わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

素朴な疑問 271 金色を呈する釉とは?

2017-01-26 15:12:04 | 素朴な疑問
釉の中には、金色を呈する物も存在します。勿論、本物の金が存在するのでは無く、あくまで金色

又は、金色に類似した色を呈する釉の事です。ほとんどが結晶釉です。例えば、金結晶釉や朱金結晶

釉、金ラスター釉、マンガン窯変釉、金茶釉、金砂釉の様に、釉全体の表面に面状や筋状に浮き出て

くる場合と、そば釉(黒そば釉)の様に、点々と金色(緑黄の場合も有る)が現れる場合があります

いずれも金属の化合物が金色を呈しますが、全く異なる金属や釉の組成成分との組み合わせ

(化学反応)で起こる事が、判明して来ました。

又、金色以外に油滴天目の様に、銀白色が点々と呈する釉が存在します。これは、金属の化合物では

無く、釉の鉄分が結晶として、点々と析出した物で、光線の加減によっては金色に輝く場合もあります

 但し、ここでは金色を模したとされる、黄瀬戸釉の話では有りません。

1) 多量のマンガンと少量の銅で金色を呈する。

  マンガンに無鉛フリットを加える事でより金色の結晶が発生し易くなります。結晶は熔けた釉が

  移動する事で発生しますので、平たい器形より縦に長い形の作品に出易い傾向にあります。

  尚、マンガンは色の役目の他に、熔かす役目もあります。

 ① マンガン結晶釉: 光沢の乏しい黒っぽい釉肌に、金色っぽい結晶の出る釉です。

  ⅰ) 酸化、還元焼成でも金属光沢が出ます。但し還元焼成の方が、大きな結晶が出易いです。

  ⅱ) 焼成温度が低過ぎた場合は、金属成分が熔け込まず、黒っぽくなり易いです。

    焼成温度が高過ぎる場合、釉が流動し過ぎて、結晶が出難くなります。

  ⅲ) 釉が薄過ぎても、濃過ぎても金色が出難くなります。

 ② 金ラスター釉: 釉の表面に金属光沢が出る釉です。酸化焼成で光沢のある大きな金色の結晶

   を作り、還元では細かい結晶ととなり、黒っぽい茶色になります。高温になると燻し(いぶし)

   金の様に発色します。

2) 二酸化チタン、酸化第二鉄、骨灰の配合で金色を呈する釉となる。

 ① 金結晶釉: すこぶる流れ易い釉ですので、施釉に注意が必要です。

   施釉した全面に金色(風)に現れます。

    調合例: 配合は外割りです。即ち基礎釉を100%とし、他の素材を添加します。

    基礎釉に、二酸化チタニウム11%、酸化第二鉄(弁柄)7%、骨灰2% 

 ② 金茶釉: 茶色系の釉の一部が金色(風)に発色します。

   調合例: 基礎釉100%、酸化第二鉄(弁柄)12%、二酸化チタニウム6%

   カオリンマットと鉄の反応でも発生します。

 ③ 金砂釉: ややマット系の黒の釉に、金色(又はそれに近い金色)が流れ落ちます。

3) 亜鉛華、炭酸バリウム、酸化第二鉄(弁柄)、酸化チタンを添加して発色する。

 ① 朱金結晶釉(ルチール結晶釉): 金色よりも朱色が強く出る釉です。

  ルチール結晶釉または朱金地釉と呼ばれる、朱赤の地に金色の結晶が生まれる釉です。

  亜鉛華、炭酸バリウム、酸化第二鉄(弁柄)、酸化チタンを添加して発色させます。

   調合例: 基礎釉100%に対し、亜鉛華 3.95% 炭酸バリウム 6.45%、弁柄8% 酸化

    チタン10%を添加。

4) マグネシア成分を添加し、黄色や緑などの細かい結晶釉。

  ① そば釉; 飴釉や黒い地に緑色や黄色の細かな結晶が析出する釉です。

   基礎釉に100%に、マグネサイトを6~9%程度添加します。

   マグネサイトが多くなるに従って色調が暗くなり、多過ぎると結晶の析出が多く、艶消し状

   の釉となります。

  ② 黒そば釉: 上記そば釉に酸化鉄(弁柄)を添加すると、釉は飴色から黒色に変化します。


上記の釉は、ご自分で調合する事も可能ですが、焼成具合や各種の配合条件等で、思う様に発色し

ない事も多いです。

類似の釉が各メーカーから市販されていますので、興味のある方は、取り寄せて試す事をお勧め

します。

参考資料;藤原寛著「陶芸釉薬見本帖Ⅱ」(株)ナガジンランド発行
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素朴な疑問 270 市販されている粘土類(ブレンド用4)

2017-01-11 16:23:20 | 素朴な疑問
8) 機械的強度と熱的強度

 ① 機械的強度。

  焼き上がった作品でも、何らかの原因で、使用中や食器洗い、運搬途中で亀裂が入ったり、

  縁が欠ける事も起こります。「焼き物は壊物」とも言いますので、壊れるのは宿命かも知れま

  せん。しかし強い力が掛かった訳でも無いのに、壊れる事もあります。同じ衝撃であっても、

  破損する物と、無事な物があります。その違いは機械的強度に左右されます。多くの場合、

  焼きの甘さに関係する事が多いのですが、素地に問題がある場合もあります。

  ⅰ) 焼きの甘さに関係する。

   焼成温度が高い程、土は強く焼き締まり密度も増しますので、機械的強度が増す事になります

   施釉した作品であれば、釉がしっかり熔け硬質なガラス質になりますので、更に強度増ます。

  ⅱ) 素地の焼き締まりは温度以外に、素地の構成成分によっても異なります。

   それ故、素地の構成成分を変える事で、機械的強度を増す事ができます。

   一般に細目の土よりも、粒子の粗い土の方が、焼き締まりが弱く、衝撃に弱い傾向にあります

   但し、微粉末された石英を多く含む素地では、焼成で強い内部応力が掛り易いですので、

   何らかの原因で、突然「ひび」や「割れ」が入る場合がありです。

   更に、制作時に土を良く叩き締め、密度を増す事も大切な作業です。仕上げで縁を皮などで

   拭き締めると、一層縁の割れを防ぐ事が出来ます。

  ⅲ) 釉が熔け不足の場合も、機械的強度は弱くなります。

   釉は完全に熔け切った状態で、釉の内部まで均一なガラス状態になります。熔け切ていない

   場合、表面は強いガラス質ですが、内部では化学的に不安定なガラス質になり、強度も弱く

   なります。場合によっては、ガラスの材料が粒子状態で残っている場合もあります。多くの

   場合熔け切っていない釉はマット状に成る事が多いですので、光沢のでる釉がマット状に焼き

   上がる場合には、釉の熔け不足と思って間違いありません。

 ② 熱的強度。

  土鍋など特殊な用途の物以外では、陶磁器は急激な温度変化に耐えられない場合があります。

  特に煮沸する容器や、直火に掛ける物や電子レンジなどでは、注意が必要です。

  素地その物に原因がある物と、作品の形状に起因する場合があります。

  ⅰ) 素地その物に原因がある場合。

   a) 石灰成分の多い素地では、急激な温度変化で作品が割れる恐れが大きいです。

    骨灰を多く含む素地(骨灰磁器など)では、急激な温度変化に弱い物です。

   b) 熱膨張率が大きな素地では、危険が増大します。

    素地が膨張収縮する事で、作品にストレスが繰り返しかかる事で、熱破壊が生じます。

    熱膨張率を小さくするには、ペタライト等リチウム鉱物を含む素地を用いる事です。

    例えば粘土60%に、ペタライト40%の素地を使うと良い結果が得られます。土鍋用の素地

    にはペタライトが入っている物が多いです。又土鍋用の釉にもペタライトが混入されてい

    ます。

   c) 石灰成分を含まない、粘土質で多孔性のある素地(素地の密度が小さい)は熱的変化に

    強いです。

  ⅱ) 作品の形状に起因する場合。

   a) 熱が部分的に集中しない形にすれば、急激な熱変化に強くなります。

    火(炎)の当たる底部に角張った部分があると、熱はその一点に集中し易くなり、熱破壊が

    起こり易くなります。即ち、土鍋などは底全体に熱が均一に伝導する緩やかなカーブを設

    ける事です。

   b) 熱伝導が悪い素地の場合も、急激な熱変化に弱いです。

    熱伝導は、作品の形状と素地の両方に関係します。即ち、緻密な焼き固まった素地では、

    熱伝導が悪く、急激な熱変化で簡単に破壊される事が多いです。

以上で「市販されている粘土類」の話を終わります。
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素朴な疑問 269 市販されている粘土類(ブレンド用3)

2017-01-04 22:45:42 | 素朴な疑問
6) 水漏れ(透水性)に付いて、及びその予防と対策。

 花瓶等の様に、長い期間水を蓄えている器の場合、底又は胴体部分より水が漏れてくる場合が

 あります。胴体部分からの水漏れは、表面より水が蒸発してしまいますので、水が漏れても気が付

 く事が少ないのですが、底から水が漏れてくる場合には、置き台の表面に花瓶の底と同じ形状で

 濡れた跡が残ります。勿論」「ボタボタ」漏るようですと、水を入れた瞬間に気が付きますが、

 徐々に滲み出す程度ですと、数日後に花瓶を移動した後に気が付きます。

 ① 水漏れの原因は、

  ⅰ) 素地が「しっかり」焼き締まっていない為です。

   焼き締まりが弱いのは、焼成温度が低い為、又は素地の粒子が粗い為です。

   前者の場合には、焼成温度を上げるか、寝らし時間を長くする事です。後者の場合には、

   素地を改良する必要があります。即ち素地を粉砕し肌理を細かくすると良くなります。

   又は肌理が細かく、良く焼き締まる粘土を添加します。

  ⅱ) 釉に貫入などの小さな亀裂が入っている為です。

   亀裂が釉の内側にまで達している場合には、素地の中に水が浸透し水漏れを起こします。

   特に片面のみに施釉した場合に顕著です。対策としては、釉に亀裂が入らない様にします。

   即ち、貫入は素地と釉との縮みに差が出る為に起こります。素地より釉の方が縮み率が大きい

   時に起こります。特に低温度で熔ける釉には貫入が入り易いです。

   尚、貫入に付いては、釉のトラブルの項で説明しましたので、ここでは省略します。

  ⅲ) 無釉の場合や、釉のガラス質が薄い為です。

   焼き締陶器以外は施釉するのが一般的です。施釉する事で作品の表面をガラス質でコーテング

   し、水を透さなくなりますが、ガラス質が薄い場合や、しっかり熔けきっていない場合に

   水を透す事もあります。釉が薄いと感じるのは、釉の発色状態でも確認できます。

   備前焼など無釉の焼締陶器が水漏れを起こさない理由は、土がしっかり焼締まる性質がある為

   です。即ち通常の土の収縮率は12~14%程度ですが、焼締用の土は20%以上あるから

   です。

  ⅳ) 市販されている一般用の粘土では、高い温度で焼成しても、完全に水漏れを起こさない

   事は保障できません。特に近年短時間での焼成が一般的に成っている為、焼き締まりが弱く

   なっています。その為何らかの対策を取る必要があります。昔であれば焼き上がった器の

   中に、米の研ぎ汁などを入れ、数日放置し乾燥させる事で、米の澱粉質を乾燥させ、素地の

   隙間に固着させ、隙間を埋める方法が取られていましたが、現在では水漏れ防止用の液体が

   市販されています。又、食器用にも使用可能ですので、底の畳付き部分にも塗って置く事で、

   高台内の黴(カビ)の発生を抑える事ができます。

7)  素地土に含まれる不純物と有害物質。

 ① 水簸(すいひ)しても取り除けない不純物に、細かな鉄分(酸化鉄)があります。

  赤錆と呼ばれる弁柄等の酸化第二鉄は、素地に茶褐色の斑点を発生させます。

  特に硫化鉄の入った素地は、高温で分解し硫黄と酸化第一鉄に分解します。酸化第一鉄は黒色の

  斑点と成って、釉を汚す事になります。それ故この様な粘土は使う事ができません。但し非常に

  良い粘土である場合には、長期間大気中に放置し、空気の酸化作用で硫化鉄を水に溶ける硫酸鉄

  に変化させ、水簸する事で取り除く事が出来ます。尚、素地に含まれる砂鉄などは、磁石に

  よって取り除く事が出来る場合もあります。

 ② 石膏型を用いた作品では、石膏が混入する場合があります。

  石膏は高い温度で乾燥させると、微粉末になり取り除く事が困難になります。この様な場合には、

  素地を泥々に溶かし、篩を通すと取り除きます。石膏型を濡らした状態で、長期間放置して置く

  と表面に石膏の結晶が出来ます。この結晶が作品に混入する恐れもありますので、石膏型は時々

  天日干して使用する必要があります。

 ③ 硫酸石灰と石膏の結晶は釉飛の原因になります。

  石灰と硫酸鉄が混在する素地では、長い間風雨に晒されると、石灰は硫酸石灰に鉄は水酸化鉄に

  変化します。可溶性の硫酸石灰は、乾燥すると薄い層となり、作品の角(端)部分に多く集まり

  ます。その為端部分が釉飛を起こし易いです。

  これら硫酸塩を取り除くには、土練の際、炭酸バリウムを0.25~0.5%程添加します。

 ④ 各種塩類による「ブク」の発生に付いて。

  硫酸塩ほどではないが、ソーダ(ナトリウム)、カリ、マグネシウム等の塩類も、素地に含まれ

  ると、有害物質になります。これらを多く含む素地を高温で焼くと、「ブク」を発生させる恐れ

  があります。又これらの結晶がある素焼きの作品では、気泡の中に固着し取れなくなります。

  この現象を「スカミング」と呼びます。これら塩類を除去するには、水簸(すいひ)を行う事

  です。 

以下次回に続きます。
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