わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

素朴な疑問 298 陶芸の手順とは15(施釉作業の手順6)。

2017-07-31 10:16:00 | 素朴な疑問
陶芸に限らず、何事にも手順があります。手順を忘れたり、手順前後の誤りにより、思いも拠らない

結果を招く事は多いです。

2) 施釉の手順。

 ⑦ 施釉を行う。(前回からの続きです。)

  ⅵ) 施釉の実際。 以下は当方のやり方ですので、皆様とは異なるかも知れません。

   a) 漬け(浸し)掛けの場合、施釉時間は最短で3秒、最長でも5秒で終わらせます。

    即ち濃い目(厚掛け)で5秒、薄目で3秒となります。4秒が中間の厚みです。

    これ以下でもこれ以上でも、釉の厚みは薄くなります。但し時間を置いて二重掛けした場合は

    この限りではありません。

   b) 袋物と呼ばれる壷や徳利の様な場合、先に内側を塗り、その後外側を施釉します。

    内側は柄杓で釉を2~3割程度流し込み、作品の口を掌で蓋をし逆さにして5回程上下に振り

    内側を塗り、口を真上にしてから、傾け容器に中の釉を外に出します。手で蓋が出来ない程度

    口が大きい場合には、跡で述べる流し掛けとなります。10秒程で釉の滴が切れますので、

    真上に向けて机に置きます。その際口縁周辺に釉が飛び跳ねたり、流れ出したりした場合、

    釉剥がしやブラシ等で取り去ります。外側に施釉する以前ですので、容易に気兼ねなく取り

    除く事ができます。尚、袋物は内部が見えませんので、釉であれば何でも良い訳です。

    一般には畳み付き(糸尻)に塗られた釉を剥ぎ取った際に集めた物を用います。

    即ち、釉の廃物利用です。色々の釉が混じり合いますので、一概に言えませんが、グリーン

    掛かった色に発色する事が多いです。

   c) 漬け掛けの一種に「ガバ漬け」があります。

    茶碗など口縁がやや広く、さほど深みの無い作品を施釉するのに向いたやり方です。

    作品の内側と外側を同時に施釉する方法です。作品を次々に施釉しますので効率が良いです。

    慣れないとかなり難しい技法ですが、慣れた方には、便利な方法です。作品の高台を持ち、

    釉の入った容器に逆さにし、高台内まで沈め急に引き上げ、内側の気圧を下げ内側に釉を引き

    込む方法です。引き上げる際、作品の口縁が釉から離れる瞬間に激しく作品を上下するのが

    「コツ」です。内側が上手に施釉出来ていれば「パカ」と良い音がします。但し内側の施釉

    時間は1秒以下ですので、釉は少し濃い目にして置かなければ成りません。失敗すると内側

    の底周辺が施釉出来ません。その際には内側を柄杓で施釉して下さい。

   d) 一般的な漬け掛けによる方法。

    作品全体が入る、大きな容器に釉を満たす様に準備します。茶碗などの小物の場合には、

    高台を持ち、作品をやや斜めにし、口縁を釉の中に沈めます。その際右ないし左回転に強く

    捻りを与え、釉に漬けた状態で、捻りを解く方向に回転を戻す様にして、作品の内外を一度に

    塗ります。一回転したら引き上げ、滴を切り手板に取り(載せ)ます。

    皿等の場合、高台が持てる物では、上記と同様な方法をとりますが、大皿の様に高台が持て

    ない場合には、釉の中を通り抜ける様に施釉します。即ち、先に釉に触れた部分から釉の

    外に出します。即ち、先に入れた部分が先に出る事で、施の厚みを均等にします。

    出来れば、大皿の縁周辺を両手で摘む様に持ち、釉をくぐらせる段階で両手を離し、次いで

    引き上げる手のみの片手で吊るす様に引き上げます。吊るした状態で底に手板を被せ手板を

    水平にしながら取り上げます。この方法で指跡は一箇所で済みます。

    尚、注意する事は、皿の中に釉を貯めた状態で持ち上げない事です。釉の重みで指で持った

    縁部分が割れる事もあるからです。

   e) 小さな手板を用いると、濡れた作品を触らずにテーブルに置く事ができます。

    施釉した直後は作品に触れる事は出来ません。触れた部分の釉が剥がれたり、指跡となって

    しまいます。釉が乾き手に持てる様になるには、約一分程度係ります。

    そこで手板が必要になります。大きさは横幅5~7、長さ10~15cm程度の一枚板で、

    足は付けません。足があると板がスムーズに入らず邪魔になります。

    使い方は、作品の高台を三本の指で支え施釉した後、滴を切る為10秒程そのまま保持して

    から作品を真上に上げます。親指と中指の間に、上記手板の角を斜めに差し込み、高台の下

    を支えます。高台の三分の二が板に載れば安全です。三本の指を離し、手板に載せ手板ごと

    テーブルの端に移動します。その際、手板を持った手はテーブルの外にあり、板が水平で

    ある事が大切です。板が傾くと、作品も傾き板から転げ落ちます。テーブルの上に載ったら

    板をスライドさせ、より安全な場所に移動させます。

   f) 流し掛けの方法。

以下次回に続きます。
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素朴な疑問 297 陶芸の手順とは14(施釉作業の手順5)。

2017-07-27 15:41:55 | 素朴な疑問
陶芸に限らず、何事にも手順があります。手順を忘れたり、手順前後の誤りにより、思いも拠らない

結果を招く事は多いです。

2) 施釉の手順。

 ⑦ 施釉を行う。

   施釉作業は基本的には一発勝負です。間違った場合再度やり直すのは、釉を剥がしたり、

   作品を綺麗にする為など、多くの手間が掛ります。

  ⅰ) 施釉を行う前に、どの釉(場合によっては複数の釉)をどの様な方法で行うかは、頭に

   描いておく必要があります。

  ⅱ) 使用する釉の濃度の調節を行う。

  ⅲ) 素焼きした作品に施釉するのが普通ですが、素焼きせずに直接施釉する方法があります。

  ⅳ) 素焼きした作品は、一部の技法を除き、完全に乾燥させて置く事です。

    (以上までが前回の話です。)

  ⅴ) 施釉する際問題になるのは指跡です。

    一般の作品では輪高台が多く、この高台部分を右又は左手の親指、人差し指、中指の三本の

    指で摘み、指跡が出来るだけ少なくして施釉します。しかし、碁笥底高台の様にしっかり持つ

    場所が無い為、底周辺を持ったり、大皿の様に高台部分が五本の指でも、片手で持てない

    作品も多いです。この様な場合どうしても指跡が残り易くなります。

    但し、施釉する際には、しっかり作品を保持しなければ成りません。良くある事故に施釉時に

    作品を釉の容器に落として仕舞う事があります。これは持ち難い形状であったり、指跡を少

    なくしようとして、十分保持出来ない(しない)事が原因です。

    基本的には指跡は無い方が良いのですが、抹茶々碗などでは、五本の指で鷲掴みにし、あえて

    指跡を残し、模様の一部とし景色と認めて、指跡が鑑賞される事も多いです。

   a) 漬け掛け、流し掛けの場合、何処かに指跡が残り易いです。

    但し、指跡を出来るだけ少なくする方法や、指跡を補修する方法もあります。

    尚、指跡とは、作品を持った際、その部分のみが施釉できず、素地が指の形に露出する事を

    言います。指跡の周辺は釉が他の部分より厚く塗られています。これは毛細管現象の結果で、

    指と素地の狭い隙間に釉が多く流れ込みで起こります。その為、指跡はかなり目立つ存在に

    なります。勿論持ち方によって指跡の形も変わります。指先で摘む場合や、指の腹を使う

    場合が多いです。

   b) 指跡を少なくする方法に、あらかじめ作品を持つ指の先端部又は腹を、釉に漬けて汚して

    おく事です。指に付いた釉が作品に転写する事で、指跡を目立たなくする事ができます。

    更に、指跡周辺に厚く掛かった釉を指等で削り(こすり)取り、釉を薄くする事で指跡を

    目立たなくする方法もあります。

   c) 指跡の補修は、施釉した直後に指先又は筆を用いて、釉を塗って綺麗にします。

    釉が十分乾燥する前であれば、補修跡は目立ちませんが、乾燥後に補修を行うと、塗った跡が

    凸凹して目立ち易くなりますので、早めに処置します。

   d) 施釉の技法によっては、指跡を残さない方法もあります。

    指跡は、作品を持った手が直接濡れた釉に触れる事で起こります。それ故、持つ位置を次々

    に換えて、釉が持ち手に掛からない様にすれば良い訳です。尚、施釉終了後約10~20秒後

    であれば、施釉した部分は乾燥しますので、素手で持つ事が可能になります。

    施釉を一度の作業で終わらせ様とすると、どうしても指跡が残ります。その為、二度又は

    複数に分けて施釉する事で、指跡の無い作品に仕上げる事が出来ます。例えば、右(又は上)

    半分を先に施釉薬し、その後左(又は下)半分を施釉する方法です。又吹き掛けの方法も

    指跡は残りません。吹き掛けと同時に釉が乾いてしまう為です。

  ⅵ) 施釉の実際。

以下次回に続きます。
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素朴な疑問 296 陶芸の手順とは13(施釉作業の手順4)。

2017-07-26 11:14:21 | 素朴な疑問
陶芸に限らず、何事にも手順があります。手順を忘れたり、手順前後の誤りにより、思いも拠らない

結果を招く事は多いです。

2) 施釉の手順。

 ⑦ 施釉を行う。

   施釉作業は基本的には一発勝負です。間違った場合再度やり直すのは、釉を剥がしたり、

   作品を綺麗にする為など、多くの手間が掛ります。

  ⅰ) 施釉を行う前に、どの釉(場合によっては複数の釉)をどの様な方法で行うかは、頭に

   描いておく必要があります。

  ⅱ) 使用する釉の濃度の調節を行う。

  ⅲ) 素焼きした作品に施釉するのが普通ですが、素焼きせずに直接施釉する方法があります。

   (以上までが前回の話です。)

  ⅳ) 素焼きした作品は、一部の技法を除き、完全に乾燥させて置く事です。

   a) 作品に釉が貼り付くのは、作品が水を吸い取る為です。即ち、水が吸収されて釉が表面に

    取り残された結果です。それ故、水を吸収出来ない状態では、表面に貼り付ける事はできま

    せん。又、施釉時間が数秒と短い理由も、時間が長くなると素地が水分をそれ以上吸収できず

    表面に載った釉が逆に流れ出したり、釉が薄くなってしまいます。

   b) 水の吸収量は、素地の肉厚と釉の濃度によって左右されます。

    肉厚の場合には、大量の水を吸収できますので、釉も厚くする事も可能です。逆に肉薄の場合

    水の吸い込み量も少ないですので、短時間に施釉する為、釉が薄くなります。肉薄の作品に

    釉を厚く掛けたい場合には、一度掛けた後時間を置いて素地を乾燥させて、再度釉掛けを

    行うか、濃い目の釉を使う事です。又、スプレー掛けでは、一度に多量の水分が吸収され

    ませんので利に適った方法です。

   c) 作品の一部を水で濡らし、その部分のみを薄く施釉する方法があります。

    水で濡らす方法には、一部水に漬ける、筆(刷毛)に水を含ませ作品の表面を濡らす、

    濡れたスポンジで拭く等の方法があります。当然やり方で濡らす程度に変化があります。

    良くある要望に「釉でグラデーションを付けたい」がありますが、実際には中々難しい要望

    です。釉を徐々に濃くしていけば良いのですが、数秒の短時間内での連続的な濃淡を付ける

    事は、かなり困難です。連続的に水のみで濃淡を付ける事は、釉よりもより容易になります。

    理想的にはスプレー掛けが向いています。 尚、釉は薄くする事により、本来の色が出ない

    事が多いです。所定の色にするには、その釉独特の濃さが必要で、カタログ等で表示される

    事も珍しくありません。その為、例え技術的に濃淡を付ける事が可能であっても、グラデー

    ションが不可能な釉も存在します。どんな釉であっても、薄い施釉ですとやや黄色身を帯びた

    焦げ茶色になります。

   d) 釉を二重掛けする場合も、釉の濃度と施釉するタイミングも考慮する必要があります。

    二重に掛ける事は、釉が厚く掛かる事になります。釉が厚く係り過ぎると、釉の剥がれや、

    縮れ現象を起こし易くなります。それ故、一方又は両方の釉を薄くする必要があります。

    釉の色は後に塗った方(表面側)がはっきり出易いです。両方の釉を混ぜ合わせた様に表現

    したい場合には、一度目の施釉直後に重ねて施釉する事です。即ち、乾き切らない内に重ね

    塗りをする事で、境目を「ぼかす」事ができます。釉によるマーブル模様を付ける場合には

    この方法をとる倍もあります。(二重掛けした直後に急激に作品を回転や左右上下に動かす)

    尚、時間を置いて二重掛けすると、境目もはっきりしてします。

   e) 重ね塗りをする順序を逆にすると、発色が全く異なる場合もあります。

    特に、流れ易い釉の上に掛けた釉は、流れ難い釉であっても、下地に引っ張られ流れ落ち

    二色が混ざり合う結果になります。基本は流れ難い釉の上に流れ易い釉を掛けると効果的です

    同様の事は、熔ける温度に差のある釉を重ね掛けする時にも言える事です。

  ⅴ) 施釉する際問題になるのは指跡です。

以下次回に続きます。
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素朴な疑問 295 陶芸の手順とは12(施釉作業の手順3)。

2017-07-24 15:29:57 | 素朴な疑問
陶芸に限らず、何事にも手順があります。手順を忘れたり、手順前後の誤りにより、思いも拠らない

結果を招く事は多いです。

2) 施釉の手順。(前回の続きです。)

 ⑦ 施釉を行う。

   施釉作業は基本的には一発勝負です。間違った場合再度やり直すのは、釉を剥がしたり、

   作品を綺麗にする為など、多くの手間が掛ります。

  ⅰ) 施釉を行う前に、どの釉(場合によっては複数の釉)をどの様な方法で行うかは、頭に

   描いておく必要があります。何故なら多くの施釉の作業は3~5秒程度と、とても短時間で

   終わってしまうからです。特殊な場合(スプレー掛け等)を除き、作業の途中で考える暇も

   無い程です。

  ⅱ) 使用する釉の濃度の調節を行う。

   a) 釉の原料は、各種灰やカルシュウムの様な溶融剤の他、着色用の金属類も入りますが、

    主に長石や珪石などの岩石類を粉末状にし、水で溶いた状態になっています。それ故、

    使用直後を除いて容器の底に沈殿しています。即ち、水分と釉の成分が分離したり、上部が

    薄く下部が濃くなっています。その為、均一な濃度にしてから使用する必要があります。

    釉の種類によっては、一品を施釉した直後でも、沈殿を開始している物もあります。

    又、長らく使用しないと水分が蒸発し、濃度が濃くなっている場合が多いです。

  b) 容器に手を入れて掻き混ぜます。釉が固くなっている場合には、カンナ(鉋)等を用いて

    底を引っ掻く様にして、少しづつ剥がし溶かします。量が多い場合には、釉を掻き混ぜる

    専用の電動用具も市販されています。

    場合によっては完全に水分が蒸発している事もあります。中途半端の濃度より、完全に水分

    が無くなった状態の方が、釉は早く水に溶ける性質がありますので、あえて水を抜いて乾燥

    させた後、水分を加えると早く全体を溶かす事が出来ます。

   c) 釉を少量使用する場合は、容器の全部を溶かす必要はありません。

    例えば、少量のスプレー掛け、少量の漬け掛け、イチインや筆(刷毛)描きなどです。

    使いたい分よりやや多目の釉を別の容器に移し、水を添加する事で必要量の釉の濃度を調整

    する事が出来ます。当然ですが、水よりも湯の方が早く溶けます。

   d) 釉の濃度を測定する「ボーメ計」と呼ばれる、ガラス製の浮き計り(比重を計る)があります

    が、必ずしも必要ではありません。慣れた方(数回経験した人)では、釉の入った容器を手で

    攪拌した際、手に付いた釉の手触りや色の濃さで判断できます。

   e) 釉を薄くするのは容易ですが、濃くするには手間が掛ます。

    薄くするには、徐々に水を加える事で達成できますが、濃くする為には、水分を抜くか、

    新たに釉を加える必要があります。その為、水分と分離している状態で上部の水を掬い取り、

    やや濃度を濃くした状態で攪拌し、徐々に水を加えて濃さを薄める方法をとります。

   f) 釉の種類によって濃く掛けた方が綺麗な色になる場合と、薄めに掛けた方が良い場合があり

    ます。勿論、施釉する時間によって施釉の厚みに差を付ける事も出来ますが、短時間の範囲

    内での違いですので、実際に濃淡を付ける事は難しいです。それ故、予め釉に濃淡を付ける

    方が実際的です。尚、釉の厚みは一般に0.5~2mm程度と言われています。

     薄い: 石灰透明釉 < 色釉 < 灰釉 < 志野釉 : 濃い

  ⅲ) 素焼きした作品に施釉するのが普通ですが、素焼きせずに直接施釉する方法があります。

   これを「生掛け」と呼びます。素焼きの手間を省く為と、素地と釉の密着度を良くする(?)為

   や、発色度合いも若干差が出るとも言われています。但し「生掛け」の作品は、施釉時や本焼

   きで作品が壊れる(形が崩れる)事が多いですので、余り推奨できません。

  ⅳ) 素焼きした作品は、一部の技法を除き、完全に乾燥させて置く事です。

以下次回に続きます。

 
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素朴な疑問 294 陶芸の手順とは11(施釉作業の手順2)。

2017-07-20 12:03:26 | 素朴な疑問
陶芸に限らず、何事にも手順があります。手順を忘れたり、手順前後の誤りにより、思いも拠らない

結果を招く事は多いです。

2) 施釉の手順。

 ① 作品の選別。

  素焼き終了時に「割れやひび」の入った作品は、施釉せず廃棄処分になります。

 ② 削り滓(かす)や、小さな傷は紙やすりで削り取ります。

 ③ 作品の上に載っている埃(ほこり)や、「紙やすり」から出た粉を取り除く。

 ④ 下絵付けをするかどうかを選択する。

 ⑤ 釉の種類を選択する。

  ⅰ) 作品の用途によっても色が限定される場合もあります。

  ⅱ) 釉は色だけでは無く他の要素も考慮する必要があります。(以上が前回までの話です。) 

 ⑥ 施釉の方法を選択する。

  施釉には大きく分けて、漬け(浸し)掛け、流し(柄杓)掛け、吹き(スプレー)掛け、スポイト

  掛け(イッチン)、筆(刷毛)塗り等があります。特殊な方法として釉の粉末を振掛ける方法も

  あります(主に各種灰を掛ける事が多い)。各々長所もあれば欠点もあります。それらを考慮

  して適する方法を決めます。

  ⅰ) 作品の大きさで決る場合もあります。

   小さな作品であれば、どの方法を選択しても良いのですが、作品が大きくなるに従い選択も

   限定されてきます。例えば、大皿の場合は流し掛けが無難(一般的)な方法です。

   又大きく背の高い作品の場合では、漬け(浸し)掛けでは釉を入れる容器が大きくなり釉の量

   も多量になりますので、難しくなり、他の方法を選択する場合が多いです。

  ⅱ) 釉の量によって決る場合もあります。

   手持ちの釉の量が多い場合には、どの方法をとっても良いのですが、手持ち量が少ない時には

   吹き(スプレー)掛けやイッチン、筆塗りなどの方法を取ると釉が少量ですみます。

  ⅲ) 細かく釉を塗り分ける場合にも、吹き(スプレー)掛けやイッチン、筆塗りなどの方法

   を取ります。吹き掛けの場合は、マスキングの技法を取る事が出来、細かい塗り分けが可能

   です。細い線で模様を描く際には、イッチンが適します。

  ⅳ) 釉を一様の厚みに掛けるに適した方法は、漬け(浸し)掛けです。又、表面が凸凹した

   作品にも漬け(浸し)掛けが適します。他の方法では、釉の厚みに斑(むら)が出来やすく

   成りますが、この色斑が良いと感じる方もいますので、決して悪い訳ではありません。

   但し、筆(刷毛)塗りの場合、釉の厚みが薄くなり易いですので、濃い目の釉を使うか、数回

   重ね塗りする事をお勧めします。

  ⅴ) 同一作品に二色以上の釉を使う場合、複数の施釉方法を取る場合もあります。

   例えば、全体を漬け掛け瀬釉し、その上から流し掛けで施釉する方法です。又、イッチンは他の

   施釉方法と併用するのが一般的です。又、器の内外で色を変えたい場合、内側は流し掛け、

   外側は漬け掛けで行う事も多いです。

  ⅵ) 釉の種類が多くなるに従い、置き場所に苦労しますので、保管場所が少なくて済む方法を

   選ぶ場合もあります。又施釉の場所で施釉方法が限定される場合もあります。例えばスプレー

   掛けでは、釉の飛沫が四方に広がりますので、出来るだけ屋外で作業したいです。

  ⅶ) 施釉の仕方によって、使用する用具も異なります。

   例えば、浸し掛けであれば作品に応じて、各形の大きな容器が必要になります。

   又、釉鋏(ゆばさみ)と言う専用の用具を使う事で、指跡を残さない方法もあります。

   流し掛けであれば柄杓が必要です。スプレー掛けであればスプレー(霧吹き)が、イッチンで

   あればスポイトが、筆描き成らば、数種類の筆や刷毛が必要な用具に成ります。

  ⑦ 施釉を行う。

   施釉作業は基本的には一発勝負です。

以下次回に続きます。
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素朴な疑問 293 陶芸の手順とは10(施釉作業の手順1)。

2017-07-13 13:54:39 | 素朴な疑問
陶芸に限らず、何事にも手順があります。手順を忘れたり、手順前後の誤りにより、思いも拠らない

結果を招く事は多いです。

1) 全体の手順 (前回の続きです。)

 ⑤ 底削り後の作業。

  底削りで完成の作品もありますが、作品によってはその後に行う、組み立てや装飾作業等もあり

  ます。ここからは主に手捻り(手)作業になります。即ち作品がある程度乾燥し、機械的強度が

  出た後に行います。

  ⅰ) 組み立て作業。

   急須の様に個々の部品を轆轤挽きした後、適度に形を成型してから接着して形を作ります。

   同様に取っ手の付いたコーヒーカップなども、持ち手を接着します。

   背の高い作品では、上下に分けて作った部品を繋ぎ合わせて、作品に仕上げる事もあります。

  ⅱ) 装飾作業。

   化粧掛けや掻き落とし、透かし彫り、レリ-フ(浮き彫り、貼り付け)模様等の装飾作業は、

   底削り後で素地が変形しない程度に乾燥させた後にを行います。

   但し、作品を変形させたい場合や、「へら目」の様に素地が軟らかい方が、しっかり浮き出

   せる場合には、底削り前に行います。

  ⅲ) 作品が完成したら素焼き作業に入ります。

   素焼きを行う為には、十分乾燥させておかなければ成りません。不十分な乾燥ですと、窯の中

   で水蒸気爆発を起こし、作品がバラバラに壊れる事もあります。

   素焼きの終わった作品は、次に施釉するのが一般的です。勿論、焼き締め陶器の様に、施釉

   しない作品もあります。

2) 施釉の手順。

 ① 作品の選別。

  素焼き終了時に「割れやひび」の入った作品は、施釉せず廃棄処分になります。

  素焼きではほんの小さな「割れやひび」であっても、本焼きするとその傷は大きく広がります。

  その為、特別な作品以外は、この段階で廃棄処分にするのが正解です。勿論素焼きした後の土は

  元の粘土には戻れません。但し時間を掛けて作った作品や、二度と同じ様には出来ない作品の

  場合には、傷や割れ目を補修してから、施釉を行います。尚、素焼きした作品を補修する場合も

  あります。その為の補修剤も市販されています。

 ② 削り滓(かす)や、小さな傷は紙やすりで削り取ります。

  乾燥の甘い作品の底削りでは、削り滓が作品に「こびり付き」のを気付くかずに、素焼きをして

  しまう場合もあります。又爪跡等の小さな傷がある場合にも、出来るだけ目立た無い様に「紙

  やすり」等で修正します。サインを入れる場合、手書きですとサイン周辺が毛羽立ち(バリと

  も言います)易いです。手指で触れる位置にある場合、バリが引っ掛かり手指を傷つける場合も

  ありますので、丁寧に取り除く事です。

 ③ 作品の上に載っている埃(ほこり)や、「紙やすり」から出た粉を取り除く。

  埃などは、釉を弾き釉禿(ゆはげ)の原因になります。「ハタキ」を掛けたり、水拭くしたり、

  水洗いして取り除きます。

 ④ 下絵付けをするかどうかを選択する。

  下絵の具は伝統的「呉須」や「鬼板」、「酸化銅」などの他、現代では赤など華やいだ絵の具も

  登場しています。

 ⑤ 釉の種類を選択する。

  一番悩む処です。施釉する事は作品に着物を着せる事と同じです。即ち馬子にも衣装と言う様に

  作品の形云々よりも、釉の色で作品の価値が上がる事が多いです。勿論色は「焼き」によっても

  大きく変化しますので、釉の色=「焼き」の良し悪しとも言えます。

  作品を作る前から、この様な色に仕上げたいと考えて作品作りに取り掛かる場合もありますが、

  多くの人は素焼きが出来上がった後に考える事も多いはずです。

  ⅰ) 作品の用途によっても色が限定される場合もあります。

   a) 特に食器類であれば、器に盛る料理を引き立て、美味しく見せる色で無ければなりません。

    必ずしも器の色が華やかではなく、やや控えめの色が長く使って貰える器である場合が多い

    です。又湯呑み茶碗の様に、お茶の濃度を気に掛ける場合には、お茶の色が判別できる

    白っぽい色が好まれます。

   b) 花瓶などの場合には、花を引き立たせる色にする場合が多いです。

    器はあくまでも脇役であり、主役でる花の前に出て、主役を食っては成りません。

    但し、控えめと言っても、完全に器の存在を消して仕舞うと、存在意義が無くなりますので

    ある程度の存在感のある色に仕上げる必要があります。

   c) 壷などの置物の様に、作品単体で飾る場合には、自己主張する色に仕上げる必要があり

    ます。但し飾る場所も考慮する必要もあります。ご自分で使用する分には、飾る場所を考慮

    して、色付けを行う事も出来ますが、作品として販売する際には、どの様な方がどの様な使い

    方をするかは不明です。(但し、注文品は除く)それ故ご自分の判断で決める事に成ります。

  ⅱ) 釉は色だけでは無く他の要素も考慮する必要があります。

以下次回に続きます。
   
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