わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

窯を築く 2 窯の設計 1

2016-05-30 14:02:06 | 陶芸の窯を築く
窯を作るに当たって、必要な事柄は図面化する必要があります。

最初にやる事は、全体のレイアウト図です。即ち、窯の位置だけでなく、窯詰めの際の人の動き

(動線)や窯出しの際の作品を並べる場所等、プロパンガスの場合はボンベの置く位置も決めておく

必要があります。勿論、ボンベの交換もありますので、人が出入りし交換し易い位置である事です。

何処の様に配置するかと言う事がレイアウト図になります。

自作の窯の場合、移動用のキャスターは付いていないのが普通です。それ故、一度築いてしまった

窯は容易に移動させる事は難しくなりますので、予め十分検討して置く事が大切です。

特に敷地が狭い場合には、念入りに配置を考えておく事です。

但し、本格的に設計図(機械設計、構造図)を描く事の出来る方は、極少数の方のみと思われます。

それ故、全体が見渡せる概観図、鳥瞰図又は大まかな図面でも十分です。細かい部分も必要に成る

かも知れませんが、その都度図面化する事です。例えば、耐火煉瓦の積み方も、壁の厚みをどの位に

するかによって色々な方法がありますので、どの方法を採るかによっても、窯全体の大きさに関わり

ます。尚、窯の壁の厚みは窯の冷え方にも関係します。(結晶化を促すには壁を厚くする事です)

図面から設置に必要な土地の面積や区割り、鋼材(窯の外枠用)、耐火煉瓦(レンガ)の量、

耐火モルタル等の必要量が割り出されます。勿論、数分の一の縮尺で十分です。

1) 窯の種類を選定する。電気、ガス、灯油、薪の中から選ぶ。

 ① 窯の種類に拠って構造に違いがあります。薪窯(特に窖窯)の場合は、直接地面の上に築くか

  半地下式事が多いのです。他の種類の窯の場合は、地面より浮かせた構造になる事が多いです。

 ② 電気の場合は焚口は設けませんが、他の窯には単数又は複数個の焚口が必要です。

  どの様な燃料を使う窯によっても、焚口の構造に違いがあります。

 ③ 窯の扉の位置や開く方向も大切です。窯詰めや窯出しのし易い構造出なければ成りません。

  扉の開閉もスムーズに行える事も大切です。又、熱伝対温度計は是非とも欲しい物です。

  取り付け位置も考慮する必要があります。

2) 設計時に用意する物。

 ① 各種の参考資料。なるべく多くの資料を揃える事です。

  現在の燃料を使う窯のほとんどは、倒炎式の構造に成っています。即ち、側面又は裏面下部から

  上昇した炎は丸みのある天井まで昇り、下部に向かい底面(又は更に下)に設けられた煙道から

  煙突に抜け外部に放出される構造に成っています。これは、窯内の温度差を少なくする為の構造

  です。その為、窯の扉も前面又は横面に設ける事になります。現在では、窯詰めが便利の様に

  シャトル式の物もありますが、自分で築く窯の場合は、窯やシャトル台などの構造が複雑に

  成りますので、この際考慮しない事にします。

  一方電気窯の場合は、天井に丸み(アーチ)を付ける必要がありませんので、扉も天板に設ける

  事が出来ます。この場合窯詰めは上部からになります。

  陶芸の窯を作っているメーカーのカタログからも、窯の構造を読み取る事が出来ます。

  ) 燃料の種類によって区別されているはずですので、ご自分が作ろうとしている窯はどれに

   相当するか見比べる必要があります。

  ) 窯の内寸を決める。(本焼き時の作品詰め込む量が決ります。)

   a) 一度に本焼きする作品の量で決まります。小型の窯で回数で稼ぐ方法と、一度に大量の

    作品を焼く方法があります。前者の場合小回りが利きますので、急ぎの仕事がある場合、

    巧く対応が可能です。但し焼く回数が増えますので作業的には「きつく」なります。

   b) 縦に長い窯、横幅のある窯、奥行きの深い窯、奥行きが浅い窯。

    使い易さと燃料の効率に関係してきます。但し窖窯の場合は別の話になります。

    各々長所と欠点があります。例えば奥行きの深い窯では、作品を多く詰める事が出来、

    熱を保持するのに適しますが、窯詰めの際大変です。横幅のある窯は、窯詰めや窯出しが

    容易ですが、扉も大型に成り易く、窯内部の温度差が出易い構造とも言えます。

   c) 燃料の違いによってバーナの種類も異なり、取り付ける数や取り付ける位置も違います。

    どの様に取り付けているかも参考になります。自然燃焼方法のガス窯の場合は、窯の左右に

    複数の焚き口を設ける事に成ります。その為横方向に長く成ります。

    灯油窯や強制燃焼方式のガス窯は、焚き口が一つの場合が多いです。(大型な窯では複数に

    なります。)この場合も側面又は裏面に設けますので内寸も大きくなります。

   d) 棚板から窯の内寸が決る場合があります。

    例 あるメーカーの市販されている棚板(メーカーによって厚みの寸法が異なる場合有り)

    ・ 正方形(縦x横x厚み):カーボランダム製

     250x250x10mm。300x300x10mm。320x320x10mm。

     330x330x10mm。350x350x10mm。450x450x10mm。

    ・ 長方形

     350x300x10mm。350x400x10mm。350x450x10mm。

     400x450x13mm。400x500x13mm。

    既存の棚板を使う場合、一段に何枚使う(敷く)かによって自然と窯の容量(作品量)が

    決まります。更に、焚き口(バーナー)の取り付け寸法を加味して内寸が決ります。

    尚、バーナー類の寸法も、メーカーのカタログから知る事ができます。

以下次回に続きます。
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窯を築く 1 準備

2016-05-26 14:35:01 | 陶芸の窯を築く
陶芸の窯を築くに当たって、予め計画を立て確認をしておく必要があります。主な事項は以下の事柄

です。

1) 窯を築く場所の確保。屋内か屋外か?

 広い敷地であれば、専用の小屋を建てる事も可能ですし、屋外であっても工房や母屋から離れた

 場所に築く事が可能です。しかし都会の様な狭い場所では、設置場所を探すのも大変です。

 窯の種類によっては、屋内に置いた方が良い物と、屋外に設置する方が良い場合があります。

 尚、屋外に設置する場合でも、雨を凌げる屋根は必需品です。即ち窯は雨に対してすこぶる弱く、

 窯の寿命を短くしてしまいますので、出来るだけ雨に当たらない様に工夫します。

 ① 屋内でよい窯は電気窯です。

  燃料を使いませんので、空気を供給する必要が無い為です。但し電気の場合にも還元で焼成する

  場合、燃料を供給しますので、空気が必要になります。一酸化中毒に成らない為にも、換気扇が

  必要です。

 ② 屋外に設置したい窯は、ガスや灯油、薪などの燃料を使う窯です。

  多量の空気(酸素)を必要とするこれらの窯は、十分に燃焼させる為に、開放的な屋外に設置

  する方がベターです。屋外に設置する上で重要なのは、しっかりした地盤の上に築く事です。

  窯本体はかなりの重量(数十kg~数トン)となりますので、それに耐える水平で強固な地盤が

  必要です。

2) 窯の大きさ(容量)を決める。決めるに当たり以下の事柄を検討します。

 すでに窯をお持ちで、新たに別の窯を持ちたいと思っている方もいると思います。これらの方にも

 新たな窯をどの様に使いたいかを、検討する必要があります。

 ① 個人専用の窯か。共同で使う窯か?

  ) 販売する作品を作るとしても、個人専用でれば、比較的小型の物で十分です。

   当然作品の大きさと量によって違いますが、窯が大きいと、窯を一杯にするのに数ヶ月掛かる

   事も稀ではありません。なるべく小回りの利く窯の方が使い勝手が良い様です。

  ) 近頃は共同で使う窯は少なくなっています。お互いの都合を付け合って窯焚きするのが

   面倒に成っている事と、制作期間を短くし早く完成せるで為です。又、安価で容易に窯を

   個人で持つ事が可能になった為と言われています。

 ② どの様な大きさの作品を焼成するのか?

  窯の大きさは、その内側の寸法(縦x横x高さ)で「立法メーター」で表示します。

  本焼きの際、窯に作品が何個入る必要があるかが基本になります。小さな作品ならば数多く

  入りますが、大きい場合数は限定されます。  

 ③ 焼成する頻度は?

  燃料を必要とする窯では、窯を焚く度に燃料費がかかりますが、使用していない場合には

  燃料費が掛からないのが一般的です。(尚、都市ガスの様に月契約の検針がある場合は基本料

  が掛かる場合もあります。)電気窯の場合、特に200Vの場合は、使用しなくても基本料が

  掛かります。 

3) 燃料の種類を選ぶ。電気、ガス(プロパン、都市)、灯油、薪、電気(100V、200V)等

 燃料が異なれば、窯の構造も違ってきます。又、窯以外にバーナや送風機などの他、燃料タンクや

 ガスボンベ、薪の置き場所などと、燃料を使う窯では煙突が必要になります。

 (尚、都市ガスなどは、ある地域のみしか使う事が出来ないかも知れません。)

4) 資材置き場と作業場所を確保する。

 窯の制作に取り掛かると、セメントや耐火煉瓦、モルタル等かさ張る物が手近にないと作業が

 はかどりません。それなりのスペースを確保する必要があります。

5) 作業日程。何時までに完成させる必要があるか?大雑把でも一つの目安が欲しいです。当然

  雨天の際に屋外の作業は制限されます。又、自由に作業できる時間が確保できるかも、日程に

  影響します。

 とりあえず以上の事柄が決れば、次に窯の設計に取り掛かります。  
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素朴な疑問 241 窯を自分で築く事は可能か?

2016-05-25 13:50:14 | 素朴な疑問
結論から先に言うと、窯を自作する事は可能です。勿論窯を築くには、それなりの準備(場所等)と

費用や時間が必要です。窯の規模(大きさ)にもよりますが、数ヶ月の歳月と数十万円~数百万円の

費用が掛かる事もあります。また、ガスや電気を使用する場合には、資格のある専門家の助けが必要

な事柄も発生しますので、最後まで完全に自分一人で築く事が出来ない場合が多いです。

尚、街中で薪(まき)で火を焚く事は消防法で禁じられている処もありますし、煙などの環境悪化で

不都合な事が起こる恐れがある場合には、そのような場所では、必然的に薪窯(登窯や窖窯等)を

築く事はできません。尚、灯油窯の様に若干黒煙が発生する程度ならOKの事が多いです。


陶芸(焼き物)をやる以上、作品を焼く行為は必須条件です。勿論焼かないで作品を作る事が出来

ますが、実用的な作品にするには是非とも焼く事です。焼成する事でより強固で耐久性のある作品に

仕上げる事ができます。但し、単に焼くだけでなく高温(少なくとも1000℃以上)でなけれならず、

それなりの設備の整った窯でなければ成りません。

一般に陶芸の窯は、メーカー各社から大小様々の物で、焼成方法の異なる窯が市販されており、

それらの中から選び購入し、設置するだけで直ぐに使用するのが普通です。その為わざわざ自分で

窯を築く事は少ないのが現状です。更に、山の中など既存の窯を設置するのに不都合な場所では、

専門家が窯を築いてくれるサービスもあります。

その他、何らかの理由で、どうしても御自分で窯を築きたいと思っている方もいます。

1) 自分で築く事の利点。

 ① 自分で作った窯であれば、如何様にも作り変えて改良する事が可能です。

  窯を焚いていると、どうしても不満な事が起こり勝ちです。例えば、酸化や還元の程度を変え

  たい、部分的な酸化又は還元を窯の一部又は全体で行いたい。又温度を早く上昇させたい、

  窯の中の温度差を少なくしたい。釉の熔け不足を解消する為に、最高温度をもっと上げたい、

  特定の釉の発色を良くしたい等の欲が出てきます。この望みを適えるには、必ずしも窯を改造

  する事なく対処する事も可能ですが、それでも自分の考え通り窯の改造をしたい場合には、

  既存の窯では難しくなります。勿論この様な事柄が起こるのは、何度も窯焚きを続けた結果です

  ので、窯を改造するのは、それなりのベテランの人とも言えます。

 ② 窯の壁を厚くし、良い結晶を作り出したい。 窯の容積を大きくしたい等にも対処出来るのは

   自分が設計した自作の窯である必要があります。

 ③ 初めて窯を持つ人でも、窯を自作したいと思っている方もいます。

  特に楽焼専用の窯であれば、温度が比較的低く、容積も小さくてすむ為自作可能と思われるから

  です。但し、コストを抑える為に自作する事を考えているのであれば、余り期待できません。

  耐火煉瓦を積み上げたり、バーナー類を揃えたり、電熱線を張り巡らせたりする行為には結構

  費用が掛かる物です。最終的には、購入する価格と同じ程度になる事も稀ではありません。

 ④ 本焼きが可能な本格的窯の場合、ある程度の専門的な知識が必要になります。

  一般に市販されている窯には、カタログ上で窯の構造が描かれている事が多いです。

  これを見ておおよその構造を把握する事が出来ます。又各種の調整装置を設ける必要も発生し

  ますので、どの様な調整が必要か、予め考えておく必要があります。

  更に、窯をガッチリ組み立てる為には、鉄製のフレームを溶接する知識があればもっと良くなり

  ます。但し、フレームはネジ止めでも処理が可能です。又、耐火煉瓦や耐火モルタル、断熱材

  (グラスウール等)などは、陶芸材料店で入手可能ですが、詳しい事は、近くのメーカーに出向

  き教えを請う事も可能です。


当方も20数年前に耐火煉瓦を積み上げ、プロパンガスの本焼用の窯を自作し、現在も使用してい

ます。その経験を基に、次回より窯の築く手順や方法などをお話したいと思います。
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素朴な疑問 240 自前の電動轆轤は何時購入するのが良いか2?

2016-05-20 16:34:54 | 素朴な疑問
5) 自前の轆轤を持つ事に捕われ過ぎるのでは無く、持つ事による色々な問題をクリアーする事が

 大切です。例え轆轤を持ったとしても、轆轤を長く使い続ける為には、前もって考えておく必要が

 ある事柄も多いです。

 ① 焼成場所の問題。

  自前の轆轤を持ったといっても、その作品を焼成してくれる処を見付ける必要があります。

  基本的には、従来焼いて貰っていた処にお願いするのが筋ですが、何らかの理由でお願い出来

  ない場合も多いです。自前の窯を持つのが理想ですが、電動轆轤と窯を同時に購入する事は、

  資金的にも大変です。 尚、電動轆轤はその能力、馬力(ワット数)によっても値段が異なり

  ます。一般的な物は十万円程度です。電動轆轤は一生使える(一生物)ですので、能力のある

  轆轤を慎重に選ぶ事です。 又、容積の小さな一般的な電気窯でも、数十万円します。

  将来自前の窯を持つとしても、当面は焼成してくれる処を見付けてから行動を起こさなければ

  成りません。焼成だけを頼める窯元や業者、陶芸教室などもありますが、焼いてもらう為には

  作品をそこに持ち込む必要があります。素焼きと本焼きの二回の場合が多いはずです。

  その為なるべく手近の場所が有れば理想的です。その他にも、釉を自分で施釉するにしても、

  何処で行うかによっても、かなりのスペースが必要になります。

  轆轤を持つ事は先々色々な問題が発生します。予め計画的に行動する必要があります。

 ② 電動轆轤を設置するには、専用の場所が必要です。

  数十kgもある電動轆轤は、なるべくコンクリートの土間などに設置した方が安全です。

  轆轤作業は力仕事ですので、轆轤がガタ付いたり、揺れが発生すると作業がやり難くなります。

  更に土(粘土)と水を使いますので、泥による汚れや目に見えない程度の細かい土埃(つち

  ぼこり)が発生します。その為掃除のし易い処で無ければ成りません。但し轆轤の天板さえ綺麗

  にしておけば、必ずしも毎回轆轤の掃除をする必要はありません。

 ③ 作品を置く場所も必要になります。

  轆轤挽きした作品は生乾きさせてから削り作業に入ります。その為乾燥させておく場所が必要に

  なります。轆轤作業が面白くなると、どんどん制作する様になり、作品も溜まります。

  素焼き前の作品は壊れ易く、安全な場所において置く必要があります。又、作業台(含練り台)や

  粘土や削りカス等や釉などの置き場所も必要になります。場所が広い事は何事にも便利です。

 ④ 置いた作品を、他の場所に移動させる必要に迫られる事も稀ではありません。その様な場面が

  一番危険です。乾燥した作品は粘りが少なく、脆い状態に成っていますので、一寸した不注意で

  作品を破損する事も度々あります。なるべく両手を添えて持ち上げ、運ぶ事です。

6) 結論

 勿論、自前の轆轤を持つのは自由です。傍からとやかく言われる事柄ではありません。

 但し、宝の持ち腐れに成らない為には、それなりの準備と覚悟が必要になります。

 折角入手した轆轤を活発に活用するには、それなりの環境が整っていなければ成りません。

 その為の準備や検討に十分時間を裂き、ある程度の目安が付いた段階で、購入する事を薦めます。

 轆轤はあくまでも一つの道具に過ぎません。道具に慣れる事も大切ですが、何を作るかが先に

 無ければ、道具を巧く使いこなす事は出来ません。更に、高度の轆轤技術を習得するには、常に

 新しい事柄(作品など)に挑戦し続ける必要があります。場合によっては従来に無い轆轤技術を

 開発発見する気概で臨んで下さい。

以上にて、「自前の電動轆轤は何時購入するのが良いか?」の話を終わります。
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素朴な疑問 239 自前の電動轆轤は何時購入するのが良いか1?

2016-05-10 11:07:54 | 素朴な疑問
本題に入る前に、これから述べる事は、当方(明窓窯)の考え方ですので、あくまで参考意見として

お読み下さい。

陶芸を楽しんでいる方の中には、電動轆轤の面白さに惹かれ、嵌まり込んでいる人も多いと思います

但し、多くの方はご自分で轆轤を持つ事なく、陶芸教室や公民館活動などで共同して使用する轆轤を

使う事が多い様です。その為、何時でも自由に使える自前の轆轤が有れば、更に早く上達すると

考えるのが普通です。実際に電動轆轤を購入した方も多く知っています。又購入したいと相談を受け

た事も多々あります。その様な相談の場合、多くは自前の轆轤を持つのは、「もう少し後にした方が

良いのではないか」と、助言する事が多いです。その理由は以下の事が言えるからです。

尚、地方の窯場などで、将来陶芸家を目指して、修行している方々は上記の事は当てはまりません。

自分専用の轆轤を持つ事は稀ではありません。但しあくまでも与えられた仕事を遂行する為に、

貸し与えられる場合が多いです。この場合には当然確実に技術がアップする事は間違いありません。

自前と窯場の違いは環境の差と言えます。

1) 轆轤が誰の助けも無くても、作品が作れる程度の技術が習得出来ている人では、問題無い

  のですが、(尚、一人で轆轤が挽ける様になる為には、実働500時間が一つの目安になります。)

  技術をこれから磨こうと思っている程度の人には、自前の轆轤は「宝の持ち腐れ」となる可能性

  が多いです。即ち、自前の轆轤で更に上達を目指すには、何時でも見ていてくれ、悪い処を的確

  に指摘してくれる人や、質問や相談に載ってくれる人が、身近にいる事が必要だからです。

  轆轤は自己流でもそれなりの技術を習得できますが、轆轤技術をマスターしたいのであれば、

  しっかりした指導者(先生など)に付いて学ぶ事です。但し学ぶには、時間と費用が掛ます。

2) 自前の轆轤を買った人が、常に轆轤を使っているのは、むしろ珍しいとも言えます。

  何時でも使えるからと言って、場所的、時間的制約を受け易いからです。

  例え自宅に轆轤を据える工房(工房風)を設けたとしても、意外と使い難い場合が多いです。

  洗い場など無くても、轆轤を置くスペースがあれば良いのですが、重たい轆轤をしっかり固定

  するには、それなりの場所が必要になります。又、轆轤挽きした作品を置く場所なども必要です

3) 何時でも出来ると言う心の油断も大きく作用します。

  轆轤作業に取り掛かる前には準備が必要です。勿論、作りたい物を予め考えていたとしても、

  やる事は多いです。例えば、轆轤周りの整理や掃除などの他、粘土等の準備、土練なども必要に

  なりますので、この準備で時間が取られ、直ぐに轆轤作業に取り掛かれる訳では無い為、始める

  前から嫌気がさしてしまい勝ちです。轆轤挽きはその日の調子や、気分によって巧く行かない

  場合も多いですので、嫌な感情を抱いた状態では、轆轤挽きも巧く行きません。

  自由と言う事は自分に厳しくなければならない事でもあります。

  三日坊主と言う様に、最初は張り切っていても長続きしない場合も多いで様です。

  一方陶芸教室や公民館活動などでは、多くの仲間もいますし、決まった時間内での作業ですので

  それに対応する事で、楽しく轆轤を挽く事ができます。但し実技の短いのが欠点です。

4) 道具を持つ事が必ずしも、上手になる訳ではありません。

  道具はあくまでも、手段であり技術的に未熟であれば、思う様に使いこなす事はできません。

  轆轤挽きの基礎的技術と言えば、土を練る事もありますが、重要な事は、土殺しの作業です。

  即ち轆轤の中心に土を据える事ですが、この作業をマスターしない限り、先に進む事は出来ま

  せん。土殺しも数挽きの様に小物を作る場合と、大皿などを作る場合ではそのやり方は異なり

  ます。それ故、作品に応じてやり方を変える必要がありますので、それらのやり方をマスター

  しておく必要があります。

以下次回に続きます。
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素朴な疑問 238 スリップウェアとは5?

2016-05-04 21:44:34 | 素朴な疑問
6) 現代の「スリップウェア」と作家さん達。

 英国の民窯で作り続けられた「スリップウェア」は、20世紀初頭に姿を消します。

 しかし我が国では、古典的な「スリップウェア」を更に発展させて、精力的に作品を作り続けて

 いる作家さんや、「スリップウェア」を現に手掛けている幾つかの窯元もあります。

 ① 布志名(ふじな)焼きの窯元(島根県松江市)で作られています。

  バーナード・リーチと親交のあった、船木道忠(1900~ 1963年 島根県 指定重要無形文化財保持

  者)と、その長男の船木研兒 (1927~2015年)は、民藝運動に参加し、「スリップ ウェア」の

  復元に努力し、作品を作り続けていました。

  ◎ 注: 当ブログでも、現代陶芸78、79(船木道忠、研児1、2)で既に紹介していますので、

   興味のある方はご覧下さい。

  ) 船木道忠氏の作品。

   黄釉を生かした作品で、楕円皿、楕円鉢、角鉢などの平面的な作品の表面には、抽象的な

   文様が描かれ、花入、花瓶、壷、鶏冠壷(けいかんこ)等の立体的な作品には、化粧土の

   流し掛けや藁描などの技法を使い、文様を付けています。

  ) 船木研兒(けんじ) 氏の作品。

   鹿、鶏、兎、獅子、梟(ふくろう)などの動物が、スリップを用いて具象的に描かれた作品が

   多く、その他、スリップ技法による、鳥文や河童図の陶板なども手掛けています。

  ) 布志名焼きの湯町窯。

   江戸中期頃から続く布志名焼きの特徴は、来待石(きまちいし)と呼ばれる石の粉を用いた

   淡黄釉にあります。湯町窯二代目福間貴士氏(1909~1989年)は民藝運動に共感し、リーチ達

   の薦めに応じて洋食器を作り始めます。日曜雑貨の食器には、筒描きによるスリップが施され

   ます。リーチは7回も訪れ滞在し、スリップ技法を指導したそうです。

   現在は三代目が後を継ぎ、スリップウェアーの作品を作り続けています。

 ② スリップを用いた陶芸家達。

  ) 武内晴二郎氏(1921~79年) 岡山市生まれ。

   倉敷市西の高梁川の旧い堤の跡に、1960年登窯の「酒津堤窯」を築きます。戦争で左腕を失う

   も、型物を中心にスリップ、型押、象嵌などの技法を駆使した作品は、重厚で力強い作品を

   作ります。尚、晴二郎亡き後、息子の 真木(マキ)氏が継承します。真木氏は、栃木県益子町

   の浜田窯に入門し、その後「酒津堤窯」を「倉敷堤窯」と改名されました。

  ) 齊藤十郎氏(1969~)静岡県伊東市在住。

   齊藤氏のスリップ模様の付け方は、タタラ作りでこの表面全体を赤色などの色土で化粧掛けし

   その後、素地が乾燥する前に、白などの色違いの化粧土をスポイト掛けします。但し太めの

   縞模様とします。一筆書きの要領で折り返しながら全体に縞模様を付け、縞と直角方向に櫛状

   の用具で撫ぜる様に引っ張ります。(フエザーコームの技法です)化粧土がある程度乾燥し

   たら石膏型又は土型に合わせて形を作ります。焼成温度は高火度焼成します。

  ) 前野直史(まえのなおふみ)氏  (京都府南丹市日吉町生畑) 

     生畑皿山窯(きはたさらやまがま))

   スリップウェアとの出会いは、1989年に兵庫県近代美術館で開催された「セントアイヴィス

   展」だそうです。 彼の作品は、皿の表面に白化粧を施し、茶色のスリップを用い筒描きの

   要領で、螺旋状の「ぐるぐる模様」に特徴があります。近年はしばしば、個展グループ展を

   開催しています。

  ) 伊藤丈浩(いとうたけひろ)氏(1977年千葉県銚子市生) 栃木県益子町在住

   ・ 掛分(かけわけ)指描文: 二色の化粧土を掛け分け、その境界を指でなぞり、ジギザク

    模様を付ける方法です。

   ・ ヘリンボーン模様: 伊藤氏のトレードマーク的な文様と成っています。

    酸化第一鉄を加えた化粧土(茶色系)を、タタラの表面に流し掛けする。次にスポイト状の

    筒にやや薄めた白化粧土を入れ、左右折り返しながら縞模様を付ける。縞の間隔はやや広く

    取り、化粧土が平らに成る様にテーブルを叩く。細いスポイトを用いて上記縞模様と直角

    方向に、先端を模様に付けながら細い線を全面に引く。すると細かい「ジグザク」模様と

    なり、ヘリンボーン模様が完成します。」スリップウェア」制作の若手の一人です。

    伊藤氏も各種の販売方法で作品を販売しています。

 ◎ 以上の作家さん達の作品(写真)や展示会等の情報は、ネット上で見る事ができます。

   興味のある方は、名前を入力し検索して下さい。

 ③ 「スリップウェアー」の作品が展示されている美術館など。

  ) 大阪日本民藝館: 大阪府吹田市千里万博公園

  ) 鳥取民藝館:   鳥取県鳥取市栄町 651

  ) 倉敷民藝館:   岡山県倉敷市中央 1-4-11

以上で「スリップウェアー」の話を終わります。


参考資料: 「スリップウェア」(Slipware)

  副題: 英国から日本に受け継がれた民藝の器 その意匠と現代に伝わる制作技法

  編者、発行所: 誠文堂新光社    
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素朴な疑問 237 スリップウェアとは4?

2016-05-01 15:18:47 | 素朴な疑問
3) 英国の「スリップウェア」の制作方法。

 ① タタラ(粘土の板)状態の土を型に押し当てて形を作っています。

   以上までが前回までの話です。

 ② 施釉と焼成。

  ) 英国の「スリップウェア」は、1000℃程度の低温で焼成されています。それ故釉は鉛を

   含む透明釉と成っています。尚、現在では、食器類に鉛を含む釉は、健康を害しますので禁止

   されています。

  ) 施釉する範囲は、器の内側のみで、外側(底)は施釉されていません。又、鋸歯状の特徴

   ある器の縁も施釉されていません。これは、窯の中で重ね焼きをする為です。即ち上部の器を

   縁で受け止める形に成っている為、施釉されていません。

4) 変わった形の英国の「スリップウェア」。

  一般に「スリップウェア」の器は、日常使う皿類が多いのですが、特殊な皿や蓋物、「ポセット」

  (両手付きのミルクや蜂蜜等入れる容器)、酒瓶、壷、水差し(ピチャー)、置物などのより

  立体的な作品にも、「スリップウェア」で飾られた物があります。

 ① 特殊な皿の例として、水切り用の皿があります。

  これは皿の中央に複数個の孔(あな)が開けられた物です。丁度笊(ざる)の様に使われたと

  思われ、スリップの加飾後に、棒状又は筒状の物で孔を開けた物と思われます。

 ② 立体的な作品に「スリップウェア」を施すには、スリップ(化粧土)の濃度が大切です。

  適度の濃さでないと、流れ落ちたり、ひび割れしたります。

5) 英国の「スリップウェア」の技法は我が国を始め、アメリカ等でも継承され、新たな作品を

   作り上げています。20世紀に入ると、一時廃れた「スリップウェア」は我が国の民藝の担い手

   によって見直され新たな創造がなされる様に成ります。

 ① 我が国の「スリップウェア」の技法。

   当然ですが、英国から伝えられた技法を下敷きにして、我が国でも民藝作家などを中心に

   類似の焼き物が試作されたり、新たな技法も開発される様になります。

  ) 最初に試作を試みたのが、バーナードリーチ達です。

   「スリップウェア」の技法の情報が乏しく、手探り状態の中で試作を試みたのが、日本に

   留学中のリーチや、富本憲吉氏達で1920年代には盛んに作られる様になります。

   主に楽焼で、筒描きの技法で行われていました。その他、白化粧の掻き落しや線彫りなどの

   作品もあります。

   当時の作品類は濱田庄司記念益子参考館や日登美美術館などで展示されています。

   注: 日登美美術館 : 所在地  滋賀県東近江市 山上町2083

    主に民藝運動に関わる作家の作品が多く、特にバーナード・リーチの作品は300点を超え、

    国内外屈指のコレクションを誇る美術館です。

  ) 濱田庄司氏も益子の土と釉を使い、作品を作っています。

   1920~30年代益子の工房で、「スリップウェア」の作品を作ります。当然英国の作品よりも

   高温で焼成しています。施釉の技法は流し掛けで行っています。これらの経験が後の彼の

   代表的な技法と成って人間国宝まで上り詰める事になります。

  ) 河井寛次郎氏も「スリップウェア」に魅せられます。

   彼も1920~30年代に掛けて、試行錯誤の末化粧土の流し掛けによる表現方法に辿りつきます。

   作品は定番の皿の他、鉢、花瓶、蓋物(小筥、盒子=ごうす)などがあります。

   全体に飴釉が掛けられ、白い化粧土で流し掛けしたり、象嵌(ぞうがん)の作品も残して

   います。尚、彼の作品は河井寛次郎記念館(京都市東山氏五条坂)で見る事ができます。

 民藝の作品を集めた美術館では、日本民藝館(東京都目黒区駒場)が著名です。

以下次回に続きます。
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