わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

新釉の話10 市販の釉8 青系、紫系、紺系

2013-07-31 21:41:54 | 新釉(薬)の話

市販されている青、紫、紺系の釉には以下の様な種類があります。

1) 青い釉の代表的な釉は、トルコ・ブルー(トルコ青)が上げられます。その他トルコ青マット釉、

   空色釉、灰マット空色、青白磁釉、月白(げっぱく)釉などがあります。

2) 紫色の釉には、紫釉、紫なまこ釉、薄紫なまこ釉、鈞窯(きんよう)釉などがあります。

3) 紺系の釉として、瑠璃(るり)釉、なまこ釉、瑠璃なまこ釉、群青なまこ釉、灰マット群青釉、呉須釉

   紺碧釉などがあります。

  注: 群青(ぐんじょう)色とは、やや紺味を帯びた深い青色です。

     紺碧(こんぺき)色とは、深い青空の色をさします。

     瑠璃色は、紫掛かった青色で、古代インドや中国で珍重された宝石の名前との事です。

 青や紫、紺色などの色を出すのは、銅、マンガン、コバルトなどの金属元素です。

 但し、釉の熔融剤により発色に違いがでます。

 ・ ナトリウムを主な熔融剤として使う場合には、酸化焼成で、銅で空色、マンガンで暗い黄色、

   コバルトで濃い青となります。

 ・ カリウムを主たる熔融剤の場合には、銅でトルコ青、マンガンで紫、コバルトで青色を発色します

1) 青色の釉。

  ① トルコ青釉: 光沢があり、不透明で濃い青色を呈します。酸化、還元でもさほど変化が

    ありません。メーカーによって焼成温度範囲が異なりますので、注意して下さい。

  ② トルコ青マット釉: 酸化焼成すると、綺麗な青に発色します。還元焼成では「くすんだ青」に

    なります。

  ③ 空色釉: 明るく白味の強い青い釉です。水色とも称されます。

  ④ 灰マット空色釉:上記空色のマット釉です。

  ⑤ 青白磁釉: 還元で焼成すると、淡い青色で光沢のある透明系の釉となります。

  ⑥ 月白釉: 酸化焼成では青白色の乳濁に成りますが、還元焼成では、鈞窯風の青紫色に

     なります。

2) 紫色の釉。

  ① 紫釉: 酸化焼成で紫色を呈する釉です。

  ② 紫海鼠(なまこ)釉、薄紫なまこ釉:

  ③ 鈞窯(きんよう)釉: 酸化焼成で明るい青色に、還元焼成で紫色の乳濁釉になります。

     やや厚目に施釉し、1230~1250℃で焼成します。

3) 紺色の釉。

   酸化コバルトは1%を添加するだけで、濃い紺色に発色します。

   基礎釉を代える事で、色が変化します。

   ・ BaO(バリウム)釉に添加すると、やや明るい色になります。

   ・ MgO(マグネシウム)釉に添加すると、濃い目(黒っぽくなる)に発色します。

   ・ ZnO(亜鉛華)釉に添加すると、上記の中間の色になります。

  ① 瑠璃(るり)釉、群青釉 : コバルトを5%程添加すると、酸化、還元共美しい群青色をした

     瑠璃釉になります。

     灰マット瑠璃釉: 上記瑠璃釉にアルミナを添加し、マット状した釉です。

  ② 海鼠(なまこ)釉、瑠璃なまこ釉薬、群青(なまこ)釉 :

    注: なまこ(海鼠)釉とは、元来施釉した上に、流れ易い釉を二重掛けして焼成した釉で、

       流紋になりますが、二度手間を一度で済ます様にした釉です。

       例えば、藍紫色を主体とする失透釉の瑠璃に、斑文(はんもん)や流文などが現れた

       釉が、瑠璃海鼠釉です。

  ③ 呉須釉 : 下絵付けに使う呉須を添加した光沢ある紺色の釉です。

     呉須にもコバルトが多量に含まれていますので、瑠璃釉の様な感じの釉になります。

  ④ コバルトを15%添加すると、ピンクからオレンジ色の結晶が析出した、光沢のある黒釉となり

    瑠璃釉とは全く異なる釉となります。

以下次回(茶系、褐色系、赤系)に続きます。

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新釉の話9 市販の釉7 黄色系

2013-07-30 15:34:53 | 新釉(薬)の話

市販されている黄色系の釉の種類は比較的少なく、黄瀬戸釉、黄色釉、淡黄釉、黄伊羅保釉、

金結晶釉などがあります。

1) 黄瀬戸釉: 透明性のあるやや茶色を帯びた釉で、鬼板などの下絵付けが可能です。

   桃山時代に美濃地方ので開発された釉ですが、当時、瀬戸と美濃の窯の区別が付かなかった為

   「瀬戸から来た黄色い焼き物」の意味で、黄瀬戸の名前が付いたと言われています。

   木灰(備長炭の自然な灰が良いと言われています)を基礎釉にし、鉄分を含む黄土類を加えて

    作る事が多いです。

  ① 素地は信楽などの白土が適し、1230℃程度で、酸化焼成すると発色が良い様です。

     透明系ですので、土の色を強く反映し、半磁器など白い土ほど、明るい黄色に発色します。

     良く焼く(時間を掛ける)程良い色が得られます。 還元焼成では、緑掛かる釉になります。

   ・ 白土でも肌理の細かい土ですと、釉が縮れて玉状になる場合もあります。

  ② 施釉の厚みは、薄掛けから並(普通)掛けが一般的ですが、メーカーによっては流れ易い釉も

     ありますので、その場合には薄掛けにします。

  ③ メーカーによっては、酸化と還元の両方で使える釉もありますが、(酸化と還元では若干差が

    ありますが・・)、還元焼成すると、完全に別の色になってしまう釉(緑色)もありますので、

    注意が必要です。

  ④ 油揚げ手黄瀬戸釉: 光沢の少ないやや焦げのある油揚げと呼ばれる釉肌で、表面が滑らか

     でなく、やや「かさついた」感じになり、ぐい呑み等の酒器や懐石料理の器(向付など)に

     珍重されています。

2) 黄瀬戸マット釉: 黄瀬戸土に施釉し、酸化で焼成すると、マット状に焼き上がります。

3) 黄色釉: 辛子(カラシ)色やカナリア色、バナナ色などの明るい黄色の不透明又は半透明の

   濃い釉に発色します。これらの釉は、鉄などが釉に溶け込んだ物と違い、黄色を呈する酸化

   チタンや、酸化ルチール(チタンを含む天然素材)などの顔料が、添加されたものと思われます。

   顔料は、釉に熔けずに分散したもので、色は綺麗で安定していますが、単調感は否めません。

   更に、下絵付けの色も隠してしまいます。

4) 淡黄釉: やや透明性を有する黄色の釉です。鉄分が2%程度でこの色が出るそうです。

5) 黄伊羅保釉: 流動性のある釉です。斑(まだら)に流れ落ちる釉が見所となります。

   長石と土灰の配合によって得られる釉です。灰に含まれる鉄分などの雑味成分が、肌に景色を

   作ります。伊羅保釉には色違いの釉も多く存在しますが、黄伊羅釉は、鉄分を多く含んでいます。

  ① 焦茶が強い流動性のある結晶釉です。焼成温度、雰囲気、焼成時間、窯詰めの仕方など、

    各種条件によって、様々な様相を呈しますので、どの色が最良とは言えません。

    好みの色に焼き上げる為には、試行錯誤を重ねる必要がありそうです。

  ② 極端に薄掛けにすると、焦げが強く発生します。

6) 古瀬戸釉: 熔け易く(1220℃)斑(まだら)状に流れ、流れた部分(釉溜り)は黒く線状になり

   ます。鎌倉、室町時代に焼かれたものを古瀬戸と呼びます。

   釉は土灰や天然木灰と長石を調合した釉に、鬼板などの鉄分を入れたもので、成分の違いに

   より黒、褐色、黄色に焼き上がります。

7) 土鍋用黄色釉: SK-5a(1180℃)で焼成する釉です。

8) 金結晶釉: 流動性が強い釉ですので、焼成温度と、施釉の範囲に注意する必要があります。

以下次回(青系、紫系)に続きます。

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新釉の話8 市販の釉6 緑系2

2013-07-29 16:24:40 | 新釉(薬)の話

 釉にはそれに適した土があります。どの土にも合い、どんな窯の焚き方に対しても、それなりに

 良い色に発色し、更に温度範囲が広い(1180~1280℃)釉であれば、理想的な釉と言えますが、

 中々万能の釉は少ない様です。 市販の釉を購入する場合、メーカーのカタログや、陶芸材料店に

 ある色見本、ネット(色が明確ではない)などで選ぶのが一般的ですが、どの様な土が最も適して

 いかは、ほとんど載っていません。

 逆に、ご自分で使う数種類の土から判断して、それに合う釉を選ぶ事が多いです。

 ・ 但し、市販の釉の種類は多く、必要最低限(同色で2~3酒類)の色を選ぶべきです。どんどん

   新しい釉が欲しるのが人情ですが、種類が多くなると、手におえなくなります。

  ・ 購入量も最小(1Kg)で試し、納得がいけば量を増やします。

前置きが長く成りましたが、本日の本題に入ります。

4) 灰釉: 木灰の種類は多く、松、杉、樫(かし)、楢(なら)などの幹や枝の灰を用いたものと、

  栗皮の様に幹に付いている表面の皮を焼いて灰を作ります。又これらの灰が単独で配合される

  場合と、混合して土灰として使われています。  灰の種類によって出る色は変化します。

  緑系の灰釉には以下の釉があります。

  ① ビードロ釉: 綺麗なガラス質の緑色の釉で、鉄系と灰系があります。

    又、薪窯で焼成した場合で、松灰が降り掛かり、緑色又はグレー掛かった緑色の釉となって

    作品を覆たり、流れ落ちる時、ビードロが美しく出たと表現します。 

    これを自然釉のビードロとよびます。

   ) ビードロ釉: 還元で(1230℃程度)焼成すると、艶のある青緑に焼き上がります。

      酸化焼成では、やや黄色味を帯びます。伊賀の土に似合う色と言われています。

     ・ 同じ名前の釉が各メーカーより販売されていますが、メーカーに寄って差が有り、酸化、

      還元とも同じ様に発色する釉や、流動性が有り流れ易い釉もありますので、必ず試し

      焼きを行ってから、本番で使う事です。

   ) ビードロ結晶釉: 細かい結晶がありますので、透明感はありません。

      焼き上がりは、還元焼成でも、やや黄色味を帯びた青緑色です。細かな貫入(ひび)が

      発生し易いです。

   ) 酸化ビードロ釉: 酸化焼成で艶のある、強い緑色を呈します。還元では赤味を帯びた緑色

      になります。

   ) 松灰ビードロ釉: 天然又は合成の松灰で調合した緑釉です。還元焼成で行います。

      推奨焼成温度1230℃。薪窯風に仕上がります。

   ) 蛇足ですが、施釉した際、底(畳付き)や、高台脇などの余分の釉を剥がします。それら

      多種類の釉を集め、廃物利用として、壷の内側などの人の目に見えない場所に施釉すると

      思います。この集めた釉も緑色に焼き上がります。

      但し、黒い色が多く使いと、緑色が茶色になり、釉に熔けない材料(コバルト等)が入った釉

      が混入すると、その色が斑点となって現れます。

  ② 灰マット釉: 木灰を基礎釉に使った釉に、アルミナ(カオリン類)を添加して、マット状に

      した釉です。尚、光沢のある上記の釉も、わずかなアルミナ類を加えるとマットになります。

      詳細は、第二章(市販の釉に他の材料を添加した釉、)で述べる予定です。

      灰マット釉には、灰マット抹茶釉等の名前で市販されている、緑系の釉があますが、余り

      一般的ではありません。

5) その他の緑釉 

  ① (青)緑伊羅保釉: 流れ易い緑色(又は青緑)の釉で、筋状に流れ落ちた痕が残りましす。

     それ故、薄く掛けます。 焼成温度は1200~1250℃で、酸化焼成します。

  ② 松葉みどり釉: 光沢のある、深い(濃い)緑色の釉です。

  ③ 緑なまこ釉: 緑色の乳濁釉です。(なまこ釉に付いては、後日述べる予定です。)

  ④ 黒斑緑釉: 酸化焼成すると、緑の地に結晶が現れます。

  ⑤ 青萩釉: 酸化焼成で、青緑の乳濁釉になります。

以下次回(黄色系)に続きます。

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質問、相談7-2 陶芸を習うという事。

2013-07-28 14:57:19 | 質問、問い合わせ、相談事

R子様より、再度以下の様な質問をお受けました。(前回の相談は質問、相談7-1に掲載しています)

*手伝うに当たり、交換条件を出さなかったのでしょうか?。 折角教室に出入りしているならば、

手の空いた時間や、生徒さんのいない時、教室の終了後など、幾らでも無料で練習が可能と 

思われますが、その辺はどんな状況でしょうか?

→交換条件を言うのは厚かましいのかと思い、言えませんでした。

無料で練習ってさせてもらえるのでしょうか?本心では空いた時間に練習させて欲しいと思って

いますが、教室終了後は先生のプライベート時間のようで、自分の作陶やお酒の時間を楽しんで

おられるようです。

* 他の人の作品にヤスリを掛けている手伝い

→手伝いを申し出たのは2か月前です。

手伝いは毎日ではなく、子供教室の後に子供が作った器のみ触らせてもらっています。

だから、月に2回程度で、先生から申し出があった時のみです。

それが終わると、土練りをしたり、カルチャーで使うたたら用の粘土を加工したりします。

まだそれだけです。生徒さんが少なくて、手すきな日でも、轆轤使っていいよとは言われませんし、

7月は忙しいから8月になってから花瓶を作る手伝いとして轆轤引きしてみる?、とは言われました。

*作品数が少ない

→作陶時間は2.5時間あるのですが、例えば1回で1つ手びねり作品を作るとして、作り終えて

残り30分とかはお茶の時間になってしまいます。月2回では、2回目が削って成型、残り時間お茶。

これが続いて、何だか楽しいけど物足りなくて。轆轤になってからは、時間いっぱいまで引いてます。

自分の時間が終わった後にくる、子供の作陶を手伝ったりしていますが、粘土に触れて一緒に学ぶ

というより子供の世話的な感じです。

実は次のお手伝いは、出先の教室での子供を見て下さいと言われました。

教える云々ではなく、いたずらしない様にみててくれればいいから、と。

これもお手伝いなんでしょうか。直接陶芸に関係ないようにも思えます。

 なんとなく疑問というか、自分の思っているのと違う感じがしています。

 

◎ 明窓窯より

1) 他の生徒さんと同じ条件(同じ月謝など)で、あなた様だけ無料で追加の練習をさせて貰う事は

   難しいと思います。その事が他の生徒さんに知れた場合、例え先生が許可されても、生徒間で

   問題に成る事は確実です。

   この問題を解決できる方法は、他の生徒の皆なを納得させる事が出来るかです。

   その方法とは、

  ① 早い話し、あなたが、先生の助手(無給でも)と見られる立場に成る事です。

    先生はスタッフも助手も設ける考えは無いとの事ですが、すでにあなたは少しではあるが

    助手の仕事をしていると思われます。即ち子供の面倒を見るのも立派な手助けですので、

    助手の仕事とみる事ができます。又、次の授業の準備作業も立派な助手の仕事です。

  ② 都合の良い事に、他の教室の子供の面倒も依頼されていますので、更に、助手としての

    地位が強固になります。 先生は内心助手(有給又は無給)をしてくれる人を望んでいる様にも

    見えます。 「7月は忙しいから8月になってから花瓶を作る手伝いとして轆轤引きしてみる?」

    と、先生が言われた事からも、その様な感じを受けます。

    但し、数人の候補者がいるのかどうかは不明ですが・・・。

    子供の面倒を見るのはあなた一人でしょうか? 他の生徒にも声を掛けているのでしょうか?。

    もしあなた一人のみでしたら、かなり信頼され、有力な候補者と見てよいでしょう。

  ③ 他の教室での子供の面倒は確かに、直ぐにはあなたの陶芸の勉強に成るとは見えませんが、

     長い目で見れば、大いに役立つはずです。即ち、子供の遊びの中には、我々大人とは違った

     考えや思い付きがあるものです。又上手に子供の面倒が見られる人は、子供を対象とした

     仕事では、大事な人です。(陶芸の子供教室など)

  ④ 子供の面倒を見る事に抵抗を感じているようですが、手伝う事で先生に貸しが出来た事になり

     先生も只働きでは心苦しいはずですので、何らかの見返りを考えているはずです。

     そこで、こちらから先生にお願いする手も有りますが、しばらく、先生の様子を見るのも

     一つの手です。(但しこの間、手伝いは続けて下さい。)

     こちらから頼むより、先生から言って貰えるのが理想ですから。

     1~2ヶ月たっても状況に変化がない場合には、交換条件をそれとなく出して下さい。

   ⑤ 先生のプライベートタイムで、お酒を飲む時は無理ですが、先生が制作する際には、見学

      させて貰うか、あなたも先生の脇で制作する事の許可を得ると良いでしょう。

      但し、先生に指導して貰うとか、批評を期待してはいけません。脇で作業をしていれば

      自然と、先生の目に留まります。あなたが失敗ばかりしていれば、先生も自然に口を出す

      のは明らかです。

   ⑥ 月謝を払っての授業が、1回2時間30分との事で、2回で作品を仕上げるスタイルの様

      で、お茶の時間が30分とは、時間の使い方がもったいないです。それ故作品の数が少なく

      なっている様です。

    ) 2時間30分で作品を完成させる事は、作品の乾燥も入れると時間的に難しいです。

       但し、2回目が底削り(高台付け)と、釉を塗るだけでは、時間が余るはずです。

    ) 時間を効率良く使うには、1回目で作品を作り、2回目で底を削る事と、新たな作品作りの

       両方を行う事を薦めます。但し授業がどの様な方法で行われている解かりません。

       生徒全員が同じ様な作業を行う方法では無理ですが、生徒が自由に、自分の時間を

       使う事が出来るシステムであるならば、自分のペースで作業できるはずです。

    ) 陶芸の作業で一番時間を必要とする事は、考える事です。

       それ故、予め、作る作品や作品の大きさ(寸法)、装飾の仕方、釉の色や絵柄等を

       決めておけば、後は作業のみですので、時間が少なくてすみます。(ノートを用意してメモや

       図面や寸法などを記入します。) 余った時間は作品作りに使う事です。

    ) 乾燥は自然乾燥が理想ですが、時間が掛かってしまいます。私の教室では、ドライヤー

       を使って半強制的に乾燥させ、その日の内に、底削りまで終わらせています。

       尚、この方法では作品を轆轤などで回転させて乾燥させれば、作品に影響を与える事は

       ほとんどありません。R子様ではどの様にしていますか。この様な方法が取れない場合は

       次回の作業に成りますが、なるべく手早く作業し、別の作品に取り掛かるべきです。

    ) お茶の時間を楽しみにしている生徒さん達がいるのは、何処でも同じですが、全てに

       付き合う事は無いと思います。他の人との話も重要ですので、短い時間のお茶には

       付き合うとしても、あなただけでも、なるべく短く切り上げて作陶に時間を割くべきです。

       全ての事に言える事ですが、慣れるに従い作業は早くなりますので、作る作品の数も

       自然に増えるはずです。

       陶芸技術の上達方法は、数多くの種類の作品を数多く作る事です。

       持ている時間を有効に使って下さい。

最後に、ご相談の内容に、的確に答えているか不明ですが、何かの参考にして頂ければ、有り難い

です。尚、再々度の質問、ご相談も歓迎しますので、ご連絡下さい。 以上

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新釉の話7 市販の釉5 緑系1

2013-07-26 21:58:45 | 新釉(薬)の話

緑色の釉は、緑釉(りょくゆう)と言われています。

緑釉の代表的な釉は、着色剤の酸化銅や炭酸銅を使った青織部です。(青=緑の事です)

その他に酸化クロムを使った釉や、鉄を添加した青磁釉、更には灰を使った釉もあります。

 市販されている緑系の釉には以下の様な種類があります。

織部釉(青織部、還元織部)。青磁釉(砧青磁、天竜寺青磁、銅青磁、青磁マット、亀甲貫入青磁、

氷裂亀甲青磁、酸化青磁)。青銅釉。青銅マット釉。ビードロ釉(灰ビードロ、松灰ビードロ、青ビードロ

酸化ビードロ)。松葉みどり釉。青萩釉。ヒワ釉。緑ナマコ釉。緑伊羅保など豊富に存在します。

1) 織部釉: 美濃(岐阜県)で作られた、古田織部好みの織部釉は、陶器に施釉する事が多く、

  木灰釉などに、5~10%程度の酸化銅加え、酸化焼成で得られます。

  一般に還元焼成では、赤い色、即ち辰砂(しんしゃ)になります。

  ① 青織部: 一般的に織部と呼ばれる、光沢のある美しい緑色をした釉で、透明性があります。

     それ故、釉を薄めに掛けた場合、鬼板の様な絵の具で描いた下絵も、絵が表れます。

     薄い色~濃い緑色まで濃淡を付ける事が可能ですが、メーカーによっては流れ易い釉も

     ありますので、厚掛けの際には注意が必要です。

   ・ 銅を含む釉を薄過ぎる濃度で施釉すると、オレンジ色や茶色になりますので、極端に薄く

     施釉できません。

     尚、高温での焼成時に銅が揮発し、隣にある作品の色に影響を与える危険性がありますので

     窯詰め際には、隣との距離を十分に取る事です。焼成温度は1230℃程度の釉が多いです。

     青織部の他に、黒織部と呼ばれる黒色の織部もありましので、混同しない様にして下さい。

  ② 還元織部: この釉は還元でも緑色に発色するそうです。

     (カタログを見て、この釉を始め知りました。なぜ還元でも緑に成るのかは不明です。)

  ③ 鉄織部釉: 黄色味を帯びた、渋みのある緑の透明釉です。

  ④ F織部釉: 青味を帯びた緑の透明釉です。

   いずれも、酸化焼成で緑に発色します。

2) 青銅釉: 青織部よりやや緑の鮮やかさが劣り、黄色味又は白味を含む光沢のある釉です。

     青銅器の様な色に仕上がります。

   青銅マット: 上記青銅釉のつや消釉で、結晶釉で銅錆(さび)の雰囲気がでます。 

     1230℃程度で焼成しますが、温度が高過ぎる時には、光沢が出てマットに成らない場合も

     あります。逆に低過ぎる時には、緑色がくすみ黒っぽい色になる場合があります。

  ・ いずれも酸化焼成で行います。還元が掛かると赤味や紫色になる場合もあります。

  ・ 焼成温度はメーカーによって差がありますが、主に1230~1250℃で焼成します。

3) 青磁釉: 長石を主体とする基礎釉に、2%程度の鉄分を加え、還元焼成する事で、鉄分が

    第一鉄に変化して、青(緑)色に発色します。

  ・ 鉄分の多い素地を使うと、深みのある色調になります。

  ① 砧(きぬた)青磁: 青磁釉の中で一番人気のある釉です。

     やや黄味を含む鈍い光沢のある緑釉です。

  ② 天龍寺青磁: 光沢のある緑色です。施釉は厚目の方が良いようです。

  ③ 銅青磁: 鉄分ではなく、銅を用いた釉で、やや乳濁した青緑の青磁になります。

     但し、流れ易いですので、注意が必要です。

  ④ 貫入青磁、亀甲貫入青磁、氷裂亀甲青磁: 貫入(ひび)の入る光沢のある青磁釉です。

     貫入の大きさ(細かさ)によって名前が変化します。但し、素地によってその効果は変わります

  ⑤ 酸化青磁釉: 還元焼成が基本の青磁釉にも、一部のメーカーで酸化焼成が出来るものも

     販売されていますし、酸化、還元の両方で焼成できる青磁釉も市販されています。

     但し、後者の場合、還元では緑色に成りますが、酸化では青(水色)に焼き上がります。

以下次回に続きます。

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質問8 シリカ、アルミナ相関図に付いて。

2013-07-25 16:00:25 | 質問、問い合わせ、相談事

HON様より以下の質問を頂ました。

 

一般的な質問です。

釉薬を自作しています。作る際にはシリカ、アルミナ相関図で検討していますが、陶芸の本に出ている

相関図の左下は、アルミナは0.1、シリカは1くらいになっています。ということはこの数値以下の

釉薬は基本的に良くないということでしょうか。この数値以下の範囲で試した釉薬がありますがあまり

問題は無いように思えるのですが。何故本では省いているのでしょうか。

 

◎ 明窓窯より

 1) シリカ、アルミナ相関図(SiO2ーAl2O3の状態図)とは、すでにご存知の方も多いと思いますが

  一通りお話します。

  釉の主材料のアルミナ(Al2O3)とシリカ(SiO2)の配合割合で、艶消釉、透明釉、乳濁釉と変化

   します。この関係をグラフ(座標)にしたものが相関図です。具体的には以下の様な事です。

   ① 縦軸にアルミナのモル数を、横軸にシリカのモル数が目盛られた座標です。

      注: モルとは、分子量の事で、アルミナ(Al2O3)の1モルは、101.96(g)となり、

        シリカ(SiO2)の1モルは60.1(g)となります。詳しい説明は省略します。

   ② 座標には、2~3本の直線や、緩やかな曲線が実線で描かれています。

      この線は、マット、透明、乳濁の各々の境界線を表しています。

   ③ 左上がマット、中間(45度近辺)が透明を、右下が乳濁を表します。

 2) 質問の内容は、上記相関図の原点(縦軸と横軸の交わる部分)が縦(アルミナ)が0.1モル、

    横(シリカ)が1モルぐらいになっている理由を問うているものです。

 3) ここからが私なりの答えです。

  ① 相関図の実線が、縦軸又は横軸まで伸びていますか?

     伸びていれば、その先まで線が続いている事を表しています。

     HON様のお持ちの相関図では、0.1と1になっていますが、私が手本とする本では0.2と2に

     なっています。即ちあなた様のお持ちの相関図の方が、より細かく記述されている事に成り

     ます。細かく描く事は大きな図面となります。座標より類推できる場合には、省略した方が

     紙面的にも、何かと便利です。それ故左下方向の図は省略していると見なします。

     省略したとしても、その先が類推(又は、大きく変化する事が無い場合)できれば、省略の

     弊害は少ないと思われます。

   ② 相関図の実線が、縦軸、横軸まで伸びていない場合。

      この場合は、有効範囲は実線の所までで、それから外れた場合は、釉として成り立たない

      (又は保障しない)事を表しています。この様な相関図を見た事は有りませんか?

      小生の手元の書籍には、この様な座標も載っています。

   ③ この相関図の前提条件として、塩基成分(カルシュム、カリウム、ナグネシュム、バリウム等)

      の合計が1モルである事です。

      即ち、ゼーゲル式では RO ・ nAl2O ・ mSiO2 で表します。

      (尚、ROは塩基成分、n,mはモル数を表します。)

      ROが1モルでなければ、相関図の縦横の数字は変化します。

      (上記式は、1ROと表示するのが正確ですが1は省略してあります。)

      たとえば0.5モルであれば、相関図の縦横の目盛りの数字も半分の値となります。

      それ故、相関図はあくまで、シリカとアルミナの割合を表しており、必ずしも、絶対値を表して

      いる訳ではありません。

      更に、ROの構成割合(複数の材料を使用するのが一般的です)によって、相関図の実線は

      変化し、鉄や銅などの添加物によっても、若干目盛りの原点の数字や曲線が変化します。

   ・ HON様のご指摘の様に、相関図に載っていない範囲でも正常な釉になる事は不自然では

     有りません。

以上で、ご理解頂けたでしょうか?

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新釉の話6 市販の釉4 白系

2013-07-24 21:34:51 | 新釉(薬)の話

白色の釉は、使う頻度が大きいです。特に食器類で多く使われる傾向があります。

1) 失透釉について。

 ① 透明ではなく、乳濁釉や、艶(つや)消釉を、失透釉(しっとうゆ)と呼びます。

   釉の主材料のアルミナ(Al2O3)とシリカ(SiO2)の配合割合で、艶消釉、透明釉、乳濁釉と変化

   します。

 ② 失透釉になる原因には以下の種類あります。

  ) 結晶が浮遊している場合: 釉のガラス中に微細な結晶(主に金属)が浮遊している状態で

      艶消(マット)状になります。

  ) 分相(ぶんそう)の場合: ガラスでありながら、お互いに熔けて混じり合わず、光沢のある

     乳濁になる場合です。次に述べる稲の藁(わら)、籾殻(もみがら)、糠(ぬか)の灰は分相を

     起こす材料です。

2) 光沢のある釉: 白萩釉、藁(わら)白釉、卯の斑(うのふ)、志野釉、乳白釉、白天目釉、乳濁釉、

   などが代表的な釉で、市販されています。

 ・ 光沢の無い釉: 白マット釉、鳳凰マット釉、チタンマット釉などが主な釉です。

3) 乳濁釉(光沢のある白色の釉)

  ① 白くする乳濁釉の原料は、稲の藁、籾殻(もみがら)、糠(ぬか)の灰です。

     藁などの禾本科の植物には、70~80%程度の珪酸が含まれていて、この珪酸が乳濁釉を

     作ると言われています。

   a) 白萩釉(しらはぎゆ): 萩焼で使われる藁灰(籾殻灰)で作られる乳濁釉は、白萩釉と

      呼ばれています。萩焼きを代表する釉です。

    ・ 焼成温度は1230℃程度の釉が多いですが、メーカーによっては、1号白萩釉(1250℃)

      2号白萩釉(1230℃)、3号白萩釉(1200℃)と区別している処もあります。

      藁灰の釉では厚目に施釉し還元焼成すると、やや緑色になる場合があります。

      普通~やや厚目に施釉し、酸化、還元で焼成します。

    ・ その他に、石灰白萩釉や、藁灰白萩釉、白鬼萩釉、雪白萩釉、流し白萩釉の名前で市販

      されている釉もあります。細かい違いがあるのでしょうが、カタログを見た状態では、

      ほとんど区別できません。

   b) 卯の斑(鵜の糞。兎の糞とも書きます): 籾殻灰(又は藁灰)を用いた乳濁釉です。

    ・ 焼成温度は1250℃程度で、酸化、還元どちらでも焼成できます。

    ・ 素地に赤土が含まれる場合、やや赤味を帯びた趣のある作品になる場合があります。

    ・ 高温になると、流動化して白い筋となって流れ落ち、模様を作る場合があります。

      これが卯(うさぎ)の毛に似ている事から、卯の斑の名前が付いと言われています。

   c) 乳白釉: 上記白萩釉や卯の斑よりも、はっきりした濃い乳白色で光沢も強く出る釉です。

    ・ 焼成温度幅が比較的広く、1180~1280℃程度で安定した焼き上がりになります。

    ・ 酸化、還元とも変化が少ない釉です。

   d) 白梅華皮(かいらぎ)釉: 乳白釉の縮れ(ちじれ)た物です。

   e) 白天目釉: 厚目に施釉すると、白く柔らかな感じに焼き上がります。

    ・ 酸化と還元では若干発色に差が出ます。1200~1250℃で焼成。

   f) 志野釉: この釉の白は、長石が熔けた色です。

    ・ メーカーが調合する長石の種類によって、釉調が異なります。

    ・ 施釉は厚目に掛け、還元焼成の方が良く焼けます。

4) 白色になる着色材料の入った釉薬。

  ① 白色になる着色剤には、酸化錫(すず)、酸化亜鉛(亜鉛華)、蝋石(ろうせき、タルク)、

    骨灰、錫灰、酸化チタンなどがあります。

    いずれも、釉中に結晶として浮遊する事でマット状になります。

  ② 市販されている白いマット状の釉。

   ) 白マット: 乳白釉の光沢のない釉。

   ) 鳳凰マット: タルクを乳濁剤として使用した釉です。

   ) チタンマット: 酸化チタンを添加した釉で白く出ますが、大量に入れると黄色になります。

     それ故、同じチタンマット釉の名前でも、メーカーによって、白色に成ったり、黄色に発色します

     ので確認してから購入する事です。赤土に掛けると面白味のある釉となります。

   ) その他の釉。亜鉛マット、タルクマット、クリ-ムマット、藁灰マット、白鳳マットなどが市販

      されています。

  ・ 市販されている釉を細かく見ていくと、限りがありません。実際に使う白い色の釉薬は

    1~2種類で十分です。

    釉の色調は釉自身よりも、他の要素(素地、酸化、還元、焼成温度など)の方が大きく

    影響するはずです。

以下次回(市販の釉、緑系)に続きます。

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質問、相談7-1 陶芸を習うという事。

2013-07-23 22:33:14 | 質問、問い合わせ、相談事

R子様より、以下の相談を受けましたので、このコーナーに掲載します。

はじめまして、R子と申します。昨年陶芸を習い始めました。ひと月に2回です。

手びねりで小鉢を3個、たたらで花器1つ、小皿4枚を作り、今は菊練の練習とロクロで土殺し、湯呑み

(まっすぐに引き上げる)練習をしています。自分の作りたいものって、まだよくわからなくて、でも何か

表現したい気持ちはたくさんあります。まだ一年なのに、焦り過ぎだと言われます。

もっと土に触りたいと思い、教室の手伝いをし始めましたが、なんか自分のやってることに疑問を

感じています。土練機や生徒さんの作品にサンドペーパーかけてきれいにしたり。

工房の手伝いをして、基本的なことを身に着けられるのではと思っているのですが、作陶の時間は

月2回のままです。手伝うより、作陶の時間をお金を払って増やす方がやはりいいのでしょうか?

ここの先生は、もとサラリーマンで10年前に専門学校を出て教室を開き、今年で9年目です。

弟子をとったり、スタッフを雇う気はなく、すべて一人でされています。

基本は陶芸教室ですが、カルチャースクールでも講師をしておられます。

教室のスタイルは、自分の作りたいものを楽しく作る。だから、基本的なこと以外は全て自由。

手出しもないし、あまり生徒さんが上手くなることにも関心がなさそうです。

夢中になるくらいしっかり取り組みたいと思っているのですが、私のやってることって見当外れ

でしょうか。変な質問ですみません。何かアドバイスあれば、宜しくお願いします。

 

◎ 明窓窯より: 役に立つかどうか不明ですが、私なりの考えを述べたいと思います。

 相談の内容を整理すると、以下の様になると思われます。

1) 昨年から月2回のペースで陶芸を始め、手捻りで小鉢3個、花器1個、小皿4枚を制作し、

   現在、轆轤作業の菊練と土殺し、及び湯呑の練習している事。

2) 教室の手伝いをしている事。その事に疑問が生じて来た事。

3) 先生の指導方法は、基本的な事は以外は全て自由で、教えて貰え無い事。

4) 「お金を掛けてでも、手伝いを辞めて、作る事に専念した方が良いか?」と迷っている事。

・ ここからが、私の考えとなります。

1)に付いて、作品の制作数が少なく感じます。

 ① 昨年からとの事ですが、もし1年でしたら24回の制作期間が有ったはずです。

   1回の時間数が不明ですが、もっと多くの作品が作れたと思われます。

   又、作品の種類も少ない様に感じます。

 ② 手捻から、電動轆轤へ移行するのが常套手段ですので、現在の菊練りや土殺し、湯呑の制作の

    練習は、そのまま続ける事です。即ち、湯呑作りは轆轤技術の基本であるからです。

    但し、轆轤挽きした幾つかの作品の内、1個は完全に作品に仕上げる事です。乾燥、底削り

    までの工程を行う事です。更に素焼き後の釉掛けも自分でし、焼成して貰い仕上げて下さい。

    そうする事で、陶芸作業の全ての事を学ぶ事が出来ます。単に轆轤挽きが上手に成るだけで

    無く、陶芸の全体の流れを掴む事で、陶芸の難しさや面白さ等が見えてきます。

2)に付いて。 弟子やスタッフを採らない方針のようですので、無給の手伝いと思われます。

  手伝うに当たり、交換条件を出さなかったのでしょうか?。 折角教室に出入りしているならば、

  手の空いた時間や、生徒さんのいない時、教室の終了後など、幾らでも無料で練習が可能と

  思われますが、その辺はどんな状況でしょうか?例え短い時間で、指導して貰わなくても、土や

  轆轤をいじる事は、大いに勉強になるはずです。

3) 指導方法は人により色々なやり方が有りますので、一概に自由にやらせる事が悪い訳では

   有りません。「一番良い教え方は、教えない事だ。」と言う言葉が有る程です。即ち教わった事は

   身に着かない事が多く、自分で学び取った事が本当に身に着くと言う事です。

   基本的には、「技は盗んで覚えろ」と言う事ですので、先生の技を盗み取る事です。

   現在あなた様は、授業料を支払わずして、その環境にいると思われます。

   先生があなた以外の生徒に指導している状態を見て下さい。先生が手本を示すならば、それを

   盗み見てください。又先輩がいるならば、先輩のやる事を見習って下さい。(習う事とは真似る

   事とも言われています。)

   蛇足ですが、昔の陶工の修行は上記の状態で行われていました。即ち直接教えてくれる人が

   いないなかで、技を盗み取り、技を磨いたと言われています。

   他の人の作品にヤスリを掛けているとの事ですが、これは他の人の作品を手に取る事のできる

   チャンスだと思って下さい。その作品の形や肉厚、重さなどを見て、良い所と悪い所をご自分の

   目で確かめる事が出来、良い所を真似たり、自分ならこうすると言う考えが出来るようになる

   はずです。

   更に、先生にはどんどん質問する事です。教えてくれなくても、質問には喜んで答えてくれる

   指導者は結構いるものです。特に男性にはこの傾向が強いです。

4) 手伝いを辞める必要はありませんし、お金を掛けて習う必要もないと思います。

   但し、手伝いも程ほどにして、制作時間を取る様に心掛ける事です。

5) 最後に、先生は現在あなたが陶芸を続ける意思があるかどうかを、試しているとも見えます。

   「まだ一年なのに、焦り過ぎだ」と言う言葉に表れている様に感じられます。

   私の経験では、陶芸を直ぐに辞めていまうタイプの人は、

  ① 「暖め易く、冷め易い人」は長続きしません。  

     逆説的ですが、早く技術を憶えたくて、熱心に陶芸に打ち込む人は、長続きしません。

     陶芸は面白いと思い込み、最初から意気込む人程、早く陶芸に飽きてしまう様です。

  ② 「器用な人」も直ぐに辞めるタイプです。

     器用の人は他の人より、飲み込みも早く、技術の上達も早いです。

     その為かどうか解かりませんが、ある程度で、「陶芸はこんなもんか」と一人合点し、興味が

     薄れ、他の方向に向いてしまう様に思われます。

  ・ 陶芸で習得する技術は、単に作品を作るだけでなく、広範囲に及びます。

    もしあなたが、陶芸を真に身に着けたいと思うなら、焦らずじっくり時間を掛けて一つずつ身に

    着けることですし、先生もあなたの性格が陶芸に向いているかどうか試しているのではないで

    しょうか。

  ・ 尚、指導者が生徒の上達に無関心と言う事は、絶対ありません。無関心に見えても、常に

    心掛けているものです。

  ・ 「弟子をとったり、スタッフを雇う気はなく、すべて一人でされています。」と有りますが。

    特別大規模な陶芸教室以外、普通の陶芸教室はこのスタイルが一般的です。 

以上 長々と述べましたが、参考にして下さい。  

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新釉の話5 市販の釉3 黒系

2013-07-22 21:23:15 | 新釉(薬)の話

1) 釉の販売状態。

 ① 釉は袋に入った粉末状の物と、ポリ容器に入れられた泥漿(でいしょう)状で販売されています

   場合によっては、粉末が秤売り(はかりうり)の状態で販売されている事もあります。

 ② 泥漿状態の釉は、そのまま掻き混ぜてから使う事も出来ますが、粉末状の釉は容器に入れ

    水を加えて良く溶き、攪拌してから使用します。

2) 市販されている黒い釉には、以下の様な種類があります。

  黒天目釉、艶黒(つやぐろ)釉、油滴天目釉、柚子肌(ゆずはだ)黒釉、瀬戸黒釉、黒そば、

  黒マット釉などが代表的な釉です。 その他、地方の窯場に伝わる、黒釉もあります。例えば、

  益子黒釉、唐津黒釉、丹波黒釉などです。当地の天然の灰や鉄化合物を使用している為、産地に

  よって微妙な色や光沢に差がでます。 後者の場合、余り一般的な釉ではない為、入手に苦労する

  かも知れません。

3) 黒色の元は鉄分です。

 ① 弁柄(酸化第二鉄、Fe2O3 ): 天然には赤鉄鉱として産出します。赤錆(さび)の一種です。

    赤色で鉄分を97~98%含んでいます。それ故、生の釉が赤又は赤褐色になります。

    多くの天目系の釉等に使われています。

 ② 酸化第一酸化鉄(FeO): 強磁性の黒色粉末ですので、生の釉では、灰色~黒色になります。

 ③ 砂鉄(黒浜): 陶磁器の素地や釉薬に若干量を添加し、斑点模様を出すのに用いられている。

 ④ クロマイト: 鉄、マグネシウム、クロムが主成分の酸化鉱物で、釉の着色材になります。

 ⑤ 鬼板粘土: 一般に下絵付け絵の具として使う事が多いです。鉄分は40%程度で、その他

   マンガン等の不純物を多く含み、この不純物が黒~茶色に変わる絵の具として珍重されます。

4) 各黒釉に付いて。

  ① 黒天目釉: 石灰系の釉で、焼成温度範囲も広く、酸化焼成で黒い釉になります。

    還元焼成や、釉が薄い場合には、柿釉の様な赤味掛かった色になる事があります。

    黒い色を出すには、急冷する事です。又、厚目に施釉した作品を高温で焼成すると、釉が流れ

    落ちて縁の釉が薄くなり、結果的に縁が赤くなる現象も起こります。

   ・ 灰系黒天目釉: 長石に(天然)土灰を混ぜた基礎釉に、弁柄などの鉄分を添加した釉です。

     民芸調の黒天目になります。

   ・ どんな土にも合いますが、特に赤土に施釉した方が良い様です。

  ② 艶黒釉: 光沢のある真っ黒い釉です。酸化焼成が基本ですが、還元でも光沢のある

      真っ黒な色となります。黒天目の様に焼成条件によって赤くなる事はありません。

  ③ 油滴天目釉: 光沢のある黒い釉に、油の滴の様な銀色の結晶が、作品全体に浮き出た

     物です。 釉中のマンガンやチタンの結晶が銀色になります。結晶釉ですので、酸化焼成で

     徐冷する必要があります。

    ・ 赤油滴天目釉は、黒地に細かい赤い斑点の結晶が無数に析出します。

  ④ 柚子肌黒釉: 柚子(ゆず)の様に表面がブツブツし、ややマット状になる釉で7%程度の

     鉄分を含みます。

    ・ 1250~1280℃の高温で、酸化よりも、還元焼成の方が良いようです。

    ・ 厚掛けが基本ですが、厚掛け過ぎると、釉が煮える傾向があります。

    ・ 窯を急冷させると、柚子肌にはなり難いです。

  ⑤ 瀬戸黒釉: 引き出し黒と呼ばれる、急冷による黒釉です。

  ⑥ 黒そば釉: 光沢のある黒色地に、金色の細い斑点の結晶が現れた釉です。

  ⑦ 黒マット釉: 黒い光沢のない艶消しの釉です。酸化、還元でもOKです。

以下次回(白系)に続きます。

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新釉の話4 市販の釉2 透明釉2

2013-07-21 22:20:48 | 新釉(薬)の話

2) 透明釉について。

 ② 透明釉の種類: 市販されている一般的な透明釉には、以下の様な種類があります。

  ) 灰系透明釉。

    石灰(カルシウム)や灰(草木灰)、バリウム、カリウム等の物質は、アルカリ土類と呼ばれ、

    釉を熔かす為に必要であり、温度を調節するためにも加えられます。 

    尚、多く加える程、熔融温度が低下します。

  a) 石灰系透明釉との違い。

     石灰系がやや硬く冷たい感じのする釉に対し、灰系には若干色が付く事もあり、軟らかく

     温か味のある釉に成り易いです。

   ・ 土灰系透明釉: 昔より陶芸家や民芸窯、多くの陶器の産地で使われている安定性のある

     釉です。土灰(どばい)とは、色々な種類の雑木の灰です。各地でその地方で採れる天然の

     灰を使っています。

   ・ おおざっぱな調合で、焼成温度の調整が可能で幅も広く安定しています。(1200~1250℃)

     一般的には20%程度の灰が含まれているます。

   ・ 酸化でやや黄色味を帯、還元でやや緑色透明に成る場合が多いです。

  b) 市販されている灰系の釉には、合成灰が使われているはずです。

   ・ 灰は樹木の種類や、幹、皮、根などの部位、伐採された季節によってその成分も異なり、

     安定した品質が得られない為です。合成とは、灰に含まれている成分を、化学成的に分析し

     相当する材料で置き替えた物質です。  

   ・ 土灰にはマグネシウムの他、鉄分などの不純物も若干混入している為、完全な透明に

      成らずに、淡い黄色味やグレー、緑色などの色が付く場合があります。

   ・ 柞(いす)灰は、鉄分の少ない木灰で、白く焼きあがる磁器釉として、有田焼等で使われて

      います。 九州の宮崎地方の日向産が有名ですが、市販品では合成柞灰が使われています

   ) その他の市販されている透明釉。

      以下の釉は、上記石灰系や灰系透明釉ほど一般的では有りませんので、陶芸材料店や

      メーカーのカタログに記載されているとは限りません。

    a) 石灰亜鉛透明釉(酸化亜鉛透明釉): 石灰釉に亜鉛華(酸化亜鉛)を添加した釉です。

      焼成温度範囲が広く、使い易い釉です。徐冷すると結晶が析出して、乳濁し易いです。
 
      熔けかたも、昇温度と共に、ゆっくり熔けて、「サラット」せず、「ぽってり」とした、感じに

      なります。

       参考: 石灰透明釉3号に10%以下の亜鉛華を入れると、融点を下げる事ができます。

      ・ 緑やピンク等の鮮やかな釉の上に二重掛けする場合や、下絵の作品に使う場合には、

        亜鉛を含まない石灰系の釉を使った方が良い様です。亜鉛を含むと、彩度(鮮やかさ)

         が落ち、クロム釉などでは、褐色に成り易いので注意して下さい。

    b) 貫入透明釉:透明釉は貫入(ひび)の無い釉ですが、あえて、貫入が出る様にした釉です。

       市販品には、貫入透明釉3号(1230~1280℃)と4号(1200~1250℃)があり

       ますが、4号の方が貫入が出易いです。酸化、還元でも使えます。

    c) マット系透明釉: 光沢の無い透明釉として市販されています。

      参考: 当ブログの質問のカテゴリーの質問5で取り上げていますので、興味のある方は

          参考にして下さい。

    d) 高光沢透明釉: 光沢のある釉で、酸化、還両方に使えます。薄掛け~厚掛けまでOK。

    e) 基礎釉用透明釉: 色釉等を作る際に用いられる、専用の釉も市販されています。

       焼成温度によって幾つかに分類されています。透明釉(SK-6a~SK-9)、貫入透明釉、

       合成土灰釉などがあります。

以下次回に続きます。

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