事から、この名前が付いています。

 ⑤ 鼈(すっぽん)口

   天目茶碗に、見られる口縁で、碗の立ち上がりが深く、口縁で、一度内側に絞ってあり、

   すっぽんの頭の形を、しているので、鼈口といいます。

   この形状は、熱い抹茶を飲むのに、適した形です。碗の内のせり上がりで、茶が止まり、

   啜り(すすり)に従って、少しずつ口に入る様にした形状です。

 ⑥ 蛤(はまぐり)口

   口縁の最上部が、蛤の合口の先端の様に、薄く尖ったもので、楽茶碗に見られます。

   尚、楽茶碗の口造りで、五つ程の凹凸を、五岳または五峰(ごほう)といいます。

   この口造りの、凸凹を、山道と呼び、大きな見所となります。

 ⑦ 樋口(といくち)

   口縁に箆(へら)による、細い溝の切り回しが、施された物です。伊羅保や、柿の蔕(へた)茶碗の

   一つの約束事に、成っています。

 ⑧  片口(かたくち)

   鉢などの器の一部を、外側に引き出し、注ぎ口を設けた物です。

   昔は、両口と言い、向かい合わせで、二箇所の注ぎ口が、付いた物がありました。

   尚、現在では、装飾的な要素が、多くなっています。
 
 ⑨ その他の口造り

   アンコウ口、くり口、十王口、織部口などの、名前の付いた、口造りが有りますが、

   詳細は省略します。

2) 口を上から見た場合の形

  真円形が基本の形で、小判形(楕円)、沓形、四角、三角、筆洗(ひっせん)形、桃形、州浜(すはま)、

  多福形など、多様な形が、あります。 真円から、変形させて、形作る事が多いです。  

以上で、口造りの話を、終わります。


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茶道具 (海外へ注文)

2010-05-29 21:29:02 | お茶と「茶の湯」と茶道具(茶陶)
茶道具には、唐物(主に中国製)や朝鮮製の物、更には、国焼と言う、我が国で作られた物が、有ります。

茶の湯の初期(室町時代)には、唐物が、安土桃山時代には、朝鮮製が、桃山以降は、国焼が、

多く使用される様に、成ります。

 舶来物を尊ぶ心は、必ずしも、時代が下るに従い、減少していった訳では、ありません。

 (現在でも、茶道具の一部は、唐物が最高と、思われている物も、多くあります。)

1) 世界中に、茶道具の注文を、出していました。

   江戸時代初期の頃に、茶人は、より良い道具を得る為、中国、朝鮮の他、南蛮物や、オランダ製の

   茶碗、水指、花入、建水、香炉、香合、懐石道具などの、茶道具の注文を出しています。

2) 江戸時代は、鎖国政策で、中国とオランダ以外は、貿易が出来ず、不自由でしたが、盛んに注文が

   出ている事は、茶人が、日本に無い物を、求めたからと、思われます。

3) 中国への注文の筆頭は、まだ日本に無かった、古染付けの、茶道具です。

   中国(明代)の、焼き物の技術の高さも、有りますが、染付けの、趣の有る色に、茶人は、魅力を

   感じていた様です。

4) やがて、古い染付けから、祥瑞(しょんずい)に注文が、多く出されます。

   崇禎(すうてい)年間(1628~1644)頃に、景徳鎮の民窯に、注文を出しています。

   祥瑞は、藍(あい)の色が濃く、瑠璃色に近く、鮮明で、文様や絵が、びっしり描かれ、

   染付けの中で、最上品と言われています。

5) 朝鮮への注文

  ① 大名茶人、数寄者の注文で、作られた高麗茶碗が、御所丸茶碗で、最初に注文に出された物と、

    言われいます。白無地の「本手」(白手)と、黒い鉄釉を、片身替わりに刷毛で塗った

    「黒刷毛」と、呼ばれる物があります。

  ・ 御所丸茶碗 とは、高麗茶碗の一種で、古田織部の意匠で、朝鮮の金海窯で、焼かせた物です。

   「古田高麗」とも、「金海御所丸」とも言い、御本(ごほん)手の、最古の物です。

    御用船である、「御所丸船」に乗せて運ばせ、秀吉に献上した事に、由来すると言います。

  ② 小堀遠州の時代に成ると、本格的な注文が、出される様に成ります。

    その代表が、御本と呼ばれる、茶碗で、様々な物が、作られ続きます。

    この期間は、約80年近いとの事です。

  ・ 御本とは、注文を出す際、見本(お手本、物、図面、指示書など)を添えて、その様に、

    作らせました。 この様にして、焼かせた物を、御本手(ごほんて)と呼びます。

6) 南蛮への注文

  ① 琉球(沖縄)の焼き物も、南蛮と呼ぶ事が有りますが、ここでは、中国の南に位置する国々、

   即ち、東南アジア諸国で、作られた焼物と、言う事になります。

  ② 今日、我々が言う南蛮は、これらの国々で生産された物でも、上質の磁器類では無く、

   粗陶のみを、指す事が多いです。

   南蛮は、大きく分けて、南支那系と、安南系とシャム系の、三つに分ける事ができます。

   南蛮は焼締めの作品が多く、オランダや、中国船を、経由して発注した物と、思われます。


この様に、海外まで茶道具を、求める当時の、茶人の茶の湯に対する、熱意や心意気が、

強く感じられます。

尚、海外に発注する事を、「日本注文」と呼ぶ事も有ります。

以上にて、海外への注文の話を、終わります。  
   
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茶道具 (掛花入を作る3 焼成)

2010-05-28 22:35:54 | お茶と「茶の湯」と茶道具(茶陶)
掛花入の話を続けます。

2) 旅枕掛花入を作る。

 ⑥ 口造り

   真っ直ぐな形の、旅枕掛花入も、有りますが、首を付けた、旅枕形の花入もあります。

   口の真下に、かなり太い溝が、付けられている物も、あります。口造りは、矢筈口(やはずくち)や、

   姥口、直口になった物が、多いです。

  ・ 矢筈口(やはずくち): 矢の後端で、弓の弦を、受ける部分の事ですが、この形状に似た、

    口造りを、矢筈口と呼び、花入の中でも、格調の高い物で、高価な作品に多い形です。
    
  ・ 姥口(うばくち) : 歯のない老婆の口の事ですが、茶道具では、周囲が盛り上がり、

    口のすぼまった形で、釜、香炉、水指、花入などに、使われています。

  ・ 直口(すぐくち): 胴から垂直に、真直ぐ立った形です。又、立口ともいいます。

  尚、口には、山道と言う、緩い凹凸を、付けます。

 ⑦ 細工をする

  ) 変形させる(歪める)。

    轆轤(ろくろ)で、綺麗な形に、作った物は、好ましく思わない人も、多いです。

    面白くない、遊びが無い、単純である等々の、理由をつけます。

  ・ 花入全体を、変形させて、趣(おもむき)を、出します。

    底、胴、口周辺に掛けて、三角や、四角っぽく変形させたりします。

  ) 箆目(へらめ)を入れる。

    胴から底に掛けて、縦や斜め方向に、大胆(又は、慎重)に箆目を、入れます。

   ・ 箆の選定と、箆使いによって、雰囲気は、大幅に変化します。

     一発勝負ですので、取り掛かる前に、十分、予測して置く必要が、有ります。

    尚、箆目を大胆に入れると、乾燥時に、その部分から、亀裂が入る恐れが、ありますので、

      丁寧に、仕上げてください。

  ) 耳を付ける

     耳に関しては、好ましいと思う人と、思わない人がいますが、不用と言う人の方が、多い様です。

3) 焼成について(灯油やガス窯で、信楽、伊賀風に焼成する方法)

   蹲や、旅枕には、無釉の物と、釉を掛けた物が有ります。

   昔は、薪で焼かれていた、信楽焼、備前焼、伊賀焼も、現在では、灯油、ガス、電気と多様化し、

   薪と、遜色無い、焼き上がりと、なっています。

 ・ 「薪窯風に焼成する方法」

  ① 完全に乾燥した作品に、化学糊(CMC)を、刷毛で塗ります。

    (塗る場所は、灰が掛かって欲しい、場所です。)

  ② 灰を篩(ふるい)や、茶漉しに入れて、振り掛けます。

    灰には、松灰や、土灰(どばえ)が、適します。但し、天然物と、合成物が有ります。
    
   ・ 松灰は、赤松の灰で、やや緑色に掛かると、言われています。

   ・ 土灰は、雑木の灰で、やや黄色味を、帯びると言われています。

     (実際には、両者の差は、微妙な感じです。)

  ③ 「サヤ鉢」に入れる。

    鉢の内側に、珪砂を敷きます。

    作品には、団子状にした道具土を、数個、底に付け、サヤに入れます。

  ④ 籾殻(もみがら)と炭を入れる。

    サヤと作品の間に、最初籾殻を入れ、次にやや大きめの、木炭を入れます。

    ・ 籾殻は、焦げた感じに、炭は、強還元により、ビードロ色に成ります。

  ⑤ 藁(わら)を巻き付ける。

    緋色を出したい部分に、藁を強弱、粗密をつけて、巻きつけます。

  ⑥ 木炭を追加して、サヤの蓋を、閉じます。

    空気が入ると、綺麗な色が出ません。きっちり閉じて下さい。

 後は、窯でいつもの様に、焼成します。

 尚、焼成温度は1250℃程度で、時間は長い方が、良い結果が出る様です。

以上で、花入の話は、終わりにし、更に、他の茶道具について、お話する予定です。
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茶道具 (掛花入を作る2)

2010-05-27 21:40:44 | お茶と「茶の湯」と茶道具(茶陶)
掛花入の話を続けます。

2) 旅枕掛花入を作る。

 ・ 円筒形の、小さな花入で、径が、8~10cm程度、高さが、約18cm以下の物が多いです。

   底は、ベタ又は、碁笥底高台が、普通です。

   (掛花入でない、床に置くタイプで、高さと径が大きい、旅枕もあります。)

 ・ 無釉の備前焼や、信楽焼、伊賀焼の他、施釉の唐津、志野、織部、萩などが、作られています。

 ① 産地によって当然、土(粘土)が違いますので、作り方も、多少の違いが、有ります。

   備前の様に、土の粒子が細かい物や、信楽の様に、粗目の土を使う場合は、

   作る違いだけでは無く、焼き上がった、感じも、大きく異なります。

 ② 備前などは、轆轤成形する場合が、多いですが、信楽などは、紐作りプラス、轆轤挽きで作ります。

 ③ 轆轤挽きの場合

   菊練した土を、轆轤の中心に置き、両手で、「バシバシ」叩き、轆轤面に押し付けます。

   上記寸法程度でしたら、1Kg程度の土で、製作で出来るはずですが、面取りなどで、肉厚を

   厚くする必要が、有る場合には、適宜増量します。

  ) 土の粒子が細かいと、底の土が締まらずに、底割れの現象を、起す恐れが有りますので、

     予め、底に成る土のみを、轆轤の中心に置き、手で叩き締めます。その上に、砲弾形にした、

     土を載せる、方法も有ります。

  ) 粒子が粗い(はぜ石が入る)時は、手を保護する為と、水切れを防ぐ為に、土殺しや、

     土を薄く伸ばす際、布切れ(又は皮)を、使う場合が、有ります。

   a) 即ち約10cm四方の布切れを、縦に四層に、折ります。布の耳が、中に入る様にします。

   b) 土殺しの際は、この折った細長い布を、薬、中、人差し指の根元で、掌側に巻き付け、両端を、

     親指と、小指で押さえます。これを左右両手にする場合と、左手のみの場合が有ります。

   c) 両手に水を付け、手と布を濡らします。この状態で、土殺しを行います。

     布が濡れていますので、直接水を付ける、回数が少なくなる、利点があります。

   d) 土を薄く伸ばす際の布(又は皮)は、上記布切れよりも、大きく成ります。

     使い方は、人により異なりますが、布をしっかり、手に持たないと、轆轤に取られて

     しまいますので、注意が必要です。

 ④ 紐作り、プラス轆轤挽きの場合

   a) 前回、蹲(うずくまる)を作るで述べた方法で、轆轤上の、必要な高さまで、

     紐を積み上げます。

   b) 轆轤を回転させ、表面の凸凹を、取ると同時に、肉厚を一定にし、綺麗な円が出る様に、

     形を整えます。

 ⑤ 旅枕の花入は、全体(下から上まで)径が細いからと、最初から径を、細くしない事です。

   即ち、土を伸ばす場合、常に器の内側に、手が入る様にして置きます。

   特に轆轤目を付けたり、側面に段差や、窪みを設ける場合には、内側の手が必要に、成ります。

   形を作り終える直前、又は、口造りの直前に、両手で、囲い込むなどして、所定の径にします。

 ⑥ 口造り

以下次回に続きます。
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茶道具 (掛花入を作る1)

2010-05-26 22:17:38 | お茶と「茶の湯」と茶道具(茶陶)
掛花入を作る

1) 蹲(うずくまる)を作る。

  現在、蹲と呼ばれている、小さな壷は、最初に出現したのは、鎌倉時代とも、室町時代とも

  言われています。

 ① 蹲の大きさは、高さが、20cm以下、最大径が、約17~18cm程度で、口径は、

   10~11cmが、多いです。

   中型や、大型の壷との違いは、底部分が、比較的大きい事と、首がやや傾いている物が、

   多い事です。

 ② 作品は、電動ろくろで、容易に、作る事は出来ますが、形が単調になり易く、趣が出ませんので、

   紐作りで、紐を積み重ねる方法(輪積み)を、取る方も多いです。

   手で成形する事により、蹲らしい、雰囲気を出します。

 ③ 底は、ベタ底ですが、「下駄印し」が有るのが、伊賀焼や、信楽の壷の、特徴と言われています。

  「下駄印し」とは、長方形の平行した、削り痕が、2~3本付いた物で、下駄の歯に似ている為、

  「下駄印し」と言いますが、目的は、亀板に土を載せて、作る際、土が移動しない様にした為と、

   言われていますが、明らかでは有りません。

   この印しは、出っ張る物(出下駄)と、凹んでいる物(入下駄)が有ります。この底も、鑑賞の

    ポイントと成ります。

 ④ 底を作る

   粗く粉砕した、乾いた粘土を、亀板に薄く振り掛け、均等に拡げます。

   壷の底に成る土を、この上に載せます。こうする事により、素朴で味わい深い、底を作る事が

   出来ます。底はやや大きくして置きます。

 ⑤ 紐を積み上げる。

   予め、作って置いた紐を、積み上ます。輪積みの方法で、一段ずつ積み上げ、内、外から、

   しっかり指で慣らし、繋ぎ目を消し、更に肉厚を。整えます。

 ⑥ 形を作る。

  ・ 首を狭めてますが、手が入らなくなったら、「柄こて」などを使い、表面を形作ります。

   その際、指痕を少し、残す様にすると、趣が良くなるとも、言われています。

  ・ 掛金具を、取り付けない場合、首を紐(シュロや、ツタなど)で、くくりますので、口は広くし、

    丈夫な二重口にします。首は、紐が外れ難い様に、短くします。

    更に、首をやや傾け、アクセントをつけます。

  ・ 掛金具を使う場合は、肩よりやや上に、4~5mmの孔を開けて置きます。

 ⑦  蹲の表面に、桧垣文などの模様や、箆目(へらめ)を付ける時は、土が軟らかい内に、

    行います。

 ⑧ 仕上げ

   やや乾燥したら、作品を亀板から、離します。底に付いた、粉砕した粘土を、取り除き、

   底の角を、全周手で叩き、角を丸めて、形を整えます。

  ・ 底の中央を、掌(てのひら)で、やや押し込み、碁笥底高台風に、する事も有ります。

2) 旅枕掛花入を作る。

以下次回に続来ます。

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茶道具 (掛花入2)

2010-05-25 21:42:29 | お茶と「茶の湯」と茶道具(茶陶)
掛花入の話を、続けます。

5) 裏止めについて

   壁などに、花入れを掛けた場合、孔から水が漏れ、壁にシミを作る事を防ぐ為に、

   又、十分に水を入れる為に、金具を通した孔は、塞ぎます。これを裏止めと、言います。

   昔は麦漆(小麦粉を水で溶き、漆を加えた物)を、使いましたが、乾燥が遅いため、

   使われなく、なりました。

   簡易な方法で、和紙を漆に浸けて、それを張り付ける方法も、有りましたが、強度が弱い為、

   時間が掛かるのと、漆にかぶれるのとで、現在では、余り行われていない様です。

   尚、裏止剤(黒、茶、焦げ茶)を、市販している所も、有る様です。

6) 垂撥(すいはつ)、花釘について

   掛花入を、茶室や床に、飾る際、垂撥の釘に掛ける方法と、打ち付けた釘(花釘)に、

   掛ける方法があります。

  ・ 一般の家の、床の間に、花を生ける場合でも、茶道の決まり事は、役にたつ、はずです。

 ① 垂撥とは、竹(5、7本組の黒竹、煤矢)製や、杉板製の物で、長さ:138、幅:9.5~11cmの

   花入を掛ける為に、使います。これを、床や茶室に掛け、更に花入を掛けます。

  ・ 杉板製の垂撥は、釘が上下に、移動でき、高さを調節できます。
   
    茶室の釘は、床柱の折釘、壁の無双釘、壁に下げる、垂撥用の釘があります。
 
 ② 茶室や床に、釘(花釘)を打ち付け、そこに花入を、掛る。

   釘を打つのにも、釘の種類や、打つ位置、取り付け高さなど、決まり事(約束事)がある様です。

   陶磁器の話とは、あまり、関係ありませんが、花入を掛ける位置と、高さが、判れば良いので、

   興味の無い方は、読み飛ばして下さい。

  ) 花入を、軸の代わりに掛ける場合、床正面の中央に、掛ける釘を、中釘(向釘)と言います。

     昔は鉄製の折釘を、用いましたが、現今では掛物を、掛ける時に、邪魔にならない様に、

     釘の中に、引込む様になっている、無双釘を打ちます。

   ・ 高さは、多少の相違がありますが、普通床上面から、3尺7寸(112.1㎝)を標準としています。

  ) 床柱に打つ花入釘(柱釘)(鉄製の折釘)

     床柱が、客付の方にあれば、中釘より2寸(6㎝)位低く打ち、床柱が勝手寄りの場合は、

     中釘よりも2寸(6㎝)位高く打ちます。

   ・ 客が座って、見上げる様に、なります。

  ) 床天井に打つ蛭(ひる)釘

     主に釣花入や、釣香炉などを、釣る為のもので、小形の蛭釘を、用いますが、

     小間では、床天井の中央に、前後は奥へ、中心線から、1寸(3㎝)位入った処に打ます。

   ・ 但し、書院広間や、その鈎は流儀によって、多少の相違があります。

  ) 床の落掛の内外に打つ釘花入釘、

     落掛では、床の中央部、その外側又は、内側に折釘を打って、釣舟を掛けます。

    (落掛とは、床の前面上部の小壁を、受け止める、下の横木を、落掛(落し掛け)と言います。)

  ) 正月のみに用いる、柳釘(隅打釘、鉄製です)があります。

     柳釘は、四畳半茶席では、床の勝手寄りの隅柱(この柱を塗立柱、塗出柱、楊子柱、

     筆軸柱などと呼びます)に、畳面から、4尺3寸(130㎝)上がり位の高さ、

     天井から約1尺5寸3分(46.4㎝)位、下がった処(席の天井高により、多少の増減があり)に、

     打つ折釘のことです。

以下次回に続きます。 
 
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茶道具 (掛花入)

2010-05-24 21:54:07 | お茶と「茶の湯」と茶道具(茶陶)
掛花入の、話を続けます。

3) 掛花入について

 ① 掛花入の種類 

   蹲る(うずくまる)、 末広掛花入、尺八掛花入、蓑虫形掛花入、雪洞(ぼんぼり)掛花入、 

   蝉形掛花入、旅枕(たびまくら)、南蛮芋頭掛花入、冬瓜掛花入、蔓手花入など種類は多いです。 

 ・ 侘茶の流行により、その風情に叶う、花入として、立鼓形と旅枕形を、美濃で生産する様に

   なりまする。

   旅枕形は、志野焼にも類例が、有すが、立鼓形は、黄瀬戸のみです。

 ・ 伝世品では、干利休所持として伝わる、銘「旅枕」(重文:桃山時代)の黄瀬戸立鼓花入があります。

② 蹲と旅枕について

 ) 蹲とは、人が頭を垂れて、背中を丸め、「うずくまる」様子に、似ている為、後世の茶人が、

    付けた名前と、言われています。

  ・ 元々は、農家で、穀物などの種を、貯蔵して置く為の、小さな壷でした。

    鼠の被害に会わない様に、壷の首に、紐を掛け、梁や天井から、ぶら下げていた物です。

  ・ 越前焼にも、蹲の掛花入が有りますが、これは、元来、お歯黒壷として、使用されていた様です。

    それらを、茶人が、茶道具の掛花入として、取り入れました。

 ) 木の花を入れても、その重さで、花入れが変に傾かず、落ち着いている事から、

    主に、椿等の花の多い、寒(1,2月)に用いられます。

    その為に、金具をつける孔は、肩の上に空けます。金具も、しっかりとした、大き目の物を

    使います。

  ) 旅枕とは、本来は、豆類を入れた壷です。

     その姿が、旅枕(円筒形)に似ている事から、その名が付けられ、茶人が、花入として、

     使う様に成りました。 大きさは、径;8.5~10、高さ:10~20cmです。

  ) 旅枕の様な、花入れは、夏の前後(夏は籠を多く用います)の合間の、季節に使います。

     草花が美しく、入り易いので、なるべく、「きゃしゃに見える」様な、金具にします。

4) 掛花金具(花環)について、

 ・ 花入を、掛ける為に、花入の裏側に、金具を付ける孔が、必要になります。

   又は、花入のくびれた、首の部分に、紐を巻きつけ、吊り下げます。

 ・ 掛花入は、床に置く花入よりも、当然、高い位置に、置かれる事になります。

   更に、花入全体を、15~20度程度傾け、「前のめり」の状態とし、より見易くします。

 ) 金具は鉄製で、割りピン形の物と、割りピンを通す管(筒、パイプ)と、2枚の座金

   (ドーナツ状の丸い薄板)からなっています。

    一般に、黒色ですが、銀色などにメッキした物も、有ります。

    尚、、「べた」と言う管の無い、より安価な物も、あります。

 ) 取り付け方は、割りピンに、管、座金1枚の順に、通した物を、器の孔に外から、通します。

    器の内側より、他の座金を割りピンに通し、割りピンを割り拡げ、止めます。

 ) 割りピンの先端(頭)は、自由に動く、別物の、引っ掛け部があり、丸、楕円、変形楕円

  (花びら型)形などが、有ります。 花入れの形や、景色によって選びます。

   例えば、丸形: 蹲(うずくまる)、瓢 など。 楕円: 旅枕、矢筈、棒の先、粽、尺八などです。

 ) 管(筒、パイプ)の長さは、4.5㎜、9㎜、15㎜、21㎜など、何種類かあります。

    この管の長さによって、花入の傾き加減が、変化します。

5) 裏止めについて

以下次回に続来ます。

 
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茶道具 (花入の置き場所1)

2010-05-22 22:53:41 | お茶と「茶の湯」と茶道具(茶陶)
茶の湯(茶道)には、色々な決まり、即ち、約束事が有ります。

花入を作る人には、関係ない事ですが、一応知っていて、悪い事は無いと、思いますので、

簡単に述べたいと、思います。

・ 花を生ける方法には、流派も無く、自由に生けますが、花入を、何処に置くか(花を何処に飾るか)は、

  決まり(約束事)が有ります。

・ 床(床の間は、俗称です)の主役は、軸(掛け軸)です。

  花はあくまで、従の立場であり、花入は、更に、花を引き立てる、立場となります。

・ 床に、掛け軸の他に、香炉や香合を、飾った時は、花入れを、置かない事が、約束事となっています。

  又、掛花入や釣り花入れも、掛けたり、吊るさない事に、なっています。

2) 床に花を生ける

  ・ 花の位置は、掛け軸の左側(軸先と言います)、中央部(軸元)、右側(軸脇)の何処かに、

    成ります。

  ・ 茶室に於ける、床の位置は、一定ではありません。時代と共に、新しい配置が出てきます。

   a) 上座床(かみざとこ): 千利休の時代は、床は客座側に、位置していました。

   b)  下座床(げざとこ): 点前座の後方、つまり亭主が、点前座に座った時に、床の間が、

     後ろの位置に、来るものをいいます。(江戸初期の、織田有楽=おだうらく、好み)

   C) その他: 小堀遠州好みの、床と点前座が、並べられて、床飾りと、点前作法の両方を、

     客座から同時に見る様な、茶室が作られました。

① 「本床」では、掛物と茶花を、一緒に飾る(諸飾り)場合の、花入の位置は、床の間と掛物によって、

   決まりがあります。

  )縦物の軸の場合は、基本的には、花入の種類に関わりなく、向かって掛物の左側(軸先)に

   置きます。中央(軸元)に置くと、軸が隠れるのを、嫌います。

  ) 横物の掛軸の場合は、花入は種類を問わず、中央(軸元)に置きます。

 ② 「下座床」(げざどこ)での、花入の置き方は、「本床」の場合の逆(右側)になります。

3) 掛花入について

  花入に、金具を付け、床に設けられた釘(花釘)に、この金具を、引っ掛けて、使用する花入です。
  
  花と花入れが、客の位置から一番美しく、見える位置に、取り付けます。

  その為の、取り付けに関して、約束事が存在します。

 ① 掛花入の種類 

   蹲る(うずくまる)、 末広掛花入、尺八掛花入、蓑虫形掛花入、雪洞(ぼんぼり)掛花入、 

  蝉形掛花入、旅枕(たびまくら)、南蛮芋頭掛花入、冬瓜掛花入、蔓手花入など

  種類は多いです。

以下次回に続きます。

 
 
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茶道具 (花入3、花入を造る)

2010-05-21 22:56:23 | お茶と「茶の湯」と茶道具(茶陶)
茶道具の、花入について、話を続けます。

前回、茶花について、お話した様に、茶花には、多くの種類が、有りますが、活けるのは、一種類で、

一枝(ひとえだ)か、二枝(ふたえだ)と、かなり少ない、量と成ります。

それ故、花入の口は、細い物が多いです。

又、茎の長い花や、短い花など有りますから、花入の高さ(深さ)は、花に応じて選ぶ必要が有ります。

(釣り型の花入は、深さが浅い物が多く、深い物は、ほとんど、見受けられません。)

陶磁器の花入には、床の間に置く花入と、掛花入が有りますが、まず最初に、床の間に置く、

花入について、述べます。

1) 床の間に、置く花入を造る

  ① 花入の形

   ) 鶴首型: 下部が、やや膨らみ、上部に行くに従い、首の部分が、徐々に細長く成る、

      又は、ある部分より、同じ細い径が口縁まで、続く形です。

   )竹の子型: 鶴首型の内、胴や首の部分が、竹の節の様に、凸状に出っ張りがある形の物、

   ) 徳利型: 首の短い、鶴首型で、口縁が、外に開いている形。

   ) 砧型: 砧(きぬた)とは、藁や布を叩き、柔らかにする、木製の道具で、下部がやや太く、

      上部が急に細くなっています。 この細い方を、持って、藁などを叩きます。

      特に、茶道では、砧青磁が、珍重されます。

   ) その他: 備前、伊賀の様に、下から上まで、ほぼ同じ径(8~10cm)の物や、瓢(ひさご)型、

      算木型(四方形)、蕪無(かぶらなし=広口で、裾に膨らみが無い)、立鼓(りゅうご)型と言う、

      筒の中央が、極端に細く、「くの字」型に成った物などが、有ります。

2) 砧型の花入を造る。

  ① 大きさについて、

    胴径:約9~11、首径:胴径の約半分、高さ:約13~30cmまで色々有ります。

    胴の高さと、胴から上の寸法は、同じか、胴をやや長くします。

  ② 胴から首に掛けての、肩の形状

    緩い傾斜がある物と、ほぼ水平な(肩の張った)物とが有ります。

   ・ 水平な場合には、造る際、一度に轆轤では、成形できません。

     胴を作り、やや乾燥後、その上に土を載せて、轆轤挽きするか、上部のみを轆轤挽きした物を、

     接着して、造る必要が有ります。(上部が、落ち込むのを、予防します。)

  ③ 口と、底の形状

    口の形も、やや開いた程度の物や、胴と同じ位まで、大きく開いた物、又、口が「クランク」状な

    物など、決める必要が有ります。

    底は、碁笥底高台や、ベタ高台が多いです。

  ④ 耳付いて

    砧型の首の部分に、左右対称に、耳が付いているのが、普通です。

    (耳の無い物を、槌花入と言います。)

    耳には、鳳凰耳(ほうおうみみ)が、多いですが、鯱(しゃち)、鯉(こい)、雲、龍、鳥、管

    などが、付けられています。

3) 砧の代表的な作品

   国宝: 鳳凰耳砧形花生(銘:万声=ばんせい) 高さ:30.7、底径:11.4 口径:11.0

   重文: 砧青磁鳳凰耳花生(銘:千声)、 重文: 青磁砧形花生

以下次回に続きます。
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茶道具 (花入2、茶花)

2010-05-20 22:40:12 | お茶と「茶の湯」と茶道具(茶陶)
花入の話を、続けます。

4) 茶花について

 ① 千利休が、利休七則で、「花は野にある様」と、述べている様に、自然のままに、投げ入れる事を、

   基本にします。

   又「南方録(なんぽうろく)」の中で、「小座敷の花は、必ず一色を、一枝か二枝、軽く活けるが良し」と

   利休が、言われているい様に、一種類の花を、一枝か二枝を、軽く入れる事を、目標としています。

  ・ 華道と違い、茶花を活けるのに、流派はありません。
  
 ② 茶会の趣向に応じて、軸(掛け軸)と、花を同時に置く場合と、軸又は、花のみの場合が有ります。

   茶花も季節に応じて、草花が多い、夏の風炉の風情や、椿(つばき)などの木の花を、一輪入れる

   炉の風情など、季節感を大切にします。

 ③ 茶花には、禁花(きんか)と言い、活ける事を、好まない花もあります。

   即ち、香りの強い花(沈丁花など)、名称の悪い花(女郎花=おみなえしなど)、

   刺(とげ)のある花などの他、西洋の花も好ましい、花ではありません。

 ④ 茶花として使う、山野草や草花は、300種類以上有ります。以下その種類を、述べます。

  一月 : 蝋梅(ろうばい)、 水仙 、侘助(わびすけ=椿の一種)など

  二月 : 梅、 椿、 寒木瓜 (かんぼけ)など

  三月 : 白、紫木蓮 (もくれん)、黄梅 、枝垂柳 (しだれやなぎ)、猫柳、三又、片栗、菜の花 など

  四月 : 雪柳、 花水木 、土佐水木 、木瓜 、山吹、 錨草 (いかりそう)、宝鐸草 (ほうたくそう)

  五月 : しゃが 、海老根、都忘れ 、菖蒲、鉄線花 、浜昼顔 、矢車草、 紫蘭(しらん)など

  六月 : 紫陽花(あじさい)、二人静、 蛍袋(ほたるぶくろ)、 おか虎の尾、 鳴子百合、
 
       紫露草 、京鹿子、 花菖蒲 、大待宵草 、下野(しもつけ)、 額紫陽花 、浜梨 、破れ傘 、

       月見草 、吾亦紅(われもこう)など

  七月 :  夏椿、 河原撫子 、昼顔 、弟切草(おとぎりそう)、露草、 大葉擬宝珠(ぎぼうし)、

       待宵草、金水引、 藪茗荷、 蕎麦菜 、朝顔など

  八月 :   松虫草 、 鳥兜(とりかぶと)、 葛(くず)、 秋海棠 、山不如帰(やまほととぎす)、

       沢桔梗、睡蓮(すいれん)、 千日紅、 鶏頭 など

  九月 ;  芙蓉(ふよう)、 萩、桔梗 (ききょう)、すすき、 水引 、 つりがね人参、

       嫁菜、秋明菊(しゅうめいぎく) 、 大文字草、 菊類、 藤袴 など

  十月 :   竜胆 (りんどう)、不如帰(ほととぎす)、 藤袴、秋桜、烏瓜(からすうり) など

  十一月 :  紅葉(もみじ) 、白侘助 など

  十二月 : 蝋梅 (ろうばい)など

 ⑤ 茶道で使用する茶花は、茶花を扱っているお店で、購入できます。

   勿論、自宅の庭や、プランターなどで、比較的簡単に、栽培できる物も多いです。

  茶花は、和種を、中心にした、雑草に近い、野生種の物も多いです。

又  茶花の種類に拠って、花入の選択も、大事な要素に成ります。

以下次回に続来ます。
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