わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

続 電動ろくろ39(上下逆さに作る)

2020-03-28 09:52:19 | 続 電動ろくろに付いて

轆轤で制作する際、一般には器の口を上部にして作ります。

但し、根本(底)が極端に狭い(小さい)場合で、上部が開いている時には、作品

自体が不安定になり、轆轤挽する事は困難です。その様な場合、上下を逆さにして

轆轤挽すれば、容易に制作可能です。但し、本焼きで焼成する場合は、上下正常な

状態ではやはり、作品が自立できず、焼く事は出来ません。その為何らかの方法を

とる必要が有ります。尚、施釉しない焼き物の場合は、逆さのままで焼成できます。

逆さに作るには、以下の方法で行います。

1) 口径に成る部分は広く(大きく)取り、ドーナツ状にし中央部は底を抜きます。

 紐作りで円形にしたり、一塊の土の中央に穴を開けたりして、密着させます。

 轆轤の中央に載せ、轆轤挽して綺麗な円環にします。

2) 上記円環の肉を上部に薄く延ばし、高さを出します。

 土を伸ばす際には、円錐形に成る様にします。斜めに伸ばしますので中々

 高さは出ません。

3) 底を轆轤挽で作る場合と、底の部分を後付けする方法があります。

 ⅰ)轆轤挽で作る場合には、底を作る為にタップリした土が必要です。更に底を

  平ら(水平)にする為に大きさも限定されます。空中で大きく平らにするのは

  轆轤では難しいからです。

 ⅱ) 徐々に口径を細くし、最後に口を閉じます。前々回で紹介した風船作りと

  同じです。口を閉じる前に、側面の傾斜をご希望の形に成形しておきます。

  勿論、口を完全に閉じればある程度、側面の形を変える事が出来ます。

 ⅲ) 口を閉じる際、最上部に土を残しこれをやや水平にして底を作る場合には、

  閉じる口の位置を若干下にする必要があります。残り土が少ない場合には、

  若干乾燥後に土を継ぎ足します。乾燥が甘いと、頭が重くなり、全体がヘタリ

  ます。

 ⅳ) 底を後付けする方法で有れば、十分乾燥後に取り付けますので、好みの大きさ

  にする事が可能です。底のなる部分の中央に孔を開け、作品の底がこの穴に

  差し込む様にして接着面を十分広くとり、作品の倒れるのを防ぎます。

 ⅴ) 作品の口縁を削り肉厚を薄くし、形を整える。

  逆さに作った作品では、口縁になる場分は、肉厚に成っています。肉薄の場合に

  は大きな作品を作る事が出来ないからです。

  轆轤面に糸を入れて轆轤面より切り離します。口径を上にして削る際にはシッタを

  使い安定した形で削ります。

4) 焼成の問題点。

  素焼きまでは、逆さにして焼成する事ができますので、ほとんど問題には成り

  ません。問題は高温で焼成する本焼きの場合です。

 ⅰ)伏焼きので焼成する。

  伏せ焼きとは、口縁を下にして焼成する方法です。主に底に成る部分に釉を掛け、

  見た目やテーブルを傷つけない様にする方法です。

  当然下に成る口縁になる部分は、施釉はしてありません。このままでは

  使用できませんので、口縁は融点の低い釉(楽焼等の釉)を掛けて焼くか、

  抹茶茶碗の様な場合には、金や銀製の環を取り付けて、無釉の部分を覆う

  場合もあります。

 ⅱ) 小さな作品であれば、内側の底の中央を棒で支え宙ぶらりんにして焼く方法

  もあります。当然棒の当たる部分は無釉にして置く必要がありますが、出来るだけ

  狭い範囲に留めます。尚棒は耐火度の高い土で作ったり、棚板と同じカオーボン

  ランダム等を用いる事ができます。底の内側に棒の痕が残りますが、上記の様に、 

  融点の低い度焼成するか、他の方法でカバーします。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

続 電動ろくろ38(風船、管作り2)

2020-02-27 15:00:43 | 続 電動ろくろに付いて

前回の続きです。

② 管作り。

 ドーナツ状の形を造る方法です。即ち、円形で中空ので筒(管)を作ります。

 このドーナツ型から、一部を切り裂いたり、穴を開ける等して、好みの作品に

 仕上げます。普通の轆轤挽とは、若干異なる方法で行います。

 管の直径や太さを自由に調整可能です。作り方は以下の通りです。

 ⅰ) 手を使い土でドーナツ状の円を作ります。

  この段階では、中空ではありません。一本の紐状の土の両端を繋げても良いの

  ですが、繫ぎ目に空気が入らない様に注意します。出来れば一塊の土から切れ目

  のない、ドーナツ状に出来ればより良いです。

 ⅱ) 上記ドーナツ状の土を轆轤に載せ、轆轤挽して綺麗な形にします。

  轆轤に載せ、上部より円周上を拳固で軽く叩き、轆轤に密着させます。

  轆轤を回転させ、内側、外側、真上を抑え込みます。管の径が太い場合には、

  布や皮を使い抑え込みます。

  綺麗とは、太さが一定で、内外の円弧が同心円に成っている事です。

 ⅲ) 綺麗なドーナツが出来たら、円周上の真上から指を使って、溝を掘る様に

  し内外を二等分します。尚、一方を肉厚にし左右の合わせ目を真上にしない

  方法もあります。当然底になる部分の肉厚は必要です。

 ⅳ) 内外の土を上部に薄く延ばし、円弧の形に変形させます。

  即ち、外側は( の形に、内側は )の形にします。円弧の大きさは作品に

  応じて変えて下さい。円弧上の溝は狭いですので、指が1~2本入る程度で

  作業、ややは難しくなります。

 ⅴ) 両方の円弧の側面を左右から圧し、溝の上部を塞ぎます。

  轆轤を回転させながら、左右の円弧を少しずつ接近させます。

  一気に塞ぐのではなく、少しづつ接近させ溝跡がない状態にします。

  ドーナツが歪(いびつ)の場合、溝の隙間が均一にならず、一か所が接着した

  り点々とくっつく事もありますので、綺麗なドーナツを作る事と、溝も

  綺麗に掘り込む事が大切です。尚、手指で行う事も有りますが、布や皮を使う

  場合もあります。空気が完全に閉じ込める事が出来れば一安心です。

  中の空気が漏れなければ、ある程度変形する事もできます。

  例えば、四角い管を作る事も可能です。  

  塞ぐ前には、筒の内側の水はスポンジ等で綺麗に吸い取っておきます。

  又、ある程度乾燥したら、中の空気を抜く使い小さな孔を開けておく必要が

  あります。

 ⅵ) この管から、好みの作品を作る。

  管の断面を円にするには、底も円に削り出す必要があります。上面と下面の

  形状を同じ様に削るのは、意外と難しいです。

  この状態では、使いものに成りませんので、一部を切り欠いたり、断面を切り

  Uの字型にして、音叉形の花器を作る事もできます。又、ドーナツの内側に

  平たい板を取り付け、何らかの、飾り物に仕上げる事も可能です。

  更に、ドーナツの一部に水道ホースの挿入部を設け、ドーナツの上面に数か所

  の孔を開ければ、噴水を作る事もできます。この形状をどの様に使うかは、

  あなたのアイデア次第です。勿論、円を立てて使う事も出来ます。

以下次回に続きます。 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

続 電動ろくろ37(風船、管作り1)

2020-02-23 16:09:03 | 続 電動ろくろに付いて

電動轆轤の作品の中には、特殊な作り方も存在します。

例えば、風船の様に作品全体を粘土で包み込む作り方や、管(くだ又はかん)状の

作品を作る方法です。尚、これらの方法は以前に記載した記憶がありますので、

記事が重複するかも知れませんが、ご了承下さい。

1) 風船作り。

 轆轤で作品を制作する時、口を広げます。特に食器等は口の無い物は使いものに

 成りません。しかし、風船の様に口の無い状態で制作し、縦又は横方向に分割す

 れば口が出来、器として使用する事も可能です。

 但し、完全に口を閉じ、上部を綺麗な形にしても、内側に突起や捻じれが生じる

 事も多いです。これは、残した上部の位置が多過ぎる起き場合や、上部が肉薄の

 場合に起き易いです。

 ① 風船作りとは、筒状に立ち上げた作品の上部を完全に閉じてしまう作り方

  です。当然中の空気は閉じ込められる事になります。

 ② 閉じる場所は最上部とは限りません。筒の途中分を完全に閉めて、上部は

  別の形にしても良いです。

 ③ 閉じ易きするには、径の小さな方が有利です。

  作りたい形にもよりますが、やや円錐型の方が良く閉じる事ができます。

  又は、閉じる予定の場所から数センチ下から、徐々に細くしてから、完全に

  閉じると、やり易いです。

 ④ 閉じる前には、作品の内側の水は完全に、スポンジ等で吸い取って置き

  底割れを防ぎます。

 ⑤ 完全に空気が閉じ込められていれば、外からの圧力によって、ある程度自由

  な形にする事が可能です。即ち上部(頭)を下に押し付ければ、直径の大きな

  形になり、左右から両手で中央に押し当てれば、縦方向に伸びた形になります。

 ⑥ 作品の壁の一部が薄かったりすると、壁の一部に穴があく恐れがあり、

  穴が開くと当然、風船は「しぼんで」しまいます。一度しぼむと再度膨らま

  せるには、「柄こて」の入る穴を開けなければなりません。

  又、壁の縁が肉薄の場合、作品の口を閉じる事は難しくなり、土に拠れが発生

  する事もあります。

 ⑦ 完全に空気を閉じ込めると、素地の乾燥の収縮と共に全体が縮、内部の気圧

  も上昇し、やがてヒビが入ったり、破裂する恐れがありますので、針等で小さ

  な穴を開け、内部の空気を逃がし、気圧を下げます。

 ⑧ 底削りは必要です。

  底の周辺はかなりの肉厚になり易いですので、余分な土を取り除く必要があり

  その際には、シッタ(湿台)が必要になります。

 ⑨ 筒の途中から完全に閉めて、その上部の土を利用して、別の形にする事も

  可能です。但し、先に途中を閉めると、その直径が小さく、その上部が不安定

  に成りますので、ある程度上部の形を決めてから、途中を完全に閉じる事です

 風船作りで作った形状をどの様な形の作品に仕上げるかは、アイデアと新たな

 発想が必要になり、腕の見せ所となります。一例として人形等が作れます。

 尚、本焼きする際、空気抜きの穴が小さいと、土の乾燥により、穴径が更に小さく

 なり、施釉の際、穴が塞がり易いですので、施釉後には、もう一度ドリルの刃を

 通したり、施釉直後に、息を吹き掛け釉を吹き飛ばす必要が有ります。

2)管作り。

以下次回に続きます。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

続 電動ろくろ36 (異形の作品を作る)

2020-02-19 14:48:07 | 続 電動ろくろに付いて

前回は楕円の作り方を紹介しましたが、それ以外に、真円でない作品を作る事が

できます。但し轆轤挽した後、何らかの方法で、外から力を加え、変形させる方法を

とるやり方です。

1)平皿を変形させる。

 ① 花皿を作る。

  平皿の縁を内側に立ち上げ、縁に高低差を設け、円周方向にも内外差を設け、

  花びらの感じを出す方法です。

  例えば、等間隔に五か所を立ち上げれば、梅の花の様になります。

  立ち上げる数や、その形に大小や高低を変化させれば、花びらの様子も変化し

  ます。立ち上げるには、轆轤挽直後に指や棒状の物で、外側から内側へ折り

  返す様にします。細い棒(なるたけ円形な物)では押した部分が小さく鋭く

  なりますが、太くて滑らかなカーブを持つもので、押さえれば柔らかい感じに

  なります。

  尚、轆轤挽後に若干乾燥させれば、作品は硬い感じになり、轆轤挽き直後で

  あれば、形がしっかりしませんが、その分柔らかい感じになります。

  棒等の用具を使うと、折り返した際に棒等の痕が残りますが、綺麗になくして

  も良く、そのまま残す場合もあります。

 ② ハート型の平皿や小鉢を作る。

  真円に轆轤挽した作品の一か所を内側に立ち上げればハート形の平皿や小鉢を

  作る事ができます。更に立ち上げた真反対側を、左右から押し付け、やや

  尖った形に変形すれば、より綺麗なハート型に成ります。

 ③ 多角形の皿や鉢を作る。

  真円の皿や鉢の縁を(不)必要な枚数を切り取ります。切り取る角度は自由に

  設定できます。切り取る場合直線でも曲線(弓なり)良いのですが、出来上が

  りの雰囲気は異なります。又隣同士の切り口を合わせて、鋭角にしたり、

  縁の円の一部を残す場合もあります。更に切り取る量に変化を持たせる事に

  より、動的な動きを出す事も可能です。切り取る形も左右対称形でない方が

  より動きが出易いです。

 ④ 花びら風に縁の一部を切り取る。

  例えば、真円の縁を数枚ハート型に切り取り、桜の花の様にする事もできます

  切り取る量を大きくすると、皿として十分広く取れなくなりますので、注意が

  必要です。勿論大皿であれば、気にする必要の無い事項です。

 ⑤ 皿や鉢の一部のみを持ち上げる(変形させる)方法もあります。

  円周の一部を立ち上げ、持ち易い形状にした器を見る事も有ります。

  実用的だけで無く、デザイン的要素を取り入れてた、器にする事も可能です。

 ⑥ その他の注意事項。

  ⅰ) 縁を持ち上げる際、底の近くから変形させれば、皿の中央付近か変形しま

   す。縁の近辺から変形すれば、器の中央部分は、丸皿同様に平らで広い面積

   を得る事ができます。どちらかにするかわ、作り手のセンスに拠ります。

  ⅱ) 底削りの必要な作品は、縁に高低差がありますので、直に轆轤上では削り

   難いですので、シッタ(湿台)を使う必要があります。

  ⅲ) 同型の平皿を作るのは難しい事と、各々重ね難いですので、収納し難い

   事です。尚同型で重ね易い器を作るには、型(土製や木型)が必要です。 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

続 電動ろくろ35(楕円を作る)

2020-02-09 10:31:57 | 続 電動ろくろに付いて

轆轤では円形の物は得意ですが、それ以外の形は何らかの加工を加えない限り不可能

です。著名なのは、急須などは円形のパーツを組み合わせて作品に仕上げます。

楕円形の器を作りたい時は、幾つかの方法があります。

1)轆轤挽した後に、両側から板や湾曲した平面を押し当て楕円を作る。

 比較的円形に近い楕円形の場合に向いています。

 ① 最も簡単な方法です。底面に糸を入れなければ、上部のみが楕円となり、

  下部は円形のままですですので底削りも容易です。

  轆轤挽した直後では、柔らか過ぎて形が不安定に成りますので生渇き程度の

  乾燥させた方が良いでしょう。平たい板では短径の両側が直線的になり、

  楕円ぽく見えませんので、成るべく湾曲した平面を使う事です。

  湾曲した平面は粘土でも作れます。タタラ又は轆轤挽した一部を切り取る等の

  方法があります。

 ② 両端を左右に引き延ばす方法もあります。

  簡単な方法は、手の指を器の縁に掛けて、左右に引き延ばす事です。

  その他コテや棒等を使う場合があります。但し器の内側に傷が付く恐れがあり

  ます。左右対称の綺麗な形にするのが難しいです。

 ③ 上記の方法又は下記の方法ではいずれも器の縁の高さに高低差が発生します。

  即ち寄せた側の縁は高くなり、引き延ばした側は低くなります。

  勿論そのままでも良いのですが、気に成る場合は縁の高さを切けるか、削って

  揃える事です。 

 ④ 楕円形でなく半月状の器も上記方法で作る事ができます。

  色々試して好きな形の器を作って下さい。

  尚、偏壺などの側面も同様な方法で変形できます。

2)轆轤挽した後、器の底を一部切り取り両側から寄せて貼り合わせて作る方法は

 技術書などで紹介されていますが、中々上手くはいきません。特に貼り合わせの

 部分に亀裂が入り易い事と、左右対称の形にするのに変形させるのが難しいから

 です。轆轤挽した後の乾燥具合により、形は加工する力の入れ方に左右されます

3)轆轤挽した円形の器を、楕円形の型に被せる等して楕円を作る事です。

 但し、予め型になる楕円形の容器を用意して置かなければならない事となり、

 型の通りに成りますので、形の自由度は少ないです。同じ形の楕円の器を作る

 のに適しています。市販されている楕円の容器も存在しますので、これらを利用

 する方法もあります。勿論ご自分で楕円の型を作る事も可能ですが、その型を

 作るのが今問題に成っている訳です。型離れを良くする為、布や片栗粉を使うと

 良いでしょう。

4) 轆轤挽した作品を縦に二分割する事により楕円形を造る。

 ① 球の形を二分割しても、断面は真円に成りますが、ラグビーボールの様に

  縦長の形にすれば分割した断面は楕円になり、ある程度ご自分の作りたい形や

  大きさにする事が出来ます。

 ② 轆轤挽した作品の下部の外形は円ではありませんので、生乾燥の際に上下を

  逆さにして、綺麗に削り出す必要があります。

  勿論二分割した作品の外側を使う場合には必要な作業ですが、内側を使う場合

  には必要ありません。

  左右方向(短径)は対称に成りますが、長径方向の上下を対称形に轆轤挽する

  事は難しいです。

 ③ 二分割した作品は分割面を下にすれば安定して設置する事が可能ですが

  分割面を上にすれば、転がり易いですので、回転止めと安定して置ける様に

  底の部分を細工する必要があります。

 ④ 分割して作った物を型に使う事も可能です。

  その際には素焼きしてから使う事です。同じ型でも内側を使う場合は小さくなり

  外側を使うと若干大きな楕円となります。

  この方法であれば、好みの形になるまで何度でも作り直す事も可能です。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

続 電動ろくろ34(トラブル11削り作業3)

2020-01-19 12:14:47 | 続 電動ろくろに付いて

前回の続きです。

② 削り途中で作品が移動してしまう事。

 底削りの際作品が轆轤の中央より移動してしまう事は度々ありるトラブルです。

 移動する要因として作品が轆轤面やシイタ(湿台)に密着せず、何らかの原因で移動して

 しまう事です。

 ⅰ) 作品が乾き過ぎると、柔らかい粘土の止め土が、作品を留める力が弱くなりなり、轆轤

  の遠心力に負けて移動する場合もあります。回転スピードを極端に早くしない事です。

  当然ですが、作品が轆轤の中心にないと、作品に均等な遠心力が働かず作品は移動します

 ⅱ) カンナ等の刃物が作品に食い込み、その結果作品に余分な力が働き、作品が移動する

  場合あります。原因は作品の表面に凹凸が有り、その部分に引か掛かるか事、更に刃物

  と角度が合わない事、刃物の切れ味や作品の乾燥具合に関係してきます。

  早急に一度に厚く削ると刃先が食い込み易いです。

 ⅲ)一度作品が移動すると再度同じ位置にセットする事は難しく成ります。

  その為、再度セットし直す時は、ある程度中心が出れば良いとする事です。

③ カンナ(又は掻ベラ)の刃が作品に食い込み傷を付けて仕舞う事です。

 作品を移動する程度では、大きな傷には成りませんが、食い込むと成ると大きな傷になりま

 す。食い込む程に成ると、作品が轆轤上より転げ落ちて仕舞勝ちです。

④ その結果 作品が轆轤とドベ受けの間に落ち、作品が壊れたり、傷付く事があります。

 この状態では、作品を没にする事が多いです。

⑤ カンナの刃と作品の角度が合わず、削りがスムーズに運ばない事。

 刃物は刃を立てないと削れません。削る為の最適な角度を見つける事です。

 最適な角度とは、削り滓(かす)が一定の量連続して出る状態です。

 削り作業を行う前に、刃物を研石等で研ぎ、切れ易くした状態で使う様にします。

⑥ 作品によって削り痕が残り見苦しく成る事もあります。

  特別な時以外は、作品の表面の肌は粗くする事は有りません。滑らかな肌の方が見た目

  にも穏やかな表情を呈します。刃物で削った後に水で濡らした「なめし革」で「一拭き」

  したりドベを擦り付けて、表面を整える方法を採る場合もあります。特に高台の畳付き

  の部分は、テーブルを傷付ける恐れがあるので行う人もいます。

⑦ 勿論素地の肌理の細かさによって、表面が荒れたり滑らかに成ったりし、作品の出来を左

  右する事も稀ではありません。即ち、男性的な豪快さを出す事も可能ですが、女性の体の

  線の様に滑らかな表面に仕上げる事も可能です。

  その為、あえて削り痕を残すことも珍しくは有りません。

⑧ 三日月高台の様にあえて、作品を中心からずらしてセットする場合も有ります。

電動轆轤上で削れるのは、作品が円形で凸凹の無い状態の作品です。楕円形や歪(イビツ)な

作品は、手轆轤等を使用しゆっくり回転させながら削る事になります。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

続 電動ろくろ33(トラブル10、削り作業2)

2020-01-11 17:04:35 | 続 電動ろくろに付いて

4)削り作業での主なトラブルは、以下の事項です。

 ① 作品を轆轤の中央に置けず、片削りに成ってしまう事。

 ② 削り途中で作品が移動してしまう事。

 ③ カンナ(又は掻ベラ)の刃が作品に食い込み傷を付けて仕舞う事です。

 ④ その他 作品が轆轤とドベ受けの間に落ち、作品が壊れたり、傷付く事が

  あります。

 ⑤ カンナの刃と作品の角度が合わず、削りがスムーズに運ばない事。

 ⑥ 作品によって削り痕が残り見苦しく成る事もあります。

 ⑦ 勿論素地の肌理の細かさによって、表面が荒れたり滑らかに成ったりし、

  作品の出来を左右する事も稀ではありません。即ち、男性的な豪快さを出す事も

  可能ですが、女性の体の線の様に滑らかな表面にする事も可能です。

以下詳しく記述します。

① 作品が轆轤の中央に置けない。

  作品を轆轤にセットするには、幾つかの方法が有ります。

 ⅰ) 轆轤の天板に直接セットする方法。

  作品が左右均等で綺麗な形で轆轤挽されている場合で、特に口縁に凹凸がない

  場合の時に行います。尚、天板上に鉛筆等で、口縁よりやや大きめの真円を描

  いておくと中心が出易いです。

 ⅱ) 轆轤の天板に板状の粘土を敷きその上にセットする方法。

  作品の口縁に凹凸がある場合、直に置くと作品は回転と共に首振り運動を起こし、

  作品とカンナの隙間も刻々変化し、綺麗に削る事は出来ません。

  その為、天板に柔らかい粘土を置き轆轤を回転させ、表面を、平らに削った後

  剣先等で口縁に合わせた真円を描き、作品を置きます。当然縁の凹凸により底の

  高さも均等に成らず、首振り運動を行いますので、底の高い所を粘土に押し込み

  底の高さを均等に近づけます。

 ⅲ)シッタ(湿台)を使う方法。

  一般に鶴首の様に逆さに置けない場合に使いますが、口径の大きい器や口縁が

  真円に出ない場合や縁に凹凸のある場合にも使います。

  使い方は、鶴首の様にシッタの内側を使用する場合と、口径の大きな器や、それ以外

  の一般的な湯呑やご飯茶碗等にも使用し、シッタの外側を利用します。

  シッタには素焼きした物と、生の物があります。素焼きした物は十分水で吸収して

  濡らしてから使用します。尚作品の首の長さや口径の違いによって数種類用意

  するのが一般てきです。生シッタは汎用性のある素焼きのシッタが合わない場合、

  その都度制作する事が多いです。当然ある程度乾燥した後に使います。

 a) シッタを轆轤上に作品をセットする。

  シッタも轆轤上の略中心に置く必要があります。轆轤を回転させシッタを横方向

  から軽く叩き中心に移動させます。叩く力が強過ぎると移動量が大きくなり中々

  一定の位置に移動する事が出来ません。力の入れ具合も慣れをないと意外と難しい

   です。

 b) シッタを柔らかい粘土(止め土)で固定する。

  シッタの底周辺の三か所を止め土で留めて固定します。

  シッタが動いてしまうと、削り作業は不安定になります。

 c) シッタの最上部に柔らかい粘土を巻き付け、轆轤を回転させカンナや竹べらで

  削り高さを均一にし、シッタの内外を綺麗な円にします。

  尚、柔らかい土を巻き付ける理由は、作品を密着させると共に、作品に傷を付け

  ない為です。柔らかい粘土の替りに布を使用する方法もあります。

 d) シッタに作品を載せる。

  当然作品を中央に載せるのですが、多くの場合最初は作品が斜めに成る事が多い

  ですので、何度も作品を移動する事になります。コツは作品の底が水平に成る様

  にセットする事です。特に背の高い作品は傾き易いですので注意が必要です。

  セットが完了したら、作品とシッタを柔らかい土で固定します。方法は細い紐状の

   粘土を作品とシッタの間に挟み込み、シッタの土で紐状の土を巻き込みながら

   作品側の真上にの擦りつけます。

 e) 作品が轆轤上の中心にない場合、電動轆轤で削ろうとすれば片削りに成って

  しまいます。勿論肉厚が厚ければ孔が開く事は有りませんが、作品を軽くする

  為に、薄くしたい場合や大きく削りたい場合には、中心からズレル事は危険です

  尚、時間は掛ますが、手動で回転させて少しづつ削る事も有ります。

  勿論面取りや異形な作品では、自動で削る事はほぼ不可能です。

以下次回に続きます。    

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

続 電動ろくろ32(トラブル9、削り作業1)

2019-12-25 09:11:32 | 続 電動ろくろに付いて

轆轤挽や手捻りした作品は、必ず削り作業が必要になります。

その目的は、余分な土が付いている為、作品が重くなる事を防ぐと共に、形を整え

る役割もあります。

尚、作品の形を維持する為に、素地の柔らかい時は余分な土は絶対必要です。

その為極限まで余分な土を取り除いて作品を作る事は、ほとんど不可能です。

力を加えても変形しない程度に乾燥すれば、削れる様になります。乾燥が進み過ぎ

ると、カンナ等の刃が立たなくなる程硬くなり、削れなくなる場合が有りますので

注意が必要です。(土が白っぽく成ると乾燥し過ぎです)乾燥し過ぎた作品は濡れ

た巾等で包み湿り気を与えたり、小さな作品では、一瞬水に漬けて濡らし削り易く

します。但し長く水に漬けると、作品が溶け出しますので注意が必要です。

理想的な削りの乾燥度は、削りカス(カンナ屑)が帯状に細長く続く状態です。

削る部分は、底(高台回り)と作品の腰の部分が大半です。

勿論急須の様に各部分を組み合わせて作品に仕上げる時には、各パーツを整形する

為に予め必要な部分を削り取る場合もあります。

1) 削る量の問題。

 多くの場合、削り不足の場合が多いです。特に初心者に多く見かけます。

 削る際、どの程度削れるかが不安の為です。削り過ぎると形が崩れるだけで無く、

 最悪の場合孔が開く事も珍しく有りません。

 その為、厚みを確認しながら削りたいのですが、実際には作品を上下逆さにし更に

 轆轤上に固定して高台を削り出しますので、一々轆轤より取り外して厚みを確認

 する事は、再度固定する事になり現実的ではありません。

2) 作品を轆轤の中心に置く。

 轆轤の回転力を利用して、カンナや掻ベラ等の刃物で削ります。轆轤で作る作品

 は円形の場合が大半ですので、削りたい部分の円周を均等の厚みに削る為には、

 轆轤の中心に作品を置く必要があります。中心よりズレると、片削りの状態に

 なり、場所により肉厚が変化します。

 ① 作品を上下逆さに置く場合と、逆さにせずに置く場合があります。

  高台や高台脇を削る場合は、直接轆轤上に逆さにセットするか、逆さに出来ない

  形状の場合は、シッタ(湿台)を据えてその上に作品を逆さに置きます。

  尚、シッタには、口径の大きな場合に使う内シッタと、口径の小さな作品の

  壺等の場合に使う外シッタがあります。

  器の内側や口縁等の上部を削る際には、上下逆さにせず轆轤上に作品をセット

  します。

 ② 中心に作品を置く方法も色々なやり方があります。

  更に轆轤上に作品をセットした後に、その作品を粘土等で固定する方法と、固定

  しない方法があります。各々利点と欠点があります。

  前者の場合、何らかの不注意で作品が動いてしまうのを防ぎますが、手間が

  掛かる欠点もあります。後者で有れば、容易に動く可能性が有りますが、削り

  終われば速やかに次の作品の削りに取り掛かる事も可能です。量産する職人

  さん達はこの方法を採っています。

 ③ 轆轤の回転方向も右と左回転の方法があります。

  電動轆轤では回転方向を自由に選ぶ事が可能ですので、削り作業のみを左回転

 (反時計方向)で行う人もいます。カンナ類を右手で持った場合、カンナの当たる

  方向が自然な形に成るからです。

3)作品の肉厚を確認する方法に、作品を爪で弾いてその音の高さで判断する

 場合が多いです。同じ様な作品を数多く作る場合は、一個を削って見れば様子が

 判りますので、一々厚みを確認しなくともほぼ同じ厚みに成りますが、一個作り

 や、轆轤の削り作業に不慣れな方は、上記の様に爪で弾いて厚みを確認しながら

 削ります。但し慣れない方は音を聞いても、判断できないかも知れません。

 先生や指導者がいる場合には、確認して貰いながら音の高さを聞き分けられる

 様にします。

 ① 肉厚が厚い場合は、弾いた音は高くなります。

 ② 肉厚が薄い場合には、弾いた音は低くなります。

 ③ 叩く場所によって音色も変化します。

  作品の乾燥度合いや底、高台脇、腰、口径近くと同じ力で弾いても音色に差が

  出ます。当然、作品の大きさ(径、高)によっても音色が変わります。

  どんな音色になるかは、経験を積まなくては判断できない事が多いです。

以下次回に続きます。 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

続 電動ろくろ31(トラブル8、蓋物2)

2019-12-13 15:52:22 | 続 電動ろくろに付いて

4) 蓋物のトラブル。

 ① 器と蓋の寸法が合致しない。

  良く起きるトラブルですので、注意が必要です。

  不都合なのは、器と蓋の接合部(合わせ目)がピッタリ合わない事です。

  蓋が大き過ぎ閉まらない事も多いです。但し蓋が小さくて隙間が大きくガタガタ

  しても、使用上は問題に成りません。当然、この様に成らない様に、一個作りの

  際には、現物合わせで隙間を調整する事になります。

  合わせ目が円形の場合には一か所だけでなく、どの方向でも蓋が合致する様に

  します。

 ② 蓋が歪む為に組み合わない。

  蓋の形状にもよりますが、蓋が歪む事も有ります。特に轆轤挽した直後では、一番作品

  が縮みますので、狂いも大きくなり易いです。その他焼成中にも歪みます。

  一般に、蓋は丸味のある凸状に成っている物が多いです。平らな物は凸状と比べて変形

  する事が多いです。更に蓋の直径が大きい程、乾燥時や焼成時に歪み易いです。 

  器の口縁周辺を若干高くし、落とし蓋にすると納まりの良い形になります。

 ③ 焼成で起こるトラブルは、釉が合わせ目に入り込み、溶着してしまう事です。

  その為、蓋を開ける事が出来なくなります。この場合の解決策は、溶着部分を物理的

  方法で剥がす事になります。具体的には、溶着部分が一か所の場合で、溶着範囲が比較

  的狭い時には、溶着部分を根気よくハンマー等で軽く叩き続ける事です。

  但し、溶着部分を破壊する恐れも大きいですので、クッション材を利用して慎重に

  作業します。ある程度蓋が動き始めたら、テコの応用で先の細い金属類で、こじ開け

  ます。更に細工用のダイヤモンドヤスリの先端が、蓋と本体の隙間に入る事が出来る

  場合には、その隙間にこじ入れて徐々に削り取る方法もあります。

 ④ 上記の状態に成らない為には、施釉の際接合部分に釉が付着させない事です。

  蓋側と本体側の両方共必要です。若し、釉が掛かった場合には、水で濡らした

  スポンジ等で綺麗に拭き取ります。更に、水で溶いだ水酸化アルミナ等の溶着

  防止剤を筆等で塗っておきます。

  基本的には、蓋をした状態で、本焼きしますが、蓋と本体を別々に焼成する

  事もあります。前者で有れば、例え形が狂っても、その位置でなら蓋が出来る

  事に成りますが、後者であれば、溶着する恐れは在りませんが、形が狂った

  場合には、何処でも合わない事になります。別焼きの場合、施釉する範囲は

  若干広くなりますが、施釉の為肉厚が大きく成りますので、釉の厚みにも注意

  が必要です。又、蓋に蒸気抜きの為に小さな孔を開ける場合があります。

  この場合も施釉後に、息を吹き掛けて釉を飛ばします。

 ⑤ 溶着部分が広い場合には、残念ながら蓋が取れず諦める事になります。

  蓋物の場合、蓋の取れない作品は、ほとんど使いものに成りません。

  最初から作り直す方が、肝銘です。

 ⑥ 蓋物で注意する点は、器内部の物(食品、料理等)を取り出す際に、器側の

  口縁が邪魔になり易いですので、成るべく簡単な構造にする事です。

  特に内側に反り返る蓋受けでは、器側の口径を狭くしますので、出来るだけ狭く

  するか、無くす構造にした方がより実用的になります。  

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

続 電動ろくろ30(トラブル8、蓋物1)

2019-12-03 13:25:18 | 続 電動ろくろに付いて

焼き物では、急須を始め、湯呑茶碗や茶碗蒸し用の器、茶道の水指、重箱、更には骨壺など

で、同じ素材の蓋の付いた物があります。(同じ素材の蓋を共蓋と言います)。

蓋物のトラブルとは、主に蓋と本体(器)がピッタリ重ね合わない状態です。

最悪の場合、蓋が出来ない場合すら珍しくありません。理想的には、どの位置でも蓋が出来る

事ですが、ある一か所のみでしか合わない事も多いです。蓋と本体の隙間が合わず、ガタガタ

する事も、稀ではありません。これらの原因や対策などに付いて述べたいと思います。

更に、蓋の合わせ方にも幾つかの方法がありますので、どの方法を採ったら良いかものべます

1) 本体と蓋を作る時は、時間差が生じます。

 一般には本体(器側)を先に轆轤挽きした後、蓋を制作する事が多いです。

 素地は、轆轤挽直後から乾燥収縮が始まります。それ故、蓋を轆轤挽時には、本体はかな

 縮んでいますので、この際の口径を測定し一致させても、完成時の蓋と本体の直径は合い

 ません。即ち本体を轆轤挽した直後の口径を測定し、その値を基に蓋の口径を決なくては

 いけません。口径を測るには、物差し等も有りますが、一般にはコンパス状の内パス、

 外パスを使用します。

2) 蓋と本体の隙間に付いて。

 単に器の上に蓋を置く構造であれば、隙間(クリアランス)を考慮する必要は有りません。

 しかし実際には、蓋が横に滑らない様に、何らかの引っ掛かりを付ける必要があります。

 引っ掛かりを器側に設ける場合と蓋側に設ける場合もあります。

 この器と蓋との隙間が問題になります。隙間が小さいと蓋は閉まりませんし、広過ぎると

 ガタガタしてしまいます。

3) 陶芸で良く使われる蓋の種類と名称。

 蓋を受け止める本体部分を蓋受けといいます。勿論蓋受け部分の無い器も存在しまあす

 蓋の種類には以下の物があります。

 ① 載せ(ノセ)蓋

  平板な蓋で、蓋自体や器側にも蓋を受け止め、移動を止める突起物は有りません。

  例えば、群馬県の碓氷峠の横川にある、峠の釜めしに付いている蓋です。

 ② 浅蓋(アサブタ)と深蓋(フカブタ)。

  器と同じ外形で、器本体より蓋の直径が大きく、本体に被さる状態の物です。

  蓋の内径が、器の外形よりも若干大きく、蓋の内側が器の外形に被さります。

  被さる長さが短い蓋を浅蓋と言い、器側より蓋側が長い物を深蓋といいます。

  又浅蓋を被せ蓋(カブセブ)とも言います。

 ③ 印籠(インロウ)蓋

  一番多く見られる蓋の形状で、蓋側又は器側、更には両方の合わせ目に凹凸がある形状

  の蓋です。印籠蓋にも幾つかの種類があります。

  ⅰ) 送り印籠: 器側の口縁の幅(肉厚)を二分し、その外側を高くし、内側を

   低くして段差を設けます。蓋側これと反対に外側を低く、内側を高くしてしっかり

   蓋と器が噛合様にします。

  ⅱ) 逆印籠: 上記送り印籠の蓋側と器側の凹凸が逆に成っている形状です。

   何れも、凹凸は轆轤の削り作業で成形します。

  ⅲ) 付け印籠:削り作業ではなく、器本体又は蓋本体の内側に円形の物を張り付け

   凹凸を作る方法です。口縁の肉厚が薄く削りが出来ない場合に行います。

   即ち、器側(又は蓋側)の内側に器より背の高い同型の円筒を張り付けて、内側が

   高く、外側の低い段差を設ける物です。

 ④ 落とし蓋。

   器側の口縁より一段低い位置に蓋受け部分を設け、底に蓋を置く方法です。

   当然、蓋の直径は器側の直径より小さくいます。急須の蓋や水指の蓋等で多く見る

   事が有ります。食器等に使用うと、口縁の内側の出っ張りが邪魔になり易いです。

   尚、内側の出っ張りを無くす方法として、①で述べた載せ蓋の内側に器の内径より

   やや小さい円形の突起物を設け、蓋の滑りを止める方法もあります。

 ⑤ 懸子(掛け子)

  蓋が二重になる物です。内蓋と外蓋が別々に成ります。

  緑茶を入れる茶筒がこの構造です。内蓋は落とし蓋で外蓋は浅蓋に成っています。   

 ⑥ その他の蓋

  ⅰ) 台指(ダイサシ):本体(器)の高さが低く、蓋が深い形状で、器の中央部分

   を高くして、蓋の内側に合わせます。

  ⅱ) 桟(サン)蓋

   焼き物では余り見ませんが、桐箱などで見られる蓋です。

   四方桟と下駄桟(二方桟):蓋の内側に四角又は二本の桟を設けた物です。

   この桟が器の内側に当たり、蓋の座りを良くします。

以下次回に続きます。

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする