わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

釉の熔融(剤)について 2

2008-12-24 19:42:13 | 釉薬に付いて 釉薬の種類 熔融剤
前回の続きを述べます。

 ④ リチウムについて

  ・ リチウムは、釉の光沢や、機械的強度を増し、風化に対しても、強い物質です。

  ・ 更に、熔融剤としても強いので、珪酸、アルミナ、石灰を多量に使う釉に対して、有効です。

  ・ 酸化リチウム(Li2O)を、0.5 % 入れると釉の流動性を増し、光沢が出ると伴に、

    ピンホールの予防にも成ります。

  ・ 又、釉を安定化させ、銅の色釉では、美しい青色が出ます。

  ・ 釉の原料として、ペタライト(Li2O・Al2O3・8SiO2)や、炭酸リチウムが有ります。

  ・ クロム緑やピンク釉に、亜鉛華(ZnO)は使えず(発色を阻害)、貫入が出や易いですが、

    リチウムを入れる事によって、貫入を予防出来ます。

 ⑤ 石灰について

   石灰は、殆どの釉に使われています。それは、

  ・ 硬度を増し、磨耗に強く、耐水性に優れ、更に風化に対しても強いからです。

  ・ 又 他の熔融剤と比較すると、引っ張り強度を増し、熱膨張(収縮)率を著しく、低くします。

  ・ 石灰の量が、ある範囲以上に成ると、耐火度が増し、冷却時、灰長石と言う結晶が

    細かく分離し、マット釉に成ります。

    マット釉を作る際、この石灰を多く入れる方法が、一般的です。

    但し、過剰に入れると、結晶が気泡化を起こします。その際には、珪酸を少量入れると、

    気泡を抑える事が出来ます。

  ・ 石灰石は比重が軽く、釉薬中で他の原料を浮かせる、役目もします。

 ⑥ マグネシア(MgO)について

  ・ マグネシアは、高温で強力な熔融剤に成り、流動性を増大させ、他の熔融剤より、

    膨張係数を低下させます。貫入防止剤にも成ります。

  ・ 低温では、逆に難熔性で、1100 ℃以下では、0.2 ~ 0.4 モル程度で半艶消し~艶消し釉

   (マット)に成ります。

  ・ 釉の原料としては、マグサイト(MgCO3)、安価なドロマイト(MgCO3・CaCO3)、滑石(タルク)

    を使います。

  ・ マグネシア釉の、表面張力の大きさを利用した、装飾方法として、以下の方法が有ります。

    素焼素地に、光沢色釉を全面塗り、その上から、マグネシア釉をスプレー掛けし、焼成すると、

    下掛け釉が、熔けて流れ、マグネシア釉が熔ける際、下の釉に引っ張られ、色々の場所に、

    貫入の様な筋が出来ます。

 ⑦ 酸化バリウムについて

   他の成分との化学反応が弱く、更に耐火度が高い(熔け難い)為、あまり利用されませんが、

   熔け難い事から、逆に艶消し(マット)釉として利用できます。


以下次回に続きます。
    
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釉の熔融(剤)について 1

2008-12-23 22:15:23 | 釉薬に付いて 釉薬の種類 熔融剤
 釉が素地に融着するのは、熔けた釉が、素地の隙間に入り込み、化学結合物を作り、

 冷えて楔状に固着するからです。

 又熔け方も、ある温度に成ったら、各成分が一斉に熔けるのでは無く、熔け易い物質から

 順次ガラス化していきます。

 物質は、どんな物でも、高温に成れば、必ず熔けます。

 ・ その中で、特に熔融剤は、釉薬を熔かし易くする、材料です。


では各物質の熔けた場合を見ていきます。

 ① 珪酸(シリカ)は、熔融剤とは呼ばれませんが、釉の主成分の一つです。

  ・ 珪酸が多過ぎると、熔けなで、釉の中に残り、透光性が減り、マット状に成ります。

    その為、表面が「あばた」に成り、釉飛の原因に成ります。

  ・ 逆に、少な過ぎると、素地との結合が弱く、素地に吸収されたり、素地から

    流れ落ちたりします。更に釉が「煮える」状態で、気泡が発生し易いです。

 ② アルミナ(Al2O3)も釉の主成分です。

   この物質も、珪酸同様、熔融温度を、上げる作用が有ります。

  ・ 量の大小や、温度変化によっても、物理的な性質は、大きく変化しません。

    即ち、釉に硬さを与え、風化や化学的侵食を少なくします。

  ・ 釉に透明性を与え、失透や、結晶生成を防止する作用が有ります。

  ・ アルミナは、釉の粘度を増し、流動性を調節し、素地に安定的に融着します。

  ・ アルミナが多過ぎると、粘度は急激に増し、気泡が発生が発生します。(0.4 モルを超えない事)

  ・ アルミナの原料は、長石からも採れますが、カオリンから採ると、素地に良く付着します。


 これから熔融剤について述べます。

  ジェーゲル(ゼーゲル)式で、R O に相当する物質を熔融剤と呼びます。

  特にアルカリ (これから述べる物質)は、強力な熔融剤で、釉の流動性や、光沢を増し、

  色釉の発色を促進させる、重要な原料です。

  ・ 熔融剤は、2種類(出来れば3種類)の原料を使って下さい。その効果が著しく成ります。

 ③ カリ、ソーダについて

  ・ カリ(K2O)は、長石釉では一般的に、使われます。又ソーダ(Na2O)と置換され、

   より、熔け易く成りますが、光沢はやや落ちます。

  ・ カリやソーダを増すと、光沢は増しますが、風化に対する耐久性は劣ります。
  
  ・ 石灰をソーダと置換すると、R O のモル数が多い場合、貫入が増える傾向になります。

    ソーダは珪酸塩ガラスの中で、膨張(収縮)係数が最大ですので、貫入が発生します。

   ・ 尚、純粋なカり長石や、ソーダ長石は産出しません。お互い少しづつ混ざりあっています。

   ・ 次に、ソーダとカリの熔融剤による、金属の発色の違いを表にしました。
     
      熔融剤 ソーダとカリによる、金属の色変化
  
           ソーダ    カリ    還元        酸化

  コバルト     青     青     青藍(桃紅色)   青藍

   銅      空青  トルコブルー  赤、紫褐     緑、青緑、暗緑

  クローム   草緑    黄緑     青緑       帯黄緑、青緑

  マンガン   暗黄     紫     褐、黒褐     黄褐色、黒褐

  ニッケル    褐      褐     灰色         緑色

   鉄    帯褐黄色    褐     青緑、褐黒    黄赤褐、黒

  チタニウム   黄      黄     暗褐、茶褐    橙黄、 茶褐

以下次回に続きます。

 陶芸釉薬の熔融剤 
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釉薬の調合 (SK-8の釉薬を作る2)

2008-12-21 21:58:35 | 釉薬の調合と釉を掛ける
前回に引き続き SK-8(1250℃)の、釉薬(石灰系透明釉)の調合の、話を進めます。

 前回のおさらいです。

 SK-8の釉薬を作るには、ジェーゲルコーンのSk-2a(1120℃)の番号の組成で、作れば良い、

 事を述べました。

 そのジェーゲル式は、以下の様に表示され、福島長石、福島珪石、朝鮮カオリン及び石灰石から

 調合する事にしました。

    ・ 1R O の成分は簡単にするため、CaO = 0.6   K2O、Na2O = 0.4(モル) とします。

    ・ 即ち 1R O ・ 0.652 Al2O3 ・ 5.687 SiO2 と成ります。 (単位はモル)


  今日の本題に入ります。 (数字に付いては、前回の表を参照して下さい)

 ① K2O と Na2O の0.4 モルを福島長石から、求めます。その重量は

   0.4 / 0.167(K2O + Na2O = 0.111 + 0.056 モル)* 100 = 239.5 g

 ② この中には、Al2O3 と SiO2 が以下のモル数で、含まれています。

    Al2O3 は (239.5 * 0.182) / 100 = 0.436 モル

    SiO2 は  (239.5 * 1.111) / 100 = 2.661 モル

 ③ 0.6 モルの CaO は、石灰石から採り、その重量は

    (0.6 / 0.983) * 100 = 61.0 g です。

 ④ 必要な Al3O2 のモル数は、0.652 で、0.652 - 0.436(長石分) = 0.216 不足です。

   この不足分を、朝鮮カオリンから、採ります。

   0.216 / 0.366 * 100 = 59.0 g

   この中に含まれる SiO2 のモル数は、(59.0 *0.767) / 100 = 0.453モルです。

 ⑤ SiO2に対しての、不足分は、5.687 -( 2.661 + 0.453) = 2.573 モルで、

    福島珪石から採ります。

    (2.573 / 1.643) * 100 = 156.6 g

 ⑥ 以上の計算結果から、Sk-8 の調合は次の様に成ります。

   福島長石   = 239.5g

   福島珪石   = 156. 6g

   朝鮮カオリン =  59.0g

   石灰石    =  61.0g
   
  単位をgに表記していますが、割合ですので、1/10や、1/100の少量で調合し

  テスト焼きをて下さい。

 尚 何度も言いますが、上記データは、理論値です。

   窯の状態、上昇温度、焼成時間、燃料などの差によって、実際には、溶け不足や、

   溶け過ぎなどが、起こる恐れが有ります。その際には、上記データの割合を変えたり、

   溶媒に成る他の R O 成分を加える等して調整してください。


調整については、以前にも記しましたが、再度書いて置きます。

 ) R O 成分に Mg O 、Ba O、Fe2O3 などを加えると、融点は下がる。

 ) ZnO (亜鉛華)などを入れると、融点は下がる。

 Ⅲ) Al2O3、SiO2 を少なくすると、融点は下がる。

   などです。

陶芸釉薬調合 
   
   
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釉薬の調合 (SK-8の釉薬を作る1)

2008-12-20 21:45:17 | 釉薬の調合と釉を掛ける
、ジェーゲル(ゼーゲル)式を基にした、釉薬の例として、Sk-8(1250℃)の釉薬を調合します。

 釉薬としては、ジェーゲルコーンのSK-8よりも、5番少ない番号Sk-3a(1140℃)を使う様にと、

 前回まで述べて来ました。

 ・ 但し、ジェーゲルコーンは、1時間当たり100℃の割合で、温度上昇させ、その温度で、

   コーンが軟らかく成り、頭が床に着くと言う事を意味しています。

 ・ 即ち、Sk-8(1250℃)は12時間30分の焼成の結果です。

 上昇温度は、窯の大きさ、作品の量、燃料の違い、粘土の違い、その他の条件によって、

 窯毎に違います。

 現在の市販されている窯は、もっと短時間で、焼成する窯が一般的です。

  それ故、更に溶けやすくする為に、もう1番下の番号を、選んだ方が無難です。

 ・ 結論として、Sk-8で溶ける釉薬は、Sk-2a(1120℃)のジェーゲル式を使う事です。

1) では実際の調合例を述べます。

 ① SK-2a のジェーゲル式は、(前々回述べましたが、)以下の様になります。

   MgO=0.096   CaO=0.599  Na2O=0.085   K2O=0.220   B2O3=0.170
 
    Al2O3=0.652   SiO2=5.687   

    ・ 1R O の成分は簡単にするため、CaO = 0.6  K2O、Na2O = 0.4 とします。

    ・ 即ち 1R O ・ 0.652 Al2O3 ・ 5.687 SiO2 と成ります。 (単位はモル)

       (石灰系の釉薬に成ります)

   (注: R O に相当する成分は各種有りますが、溶媒(=溶け易くする物質)と言います。

    溶媒としての働きは、同じ様ですが、色釉の着色金属との反応や、酸化、還元焼成では、

    各々独自の作用が有ります。 詳細は、後日説明致します。)
    

  ② 釉薬の原料として、福島長石(カリ=正長石)、福島珪石、朝鮮カオリン、石灰石を

    使い、釉を調合します。

   ・ 上記物質の、100g当たりの、化学分析値、及びモル数を記します。

       Al2O3   SiO2   FeO3   CaO   MgO   K2O   Na2O

 長石    18.57  66.74   0.18   0.24    ー   10.42   3.48

  モル数  0.182  1.111                  0.111   0.056 

 珪石     0.56  98.62   0.03   0.39   ー    0.05   0.28

  モル数       1.643

 カオリン  37.27  45.82   0.58   0.60   0.25  0.54   0.46

  モル数  0.366  0.764

 石灰石   0.20   0.40   0.02   55.05  0.04   0.05   0.20

  モル数                   0.983

                (前回紹介した「入門やきものの科学」より)

 以下 次回に続きます。

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釉薬の調合 (ジェーゲル式3)

2008-12-18 22:40:03 | 釉薬の調合と釉を掛ける
前回の続きを述べます。

 前回のジェーゲルコーン(錐)のS K 値と化学組成の、表から解かる事は、

 ① R O 成分が多くなると、融点は下がる。

 ② R O 成分を多くし、更にAl2O3、SiO2を少なくすると、更に融点は下がる。

 又 表には現れていませんが、

 ③ R O 成分の、ZnO (亜鉛華)やPbO(鉛)が入ると、融点は下がります。

 尚、釉薬としては、コーンの番号より100℃程度低い温度(S K 値で5番程度低い)で、

   調合する様にします。(再確認)

ロ) 釉の状態に付いて。

  釉が透明か、不透明か、光沢釉か、マット釉かが推測れきる。

  Al2O3 と SiO2 との比(モル数)によって、釉の状態が変化します。

  (以下に述べる事は、理論値です、使用する際には、若干の手直しが必要かも知れません)

 ① 仮に、良い釉薬とは、光沢が有り、透明に溶ける釉と言う事にすると、

  R O 1モルに対し、Al2O3 : SiO2 = 1 : 7~11 位が経験的に、良い釉薬になります。

  例 Al2O3=0.2(モル)  SiO2= 2.5(モル)で透明(灰釉系)

    Al2O3=0.4       SiO2= 3.5 で透明 (磁器釉系) 

 ② マット釉(艶消し釉)

  透明釉より、Al2O3 を多くし、SiO2 を少なくすると、マット釉に成ります。

  例 Al2O3=0.45     SiO2= 2.5   でマット釉

 ③ 乳濁釉

  透明釉より、Al2O3 を少なくし、SiO2 を多くすると、乳濁釉に成ります。

  例 Al2O3=0.30    SiO2=4.0  で乳濁釉

ハ) 失透釉に付いて

  透明でない釉薬、乳濁、結晶、マットを、まとめて、失透釉と言います。

  結晶釉: 釉のガラスの中に、微細な金属などが、浮遊している場合です。

        結晶の大きさも、目に見える物から、結晶状態が良く解からない物も、あります。

       一般には、光沢が有ります。

  マット釉: 微細な結晶が存在していても、光沢の無い釉を、マット釉と呼びます。

  乳濁釉: ガラスで有りながら、釉の中で、成分が溶けても、混じり合わない場合(分相という)

  又 失透釉を作るには、失透剤(乳濁剤)を加えると、効果が有ります。

   ・ 失透剤には、骨灰、酸化チタンを少量加えると、分相を起こし、乳濁します。

   ・ ジルコンを加えると、冷却時に、結晶化し失透します。

以下次回に続きます。

 参考資料を挙げて置きます。

 ① 「入門やきものの科学」 田賀井戸秀夫著 共立出版 科学ブック28

 ② 「図解 工芸用陶磁器」 素木(しらき)洋一著 (株)技報堂出版

 陶芸釉薬の調合 
 
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釉薬の調合 (ジェーゲル式2)

2008-12-17 23:24:23 | 釉薬の調合と釉を掛ける
前回の続きを述べます。説明がダブりますけれど、ご容赦下さい。

 前回ジェーゲル(ゼーゲル)式は、以下の式で示される事を、説明しました。

   R O・m Al2 O3・n Si O2

R O 1モルに対して、Al2 O3 が m モル、Si O2 が n モル、の関係にある事を示しています。

 ① R O を構成する酸化物は、以下の様な原料が有ります。

    K2O1、Na2O、CaO、MgO、BaO、ZnO、FeO、MgO、PbO、CdO、CuO、NiOなど

 ② Al2 O3 を構成する原料は

    Al2O3、B2O3、Fe2O3、Sb2O3、Cr2O3、Mn2O3 など

 ③ Si O2 を構成する原料は

    SiO2、TiO2、SnO2、MoO2 などが有ります。

1) この式の利用方法

  この式から、以下の事が解かります。

 ① ジェーゲル番号(SKで表される)から、m、n の数値が決まり、溶ける温度が、推定できる。

 ② 釉が透明か、不透明か、光沢釉か、マット釉かが推測れきる。

 ③ 原料の割合が計算でき、容易に調合する事が出来る。


イ) では①から詳細を述べたいと思います。

  ジェーゲル錐(コーン)は SK-022(600℃)~Sk-42(2,000℃)まで作られています。

  陶芸で(特に本焼き)必要な範囲は、SK-5a(1180℃)~SK-10(1,300℃)位です。

  但し、ジェーゲル錐が倒れる温度では、釉薬は十分溶けません。溶ける温度で調合するには、

   ・100℃程度低い温度の、ジェーゲル錐の番号を選びます。

  ・ 即ち 1,230℃の釉薬を作るには、SK-2a の数値を使います。
     

  この範囲の数値を入れて見ましょう。(単位はモルです)

            MgO  CaO  Na2O  K2O  B2O3  Al2O3  SiO2

SK-01a(1,080℃) 0.151  0.541  0.134   0.174   0.268   0.625   4.931

SK-1a(1,100℃)  0.122   0.571   0.109   0.198   0.217   0.639   5.320

Sk-2a(1,120℃)  0.096   0.599  0.085   0.220   0.170   0.652   5.687

Sk-3a(1,140℃)  0.067   0.630   0.059   0.244   0.119   0.667   6.083

Sk-4a(1,160℃)  0.048   0.649   0.043   0.260   0.086   0.676  6.339

SK-5a(1,180℃)  0.032   0.666   0.028   0.274   0.056   0.684   6.565

Sk-6a(1,200℃)   0.014  0.685  0.013   0.288   0.026   0.693   6.801

SK-7 (1,230℃)   ----   0.7    ----   0.3   ----     0.7     7.0

Sk-8 (1,250℃)   ----   0.7    ----   0.3   ----     0.8    8.0

SK-9 (1,280℃)   ----   0.7    ----   0.3   ----     0.9    9.0

SK-10(1,300℃)  ----   0.7    ----   0.3   ----    1.0    10.0


以下次回に続きます。

 陶芸釉薬の調合 ゼーゲル式   
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釉薬の調合 (ジェーゲル式1)

2008-12-13 23:18:25 | 釉薬の調合と釉を掛ける
釉薬の調合

2)ジェーゲル式

 ジェーゲル(又は、ゼーゲル=Seger)は、ドイツの化学者で、主に釉薬に関した研究をした人です。

  尚 ゼーゲルコーン(三角錐)は、窯の中の温度を、測る物ですが、彼が考案した物です。

 彼は、原材料の配合によって、釉が何℃で溶けるか、又どのように釉が変化する物なのかを、

 調べました。


 では本題に入ります。

 ① ジェーゲル式は、以下の用に表記されます。

   R O・n Al2 O3・m Si O2

   (化学式では、元素記号の後の数字は、小さな文字で表記しますが、ここでは表記できません、

   よって普通の文字の大きさで、表示しています。)

 ② 先ずこの式の意味から、説明します。

  a) R O はアルカリ土金属(ナトリュウム、カリュウム、カルシュウム、マグネシュウムなど)の

    酸化物を表しています。

    (単位は、分子量に相当する、重量です。以下同じ)

  b) Al2 O3は、酸化アルミニュウムです。

  c) Si O2 は、酸化シリカ(珪素)です。

  d) (m)および(n)は、定数で、単位はモルです。

    尚 R O の前に(1)と言う数字が入りますが、省略されています。

   e) 即ち、1モルの (R O)成分に対して、(Al2 O3)成分がmモル、(Si O2)成分が、

     nモルである事を示しています。

 ③ 分子量とは、各原子は原子量(重さ)を持っています。又原子は他の原子と結びつき、

   分子と呼ばれる様に成ります。この分子も、分子量と言う重さを持ちます。

  ・ モルとは、各1分子量に、グラム(g)を付けた物を、1モルと言います。

  例1 Al2 O3の分子量は (Alの原子量は、27.1で、O は16です)

     Alが2個とO(酸素)3個の結合なので

     27.1*2 + 16*3 =54.2 +48= 102.2 と成ります。

     Al2 O3の1モルは、102.2gと成ります。

  例2 Si O2の分子量は (Siの原子量は、28.1)

     28.1 + 16*2 = 60.1 と成ります。

     Si O2の1モルは60.1gと成ります。

 尚 各物質は、複雑な化合物として存在しています。それ故、化合物の化学記号が

   解から無いと、必要なモル数が解かりません。

  ・ 例として、カリ(正)長石を見ると、化学記号は、Al2 O3・6Si O2・K2 O です。

    この分子量は 556.51ですが、酸化アルミと 酸化珪素と 酸化カリの化合物です。

   

以下次回に続きます。

 陶芸釉薬の調合 ゼーゲル式     


   
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釉薬の調合 (三角座標)

2008-12-12 22:28:21 | 釉薬の調合と釉を掛ける
釉薬の調合方法を、述べたいと思います。

 調合は、各原料の合計が、基本的には100%に成るようにします。

 ここで注意すべき点は、その割合が、容積比なのか、重量比で表された物か、と言う事です。

 ・ 容積比と、重量比では、当然その内容が違います。

 ・ 古い時代では、計量に、枡(マス)を利用していましたので、容積比で記録されていました。

 ・ 現在では、重量を測る秤(最小5~10mmg程度まで測れる)が普及していますので、

   重量比で表記された物が多い様です。

本や参考書を利用する場合、この点を確認してから、仕事を始めて下さい。


 1) 三角座標による調合方法

 2) ジェーゲル式による調合方法

 上記二点の方法をお話いたします。

  ・ 色々の割合で調合した物は、各々テストピースに塗り、望みの温度で試し焼きします。

    その際、ゴスや鬼板などで、下絵を書き、裏側にデータを記入し、釉の溶け具合や、

    絵の発色具合を見て、良いデータの物を選び、候補を絞り込み、更に細かく調合し、

    選別する事を、繰り返すます。

  ・ 自分で、一つの釉薬を作り出すまでには、かなりの手間隙が、必要です。

1) 三角座標による調合方法

  例として、色釉を作る際の、基礎釉の調合について述べます。

  ① 原材料は、長石、珪石(又は陶石)、石灰(又は土灰)を使います。

    各材料は、乳鉢などを使い、粉末状にしておきます。 

  ② 正三角形を描き、各頂点を長石、珪石、石灰の基準点とし、各辺を10等分した線を描きます。

  ③ 各線に1~9の番号を振ります。(1~9の番号が、各々3組有ります)

  ④ この三本の交わる点が、各材料の割合(重量比)と成ります。

  ⑤ 幾つかの例を述べます。

   a) 長石 70  SK-8(1250℃)で、溶け具合良好、

     珪石 20  透明、 ゴス、鉄絵が良好

     石灰 10

   b) 長石 60  溶け具合良好

     珪石 30  乳白色

     石灰 10

  ⑥ 溶融温度を、低くしたい場合

   a) 石灰や土灰など(塩基成分)を多くする。

   b) 亜鉛華(ZnO)を入れると、低くなります。

 イ) 次に、調合の仕方を説明します。
  
  ① 乾燥して粉末化した材料を、秤で測り、決められた割合で、乳鉢に入れる。

  ② 乳棒で百回以上掻き回し、良く混ぜます。

  ③ 次に、水を加えます。水は少しずつ加え、一度に入れない事です。

  ④ 更に乳棒で撹拌します。水の量が多過ぎると、やり難くなります。

    全体に水が行き渡り、乳棒がスムーズに回転できるまで、動かします。

 ロ) 施釉の仕方(テストピースへ)

  ① 試し塗り: 素焼の破片に塗り(浸し、筆、流し掛けなど)、接着具合を見ます。

  ② 塗った際、釉に「ひび」が入ったり、めくれ現象が起きるのは、良くありません。

  ③ 釉掛けの厚みにより、泡や「あぶく」の出る物も、悪いです。

  ④ 厚く掛けたい場合には、薄めの釉薬を、数度塗り重ねて下さい。

    又水分が少ないと、「割れ」や「ひび」が発生します。

  ⑤ 釉薬を掛ける方法は、他に、スプレー、スポイト掛け、刷毛塗りなどが有ります。

後は焼成し、結果を見ます。一度や二度では、上手くいきません。

又窯によって、溶け具合や、透明度などに差が出ます。

 それ故、他人のデータは、そのまま使える事は、少ないです、参考程度にする事です。
  
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釉薬の原料 (灰以外)

2008-12-11 23:00:15 | 釉薬の調合と釉を掛ける
釉薬は、焼成すると、ガラス質になります。

 ・ ガラス質に成り易い成分は、一般的には、珪酸(シリカ、SiO2)、硼酸(ホウサン、B2O3)、

  酸化鉛(PbO)、燐酸(P2O5)などが有ります。

 ・ 更に、安定的に溶け、冷えて固まり、ガラス状態を保持する為や、望む温度で、溶け易くする為に
 
   石灰(CaO)、アルミナ(Al2O3)、マグネシュウム(MgO)、燐酸などを、加えます。

1) 珪酸質の原料

  ① 地球上の、岩石や粘土類の主成分は、珪酸(シリカ)です。

  ② 単体としては、珪石や珪砂、水晶などです。

    鉱物名は、石英やオパールなどが有ります。

    (不純物として、アルミナ、酸化鉄など、数%含みます)

  ③ シリカは、釉薬の原料になるだけでなく、陶磁器の素地の重要な原料です。

2) 長石質の原料

  長石も、釉薬以外に、磁器の原料に成る物質です。

  ① 長石には、カリ(正)長石(カリ成分が多い)、ソーダ長石(ナトリウム成分が多い)、

    灰長石(カルシュウム成分が多い)が有ります。

  ② 一般に、長石は、他の不純物を含む為、その軟化温度は、1250℃程度と言われています。

    又、上記長石が、混ざり合うと、融点は著しく下がります。

  ③ 場所によっては、石粉と呼ばれ、単に木灰を配合しただけっで、釉薬に成る物も有ります。

    石粉には、三河石粉、波佐見石粉、釜戸石粉、千倉石粉などが有り、長石の半分解物を

    含んでいます。

3) 石灰質の原料

  ① 石灰石(炭酸カルシュウム)は、天然物として、石灰岩、大理石、方解石として、存在します。
  
  ② 貝殻も炭酸カルシュウムです。貝殻を焼いて、水と伴に細かく砕き、使用します。

  ③ 石灰では有りませんが、同じ様な作用をする物に、マグネシュウム分の

    ドロマイト(白雲石)、や骨灰(牛骨、燐酸カルシュウム)が有ります。

    尚、安定した、合成骨灰(石灰石と第二燐酸カルシュウムを化学合成した物)も有ります。

    (ボーンチャイナなどに使われています。)

4) その他の原料

  ① リシウム: リシウムを含む酸化物(炭酸リシウムなど)は、融点を下げる作用が強く、

    釉の流動性を増し、ピンホールを少なくする、有効な材料です。(1%程度で十分です)

    又、光沢も増します。

  ② タルク(滑石): マグナシア分を30%程度含みます。

    亀裂防止や、白色度を増す為に、使われます。

  ③ 炭酸バリウム、亜鉛華(ZnO):  溶融剤や乳濁剤として添加。

  ④ 酸化チタニウム: 非常に良い、白色乳濁剤と成ります。

  ⑤ 陶石: 花崗岩、安山岩、石英粗面岩など、長石質の岩石が風化した物です。

    陶石に30~50%の木灰を入れても、釉薬として使用できます。

    (いす灰、橙灰など、鉄分の少ない灰を使うと、白く焼き上がります。)

   ・ 陶石には、天草陶石、有田泉山陶石、錫谷石、柿谷石、飛谷石(出雲地方)、

     鵜の崎石(砥部地方)などが有ります。

  ⑥ フリット(白玉): 以前にも述べましたが、水に溶ける材料や、鉛釉の材料(鉛丹、鉛白など)は

    有毒ですので、そのまま使えません。一度溶解した後、急冷しガラス化した物です。

    このフリットを、他の材料と調合し、比較的低温の釉薬を作ります。
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釉薬の原料 (草木灰2)

2008-12-10 22:30:13 | 釉薬の調合と釉を掛ける
前回の続きを述べます。

1) 土灰について

  前回 お話した様に、土灰とは、色々な木や草などを、焼いた残りの灰です。

  それ故、自然の土灰は、組成的には、種々の灰から成り、その成分(作用)も千差万別です。

 ① 土灰は、他の木灰よりも、マグネシウムや、鉄分を多く含みます。

 ② それ故、飴釉、黒天目釉や他の天目釉など、黒い釉薬を作る際、土灰が使用されます。

   但し、土灰だけでは、鉄分が不足する場合、酸化鉄や弁柄、鬼板、来待石や、

    鉄分を多く含む粘土(赤土)を混ぜます。

 ③ マグネシウムの成分は、含有量によって、飴~漆の黒まで変化します。

   色調も、結晶釉や、マット釉にもなります。

 尚 黒さを増す原材料には、マンガンが有効で、松や樫(かし)の灰に、多く含まれます。

2) 藁灰について

 ① 藁など(籾殻、糠)の灰は、珪酸成分を多量に含み、乳濁釉を作る際に、使われます。

 ② 藁などを燃やした灰は、30%前後の炭素分が残ります。実際に調合する時は、その分、

   差し引いて(灰の量を多くして)、調合します。

 ③ 備前焼の火襷は、藁を灰としてで無く、藁そのものを、作品に巻きつけ、緋色を出します。

   これは、備前の土と、藁の珪酸が化学変化し、緋色が出ると言われています。

3) いす灰について

 ① 鉄分の少ない灰で、有田焼きなどの、白い磁器釉を作る際に、使用されます。

 ② 日向産(宮崎県)が有名です。

4) 灰の成分について

  前に述べたように、自然の灰は、同じ物はありません。

   (安定的に使う場合は、合成の灰を使うと良い)

  この灰を、自分なりに調合して、釉薬を作れば、変化に富んだ色が出せます。

 尚 灰には、鉄分、カルシュウム(Ca)、マグネシュウム(Mg)、カリュウム(K)、

   ナトリュウム(Na)、マンガン(Mn)、リン(P)などが含まれ、その割合も、木の種類などに

   よって、又その他の違い(産地、季節、部位など)によって、大きく変わります。

 
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