わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

質問35 石灰釉での呉須の流れ

2018-11-30 17:54:54 | 質問、問い合わせ、相談事
井上清志様より以下のご質問を頂戴しました。

◎ 石灰釉での呉須の流れ

以前に別件で質問させて頂いた者です。呉須やベンガラの絵付けが丸二の石灰透明釉を掛けて

本焼きすると薄くなったり、にじんでしまったりする事が有ります。

流れたり流れなかったり、この違いは何なのでしょうか。

石灰の入ってない透明釉は有りますか。


◎ 明窓窯より

1) 石灰の入ってない透明釉には、灰系透明釉が市販されています。

 主に土灰が多いのですが、その他の灰が入っている釉もあります。

 土灰系透明釉では、若干黄色味を帯びる場合もあります。

 天然物の灰は、釉の色がバラツク事が多いですので、合成物が使われている事が多いです

 尚、ご質問の原因は石灰透明釉の為以外の要素が多いと思われます。

2) 呉須や弁柄の絵付けが、透明釉を掛けて本焼きすると薄くなったり、にじんむ原因は

 幾つか考えられます。 

 ① 下絵具である呉須や弁柄が、素地にしっかり定着していない為。

  基本的には下絵具は、素地に載ったほこり(埃)と同じす。即ち釉を弾く要素になります

  その為絵具上の釉が、薄くなったり、にじんだり、流れ落ちる可能性が増します。

  それ故、しっかり定着させ移動しない様にする必要があります。又当然ですが絵具が濃い

  程、絵具を塗る範囲が広い程(面状に塗ると危険性が増す)、埃(絵具)が多くなり問題

  が発生します。

  絵具を素地に定着させる方法に、昔より呉須にお茶(緑茶)を入れ方法があります。

  お茶に含まれるタンニンを利用し、発色と接着を良くする働きがあります。

  現在では主にCMC(化学のり)を少量添加します。

  注: CMCは粉末状で市販されています。そのまま添加すると、ダマ(塊)が出来てし

   まいますので、お湯に溶かしてから、その液を添加する事をお勧めします。

 ② 釉の定着を強くする。

  釉を素地に掛ける際、しっかり素地に密着する事で、釉の定着を強くさせる事ができます

  即ち、釉に上記のCMCを0.3~0.5%程度添加すると接着効果出来て密着し易いです。
  
  更に、釉を厚く塗ると、流れやにじみが出易いですので、濃度にも注意して下さい。

  特に透明釉を厚く掛けると、透明度が落ちますので、ある程度判断できます。

  老婆心ですが、施釉する際素地はしっかり乾燥されていますか?。

  「乾燥むら」があると、釉の載りにむらが出来、釉に濃淡が出来てしまいます。

 ③ 釉の流れ易さは、窯の温度に左右されます。

  ⅰ)温度の高い程、釉は流れ易くなります。窯の温度は他の作品との関係で、低く出来

   ない場合は、窯詰めの際、比較的低い温度の位置に置くか、炎や熱が直接当たらい位置

   に絵付け面を向ける事です。

  ⅱ) ねらし(最高温度で引っ張る事)時間が長ければ当然、釉は流れ易くなります。

   技術書を読むと、30~1時間以上必要と書かれている場合が多いのですが、特別釉を

   平滑にするならば必要な時間ですが、一般的には最低10分程度で良い場合が多いです  

 ④ 釉を調整し流れ難く改良する。

  但し、市販の釉を用いている様ですので、なるべく釉はいじくらない方がベターと思われ

  ます。

尚、井上様の窯がどの様な物(電気、ガス、灯油、容積等)なのか分かりませんので、窯焚き

 の方法で処理する場合は、試行錯誤が必要かも知れません。

以上参考にして頂ければ幸いです。

不明な点が有りしたら、再度お問い合わせください。
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手捻り(ひねり)14 細工物3

2018-11-22 15:15:36 | 手捻り陶芸
手捻り陶芸の中に、細工物と呼ばれる分野があります。

主に人形や動物等の造形物が多いのですが、銅像などを造る際に粘土で原型を作る彫塑

(ちょうそ)もあります。

手捻りで大切な事は、粘土が作業がし易い程度の硬さがある事で、柔らか過ぎり、固過ぎたり

しない事です。特に作業途中で固さが変化しない様にします。

具体的には、まだ使用しいない粘土には濡れタオルを掛けたり、制作途中で休憩を入れる

場合には、乾燥が進み過ぎない様に何らかの対処が必要です。

手捻りでの作品の作り方は、縄文土器時代から大きく変化をしていません。それ故特別な用具

を必要とせず、身近な物を利用しています。又ある程度の技術を必要とする作品もありますが

ほとんどは、上手下手に捕らわれなければ、どなたでも取り掛かる事ができます。

陶器で作る細工物には、掌にのる程度の小さな物から、高さ数十㎝程の作品があります。

当然その作り方も違います。

1) 小物の場合。

 ① 焼き物ですので、手捻りだけでなく、作品の肉厚が大切です。

  轆轤の場合では、肉薄に作る事も可能ですが、手捻りではある程度の肉厚が必要になりま

  す。但し、作品の大きさにもよりますが、一般的には5~8mm程度が多いです。

  この程度の肉厚であれば、極端に柔らかい粘土でない限り、作業もし易いですし、出来上

  がった作品も極端に重たくありません。

 ② 中空(内側が空洞)の動物や置物の様な小さな物は、左右に分割した中空の部品を貼り

   合わせる事で、割合簡単に作る事が出来ます。但し注意点は貼り合わせる部分が完全に

   一致させる事と丁寧に接着し、窯の中で爆発しない様に、一部空気穴を開けておく必要

   があります。又接着部分を他の柔らかい粘土で包み込み、補強する事もあります。

   一枚のタタラから立体的な形にする事も出来ます。勿論展開図を描く必要があり、慣れ

   ない方は、描くのが難しいかも知れませんが、ラフにでも描ければ、それをタタラに載

   せ展開図の通り切り出せば、何とか所定の形にする事もできます。更に不具合が生じた

   ら現物合わせで調整する事も可能です。

   特に左右対称の作品でタタラ(板)を加工して作る際には、半分の型紙を作りそれを

   裏表に使えば容易に形造る事が出来ます。

 ③ 手のひらに載る程度の小物であれれば、真ん丸又は棒状の粘土から好みの形に、捻り出

   す事も可能です。即ち、指三本(親、人指、中)で粘土の一端を、適度の量を引き出し

   好みの形にします。竹へら等があるとより細かい所も形作る事ができます。

   場合によっては土を盛る(加える)事もありますが、接着面が弱くなりますので、なる

   べく一塊から作る事をお勧めします。肉厚の部分は乾燥が遅くなり、空気が入っている

   恐れもありますので、肉抜きをしておけばより安心です。ドリルの刃等で底など見えな

   い場所に適度の穴を開ければより安心です。

 ④ オープン粘土で小物を作る。

  陶芸で使用する粘土ではやや困難ですが、市販されているカラーのオーブン粘土(オー

  ブンで焼ける手軽な粘土)を用いれば、施釉せずに色を付ける事が出来ます。

  但しあくまでも実用的ではなく、装飾として使う事になります。

  この粘土は陶芸用の粘土より若干「ひび」が入り易いですが、指で撫ぜれば容易に消す事

  ができます。更に乾燥と焼成で約10%程度収縮します。

  尚、制作方法は陶芸用の粘土と同じで、接着にもドベを用います。

  オーブンでの焼成の仕方。160~180℃で40~60分。焼きむらに注意、アルミホイルを敷

  き複数個を焼成する時には、適度の間隔をとり、熱が作品に均等に当たる様にする。

以下次回に続きます。
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