わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

焼き物は壊れ物 41 器の補修 2(金継ぎ)

2014-01-30 20:25:01 | 焼き物の材料(原料とトラブル)

2) 補修の方法。

 ② 再度本焼きして、釉で補修する方法。

   同じ釉を使い「ひび」や「割れ」、「欠けた部分」に施釉して、再度同じ温度で焼成し、釉で接着する

   方法です。上手くいけば極自然にj補修できます。

   但し、この方法は、窯をご自分で持っている方、又は再焼成をしてくれる方が必要になりますので

   どなたでも出来る補修方法ではありません。

  ) 「欠け」の場合、大きく欠けた時の処置は、「割れ」の補修方法と同じです。

   a) 欠けた破片が小さい場合は、単に同じ濃い目の釉を筆などで盛る方法をとります。

     一度焼成すると、普通の釉の濃度では釉肌に載りません。濃い目にするか、CMC糊等を

     入れて粘る状態にして塗ります。

   b) 欠けた部分が大きく、且つ破片が粉々に成ったり、存在していない事も多いです。

     この場合には、欠けた部分を新たに作り、素焼き後に取り付けるか、同じような形状の物を

     見つけて取り付けるかの方法をとります。取り付けた際、なにもしなくてそのまま自立している

     時は、釉を掛ける事で済みますが、自立出来ない場合には、陶芸用のペースト状の接着剤を

     使います。但し、市販品の物でも、高温で確実に接着できるとは限りません。

  ) 「ひび割れ」の場合、「ひび」の幅によっては、「ひび」の中にまで釉が入り込まないかもしれ

     ませんが、「ひび」の裏表から筆などで、釉を塗る事でOKです。同じ温度で焼成する限り、

     「ひび」の幅は、それ以上広がりません。

  ) 急須の蓋の摘みなどが、その付け根より、そっくり取れた場合には、容易に釉で修正が

     可能です。 でんぷん質の「やまと糊」などを接着面に塗り接着後、接合周囲に施釉すれば、

     完全に補修可能です。

  ) カップ類の取っ手の場合、多くは側面に「ぶら下がる」状態に成っています。

     取っ手部分の重量と、外に出っ張った大きさによっては、接着不可能な事もあります。

     即ち、釉は熔けた状態では、接着効果はありません。釉が冷え固まる事で接着できますので

     それまでの間、他の接着剤などで保持しておく必要があります。

     それ故、重い物では接合部に、引き離す大きな力が働く場合には、他の方法をとる必要が

     あります。例えば楽焼用の低温の釉を使い、作品を寝かせ取っ手が真上になる様にするとか

     の方法です。

    ・ 高温で確実に接着効果を発揮できる製品は、今の所見当たりません。以前にはその様に

      宣伝していた製品も、問題点がある様です。

  ) 複数個に割れた場合。

     板状の作品であれば、工夫すれば補修可能ですが、立体的な作品では上記と同じ様に

     「ぶら下がり」状態の部品は、釉による接着できません。

     一般には釉による補修は諦めた方が良い様です。

 ③ 金継による補修方法。

    金継の方法は昔より存在していましたが、近年俄かに注目され出した補修方法です。

    注目される様に成ったのは、素人でも割合容易に行われる事と、高価な本物の漆(うるし)や

    金粉の替りに、新漆や真鍮(しんちゅう)粉、新漆専用の薄め液などが釣具屋で、安価で

    容易に入手できる為です。釣具屋で市販されているのは、自分で釣竿に蒔絵を施す人の為の

    道具として使われるからです。

  ) 準備する物は、エポキシパテ金属用(接着剤)、透明の新漆、真鍮粉、新漆用薄め液、筆

    (細、極細等)、新漆と真鍮を混ぜる小型の容器(パレット)です。

    いずれも数百円程度です。 パテはホームセンター等で購入できます。

  ) 作業方法は以下の通りです。

    a) 棒状のパテを1cm程度切り取ります。パテは内側が灰色、外側が白色の二重構造に

      成っています。

    b) 指に水を付け、灰色と白色の部分を混ぜ合わせます。耳たぶ程度の硬さに成ればOKです

    c) 破片の接着する面に上記パテを、親指などで擦り付けます。

      破片を本体にしっかり嵌め込みます。破片と本体の表面が滑らかである事を確認します。

      パテは直ぐに固まりますので、手早く行う事と、パテの量を多くし過ぎない事です。

    d) 10分程度の乾燥で固まりますので、はみ出したパテはカッターナイフで削り取ります。

    e) 耐水性のサンドペーパー(紙やすり)に水を付けて、出っ張った所を削り、更になだらかに

      します。

    f) 小型容器(パレット)に、真鍮粉(金粉の代用品)と新漆をほぼ等量絞り出します。

      筆に薄め液を付け掻き混ぜます。薄め液は筆で塗った時筆跡が残らない程度が最適です。

    g) 筆に上記混ぜ合わせた真鍮粉を採り、割れ目の筋の上に載せ、筆を軽き引きます。

      内外両側を塗ります。なるべく筋からはみ出さない様にします。

    h) 10分程度乾燥すると完成です。

   これで、強度的にも問題なく、普通に使用する事が出来ます。

以上にて「焼き物は壊れ物」の話を終わります。

次回より、別のテーマでお話します。

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焼き物は壊れ物 40 器の補修 1

2014-01-29 17:00:00 | 焼き物の材料(原料とトラブル)

使用している焼き物が壊れた時、その破損状態(壊れっ具合)により廃棄処分にすべきか、補修

すべきかを考えます。特別高価な作品や、思い入れのある作品ならば、どの様に破損しても、完全

では有りませんがそれなりの補修して使う事も可能です。

1) 壊れる原因は以下のものが多いです。

   壊れには、「ひび」が入る程度から、完全に分離する「割れ」の状態まで色々な状況が出現します

  ① 落として割れる。当然落とす高さと、落ちた場所、作品の落ちる向き、器に料理や水が入って

   いるか等によって程度に差が出ます。

   一般には大きく3~数個に分かれて壊れる事が多いです。細かく数の多い物(粉々に壊れる)

   は補修が難しくなりますので、諦めて廃棄処分する事が多いです。

  ② 他の物にぶつけて割れる。  このパターンが比較的多いです。

   持ち運ぶ際、洗う際、収納の際など色々な場面があります。ぶつける相手も様々ですので一概に

   言えませんが、落とすよりも衝撃が少ない為、器などの隅部や、カップ類の持ち手などが破損し

   易いです。皿や丼などの食器の口縁の一部が欠損してもさほど使用に差しさわりがある訳では

   ありませんので、そのまま使い続ける事も良くあることですが、見た目が悪いです。

   唇に当たるご飯茶碗や、湯呑、ビールジョッキ、カップ類などは、欠けた部分を避けて使えば

   問題ありませんが、素地がむき出しに成り、やはり気になる処です。

  ・ カップの持ち手が取れたり割れたりした場合、使用が出来なくなる可能性も有りますので、

    補修すべきか、廃棄処分にすべきか迷うはずです。取れた場合は補修し易いです。

  ・ 「ひび」の入った焼き物は、使用しない方が安全です。なんらかの事情で「ひび」が拡大し割れる

    恐れがある為です。

2) 補修の方法。

   「ひび」の入った焼き物は、完全に「割れた」物よりも補修方法が限られます。

   接着剤が「ひび」の中に浸透する物を使うか、釉による再焼成の方法を取ります。

 ① 一番一般的で誰でも出来る方法は、陶磁器用の接着剤でくっつける事です。

   但し、割れて分割した数が少ない場合で、且つ割れた部品が全て揃っている必要があります。

   エポキシ系の二液性の接着剤で、100円ショップで販売している物で十分です。

  ) 5分硬化型と10分硬化型などあり、比較的短い時間で補修できます。

     チューブより押し出すと、刺激臭が有りますが、ニ液を混ぜる内に臭いは徐々に無くなります。

     揮発性ですので、硬化するまでは火気厳禁です。手順は以下の通りです。

    a) 接着面の汚れ(茶渋など)を落とし、水分と油などは拭き取っておきます。

    b) 二液はAとB液からなり、等量をチューブから搾り出し、付属の「ヘラ」でよく掻き混ぜます。

      混ぜる時間は約60秒程度です。

    c) 幾つかに分割して割れた場合、細かい部品同士から接着して行きます。

       大きい物から接着して行くと、全てのパーツが所定の位置に収まらなくなります。

    d) 接着面に均一に塗り伸ばします。お互い密着すると、接着面より接着剤がはみ出す程度が

      最適な量です。はみ出した物は拭き取るか、硬化後に削り取ります。

    e) 硬化するまで、動かない様にします。必ずしも、硬化を待って次の作品を接着する必要は

      ありません。硬化前に全てを接着しても、安定的(動かない様に)に放置できれば、次々と

      接着しても問題有りません。

    f) 接着剤には注意書きがありますので、良く読んでから行動に移して下さい。

  ) 瞬間接着剤について。この接着剤は大変便利なものですが、衝撃に弱い処がありますので、

     余り推奨できません。この接着剤は失敗しても再度やり直す事は困難です。

     使い方は、二液性の接着剤と異なり、部品同士をくっつけた状態で、接着液を垂らします。

     液を垂らす事で直ぐに接着完了です。

  ② 再度本焼きして釉で補修する方法。

以下次回に続きます。

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焼き物は壊れ物 39 器の上手な使い方

2014-01-28 16:48:11 | 焼き物の材料(原料とトラブル)

焼き物は、一部の芸術作品などを除き、一般に使用する物は、消耗品として考えた方が無難です。

焼き物は腐敗する物ではなく、数百年又は数千年でも、余り変化せずに、現在の形や色を保持し続け

ます。大事に使えば、半永久的に使える代物です。ペルシャ陶器などは、焼成温度が低く釉にも

不純物が多い為、数十~数百年後には、表面のガラス質が風化し濁り、透明度が落ちると言われて

いますが、現代の陶磁器ではその恐れは少ないです。

但し、実際には何らかの理由で、使用中に破損するのが大部分です。

勿論、大切な焼き物は修繕する事も可能ですが、ほとんどは廃棄処分の運命にあります。

1) 焼き物、特に器類は基本的には使われる事を前提に作られています。

   それ故、陶芸作家と呼ばれる人は、箱に仕舞われるのではなく、日常で使ってくれる事を願って

   いる人がほとんどです。使われる事で、焼き物の存在価値があるとも言えます。

   それ故、日常的に使用する物は、破損するのは当然かも知れません。

2) 上手に器を扱う方法。

   焼き物を良い状態で長持ちさせるには、それなりの方法があります。

 ① 新品の焼き物を使い始める前に。

  ) 無釉の焼締の陶器や、粉引、萩焼など軟陶と呼ばれる器は、吸水性がありますので、その

    まま使うと料理の汁や油気などが器に滲み込み、汚れて取れ難くなります。

    その為、新品の焼き物は、米の研ぎ汁(とぎじる)で煮沸すると良いと言われています。

    土同士の粒子間や釉の貫入などの隙間に、粘りのある研ぎ汁が入り込み、乾燥で固まる事で

    隙間を埋める為、染みや汚れから守ります。

    尚、基本的に磁器はほとんど水を透しませんし、貫入も出来ませんのでので、新品であっても、

    特に上記の処置を取る必要はありません。

  ) 土鍋の場合には、最初に「おかゆ」を焚く事です。「おかゆ」が土や釉の隙間に入り、乾燥後に

    固まって糊状になり、目止めの役割を果たしますので、出し汁や醤油などの調味料の染み

    込みを予防します。 更に、機械的、熱的にも強度を増す働きがあります。

   ・ 土鍋の底に着いた水滴は、火に掛ける前に拭いて置く事です。

 ② 日常使用する土物(陶器)は、使う前に水を含ませると、汚れの予防になり、更に一段と

   「みずみずしさ」が出て、器の艶(光沢)が増します。

  ) 水又はぬるま湯に漬けて、十分水を含ませて軽く水分を取ってから、料理を盛ります。

  ) 無釉の備前焼などは、さっと水に潜らせるか、霧吹きで霧を吹いて濡らします。

  尚、汚れの目立つ色と比較的目立たない色があります。白色は良く目立ち、黒、茶、緑色は目立た

  ない色です。

 ③ 使用後は速やかに洗い、十分乾燥させます。

  ) 吸水性のある陶器は、湿気を十分取らずに食器戸棚などに収納すると、黒黴(カビ)が発生

    する恐れがあります。特に重ね合わせた場合で、高台の内側や高台脇に発生し易いです。

  ) 洗った後に、熱湯を掛けると乾燥が早まりますが、火傷に注意する事です。

 ④ 上絵付けされた作品の表面は、強く擦ってはいけません。絵の具が低い温度で表面に焼付け

    られた状態ですので、ゴシゴシ洗わない事です。特に金彩や銀彩は絵が剥がれ落ちます。

    又、金銀彩の色絵の食器は、電子レンジは厳禁です。

 ⑤ 汚れや茶渋などの付いた湯呑みなどは、台所用の漂白剤に漬け置きする事で、取る事が出来

    ます。但し、金銀彩の物は色落ちする場合がありますので、避けた方が良いでしょう。

    頑固な汚れやカビのある器は、素焼きの際一緒に焼成する事により、新品同様になります。

    この場合、釉の色が変わる事はありません。

以下次回に続きます。

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焼き物は壊れ物 38 焼成後の問題点と処置3

2014-01-26 22:10:05 | 焼き物の材料(原料とトラブル)

3) 焼成後に起こるトラブル。

 ③ 底面や高台の畳付きの処理。

   窯から出したばかりのほとんどの作品は、底面や畳付き部に細かい異物が存在しています。

   主に、窯詰めの際に棚板などに焼き付かない様に塗った水酸化アルミナ等による「ザラツキ」や

   棚板に塗ったアルミナコーチングのカス(滓)等です。これらは、テーブルや置いた場所の表面に

   引っかき傷付けます。その為、砥石(といし)などで綺麗に削り取り除きます。(紙ヤスリでは

   ほとんど取れません)砥石の無い場合には、作品の高台同士を摺り合わせて、「ザラツキ」を取る

   方法が昔から行われています。昔の瀬戸物屋さんは、販売するお客の前で行っていた方法です

   アルミナコーチングのカスは、前回の本焼時までに釉が棚板上に飛び散り固まった物です。

   本焼き中に再度熔け、くっついた物ですので、窯詰めの際に綺麗に削り残さない様にします。

   このアルミナは容易には取れませんので、ダイヤモンド・ヤスリで削り取る事です。

4) 機械的強度の問題。

   本ブログの標題の様に、焼き物は壊れ物です。但し、焼成した作品には、強度的に強い物と、

   弱い物が存在します。強弱の違いの原因は何処に在るのでしょうか。

  ① 強度が弱い焼き物。

   ) 十分焼締まりのしていない焼き物、即ち、低い温度で焼いた物は機械的強度が弱いです。

     特に、楽焼などは低い温度で焼成する為、本焼きの作品より強度が落ちます。

   ) 粘土類に珪砂が多くなると、

    a) 粘りが無くなり気孔(素地の中にある微小の泡)も多くなり、機械的(物理的)強度が落ち

      ます。注: 珪砂とは主に石英粒からなる砂の事です。花崗岩(かこうがん)等の風化で生じ

      ます。珪石を粉砕した人工的な物もあります。

    b) 焼成中に珪砂が異常膨張や異常収縮する為、素地が歪む事があります。

    c) 但し、気孔が多くなる事は、温度の急変に耐える為、鍋料理の陶器等には向いています。

    d) 石灰成分の多い焼き物は、湿度に対して不安定です。即ち湿気を吸収し膨張(水和膨張)

      する性質がありますので、湿気の多い場所に長期間放置すると、強度が落ちます。

   ) シャモット(焼粉)の功罪。

    a) シャモットは収縮の大きい素地に入れ、収縮率を少なくする働きをします。

      但し、収縮率が大きいと、作品の機械的強度は増す利点もます。

    b) シャモットを入れると、多孔性になり急熱急冷に耐える性質が増します。

      特に、楽焼などの様に、急熱急冷する場合、素地土に多めに加えます。

    c) 多孔質を多く含む焼き物は、断熱性に優れます。熱いお茶を入れても磁器の様に直ぐに

      表面が持てなくなる事はありません。又保温効果があり、中の汁やお酒やお茶などの液体が

      冷め難い効果があります。

    d) 更に、作品の重みを軽くする働きもあります。特に持って使う器は軽い事が重要ですので、

       シャモットを入れる事は有効に成ります。

    e) 焼成温度範囲が狭い場合、シャモットを入れる事で、焼成温度範囲を広げる事が出来ます。

    f) シャモットを入れると、可塑性が少なくなりますので、素地を加工し難いです。

      多く入れ過ぎると、粘りが無くなり、「パサパサ」した素地になります。

    g) シャモットが細か過ぎると、外部からの衝撃力に弱くなります。即ち壊れ易くなるります。

      やや粗めのシャモットを使う事で予防できます。

以下次回に続きます。

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焼き物は壊れ物 37 焼成後の問題点と処置2

2014-01-25 17:32:14 | 焼き物の材料(原料とトラブル)

3) 焼成後に起こるトラブル。

 ② 水漏れ現象。

   焼成された作品に水などを入れると、壁や底を透して水分が漏れる場合があります。

  ) 花瓶の様に数日も水を入れる器では、側面や底面から水が滲み出します。

    壁から滲み出した水分は、汗をかいた様な状態以外では、蒸発してしまいますのでほとんど

    認識されない事も多いです。同様に、短時間使用する徳利や酒器では、滲み出てもさほど

    問題に成りません。 短時間の使用で水漏れを起こす場合は、素地に「ひび」が入っている

    事が疑われます。

  ) 水漏れの原因は、素地が十分焼き締まっていない為や、貫入(かんにゅう)により起こります

    十分焼き締まる様にするには、焼成温度を上げる事です。但し釉との関係があり、無闇に

    上げる事は出来ません。(釉が熔け過ぎて流れ易くなります。)

   a) 備前焼は土の焼き締まる率が20%程度と大きい為、施釉しなくても水漏れを起こさないと

     言われています。

   b) 磁器は陶器より高い温度で焼成し、素地もガラス化しますので、水漏れの恐れは格段に

     少ないのです。

   c) 貫入は、釉に現れる「ひび」です。「ひび」には細かい物から、大貫入と呼ばれる物など色々

      あります。基本的には、「ひび」の部分より水が浸入しますので、素地にまで達します。

      素地が水を透す程度の焼き締まりですと、水漏れを起こす事に成ります。

  ) 他の方法は素地の粒子を細かくする事です。粒子が細かいと良く焼き締まります。

    粒子の細かい土は、細目(又は特練り)の名前で市販されています。

    ご自分で土を作る際には、素地を微粉末に加工する事です。

  ) 石灰と酸化鉄を含む土を還元焼成すると、ある温度で急激に焼固し、一部はガラス化

     しますが、他の部分は多孔質を多く含んだ状態になります。この様な状態に焼き上がった

     場合には、必ず水漏れを起こしますので、防止剤を用いるしか方法はありません。

      注: 水漏れ防止剤: 以前はシリコン製(有臭)の物がありましたが、現在では食器用に

      使う事が禁止さ、食器用(無色透明、無臭)の物が市販されていて使われています。

    イ) 水漏れ防止剤は水を弾く性質がありますので、和食器の様に使う前に水に浸し、

      潤いのある釉肌を出現させる場合には、表面には使用しない事です。

      勿論使用する事により、貫入の「ひび」に入り込み、汚れの防止や水漏れ防止にも成り

      ますが、見える釉面には、使わない方が焼き物としての趣を残します。

    ロ) 土物(陶器)の食器は、僅かですが、どうしても水を吸います。使用後には良く乾燥

      させますが、高台の内側は通気性に欠けますので、「黒黴(かび)」が発生し易いです。

      高台内を水漏れ防止剤で一筆塗る事で防止できます。

    ハ) ベタ高台や畳付き部など施釉していない部分は、極僅かでも水を吸い込みます。

      その為、重ね置きした場合など、通気性が損なわれ黴(カビ)などが発生し易いですので、

      水漏れ防止剤を塗る事です。

    ニ) 水漏れ対策を施さない花瓶などは、水漏れを起こし易いです。

      水を入れてそのまま机や床の間、テーブルなどに放置すると、置かれた位置に、底跡が濡れ

      て現れてきます。これは、内底を通して外に水漏れした跡です。

      勿論、対策を採らなくても水漏れを起こさない事もありますが、その際には1週間ほど水を

      入れて確認する必要があります。時間を掛けてジワジワ滲み出す事もあるからです。

    ホ) 水漏れ防止剤の使い方。

      長時間水を入れる器に水漏れ防止剤を使う場合、防止剤が水溶性の為、器が十分乾燥して

      いる必要があります。 

     ・ 器の内側に防止剤を少量流し込み、器を回転させながら、口縁周辺まで、液体を移動

       させます。 次に液体を別の容器に捨て、そのまま1日程度乾燥させます。

       (尚、一度使った液体は再度使う事が出来ます。)

       1日経てば使用可能になります。その場合でも確認の為、数日水を入れた状態で観察

       する事です。一度で水漏れが止まらない場合には、再度水漏れ防止剤を使い処理します。

       それでも水漏れする場合には、内側に釉を掛けて再び本焼きしますが、一度防止剤を

       塗ると、釉が掛かりませんので、素焼き後に施釉する事に成ります。

以下次回に続きます。      

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焼き物は壊れ物 36 焼成後の問題点と処置1

2014-01-24 17:18:36 | 焼き物の材料(原料とトラブル)

3) 焼成後に起こるトラブル。

 ① 窯出し後の確認作業。

  ) 作品の出来具合を一つ一つを確認する事です。確認事項は以下の項目です。

   a) 作品に「割れ、ひび」等重大な欠陥は無いか。

     さすがに作品が二分割する程、破損する事は稀ですが、口縁や底に割れが出来る事は

     珍しくありません。生の状態や素焼きの段階で、「ひび」が入っている場合には、ほぼ確実に

     割れとなって現れます。

     カップ類の持ち手部などの接着した所に「ひび」などが入っていると、使用中に取れる恐れが

     あります。この場合、「ひび」部に再度釉を流し込み焼成するか、目立たぬ様に陶磁器用の

     接着剤で補修する事です。

   b) 作品同士の「くっつき」は無いか。

     窯詰めの際、指一本以上の隙間を開けますが、不安定な作品は、本焼きの焼成中に作品が

     倒れ、隣の作品により懸かる場合には、確実に作品同士が「くっつき」ます。

   c) 異物の付着。

     焼き上がった作品に、異物が付着している事も多です。上で述べた「くっつき」も異物と言えば

     異物ですが、それとは別の現象です。異物は外から来るものと、内から出てくる物に分かれ

     ます。

    イ) 外から来る異物は、器などの内側や、壷などの肩などに現れる事が多く、上から落ち

      て来る物です。

      これらは、窯の壁の欠片(かけら)や、耐火レンガを接着するモルタル類の欠片などです。

     ・ 窯も高温になると膨張し、冷えると収縮します。その為、常にレンガ類が膨張収縮を繰り

      返し、モルタル類も緩みが出て、やがて剥がれ落ちます。

      ・  壁を構成する耐火レンガに作品や棚板などが「ぶつかる」と、一部に小さな亀裂が入る

      事もあります。この様な状態で長年使用していると、破片が落下する事になります。

    ロ) 内側から出る異物は、素地に含まれている石粒(いしつぶ)などの異物です。

      特に、再生粘土を使う場合に多く見られ、出現する場所も不定です。

     ・ 石粒は高温になると、熔け始め膨張し土の表面より現れます。

       完全に熔ける事はありません。 多くの場合内部に気泡を持つ黒色の吹き出物状態です

       釉が掛かっていても、釉の上に現れます。

       この異物の表面は、ダイヤモンド・ヤスリで容易に取り除けますが、内部まで取り除くと

       穴が開いてしまいます。出っ張り部は平らにし、内部までは掘り出さない方が良いかも

       知れません。この傷を治した部分には、次に述べる水漏れ防止剤を塗ると良いでしょう。

     ・ 粘土に含まれる長石粒も、高温になると表面より吹き出てきます。この場合は透明又は

       白色の粒になります。粗目の古信楽土を使うと出現しますが、これも一つの見所ですので

       あえて取り除く必要はありませんが、手に持って痛い時や、洗った時に邪魔になる場合

       には、ダイヤモンド・ヤスリで削り取ります。 

   d) 他の釉が「くっつく」場合。

    イ) 器の内側に他の釉が落ちる。 内側の釉と口縁周辺の釉を別にした場合、口縁の一部の

      釉が剥がれ、内側に落ち汚す場合があります。焼成前ならば取り除く事が出来ますが、

      焼成後では不可能です。

    ロ) 青織部の様に銅系の釉を使うと、隣の作品に銅が転写される事があります。

      銅は高温になると揮発しますので、近くに作品があると、その揮発した銅が移ります。

      その為、銅系の作品をまとめて窯詰めするか、他の作品は十分離した位置に置く事です。

    ハ) 施釉した器に釉の種類などの、メモ用紙を入れて置く事があります。

       注: メモを入れておく理由は、窯詰めなどで、こすれたり、ぶつかったりして釉の一部が

         剥がれた際に、同じ釉で補修する為に入れておきます。

      このメモを取り出さずに焼成してしまうと、紙の痕が周囲と異なる色として現れます。      

      それ故、窯詰めの際、メモ用紙などが無い事を確認する事です。

 ② 水漏れ現象。

以下次回に続きます。

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焼き物は壊れ物 35 焼成中のトラブル3

2014-01-23 17:15:34 | 焼き物の材料(原料とトラブル)

1) 焼成中に起こる事。

 ⑤ 素地土に含まれる不純物。

  ) 可(水)溶性塩類は、悪さをする。

    可溶性塩類とは: カルシウム、マグネシウム、ナトリウムなどの塩化物、および硫酸塩等で

    水に溶ける物を言います。これらは自然界に普通に存在する物質で、素地土にも含まれる

    場合もあります。但し、水に溶けますので、十分水簸(すいひ)する事で取り除く事が出来る

    物質です。

   a) 塩類が含まれた土を成形し、乾燥させると、塩類が粉を吹いた状態や結晶として表面に

     現れます。又は、焼成すると灰白色や黄色が現出する事もあります。

   b) 塩類を含む土を高温で焼成すると「ぶく」が発生します。又、施釉した作品の場合、

     釉を着色したり、釉を飛ばしたりします。

   c) スカミング(発華現象)を起こす。

     塩類の結晶の出た状態で素焼きを行うと、結晶が気孔の中にはい込み固着して取れなく

     なります。これをスカミング(スカム)といいます。

    ・ スカムとは、「泡」や「浮き滓(カス)」を意味する英語です。表面に浮き溜まっている

      気泡やカスがスポンジ質の膜状になった物です。

    ・ スカムのある素地に施釉すると、素地と釉の間に隙間が出来、乾燥と共に釉が剥がれ

      ます。又、焼成の際、作品の端の部分が釉飛びを起こす事もあります。

     原因は轆轤引きの最終段階で、皮などで水拭きした際、微細な粘土を剥ぎ取り、端が

          珪砂の多い組成になる為と言われています。

    ・ スカムは乾燥が遅い程強く起こりますし、粒子の細かい土ほど遅く現れます。

   d) 焼成に有害な塩化物。

     ナトリウム(ソーダ、塩)、カリ、石灰、マグネシウム、鉄、アルミニウムの硫化物、燐酸塩や、

     塩化物などがあります。

    イ) 特に硫酸石灰は焼き物に悪作用をします。石灰と硫酸鉄を含む粘土は、長い間風雨に

      晒されると、硫酸石灰と水酸化鉄に成ります。硫酸石灰が作品の端に集まると釉飛びの

      原因に成ります。

     ロ) 硫酸塩の害を除くには、炭酸バリウムを素地に0.25~0.5%程度加える事です。

2) 窯出しに付いて。

  ① 大気中と同じ温度まで冷やすとすると、かなりの冷却時間が必要になります。

   ) 一般には、窯を焚いた時間が、窯を冷やす時間と同じと言われています。

     即ち、12時間半掛かって焚いた窯は、12時間半掛けて冷やすと良いと言われていますが、

     窯によって窯の冷え方も一様ではありません。実際にはもう少し長めに取る事が多いです。

   ) 冷却スピードは火を止めた段階が最も温度低下を起こし、時間と共にゆっくりします。

      それ故、途中で窯の扉や、覗き穴を少し開け放熱します。その温度は300℃以下が

      安全と言われています。

   ) 冷却時の窯の温度が高い場合に、外気を入れると貫入(ひび)が入り易くなります。

     それ故、貫入を入れたい時には、早めに窯の扉を開け放熱します。

     又、窯出し直後に、「ピンピン」と音がしますが、これは釉に貫入た瞬間の音です。

   ) 一般には、100℃以下に成れば、窯の扉を全開しても良いと言われています。

     扉を開けたら直ぐにも、窯出しが可能ですが、作品も100℃近くありますので、必ず手袋

     (軍手など)が必要です。又、体(又は体の一部)を窯の中に入れて窯出しを行う場合には、

     火傷をしない様に、少なくても50℃以下まで温度が下がるまで待つ事です。

   ) 小さな窯では一人で窯出しを行う事が出来ますが、大きな窯になると数人の人が、仕事を

     分担して行います。その際、手渡しで作品をリレーしますが、慎重に渡さないと熱い作品を

     落とす場合があります。

   ) 窯出しした作品は、窯の傍に板や敷物を置き、その上に並べます。なるべく作品の大きさや

     作品の種類、釉の種類別に、共同で使う場合には作者ごとに分けて並べます。

   ) 釉が流れ落ち、棚板などに固着する場合も珍しくありません。

     その際には、棚板の裏側から木槌などで叩くと、割合容易に棚板から取り外す事が出来

     ます。但し、作品の固着部分には棚板上のアルミナコーチングがくっついてきます。

     このアルミナは簡単には取れませんので、ダイヤモンド・ヤスリやグラインダーなどで削り

     取り除きます。ダイヤモンド・ヤスリは100円ショップなどに、色々な形の物が有ります。

     固着部分を「タガネ」などで、無理に引き剥がすと作品の固着部分が壊れます。

    ) 時間に余裕があれば、どの位置に置いた作品が、どの様に焼き上がったかを確認しな

      がら作業し、記録しておけば次回の参考に成ります。

3) 焼成後に起こるトラブル。

 以下次回に続きます。

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焼き物は壊れ物 34 焼成中のトラブル2

2014-01-22 17:10:36 | 焼き物の材料(原料とトラブル)

1) 焼成中に起こる事。

 ① 焼成が原因で変形する。

 ② 焼成による収縮が大き過ぎる。

 ③ 「ひび割れ」は必ず拡大する。

 ④ 焼成中の剥離と切れ。

  ) 可塑性の大きい素地を急速に加熱すると、素地の表面が剥離する事や、切れる恐れがあり

    ます。 可塑性が大きい事は、粘土の粒子が細かく、素地中の水分を通し難い事です。

    素地中に留まった水分は加熱により蒸気となりますが、中々外に抜け出せず、やがて爆発し

    ます。但し、生の状態ぼど水分を含まない為、爆発にも威力は無く、表面の剥離や切れとなり

    ます。更に、肉厚の素地ではより顕著に現れます。

  ) 上記現象を防止するには、素地に珪砂やシャモット(素焼き程度の焼粉)、セルベン

    (本焼きしたシャモット)を入れる事で、素地の通気性を持たせる事です。

  ) 焼成中の亀裂と冷却時の亀裂(冷割れ)。

   a) 焼成中の亀裂は、幅が広く切り開いた様な形状をし、亀裂の内側にも釉が掛かった状態に

     成っています。次に述べる冷割れとは、表情が異なりますので、区別が付きます。

   b) 冷却中の亀裂は一点を中心にして、枝分かれ状態が特徴です。

    又、亀裂部もガラスを割った様に、「ギザギザ」で尖った感じになります。亀裂の内側には

     釉が掛かっていません。「冷割れ」の原因は、石灰分の多い素地を使っている場合や、粗い

     珪砂などが混入している場合に発生し易く、収縮率の大きい作品に多いです。

   ・ 「冷割れ」を起こす温度範囲は、約 600~500℃の間と言われていますので、扉などは

     密閉状態にし、絶対に開けない事です。  

   c) 石灰の多い素地を急冷したり、作品の一面のみに炎が強く当たる場合にも亀裂が入ります

  ⑤ 素地土に含まれる不純物。

   ) 天然に含まれる不純物は水簸(すいひ)する事で、取り除く事が出来る物もあります。

     例えば、目に見える有機物は浮き上がりますので、容易に取り除く事が出来、小石や砂、

     粒子の粗い粘土などは沈殿する事や、篩(ふるい)を通す事により取り除く事が出来ます。

   ) 水簸で分離出来ない物に、細かい酸化鉄があります。尚、粒子の粗い鉄粉などは、磁石で

     取り除く事が出来ます。 問題に成るのは、硫黄と鉄の化合物の硫化鉄です。

    a) 硫化鉄は高温で分解し、硫黄と鉄に分離します。

      硫黄は燃料に含まれる水分と結合し、一部は希硫酸になり、鉄は酸化鉄になります。

      いずれの成分も作品の表面に赤い斑点を作り、汚点となります。900℃程度では目立ちま

      せんが、1100℃を超えると、黒色の酸化第一鉄となり目立つ様になります。釉を汚します

      ので、硫化鉄を含む土は焼き物には使えません。

    b) 硫化鉄を少量含む土は、処理すれば使える事が出来ます。

      少量の硫酸鉄を含む土を、長期間大気中に放置して置くと、風化作用を受け硫酸鉄は

      水に溶ける硫酸鉄と成りますので、水簸する事で取り除く事が出来ます。

   ) 可(水)溶性塩類は、悪さをする。

  以下次回に続きます。

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焼き物は壊れ物 33 焼成中のトラブル1

2014-01-21 16:40:43 | 焼き物の材料(原料とトラブル)

本来なら焼成に付いて述べる番ですが、焼成(窯焚き)の仕方は窯の種類や容積、燃料の違いに

よって大きく変わりますし、窯を焚く人(又は人々)によって個人差が出易く、その方法も大きく異なる

場合が多いです。又、窯の焚き方も、秘密に成っている部分も多々ありますので、焼成の仕方は

省略します。ここでは、一般的に起こる事柄についてお話します。

1) 焼成中に起こる事。

 ① 焼成が原因で変形する。

  ) 酸化鉄などの鉄化合物を含む粘土質の素地は、1050℃以上の還元焼成で、変形し易く

     成ります。酸化焼成でも変形しますが、影響は少ない様です。

  ) 変形する理由は、素地が軟化する温度と焼固する温度範囲が狭い為です。

     この温度差が100℃以内の場合、起こり易いと言われています。

  ) 変形予防方法。

    a) 素地に荷重が掛からない様に窯詰めする。

     窯詰めの際、本焼きで爪を立て重ね焼きする場合や、「とち」を用いて作品を浮かせる等

     力が一点に集まる(偏る)方法を取らない事です。

    b) 作品の形状に注意する。鉄分の多い赤土などは、白い土に対して軟化点が比較的低い

     です。大皿の様に縁部が高台部分より外側に伸びている場合、縁の部分が垂れ下がり傘の

     お猪口の様になる場合があります。縁部を大きく張り出したいのならば、赤土の量を減らし、

     他の熱に強い土(カオリン、耐火粘土など)を混ぜ合わせる事です。

    c) 焼成で最高温度を長く保持した場合や、焼成温度の上昇が遅すぎ、長時間高温に晒した

     場合にも変形し易いです。即ち、「寝らし」時間は長過ぎ無い事です。

    d) 一番確実なのは、焼成温度を下げる事です。

     但し、素地の異なる他の作品と同時に焼成すると、この方法は取れません。

 ② 焼成による収縮が大き過ぎる。

    本焼きでは、必ず作品は収縮します。収縮が大きいからと言って、変形が起こる訳ではありま

    せん。縦、横、高さ共同じ割合で縮みますので、元の形の相似形になります。

    ・ 当然、縮み率が一定でも、作品の大きさによって縮む量は違います。即ち、長さの長い物程

      縮む量は大きくなります。同じ一割でも30cmの一割は3cmで、3cmの一割は3mmです。

   ) 素地に熔剤となる原料が多過ぎると収縮率は大きくなります。

     a) 石灰の多い素地では、1040℃(SK-03a)程度から急激に収縮します。

     b) 長石を多く含む素地では、1120℃(SK-2a)程度から大きく収縮します。

     c) 磁器の素地では、1250(SK-8)~1410℃(Sk-14)で著しく収縮します。

   ) 収縮率を下げるには、石英、シャモット(焼粉)、カオリン等を加えます。

      又、粒子の細かい素地は、縮み量が大きくなりますので、粗めの素地を使う事です。

      当然、焼成温度が高く成るに従い、縮む量も大きくなります。

  ③ 「ひび割れ」は必ず拡大する。

   ) 素焼き前に毛程の細かい「ひび」がある場合でも、本焼きでは「ひび割れ」は幅、長さ共に

     成長します。原因は素地が収縮する為です。例え素焼き前に「ひび」が確認されなくとも、

     本焼きで、出現する事も稀ではありません。本焼きで発生した物ではなく、素焼き時に存在

      していた物を見逃していた為です。

   ) 素焼き前又は素焼き後に見つけた「ひび」を補修しても、本焼きで発生する事は多いです。

      即ち、濡れた生の土の「ひび割れ」以外、補修困難と見た方が正解です。

   ) 底割れとは、作品の中心部に「S状」の亀裂が入る事です。

      亀裂が大きいと、底の裏側にまで割れが貫通します。

      原因は、土の締めが弱い事ですので、良く叩いたり、指先で下に押し付け土を締める事です

      轆轤挽きした作品の内側の水分は、確実にスポンジ等で取り除く事です。

     ・ 「ひび割れ」した部分や補修した部分に、釉を厚めに掛け焼成しても、釉で「ひび割れ」が

       埋まる事はありません。

      尚、底割れに付いては今迄何度も取り上げていますので、ここでは簡単に述べました。

  ④ 焼成中の剥離と切れ。

以下次回に続きます。

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焼き物は壊れ物 32 焼成前の確認事項5

2014-01-20 21:28:05 | 焼き物の材料(原料とトラブル)

2) 焼成前の確認事項。

  ⑤ その他。酸化、還元焼成の別、焼成温度、焼成条件等

   ) 焼成温度。

    a) 素焼きの場合は700~900℃の範囲内が多いです。

      特に750~800℃程度が一般的ですが、あえて900℃以上の硬めに焼き、釉の吸収を

      押さえ、釉を薄く掛ける事もあります。

    b) 楽焼の場合は一般に800~900℃で、黒楽の場合には1150~1200℃と高温に

      成ります。当然、温度が高い程強度的に強くなります。

    c) 本焼きの場合、陶器では1200~1250℃程度。磁器で1250~1300℃が多いです。

      市販されている陶器用の釉は、1230~1250℃の物が多く、1180、1200℃の物も

      あります。

   ) 酸化と還元焼成

     窯の焚き方には、酸化、還元、中性炎による方法があります。釉にも酸化で焼成した方が

     発色が良い物と、還元で焼成すべき物と、どちらでも大差の無い釉があります。

     尚、市販されている釉には、酸化か還元か又は両方とも可の表示があります。

    a) 電気窯は、基本的には酸化焼成です。勿論、炭などを入れ、還元でも焼成できる電気窯も

      市販されています。青織部の様に完全に酸化焼成する必要がある場合には、電気窯が

      最適です。特に、銅を使った釉は酸化と還元では発色が、緑~紫~赤と大きく異なります

      ので、注意が必要です。 燃料を使う窯でも、酸化焼成は可能ですが、窯全体を酸化焼成に

      する事は中々難し様ですので、燃料を使う窯と併用している人も多いです。

    ・ 窯のカタログを見ると、さも容易に酸化、還元が使い分けれる記載がありますが、現実には

      かなり苦労するはずです。

    b) 焼成前に酸化か還元かを予め決めておきます。どの様な釉を使うかで決ってしまいます。

      実際に、還元を掛ける温度範囲は人によって異なりますが、一般的には950~1200℃

      程度です。950℃以前では酸化か中性炎で、1200℃以上では酸化焼成にします。

    c) 釉が熔け始めるのが950℃近辺からで、釉中の酸素が自由に動ける状態になります。

      1200℃位になると釉の表面はガラス質になり還元を掛けても、釉中の酸素を取り出す事が

      出来ませんので、還元を掛けても無意味と言われています。 尚、一番温度上昇に適する

      炎は、中性炎と言われています。強還元炎が一番温度上昇が鈍くなります。

    d) 電気窯と違い、燃料を使う窯ではどうしても、若干還元が掛り易いです。

     酸化と還元炎は、空気(酸素)の供給量と燃料の供給量で決まります。空気が多い場合が

     酸性炎となります。一般には、煙突の下にある馬鹿穴を調節し、窯の引きを強くして酸化に

     します。 高温に成るに従い燃料の供給は増えるはずです。それに見合う空気量を増や

     さなければ、還元に傾きます。

    e) 窯の状態を把握する。

     イ) 覗き穴から「ろうそく状」の火が吹き出ている場合は、窯の中の圧力が高く、還元焼成の

      状態になっています。

     ロ) 覗き穴から炎が噴出さず、逆に外から空気が入り込む状態では、窯の圧力は低く、

      酸化状態になっています。

     ハ) バーナーヘッドから炎が見える場合、その色が青い場合には酸化で、赤又は赤味掛かる

      場合には、還元焼成になっています。

     ニ) 順調に昇温している場合は、中性炎の場合が多く、それなりに昇温の場合には、酸化炎

      温度上昇が極端に遅い場合には、強還元の状態と見て良いでしょう。

   ) 窯の冷えも窯焚きと同様に大切な条件です。所定の温度に成った後の処理。

    イ) 一般に色釉の場合には急冷が良いと言われています。特に鉄釉の黒い釉(黒天目など)

     は急冷する事によって発色が良くなると言われています。火を止めてダンパーを全開にして、

     煙突の引きを強くし、煙突からの排熱を早くします。但し、窯の扉を少しでも開ける事は厳禁

     です。

    ロ) 結晶釉と呼ばれる釉では、徐冷にする事で結晶の成長を促し、綺麗な結晶になります。

     窯の冷え具合は、窯の壁の厚みに比例して遅くなります。結晶釉の場合には、壁の薄い窯は

     早く冷えますので、加熱しながら温度を下げる事に成ります。壁の厚い窯でも同じ様にした

     方が、良い結晶が析出します。徐冷する方法として、複数のバーナーがある場合には、何本

     かの火を止める。又はガス等の燃料の供給量を減らす(ガス圧を下げる)等、窯の種類や、

     窯を焚く人によって違います。又、徐冷中は煙突の引きを弱くし排熱を押さえます。

     徐冷の温度範囲は、釉の種類によって若干差がありますが、一般的には1100度程度で

     盛んに結晶化が進むと言われ、1050℃程度まで徐冷すれば良しい様です。

以下次回に続きます。

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