わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

素朴な疑問 307 陶芸の手順とは24(本焼きの手順4)

2017-09-26 11:31:23 | 素朴な疑問
陶芸に限らず、何事にも手順があります。手順を忘れたり、手順前後の誤りにより、思いも拠らない

結果を招く事は多いです。

4) 本焼きの準備と手順

  作品の窯詰めが無事完了したら、次は本焼きとなります。但し、直ぐに窯焚きに取り掛かる前に

  行うべき確認事項があります。

 ① 設備の点検作業。 

 ② 窯に点火(又はスイッチON)。

  ⅰ) 窯を焚く天候と時間。

  ⅱ) 電気窯の点火方法。(以上が前回の話です。)

  ⅲ) ガス窯の点火方法。

   家庭等で使うプロパンガスは低圧ですが、窯に使う場合は、中圧の場合が多いですので、

   小型な窯以外は、家庭用と共同に使う場合は少ない様です。

   ガスがメーター売りの場合、元栓を開く前に、ガスメータの数値を確認し、ノートや紙に記載

   し、窯焚き後にメーターを読み、どの位使用したかを計算(確認)すると良いでしょう。

   a) 元栓からバーナーまでの全ての栓 が閉じている事を確認する。

    不用意にガス栓を開くと、生ガスが漏れ出します。それ故、ガス漏れを防ぐ為にも、全ての

    栓が閉じている事の確認が必要です。元栓からバーナーコック迄の配管には、幾つかの栓が

    有るはずです。その他に、ボンベを利用するプロパンガスの場合、ボンベの上にあるコック

    と、左右のボンベへの切換レバー、ガス圧を調整する摘み等があります。尚、切換えレバー

    は一方のボンベが空に成ると、赤い表示が出ますので、レバーを反対側に倒します。

    切換えは自動ですので、必ずしも操作の必要はありませんが、レバーをそのまま使い続けると

    ガス圧が若干弱く成ります。

   b) 元栓からガス栓を順次開く。

    バーナーコック直前までの栓を開けたら、次はバーナー毎の点火になります。

    点火棒のある窯は、点火網に着火しバーナーコックを少しずつ開け着火します。

    点火棒の無い窯では、「着火マン」等のライターやマッチ等で点火します。

    後で述べますが、窯焚き終了後の栓の閉じる順序によっては、ガスがバーナー口に届くまで

    時間が掛り、直ぐに点火出来ない場合があります。

   c) ガスの空気量の調整。

    バーナーの手元にあるネジ式の回転板を移動させて、一次空気量を調整し青い炎が出る様に

    します。赤い炎は酸素不足ですので、回転板を移動して青い炎にします。

    尚、空気量は還元焼成に差し掛った場合にも、調整する事があります。

   d) 複数のバーナーがある場合、点火方法も個人差があります。

    一度に数本のバーナーに点火する方法と、一本のみを数時間又は数十分使用した後、次の

    一本に点火し、時間を置いて更に次のバーナーへと順次バーナーの本数を増やす方法もあり

    ます。水蒸気を排出させる為(あぶり)、点火初期はなるべく温度上昇を抑えながら焼成します

    ので、一気に本数を増やさない方が良いと思われます。

    同様の理由で、バーナーコックも時間を置いて徐々開く方が良いかも知れません。

    尚、窯焚きも個人の好みや癖がありますので、これが正解と言う事はありません。

   e) ガス圧の調整。

    ガス圧の調整は、元栓に近い場所と、配管途中の中間コックの二箇所にある事が多いです。

    前者は、逆ネジに成っており、押し込むと開き、手前に捻ると閉じる様に成っています。

    ガス圧のメーターが近くに有り、調整力の効果が大きいですので、余り操作しない事が多い

    です。中間での調整では、やや緩やかに利いてきます。主にここで調整する事が多いです。

    尚、点火するバーナーの数が多くなるに従い、ガス圧は低下してきます。

   f) 煙突の引きの調整。ドラフトとダンパー。

    ドラフト(バカ穴)は煙突の根元又は途中にある穴で、外から煙突に送り込む量を調整する

    装置です。複数のレンガ片等で穴の隙間を調整します。隙間が狭くなると引きは強くなり

    ます。ダンパーは耐火性の板状の物で、煙道に差込み広さを調節する物です。

    差し込むと煙突から逃げ出排気ガスが少なくなり、還元が掛かり易くなります。又、窯内の

    対流も変化し、窯変が起こる事もあります。

    点火の際には、ドラフトは全閉、ダンパーは開けておきます。

    但し、人によってやり方は異なり、独自の操作方法を取る場合が多いです。

   g) 強制燃焼のガス窯。

    高圧のガスと、ブロアー(送風機)による短時間で焼成できる窯です。燃料も少なくなる

    利点もあります。焼き上がりの違いやブロアーの騒音、操作部分が多くなる等、自然燃焼式

    とは、幾分異なります。灯油窯と似る部分がありますので、次回の灯油窯を参考にして

    下さい。

  ⅳ) 灯油窯の点火方法。
  

    以下次回に続きます。


 参考文献:「陶芸窯焚きマスターブック」(株)誠文堂新光社:2016年発行
  
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素朴な疑問 306 陶芸の手順とは23(本焼きの手順3)

2017-09-14 19:06:51 | 素朴な疑問
陶芸に限らず、何事にも手順があります。手順を忘れたり、手順前後の誤りにより、思いも拠らない

結果を招く事は多いです。

4) 本焼きの準備と手順

  作品の窯詰めが無事完了したら、次は本焼きとなります。但し、直ぐに窯焚きに取り掛かる前に

  行うべき確認事項があります。

 ① 設備の点検作業。 (以上が前回の話です。)

 ② 窯に点火(又はスイッチON)。

  設備の点検が終われば、いよいよ窯焚きを始めます。窯焚き前には、窯の周囲の片付けや掃除は

  済ましておきます。

  ⅰ) 窯を焚く天候と時間。

   a) 薪窯の場合を除き、現在では、窯焚きが天候に左右される事は少なくなりましたが、

    火を使う窯の場合には、ある程度天候に留意する必要があります。特に台風等の様に大雨や

    大風が予想される場合は、例え屋内の窯であっても、日延べを検討した方が良いと思われ

    ます。展示会や出展などどうしても、日にちが限られている場合でも天候の様子を見てから

    決行する事です。

   b) 窯焚き(本焼き)に長い時間を要する場合、なるべく早朝から取り掛かり、日にちを跨

    がずに当日中に終わる事を心掛ける事です。特に冬場は日中時間が短いですから、寒くても

    早目早目の行動する方が無難です。尚、窯焚きに要する時間は、窯の容量や燃料の差と、

    どの様な焼き方を考えているかによって千差万別です。小さな電気窯では5~6時間で済み

    ますが、多くの場合8~16時間程度掛ます。

  ⅱ) 電気窯の点火方法。

   a) 電気窯の場合で、「マイコン焼成装置」がある時には、プログラム選定をします。

    「マイコン焼成装置」には、メーカー設定の基本プログラムの他、自分好みのオリジナル

    設定が可能です。ブレーカーをONにします。ブレーカーの無い機種ではコンセントに

    差込ます。「スタートボタン」を押せば後は自動焼成になります。

    但し、蒸気抜きの孔の閉鎖や、還元焼成の場合には、還元操作は自分で行う事になります。

    尚、タイマー機能を利用して、還元入りの時間を設定する事も出来ます。

   b) 「レバー式焼成装置」に付いて。

    大きな電気窯では、弱から強へ運転を切り替えながら、温度を上げて行く方法があります。

    多くは、三相交流を用いる事が多いです。強弱のみのタイプと、窯の上中下段を分けて手動

    でコントロールする方法があります。三本のレバーの組み合わせで昇温します。

   c) 「サイリスタ式焼成装置」に付いて。

    「サイリスタ」と呼ばれる電子素子を使い、無段階で交流電力を制御する方法です。

    窯中の温度を測定しながら、手動でボリューム(抵抗器)を回転させ、電力を調整します。

    上中下段を個別に制御する窯もあります。

   d) 「半自動焼成」とは。

    多くのプロ作家が使用している方法です。「プログラム焼成」と「手動焼成」を組み合わせ

    た方法で、一定時間温度を保持する「あぶり」や「ねらし」や、結晶釉の結晶化などの場合

    に大変役に立ちます。保持時間を設定するタイマー装置があります。

   e) 「スタートボタン」等の主電源をONにしても、通電できない場合(温度計が働かない)

    は、何らかの故障です。電熱線の断線、ヒューズ切れ、熱電対の故障や配線の緩み等が考え

    られますが、ブレーカーのON忘れの場合もあります。原因を見付けて対処する事です。

    出来れば、窯焚き直前のトラブルを無くす為に、早めに確認して置く事が大切です。

  ⅲ) ガス窯、灯油窯の点火方法。

以下次回に続きます。


 参考文献:「陶芸窯焚きマスターブック」(株)誠文堂新光社:2016年発行
  
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素朴な疑問 305 陶芸の手順とは22(本焼きの手順2)

2017-09-12 17:09:57 | 素朴な疑問
陶芸に限らず、何事にも手順があります。手順を忘れたり、手順前後の誤りにより、思いも拠らない

結果を招く事は多いです。

4) 本焼きの準備と手順

  作品の窯詰めが無事完了したら、次は本焼きとなります。但し、直ぐに窯焚きに取り掛かる前に

  行うべき確認事項があります。

 ① 設備の点検作業。

  窯本体は勿論、それに付随する諸々の設備や用具の点検です。(以上までが前回の話です。)

  ⅳ) 燃料の残量の点検。

   プロパンガスや灯油等の燃料を使う場合には、次の窯焚きに使う燃料の量以上の十分の量が

    確保されている事を確認する事です。窯焚きを何度か行えば、一回の本焼きでどの程度の

    燃料が必要が、自然と判ってきますが、何らかの理由で、窯の温度が上昇せず、いつも以上

    時間や燃料を使う事も稀ではありません。それ故、十分な量を確保する必要があります。

    タンク等に貯蔵されている灯油などの場合には、残量を示すゲージが付いていますので、

    判別できますが、ボンベに詰められたプロパンガスの場合、直接確かめる方法は中々難しい

    くなります。ガス会社で自動的に点検し補充を行ってくれれば問題ありませんが(メーター

    売りの時)、自分で補充依頼する場合には、常に残量を把握しておく必要があります。

    (主にボンベ売りの場合)前回の交換から何回窯焚きをしたか記帳しておくと便利です。

    尚、一般には複数のボンベを並列で使用し交互に使う事が多いですので、一方が空に成って

    から、注文しても遅くは有りません。

  ⅴ) プロパンガスは、夏場と冬場では気化する条件が変わります。

   液化のプロパンは、周囲から熱を奪い気化します。その為、夏場であれば容易に気化する

   場合でも、冬場や残量の少なくなったボンベでは、ボンベ自体に白い霜が付く事があります。

   こうなると、気化の量が少なくなりガス圧も落ち、温度上昇にも悪い影響を与えます。

   又、夏場であっても、雷雨があるとボンベノの表面に霜が付く事があります。

   尚、プロパンや都市ガスの窯には、自然吸気と強制吸気があります。ブロアー(送風機)で

   空気を強制的に送り込み燃焼させる方法です。強制の方が火力も強く燃焼時間も少なくて済み

   経済的となりますが、焼き上がった作品の表情も多少違いが有ると言われています。即ち、

   一般に自然吸気で軟らかく、強制では硬くなると言われていますが、その差に気がつくのは、

   一部の人かも知れません。

  ⅵ) 温度計の点検。

   以前ですと、炎の色やゼーゲルコーンを用いて温度を見極めていましたが、現在では熱電対

   温度計を使う事が一般的です。窯の中の熱を感知する熱電対部分と、デジタル表示する機器に

   分かれています。前者の故障として保護管の破損があります。多くの場合、作品などや棚板と

   の衝突による衝撃が原因の事が多いです。割れた保護管は交換するのが理想ですが、道具土等

   を詰め込み補修する事が出来ます。保護管の目的は、熱電対を衝撃から守る事と、窯の中の

   炎や有害なガスから守る為です。温度計に通電すると、現在の室温を表示します。但し、

   室内に置かれて一般的な温度計(水銀、アルコール)と若干違いが出る事が多いです。

   熱電対温度計は高温を計る事が多く、低い温度では誤差が生じ易いです。

   通電し温度が安定しない場合には、温度計は故障です。但し、低い温度で温度表示が安定し

   なくても、窯の温度上昇に従い安定化してきます。これは低温部と高温部(又は中温部)と

   測定回路が切り替わる為と思われます。温度計は温度上昇の速度を知る事と、最高温度を知る

   事ですので、低温部が不安定であっても、高温部が正常ならばそのまま使う事ができます。

   温度表示部は、窯の表面に組み込まれている場合と、外付けの場合があります。

   尚、温度計は測定している位置の温度を表示するものですので、容積の多い窯中では温度に

   バラツキが出易いです。一般に窯の上部で高くなります。理想的には複数の温度計で測定したい

   ですが、高価の為単一の場合が多いです。それ故、釉の熔け具合から温度差を予測する必要が

   あります。

以下次回に続きます。

   
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素朴な疑問 304 陶芸の手順とは21(本焼きの手順1)

2017-09-04 11:43:38 | 素朴な疑問
陶芸に限らず、何事にも手順があります。手順を忘れたり、手順前後の誤りにより、思いも拠らない

結果を招く事は多いです。(前回からの続きです)

4) 本焼きの準備と手順

  作品の窯詰めが無事完了したら、次は本焼きとなります。但し、直ぐに窯焚きに取り掛かる前に

  行うべき確認事項が幾つかがあります。

 ① 設備の点検作業。

  窯本体は勿論、それに付随する諸々の設備や用具の点検です。

  ⅰ) 窯が傷んでいないかを確認します。

   窯は使う程老朽化するのは、仕方ない事ですが、窯焚き中にトラブルが有っては成りません。

   特に屋外に設置された窯では、雨を防ぐ屋根が付いているのが普通ですが、極端な場合には、

   台風や雷雨や強風等が窯本体に吹き付ける事も起こり得ます。その際窯の内部まで雨水が入り

   込む事は少ないですが、何らかの理由で水分が残ってしまった場合には、乾燥するまで窯焚き

   は出来ません。強行すると、多量の水蒸気が発生し施釉した作品の釉に、悪影響を与えます。

   又、塩釉を使うと、窯は傷むと言われ、窯の寿命も極端に短く成ります。

   塩釉によって窯内部全体に釉が拡散し、壁や窯道具にこびり付き、次回の窯焚きまでに綺麗に

   しておく必要があるからです。又、窯の内部のレンガが「ひび割れ」する事もあります。

   大抵の場合、窯の温度の上昇に伴い、レンガが膨張し、その「ひび割れ」も塞がる傾向になり

   ますので、特別補修する必要もありません。但し、レンガの表面が何らかの理由で剥がれる

   場合があります。窯の外の場合が多いのですが、内側の事もあります。少々表面が剥がれたと

   しても、レンガの厚みに対しては本の僅かですので、心配する必要はありません。頻繁に剥が

   れる様でしたら、原因を究明し対処しる必要があります。問題は本焼き途中で剥がれる事です

   剥がれるた破片が作品に降り掛かると、問題ですので、剥がれそうな箇所は予め剥がしておく

   事です。当然ですが、剥がれた破片は綺麗に掃除しておく必要があります。

  ⅱ) 扉のある窯では、扉がしっかり閉まる事を確認します。

   扉には、窯と扉の隙間を無くす為、耐熱性のパッキンが付いているはずです。

   このパッキンも使用するに従い、柔軟性に欠けてきます。場合によっては端から千切れてくる

   事もあります。予備のパッキンがあれば交換する事も考える必要があります。

   パッキン以外にも扉の角や周辺が、窯の内側の壁に接触する場合もあります。扉の蝶番のネジ

   が緩んでいる場合もありますので、扉の開閉時に窯と接触する場合には、ここも確認し、時々

   注油する事です。更に、扉がしっかりロック出来る事も確認します。多くの場合焚き始めでは

   扉を少し開け、施釉時の水分を逃がします。水蒸気が出ない様になる温度以上になると、

   しっかりロックする必要があります。扉の周囲から熱風が吹き出ている状態では、十分ロック

   されている訳ではありません。窯焚き途中で修正する事は不可能ですので、道具土などを使い

   出口付近を塞ぎます。窯出し後に本格的な補修をする事になります。

  ⅲ) バーナーの点検(ガスや灯油窯の場合)

   イ) バーナー口の確認。

    炎が出るバーナー口に、棚板の支柱等が落ちていないかを確認します。出来れば窯詰め前に

    確認すべき事項ですが、窯詰め時に良く起こる事故です。バーナー口が何かで塞がれている

    場合には、十分燃焼する事はできません。取り除くのもかなり苦労します。場合によっては

    一度窯詰めした作品を外に出す必要が出る事も珍しくありません。

   ロ) 燃料漏れに注意。

    ガスの場合には、要所要所にガスを遮断するバルブが存在するはずです。各バルブが正常に

    作用しなければ、ガス漏れを起こす恐れがあります。それ故ガスを使用しない時にガスメーター

    が動いていないかを、確認します。但し都市ガスとの併用である場合や、家事との共用の場合

    には確認が難しくなります。ガス漏れの際には、ガスの匂いがしますので、気が付く事も

    多いです。プロパンガスは空気より重い為、上空に逃げる事はありません。即ち下や物陰に

    溜まる性質があります。団扇で扇ぎ出したり、箒で吐き出しりして逃がす事になります。

    灯油の場合には、油が少量漏れてもさほど危険はありませんが、常に気を付ける事が大切

    で、漏れ防止の処置をします。

  ⅳ) 燃料の残量の点検。

以下次回に続きます。
   
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