わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

造る38(酒器14、徳利を作る6)

2013-02-28 22:10:24 | 陶芸入門(初級、中級編)

4) 手捻りで徳利を作る。

 ④ タタラつくり2。

   タタラ作りは、塊作りや紐作りよりも容易に大きな作品や、背の高い作品を作る事が出来る

   利点が有ります。更に肉厚を均等に出来る為、比較的軽量に作れます。

   但し、タタラ作りにも欠点があります。

   ) タタラを若干乾燥させなければ、自立出来ない事で、乾燥し過ぎると加工がし難くなります。

   ) タタラで円形にした場合、直径を大きくすると「ひび」が入り易くなります。それ故、径を広げる

     量は少ししか出来ません。径を細める事は広げる事より比較的容易ですが、それでも限界が

     有ります。

    ) タタラ作りでは、必ず何処かに繋ぎ目が生じます。土同士が軟らかい場合には、水のみで

       繋げる事も可能ですが、乾燥が進むに従い、「ドベ(泥)」で接着する事に成り、補強を

       土紐でタタラの両側(内外)に行いますが、手の届かない場合は片側のみと成ります。

       この繋ぎ目部分は剥がれ易く、更には他の場所より乾燥や焼成などで変形し易いですし

       強度的にも、若干弱くなりがちです。

  ◎ 比較的背の高い徳利を作る。

     高さが出来上がりで、20cm以上の徳利となると手捻りでは意外と大変ですが、タタラを筒に

     巻いて作る方法ならば、割合容易に作る事が出来ます。

    a) タタラの厚みは5~7mm程度が最適です。(作品の大きさや高さに応じて厚みを変化させ

       ます。)

    b) 徳利の最大径に合わせた筒を用意します。(広げる事が苦手の為です。)

       適当な筒が無い場合には、ガラスビンなを使います。筒には紙を巻いて、土が筒に

       くっつくのを防ぎます。

    c) タタラを筒に一回りする幅と、必要な高さを切出します。

    d) タタラを筒に巻きつけます。径が大きい時には、日本手拭(てぬぐい)の上にタタラを載せ、

      手拭ごと筒に巻きつければ、指跡も着けなくてすみ、巻きつけ易いです。

      巻き付けたら、繋ぎ目を圧着させて、直ぐに垂直に立てる事が可能です。

    e) 繋ぎ合わせ目に縦線が入りますので、手の指を使い外側の繋ぎ目を消します。

       たぶん繋ぎ目は凸凹が生じるはすです。この凸凹を消すには、平らな台の上にやや濡ら

       した布を皺の無い様に伸ばし、その上で繋ぎ目が真下に来る様に筒を横にし、数回前後に

       転がします。こうすると繋ぎ目を目立たなくさせる事が出来ます。

    f) 底になる部分の土を切り出します。筒に巻い土の径より若干大きく取ります。

      水を底の土の周囲に筆で濡らし、筒を載せます。底板が大きいですのではみ出します。

      このはみ出した土を下から上に、竹ヘラでなすり上げる様にして接着させます。

      竹ヘラの跡が残りますので、皮を使い綺麗に仕上げます。

    g) 筒を抜きます。但し筒に巻いた紙は、しばらくの間そのままの状態にしておきます。

       急いで紙を取り除くと、形が歪む事があります。紙一枚の効果は抜群に良いです。

    h) 紙を簡単に取り除く方法。

      底を着けた筒を手轆轤上に載せ、紙の上部の一端を持ち轆轤を回転すると、紙はくるくると

      周りながら筒から離れます。

    i) 内側にも貼り合せた繋ぎ目の線が入りますが、手が届く範囲又は、竹ベラで届く範囲内と

      して、無理して底までで繋ぎ目を取り除く必要は有りません。

    j) 肩から首に掛けて細くします。土を摘みながら徐々に細くし、急激に細くしない事です。

    k) 注ぎ口は首より上の土を使い広げて形作る事も可能ですが、むしろ別の土でドーナツ状の

       土を作り、接着した方が上手くいきます。滑らかに成る様に指や皮で拭き仕上げます。

    l) 底の径を細くして胴部を丸くする。

      直線的な場合には底の径を変更する必要もありませんが、胴部を丸く張り出す形の徳利

      では、底を絞り丸味を出します。但し絞り過ぎると、底板の中央が盛り上がりますので、

      内側から棒などで押し下げ、平らにします。

    m) 高台を付ける場合には、付け高台にした方が良いでしょう。

   タタラで作る場合、素焼き前では綺麗に平滑になっている繋ぎ目も、素焼き、本焼きと進む内に、

   目立つ様に成ります。これは、土の記憶性の為で、繋ぎ目を圧着し密度を増した結果、素焼きや

   本焼きで、圧着を開放する働きが生じ、その部分が若干盛り上がる為です。

以下次回(杯、盃、ぐい吞、ジョッキ類を作る。)に続きます。

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造る37(酒器13、徳利を作る5)

2013-02-25 21:48:01 | 陶芸入門(初級、中級編)

4) 手捻りで徳利を作る。

 ② 塊作りの方法2。

   一つの塊(かたまり)から一つの作品を作る事が基本に成りますが、場合によっては塊を分割

   して作品に仕上げる事もあります。特に背の高い作品や、一度に作ると形が崩れる様な時には、

   作品の下部を作り、乾燥後にその上に積む方法が取られます。

  ) 肩の張った徳利を作る場合。

    なだらかに首まで細くなる形ですと、一度に作る事が出来ますが、極端に肩が張っている形では

    首や注ぎ口をそのまま積み上げると、確実に中央に落ち込みます。それ故、下部を乾燥させて

    強度を持たせてからその上に載せます。その際の方法として次の方法があります。

   a) 紐を巻いて載せる方法。

     乾燥させた下部に土紐をやや内側にして積み上げ、繋ぎの線が消える様に指でなすり付け

     ます。紐を数段巻き上げたら、肉厚が均一に成る様に上に伸ばし、徐々に径を細くし、肩が

     張った形にします。 この場合でも、首以上を付けると落ちや易くなりますので、若干乾燥

     させてから、紐を巻いて首から上を作ります。 その際、下に落ちない様に、内側から指で

     支える必要があります。    

  b) 別の場所で作った上部を接着する方法。

      肩から上の形を塊作りで成形し、乾燥後に「ドベ」を用いて接着させます。

      接着面を良く押し付け剥がれ無い様にします。特に上部の形が水平に近い場合には、

      この方法が有効です。

 ③ タタラ作り1。

    沖縄の焼酎泡盛を入れる抱瓶(だちびん)を作る。

    同じ形を量産する場合には、石膏型や土型を使いますが、単品の作品ならば、型を使わずに

    作る方が簡単です。

   ) 厚さ5mm程度のタタラ(粘土板)を作ります。同じ形の底と天板それに内側面(凹面)と

      外側面(凸面)の計4枚のタタラが必要ですので、一度に土取りが可能な大きさが欲しいです

      勿論、個々のパーツを独立したタタラから作る事も可能です。

   ) 抱瓶の底はベタ高台に成っています。

      側面の土を湾曲し独立して立てる程度に乾燥させてから、組み立てます。

   ) 底に成るタタラを下にして、内側、外側の側面のタタラを立てて、底に貼り付けて行きます。

      接着面には、針や櫛目を使い細かい傷を着け、更に同じ土で作った「ドベ」を両方に塗り

      強く圧着して、貼り付けます。

   ) 接着面の内側に細い紐土で補強します。

      但し、手が入ら無くなる前に、片方の補強をしておきます。両側を接着してしまうと、手が

      入らなくなりますので、「竹ヘラ」などを使います。

   ) 天板は他のタタラ以上に乾燥させ、下に垂れ下がらない様にする必要があります。

       天板も「ドベ」で本体に接着し、蓋をした様にします。上部より叩き板で叩いて接着を強固に

       します。

   ) 酒や水を入れる口を作る。

       天板の中央を真ん丸にくり貫く為、手轆轤の中心に据えたり、コンパスを使って真円を

       描き、針やカッターで丸く切り取ります。

    ) 土紐を円の上に貼り付け土を上に伸ばし、口を成形します。

       口の部分は電動轆轤で挽いて成形し、その後取り付ける方法もあります。

    ) 抱瓶を紐で吊り下げる取っ手部分を、三日月形の両先端の中段に取り付けます。

       乾燥後に紐を通す穴をあけますが、穴の端面をなだらかにします。この部分が雑ですと、

      紐が切れ易くなります。(角を無くす事です)

    ) 注ぎ口を作り天板の端に接着し、綺麗に仕上げます。

       注ぎ口は、棒に土を巻きつけ、円錐形に作ります。勿論轆轤挽きで作る事も可能です。

   ・ 抱瓶は酒器として使用しますが、花器や置物としても使用できます。特に外側には魚文や

     海老文などが線彫りされ、下絵付けされた作品が多い様です。

   ・ 特に人間国宝であった、故金城次郎氏の抱瓶やぐい呑みの作品は、泡盛の愛飲家にとっては

     垂涎の的と成っています。

    尚、抱瓶の大きさには色々ありますが、高さ:15.5、横:18.5、奥行き:8cm程度の物が多い

     様です。

 ④ タタラつくり2。

以下次回に続きます。   

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造る36(酒器12、徳利を作る4)

2013-02-24 16:36:31 | 陶芸入門(初級、中級編)

4) 手捻りで徳利を作る。

  轆轤で作るよりも肉厚に成り易いですが、轆轤で作るのと遜色ない徳利を作る事が出来ます。

  作り方として、円形の物では塊作り(玉作り)と、紐作りの方法があり、抱瓶の様な異形の物は、

  タタラ(板)作りとなります。

  ① 塊作り(玉作り)の方法1。

   ) 良く菊練りした土を一つの塊(かたまり)にします。使う土の量は出来上がりの重さの、およそ

      2倍程度です。

   ) 手回し轆轤の中央に土を置き、剥がれ無い様に、土を叩き轆轤面に密着させます。

      土の中心に親指で穴を開け、轆轤をゆっくり回転させながら、穴を広げ底まで堀進みます。

      底の厚み(1cm程度)を確認後、滑らかな底を作ります。その際、土を下に押し付けて土を

      締めると同時に、両手の小指で外側の底の付け根を軽く押し、中心に寄せて土を締めます。

      この作業は、土を上に伸ばすと上部の重みで、底の形が歪む事を予防します。

    ) 土を上に伸ばす。両手の親指と他の4本の指を向かい合わせて、土を摘む様にして薄く

      伸ばします。親指は内側でも外側でもどちらでも良いです。注意点として、

     a) 土が薄くなると、径が広がりますので、広がらない様に土を内側に締める様にします。

     b) 土は底から薄く伸ばします。上から行うと背が高くなるに従い、指で摘めなくなります。

     c) 背の高い作品では、一気に伸ばすと、下部が変形し上に伸びる事が出来ません。

       その場合には、下部をある程度乾燥させて強度を持たせる様にします。但しこれから

       伸ばす上部の土は乾燥させない様に、濡れたタオルなどを掛けておきます。

       尚、乾き過ぎた場合には、濡れたスポンジで軽く濡らします。

    ) 胴をやや膨らませてから、次第に径を細くして首を作ります。

       細い「柄コテ」を使い、胴を少しずつ膨らませます。但し轆轤挽きより肉が厚く、乾燥の

       度合いも進んでいますので、ゆっくり、且つ力を入れる必要があります。膨らませ事により

       表面に「ひび割れ」が発生する場合がありますが、次の工程で「ひび」を消す事ができます  

       ので、小さな「ひび割れ」は、心配する必要はありません。

    ) この段階では、作品の高さに差があるのが普通ですので、弓などを使い上部の高さを

       揃えて切ます。

    ) 「彫塑ヘラ」を使って、表面をなだらかにし、表面の凸凹や指跡を消します。

       ヘラの内側に指を当て、形が変わらない様にします。更に、ヘラに水を含ませ土の表面を

       撫でる様に移動させます。この際、土を締める事も忘れない事です。

       一通り撫で終わりましたら、濡れた皮で整えます。

    ) 一気に注ぎ口まで成形する方法もありますが、注ぎ口を後から付け、形を作る方が容易

       です。即ち、土で細い(又はやや太い)紐を作り首の真横に接着し、ヘラで押さえます。

       (口を太く丈夫にするには、やや太い紐を使います。)
 
       口の内側には段差が生じ無い様に、滑らかに仕上げます。又口が凸凹している場合には
 
       針や弓で形を整える必要があります。最後になめし皮で口縁を拭き、更に底の外側の
 
       土を約45度の角度で大胆に切り取り、切糸で轆轤より切話して完了です。
 
       この部分の土を除去しないと、乾燥時に「ひび」が入り易くなりますので、是非とも必要な
 
       作業です。
 
    ) 指で押しても変形しない程度に乾燥させたら、「掻きヘラ」等を使い、肉厚を薄くする為に、
 
       腰、胴、首などの土を削り取ります。轆轤の場合より多く削る事に成ります。
 
       その後、「シッタ」を使い底を削ります。
 
  ② 塊作りの方法2。
 
以下次回に続きます。
 
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造る35(酒器11、徳利を作る3)

2013-02-23 22:33:37 | 陶芸入門(初級、中級編)

2) 徳利を作る。

 ④ コテの種類と使い方。

   コテを使わずに成形する事も可能ですが、コテを使う事により、土を締めながら表面を綺麗に  

   仕上げる事が出来ます。又、同じ形の「揃い物」を作る際には、無くては成らない物です。

   更に、コテを使う事により、効率的に轆轤作業が出来る様にも成ります。

  ) コテの形は内面の形に対応し、使い分ける事に成ります。

    碗形の作品には、丸い形のコテを使い、直線的で筒型の器には、角のあるコテを使用します。

    皿の様に平たい物には、やや湾曲した平たいコテになり、徳利などの手が入らない「袋物」の

    場合は、柄の長い「柄コテ」を使います。

  ) コテを当てる目的

    形を作る事、表面をなめらかにする事、土を締める事です。この3点をコテを当てる事により 

    同時に行う事が出来ます。器の内側に当てて使いますので、「内コテ」とも呼ばれます。

  ) 成形する場所に応じて、底、見込み、腰、胴、口と下から順にコテを当てます。

     コテの外側から指先(指の腹)で受けて使用します。

     土を締める場合には、外側の指に力を入れ、膨らませる場合には、コテに力を入れ外側は

     押された分だけ、外に逃げる様にします。 

  ) コテはゆっくり動かす事。

     コテをしっかり持ち、動かない様に固定します。土に押し付ける様にして、一回転以上同じ

     場所から動かさない事です。 コテを早く動かすと、内外に「轆轤目」が生じます。

  ) コテは作品の形に合わせて自作する事を勧めます。

     汎用性のある木製のコテは市販されていますが、作品に応じて大小個別のコテを用意すると

     便利です。

  ⑤ 他の方法による徳利の造り方。

     前にもお話していますが、轆轤の技法(挽き方)には統一した方法は存在しません。

     それ故、独自の造り方をする人もいます。

   ) 最大径の筒を作ってから、徳利の形に成形する方法。

     一般には、胴を膨らませて形を作りますが、この方法は、径を細くしながら形作る方法です。

     徳利の形のコテを使い、コテを上下や横方向に動かす事なく、外側からの指の圧力で、土を

     締めながら、径を細くする方法です。当然、コテの長さは徳利の高さより長くなります。

     この利点は、常に土を締める方向に力が働き、肉厚に成った土を上部に逃がしながら成形

     出来る点です。但し、徳利の形が変われば、当然コテの形は変わります。

   ) 上下を別に作りくっ付ける方法。

     愛知県常滑市に生まれ、岐阜県に在住する鯉江良二(こいえりょうじ)氏は、酒器造りを得意と

     する作家です。氏は独特の方法で徳利を作っていますので、参考までに紹介します。

     a) 亀板に石膏板を使います。これは、底の乾燥を早くする為との事です。

     b) 石膏板に徳利の下部を成形し、轆轤上より亀板ごと取り外します。

     c) 轆轤上で徳利の上部を成形し、轆轤より切り離します。

     d) 石膏板を轆轤の中心に置き、今挽いた上部を載せて、轆轤を回転させながら、繋ぎ目を

        指やコテでしっかり押さえ形を整えます。

     e) 「柄コテ」で土を伸ばしながら、全体の形を整え、口をなめし皮で拭いて仕上げます。

     f) 更に高台を付け高台にするのも、鯉江氏の特徴です。

     g) 以上の工程で成形すれば、作品を削る必要は少ないそうです。

    「私の成形は削るのではなく、どんどんプラスして行く方法です。」と述べています。

以下次回に続きます。

 

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造る34(酒器10、徳利を作る2)

2013-02-22 22:33:40 | 陶芸入門(初級、中級編)

2) 徳利を作る。

 ③ 轆轤挽きの方法

  重たい徳利は使いにくく、軽い徳利は酒が冷め易く、適度の厚みのある徳利にするのが、

  徳利作りの要点です。

 ) 背の高い徳利の場合、やや硬めの粘土を使うと、土の「へたり」も少なく、轆轤挽きが容易です

 ) 菊練した土を土殺しした後、高台を仕上がり寸法よりやや大きく取ります。

 ) 土を両手で包み込む様にして、土の中心に両手の親指を差込み、穴を掘ります。

    その際に、水切れに成らない様に、手で水をすくい、穴に水を流し込みます。

 ) 親指が底に達したら、底の土を締めながら底を広げ、所定の大きさにします。

    外形の底が丸い場合には、底を広げ過ぎない事です。

 ) 土の振れがない事と、周囲の肉厚の差が無い事を確認してから、荒伸しに入ります。

    口が広がらない様に、時々両手で押さえ、筒状に挽き上げます。

    挽き上げる際に、土を締める目的で「柄コテ」を使う場合もあります。

 ) 土を伸ばし終えたら、形作りに入ります。その際、口を細くしてから、胴を膨らませる方法と、

    胴を膨らませてから、口を細くする方法があります。

    a) 先に口を細くする方法: 利点として、口が細い程、作品の揺れ(振れ)が少ない事です。

       形作りの際、胴を膨らませる事は、揺れを発生させる要因に成りますので、これを防ぐ事が

       出来ます。但し、手が入りませんので、「柄コテ」での作業と成ります。このコテは土締めの

       コテとは形が異なります。即ち、先端部分に突起が付いています。

    b) 先に胴を膨らませる方法: 利点として、膨らませる際に手で自由に行える事です。

 ) 轆轤上の土は、径を大きくした場合(広げる)と小さくした場合(狭める)では、単に反対の

    現象を起こす訳ではありません。

    a) 径を大きくした場合。轆轤上で制作している時に、径を広げたとしても、肉厚はほとんど

       変化しません。 但し、高さは広げる量に比例して、確実に低くなります。

    b) 径を小さくした場合には、細くした量に比例して、肉厚が厚くなります。但し高さは若干

       高くなるのみです。但し、肉厚が厚くなると、土に拠れが発生します。これを防ぐ為には、

       厚くなった部分の土を挽き上げて、薄くする必要があります。薄くしながら、徐々に細く

       します。結果的には、背が高くなります。

       尚、径を細くする為には、ある程度の肉厚が必要で、薄い肉厚では中々細くなりませんので

       薄く成り過ぎない事です。

     c) 径を細くする方法: 基本的には土を指や掌(てのひら)で包み込み、土の逃げ場を出来る

       だけ少なくする事が重要です。

      イ) 大きな径から徐々に細くして行く方法。十分水で濡らした両手で土を抱え込む様にして

        徐々に細めます。肉が薄い場合には、掌全体ではなく、両手の親指と中指のみを使い

        出来るだけ接触面積を少なくする事です。掌全体を使うと接触面積が増え抵抗が多く

        拠れが発生し易いです。径が多き過ぎる場合には、両手で抱えた二ケ所の間隔の幅を

        同じ様にすると、上手く細くできます。

      ロ) 首の様に細い場合には、太さに応じて、6本指(親、中、人差し指)か4本指(親、人差し

         指)を使います。指は出来るだけ水平の状態で、側面を押すと力を有効に使えます。

         尚、中指は折り曲げ第一関節を使います。径が細くなるに従い、回転速度を早くする

         必要があります。 首の長さも重要です。 計量コップなどで、酒の量を測ってから、

         徳利に酒を注ぐ場合は問題有りませんが、他の器(一升瓶など)から移す場合、

         首が短いと、急に一杯になり口から溢れ出す事にもなります。   

  ) 「柄コテ」で膨らませる。木製の「柄コテ」 は使用前に十分水で濡らせておきます。

     尚、水切れを防ぎたい時や、土がやや乾燥している場合には、コテの突起部分に濡れた

     小布を巻いて使用する場合もあります。但し、布は轆轤の回転で解けない方向に巻きます。

     外側の手(指)は、コテの突起部のやや上に置き、コテを横に張り出す様に、又は掬い上げる

     様にして、下から上に移動させて膨らませます。コテに力を入れる場合には、鷲掴みに持ち、

     力が必要でない場合には、3~4本の指でコテを持ちます。

  ) 口を作る: 杯に酒を注ぎ易くする為、端反りの形が一般的です。

      更に、注ぎ口を一ヶ所設けるかも重要です。設けない場合にはどの方向からも注ぐ事が可能

      になります。特定の場所に注ぎ口を設けると、徳利の正面(又は裏正面)が自動的に決り、

      徳利として利用する事に成ります。設けない場合には、一輪挿しとして使用する事も可能に

      成ります。口縁をやや肉厚にすると、落ち着いた重量感のある作品に成ります。

  ) 最後に口を皮で締めて綺麗に仕上げます。更に、底のに溜まっている水を柄の付いた

      スポンジなどで吸い取ります。この作業を怠ると底割れを起こします。

      切糸で下の土から切り離し、轆轤上より取り上げます。

      以上で轆轤作業は終わりになります。乾燥後、「シッタ」を使って底を削り出します。

 ④ コテの種類と使い方。

以下次回に続きます。

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造る33(酒器9、徳利を作る1)

2013-02-20 17:41:20 | 陶芸入門(初級、中級編)

酒器の前置きが長くなってしまいましたが、本回より作品作りに入ります。

1) 良い徳利の条件。

 ① 清潔である事。食品でもある酒を入れる器は、清潔である事が第一条件です。

    新品の作品ならば、問題ありませんが、長く使っているとカビなどが発生する場合もあります。

    徳利は一輪挿しと同じ様な形をしている為、一輪挿しとしても使用可能ですが、一輪挿しを

    徳利に転用する際には、良く洗い清潔にする必要があります。

    燗徳利の使用は一時的なものですが、花瓶として使う場合は1週間程度水を入れて置く事も

    多く、水止め防止剤を使う事もあります。更に水にカビなどの微生物が繁殖し易いですので、

    転用には注意が必要です。

 ② 使い易い事。掌(てのひら)にすっぽり収まる大きさで持ち易く、傾ければ滑らかに酒が流れ出て、

    出過ぎない事と、適度に口縁が反り返り、盃に注ぎ易い事です。

    この様な徳利は形も良く、見た目も美しい物が多いです。

    徳利の胴部分を片手で持つ際、手の大きさにもよりますが、径が7~10cm程度が最適です

    それ以上になると、両手で持つ(客に注ぐ場合)か首の部分を持つ(独酌の場合)事に成ります   

 ③ 良く使い込んだ物も捨てがたい魅力に成ります。使い込めば使い込む程、風格と味が出て

    きます。 特に土物(陶器)の備前焼や信楽焼きでは、長年の使用により酒の艶が出てきます。

    特に焼酎の様にアルコール濃度の高い場合、徳利を洗わずに使い続ける場合があります。

    又、李朝の白磁や粉引きなども、雨漏り状態の景色が現れ、深い趣になります。

 ④ 徳利の文様や肌合いも大切です。料理や季節にあった徳利ならば、一段と料理と酒が美味しく

    なります。

 ⑤ 安価な事も重要です。晩酌の様に毎日使い、何時も手近に置いておく為には、壊れても

    良いとの覚悟が出来る、ある程度の安価な徳利でなければ成りません。

    数十万もする作品では、「ひやひや」しながら酒を飲む事に成りますので、余り実用とは言え

    ません。徳利は使わずに、美術品として眺めるだけでは、本来の役目を果たしていない事に

    なります。

2) 徳利を作る。

  ① 作り方には、轆轤と手捻りがあります。容量が一合(180mℓ)や二合では轆轤挽きの徳利が

    多く、容量が大いい角瓶や、沖縄の抱瓶などの変形した徳利は手捻りに成ります。

  ② 徳利を轆轤挽きで作る。

   ) 轆轤修行で茶碗や鉢などの背の低い作品が作れる様になると、次はより技術的に難しい、

      背の高い作品に挑戦する事に成ります。更に徳利は首を細くする必要が生じます。

      轆轤は常に遠心力が働き、口径は広げ易く狭くするには、それなりのテクニックが必要に

      成ります。

   ) 徳利や壷など口の狭い作品を袋物(ふくろもの)と呼びます。

      口径が狭いと、手が入らなくなる為、形を膨らませ形を整える際に、「柄コテ」を使う必要が  

      生じます。このコテも使い慣れる必要があります。

   ) 徳利を作ろうとする際、容器の大きさと、容量との関係が問題に成ります。

      円筒径の場合には、ある程度予測が可能ですが、胴部が丸い場合や、船徳利の様に

      下部が広く重たく、三角形の場合には予測が出来難いです。

      更に、容器の内側の寸法が重要で、外側の寸法ではありません。即ち肉厚が関係します。

      轆轤に慣れた方では、肉薄に轆轤挽き出来ますが、慣れていない方は、どうしても肉厚く

      成ります。その分を考慮して作品の大きさを決めます。

     ・ 作品の大きさと容量の例: 当然胴部や肩部の脹らみ具合で容量は大きく変化しますし、

       底が上げ底の場合でも変わります。それ故あくまで参考値です。

       一合徳利: 最大外径: 7cm   高さ: 12.5cm

                     : 7.5cm    : 12.5cm

                     : 8cm      : 10cm

       一合半徳利:     : 8.5cm    : 11.5cm

       二合徳利:       : 8.5cm    : 14cm 

       二合半分徳利:    : 10cm     : 14.5cm

       三合徳利:       : 9cm      : 17cm

                     : 10cm     : 14cm 

       以上参考までに記しました。(一合は180mℓ です。) 

       尚、幕末から明治に掛けての高さは、18~22cmの徳利の写真を多く見掛けます。

       この大きさから判断すると、4~5合の容量があったと思われます。

  ③ 轆轤挽きの方法

以下次回に続きます。

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造る32(酒器8、酒器の種類2)

2013-02-18 17:03:40 | 陶芸入門(初級、中級編)

3) 徳利とお銚子。

 ③ 徳利やお銚子の中には、その地方独自の特異な形の物も多くあります。

   特に、焼酎を入れる器には多く見られる現象です。  

  ) 抱瓶(だちびん): 琉球王朝時代より使われている、泡盛を入れる携帯用の酒器です。

     安定して腰に括り付ける様に、三日月形をしており、上部に入れ口が、三日月の先端部分

     には、注ぎ口があり、紐を吊るす取り付け部が2箇所あります。

     凸部の表面には魚や海老などの絵が描かれているのが普通です。

  ) 嘉瓶(ゆしびん): 祝い事の際の贈答用の酒器です。

     琉球時代の上流階級では、泡盛を詰めてこの瓶を送る風習がありました。

     瓶には、その家の家紋を付けた物もあります。

  ) 角瓶(かくびん): 容量が大きく、大人数の宴会の際に、泡盛を入れる容器として用い

      られていました。 長方形ですので、この様に呼ばれています。

  ) 鬼腕(オニヌティー): 量り売りの泡盛を買う際に、この酒器を持参したとの事です。

     形は、細長い大きな徳利形で、輸出の際ににも利用されていました。

     海賊に襲われた時など、この瓶を投げて対抗したので、この名前が付いたようです。

  ) カラカラ(沖縄、鹿児島): 沖縄で作られ、後に鹿児島に伝えられた低火度の陶器の徳利で、

     火に掛けると割れてしまうそうです。 胴の上部に細い注ぎ口が付いています。 

     高さが低く、安定感のある作りで倒れにくい形になっています。

     カラカラとは「貸せ貸せ」の方言で、余りのも使い易い為、皆が「貸せ貸せ」と言ったのが

     語源との説もあります。

  ) ガラ(熊本): カラカラと同じ経路で伝わったとの事で、縦長よりやや横長と一段と安定感が

     増した形に成っています。胴部には魚の絵などが施されています。

  ) 黒ジョカ、千代香(ちよか): 鹿児島の代表的な酒器で、使えば使う程焼酎の旨みが出る

     器です。平べったい急須の様な形で、上部に蔦などの蔓(つる)で編んだ持ち手があるのが

     特徴です。

    ・ 白ものは経年変化が楽しめ、圧倒的な人気があります。黒もの(黒千代香)は安価ですが、

     丈夫で肌理の細かい黒い肌が特徴です。

    ・ 鳩徳利(宮崎): 横形の徳利で、注ぎ口を鳩の頭に見立てています。小さな尻尾もあり、

     背中には、指で摘める様な突起が付いています。

  ) その他の形

     お神酒(おみき)徳利、片口徳利、船徳利、瓢箪型徳利、ラッキョ徳利、蕪(かぶ)徳利、砧徳利

     ロウソク徳利、傘徳利、臍(へそ)徳利など多彩な形があります。

     特に変わったものに、「エヘン徳利」があります。傾けても直ぐには酒が出ずに、「エヘン」と

     咳払いすると酒が出る仕掛けに成っています。

 ④ 陶磁器の徳利とガラスの徳利。

   熱燗の場合には、陶器の徳利が向いています。磁器やガラス製ですと、熱の伝導が良く、早く

   冷めるます。それ故ガラスの徳利では冷酒向きです。ガラスは無色透明な為、日本酒の琥珀色が

   見える利点もあります。  

4) 杯、盃、猪口(ちょこ)、ぐい呑について。

 ① 酒が自然発生的に造られてから、数千年を得ています。酒は縄文土器の様な器で醸造したと

   しても、これを飲む為には、小さな器に小分けする必要があり、杯(さかずき)が用いられる様に

   なります。最初は掌(てのひら)で掬たかもしれませんが、やがて貝殻や獣角、空の木の実などを

   容器にしたと思われます。

 ② 酒を大きな器より、汲み出す際には、瓢箪を二つ割にして柄杓(ひしゃく)にしたとも、考えられ

   ます。勿論、土器を使っているかも知れません。

   弥生式土器や、土師器(はじき)から、平安鎌倉時代になると、山茶碗なる物が出現し、飲む

   道具として、確立してゆきます。

 ③ 「つき」は物を盛る器をいいます。

   杯、盃(さかずき)は、酒を盛る器(酒杯)を意味します。

   高杯(たかつき)は、高台部分が高く、細長い形の物で馬上杯とも呼ばれています。

   又、杯を猪口と呼ぶ事も有ります。 これは、蕎麦猪口から来た言葉で、蕎麦汁を入れる容器が

   上が広く、下が狭い形に成っていて、杯が同じ様な形をしている事に由来しています。

   蕎麦猪口の中で、最も小振りな器を選んでいます。

  ④ ぐい呑: 杯の中で今最も人気のある焼き物です。多くの陶芸作家が手掛けています。

   抹茶茶碗が個性的で有る様に、ぐい呑も個性的な一品作品になっています。

   「ぐい呑」は改まった席よりも、砕けた場所や、独酌に向いています。

   他の杯よりもやや大振りですが、小さなものですので、数多く集める人も多い焼き物です。

5) ビヤマグ、ジョッキについて。

   ビールを飲む際には、ガラスの器を用いる事が一般的でしたが、近年陶器製の器が使われる

   様になります。

   容量は中ジョッキ程度で、ガラスよりも軽いものが多いです。陶器の口触りの良さと、ビールの

   泡も肌理細かくなり、保冷時間も長くなる利点もあります。

   更に、産地によって彩りも違い、器を見る楽しみもあります。

以下次回に続きます。  

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ラスターでパターンを描く方法の問い合せ

2013-02-17 22:23:12 | 質問、問い合わせ、相談事

鳥羽 直美様より(2013、2/15)

陶磁器の絵付け(ラスター彩)1」のコメントと質問を頂ましたので、転載います。

情報をお持ちの方は、当記事のコメント欄に記入して下さい。

 

ラスターで検索してこちらの ブログに出会えました。

スペインのいわゆるイスパノ モレスクと呼ばれる陶器がとても好きです。

その中にもラ スターを用いたものがありま す。 専門的な知識もなく、ただ好 き!という単純な気持ち

だけでできるものではないとはわ かっています。 が、いろいろ調べてもなかな か思うところにたどり

着けな く、とっかかりも見つけられ ません。

失礼を承知でお尋ねします。 釉薬のように広い範囲にラス ターを施すのではなく、加藤 卓男氏の

ように(畏れ多くも) 白地にラスターでパターンを描いたような作品(ごめんなさい、実際はどのような

技法なのか存じません)を学べる場所をご存じではないでしょうか?

そもそもスペインが好きなので、スペインタイルの講習を 現地で受けた経験とイングレ ースで

イスパノモレスクのパ ターンで絵皿を何枚か描いたことはあります。

ただそれだけの趣味の範囲での経験しかありません。

若くもないので(50代、女性 横浜在住)修行的なことも 難しいかと・・・ カルチャースクールなども

い ろいろ探してはみたのですが 、ある程度初歩から始めて、あまり興味のない課題も順を 追って

いかないといけないよ うですし(やりたいことでし たら集中力、根気はあるつも りです)、

ラスターを釉薬と して取り入れる技法がほとん どのようです。

何かとっかかりになるような ことでも構いませんので、ご 存じのことがありましたら・ ・・

どうかよろしくお願いい たします。

◎ 明窓窯より

   お問い合わせの件は、ラスター釉では無く、ラスター彩の絵の具とその使用法、及び焼成の件と

   お思れます。若し誰かに教授して貰えれば、絵の具の入手と、その使い方及び焼成する事が

   可能に成ると思われます。残念ながら、当方には、その様な人や場所を知りません。

   尚、人間国宝の加藤卓夫氏とラスター彩について、お話します。  

 1) 加藤卓夫氏は、40年の歳月を掛けて、ラスター彩の再興に取り組み、完成させます。

    ラスターとは、強還元焼成により、粒子化した銀、銅、鉄などが薄い皮膜となり金属の様に

    光が複雑に反射する様子を言います。   

 2) ラスター彩の絵の具: 本焼きした作品の上に筆で描く、水溶性の上絵付け用の絵の具です。

   「 この絵の具は、長石を基本にした釉に、銀、銅、鉄などを発色材として加えた物で、発色材を

   焼成する事で、細かい金属になり、更に強い還元を掛ける事により、一層細かい粒子になる

   そうです。その金属の粒子の大きさの差によって、同じ金属でも発色が異なります。」と加藤氏は

   述べています。この絵の具に5%の「煤(すす)」を混ぜて、焼成すると煤だらけに焼き上がり

   ますが、「煤」を丹念に取り除けば、綺麗なラスター彩が現れます。 

   尚、鉄は赤、茶、青、黒など幅広い発色となります。これらの絵の具の開発には、10年の

   試行錯誤が有ったそうです。

 3) 焼成:  薪とガスを併用した「マッフル窯」を使ています。

     加藤氏が調合した錫(すず)白釉は1100℃で、ラスターの具は1000℃弱だそうです。

   この焼成にも40年の苦労がありました。

以上の事より、ラスター用の絵の具が入手可能(市販)であるかどうかは不明ですし、焼成の窯などが

クリアーになる事などを 考えると、加藤氏の様なラスター彩を試みるのは困難かと、私は思います。

尚、読者からの良い情報が有れば、この欄に掲載します。

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造る31(酒器7、酒器の種類1)

2013-02-16 17:29:36 | 陶芸入門(初級、中級編)

作り手(作家)の個性が現れる酒器は、大変人気のある焼き物です。

小さな「ぐい呑」や徳利は、手頃な値段で取引され、複数個買い集めても、かさばらずにすむと言う

利点もあります。何よりも、近年の酒器類は、色々な形態や装飾などバラエティーに富、写真を見る

だけでも楽しめますし、更に、気に入った徳利や「ぐい呑み」、又はビールグラスで飲む酒の味は、

格別の物となります。

1) 酒器の分類

  酒器とは文字通り、酒を入れる器ですがその用途によって幾つかに分類されます。

 ① 酒を醸造する際に仕込みに使用する、木桶や金属製のタンクと甕(かめ)類です。

   但し、ここでは、木製や金属製の話はしません。

 ② 出来上がった酒を貯蔵する甕や壷類。

 ③ 少量の酒を売買する際に、一時的に貯蔵する為の徳利などの器。

    又、携帯用の酒器もあります。

 ④ 燗(かん)徳利に代表される、酒を呑む際に使用する酒器。

 ⑤ 杯、盃(いずれも、さかずき)類や、ビールジョッキ、グラスなど、呑む寸前に使用する器などです

   一般に酒器と呼ばれるのは、④と⑤の器です。陶芸を楽しむひとや、酒器のコレクターと呼ばれる

  人は、この分野の作品を作ったり、集めたりします。

  現代では、ガラス製品も多く、紙パックの容器さえありますが、歴史的には、陶磁器による器が

  一般的でした。それは、特別大きくなければ、容易に作る事が可能であり、比較的安価に手に

  入るからで、陶磁器が酒に対して無害であり、むしろ酒の味を良くする働きがあるからです。

    従来ガラス製品であった洋酒用のグラス類(タンブラー、ワイングラス、ゴブレット、ビールジョッキ

    等)も陶磁器で作られる様になり、違和感無く使われています。

   酒器は酒の種類や、産地によって独特の形状をした器が作られる事も珍しくありません。

  以上の事を念頭に置き、順次話を進めたいと思います。

 2) 酒甕、大甕

   酒や醤油の醸造には、大甕を使う事も多く、901年に制定された「延喜式」によると、備前焼の

   五石の大甕を作れば80日間の賦役が免除される特権を得る事が出来る事が記されています。

   その為、工人達も安定した生活が出来たと言われています。

    注: 延喜式(えんぎしき)とは、平安時代中期に編纂された律令の施行細則です。

  ① 甕と壷との違い

    甕は、口が大きく底の深い陶磁器の容器で、古くは酒、醤油などの醸造や貯蔵用に使われ、

    後世には、水を入れる容器として用いられた焼き物です。

    一般に、甕より口の小さい小形のものを、壷(つぼ)と呼びます。

   ・ 他の定義では、「頸部の径が口径あるいは腹径の2/3以上のものを甕と呼び、2/3未満の

     ものを壺と呼ぶ」そうです。尚、朝鮮の陶器である瓶子(へいじ)も甕の意味です。

  ② 大甕は日本的な旅館や、料亭、蕎麦屋などの入り口に置かれているのを見る事があります。

    傘入れとして実用的に使う事もあります、ほとんどは飾り物ですが、この大甕を見ると落ち

    着いた気分になるものです。釉は族に甕色と呼ばれる茶褐色の釉が掛けられているか、備前焼

    の様に、無釉の焼締め陶器が多いです。

  ③ 前回お話した様に、沖縄の焼酎の泡盛は、甕に入れて長期間寝かせる事により、熟成

     させ、 素焼きの南蛮壷(甕)が使われます。出荷する際には、5升(9000mℓ)入りの甕

     詰めていたとの事です。

3) 徳利と銚子(ちょうし): どちらも酒を注ぐ容器ですが、同じ物として扱われていますが、

    本来は全く別物です。

  ① 徳利は、「朝鮮語の容器=トックル」が徳利になったと言われています。

     丸く胴が膨らみ、首が細くなった陶製の瓶で、酒や醤油、酢などを貯蔵したり、持ち運び用に

     利用した物です。現在は、陶磁器の焼き物ですが、江戸中期頃から、使われはじめたとの事で

     それ以前は、同じ形の金属の錫が、室町時代より使われ、更にその前は、形が異なる鉄製の

     銚子が使われています。

    a) 徳利の種類として、蔵元で酒を貯える為の「大徳利」、酒屋から家庭へ運ぶ「通い徳利」

      (容量は1~2升)、酒を湯煎(ゆせん)で暖める「燗(かん)徳利」、更には携帯用の徳利

      などがあります。

    b) 容量が大きい物は、酒の運搬用に使われていました。

     貧乏徳利: 量り売りの酒を入れる徳利で、円筒形の上部に長めの口をつけた陶製の粗末な

     徳利です。蔵元や酒屋の屋号が呉須(絵付け用絵の具)で描かれたものも ありますので、

     酒を買う人に貸し出したものと思われます。

  ② 銚子とは、長い柄と注ぎ口のついた酒器で、三々九度の際に巫女さんが持つている物です。

     又は、持手 が真上にある急須形をしており、昔は金属製の銚子を使い直火でお燗をして

     いましたが、湯煎(ゆせん)でのお燗のほうが風味が良いと、徳利が普及し、いつしか混同

     される様になります。

4) 杯、盃、猪口、ぐい呑について。

以下次回に続きます。

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造る30(酒器6、酒の歴史6)

2013-02-13 21:33:23 | 陶芸入門(初級、中級編)

6) 焼酎について。

  「地理的表示」について。平成7年より「壱岐(長崎県)」と「球磨(くま、熊本県)」及び

  「琉球(沖縄県)」の3種類の焼酎が、地理的表示する事が国から認められています。

  ・ 「地理的表示」とは、酒類の品質や評判がその原産地に起因すると認められた場合、

    その原産地表示を認めるもので、世界貿易機関加盟国に義務付けられたものです。

    即ち、決められた産地、決められた製法で作られた物のみです。

 ⑥ 麦、芋焼酎と泡盛(あわもり)について

  ) 麦焼酎は麦の香ばしい香りのする、すっきりした辛口の酒です。

     麦焼酎の本場は大分県でしたが、近年鹿児島産の生産量が増え、第一位は鹿児島との事

     です。 多くは、さつまいもの無い時期に生産され、しかも製造元への桶売りが多いようです。

  ) 原料の大麦は、外国産の二条大麦を使います。

    焼酎に向く大麦は、粒が軟らかく殻皮が薄く、削り作業を減らし、麦の本体を出来るだけ

    残せ、更にでんぷん質が豊富で、たんぱく質の少ない麦との事です。

    国内産の麦(ニシノホシ)は、収穫量や、でんぷんの含有量も多く、九州の酒造所で多く使われ

    います。

    注: 二条大麦とは、明治時代にビールの原料として、ヨーロッパから導入した麦で、従来からの

       六条大麦(麦飯や麦味噌の原料)とは異なります。

    ・ 壱岐(いき)は長崎の北側に位置する小島ですが、壱岐焼酎には古い歴史と伝統があり、

     「地理的表示」が認められています。原料の麦に米麹と麦を1:2の割合で用い、壱岐の水で

     で仕込み、蒸留した酒で、すっきりとした辛口の味の焼酎です。

  ) 芋(いも)焼酎について。

     さつまいもの種類は多く約40種類ほどある様ですが、原料と成るのは数種類との事です。

   a) 原料のさつまいもは、「黄金千貫(こがねせんがん)」と呼ばれ、昭和41年に鹿児島県で

     生産される様になった品種で、皮まで白く食用や焼酎用に栽培されています。

     フルティーな香りと甘い味が特徴で、多くの蔵元で使われています。

   b) 近年(平成6年)、新たな品種として、「ジョイホワイト」が酎専用の芋として開発されます。

     蒸しても甘くならず、食用としては不向きですが、でんぷん質が多く、フルーティーな香りが

     し、貯蔵性が良く焼酎に適した芋です。

   c) 芋焼酎は、麦や米に比べて、芋の選別などで、手間が掛かるそうです。

      焼酎造りは自動化されてはいるものの、まだまだ手仕事を多く残しています。

   d) 一次仕込みと二次仕込み

    ・ 一次仕込みは、仕込み用のタンクに、水と麹、焼酎酵母を入れ、25~30℃の温度を保ち

      ながら6~8日かけ、棒で掻き回して「一次もろみ」を造ります。

      麹菌が分解したブドウ糖を栄養にして、焼酎酵母が増殖します。

    ・ 二次仕込みは、「一次もろみ」に蒸した芋と水を加え、良く掻き混ぜて8~10日発酵させ

      ると、「もろみ」は甘い香りを発し、クリーム色に成ります。更に寝かせる事により、

      「二次もろみ」が完成します。  

   e) 蒸留と貯蔵とブレンド。

    ・ 出来た「もろみ」は蒸留されますが、直ぐに出荷せずに、1~3ヶ月間貯蔵され、酒質の

     安定をはかります。この際、貯蔵容器の材質(樽、甕、タンク)や貯蔵場所(涼しい場所)

     によって、焼酎の個性が出るそうです。 尚、「古酒(クース)」と呼ばれる酒は、3年以上

     貯蔵熟成した酒をいいます。

    ・ 芋の場合原酒は37~38度のアルコール濃度です。原酒に他の原酒をブレンドし、更に

      水を加えて、25度前後に仕上げます。

      ブレンドは、その蔵元に相応しい味に成る様に、数種の原酒を混ぜ合わせて調整し、

      一定の味を保たてます。又「もろみ」の段階で、各タンク毎に味や香りが異なるのが

      一般的で、これを平均化する必要があります。

      尚、ブレンダーと呼ばれる人は、各蔵元で作られた味や香りに精通し、舌と嗅覚を鍛えて

      いる人で、常に同じ状態の酒と判断する必要があります。

  ) 泡盛について

      沖縄を代表する焼酎に泡盛があります。

     a) 原料はタイ米(インディカ米)で、黒麹を使います。

       タイ米は麹菌を繁殖し易くしますので、泡盛以外の本格焼酎でも使われています。

       一般的な白麹は気温の高い沖縄では、腐敗する恐れがある為、使用しません。

     b) 全麹仕込み。

       一般に、焼酎は「一次仕込み」と「二次仕込み」の2段階で行いますが、泡盛の場合は

       タイ米、黒麹、焼酎酵母、水を全て加え一度に仕込みます。

       沖縄では気温が高く、開放形の仕込みでは、空気中の雑菌が繁殖しやすく、「もろみ」の

       段階で腐敗する危険が高く、短期間に、一気に仕込みを終れせる必要があるからです。

      ・ 仕込み期間が短い為、出来立ての泡盛は、味や香りに刺激臭が強く、寝かせて熟成

        する必要があります。

     c) 濾過して貯蔵

      水を加えてアルコール濃度(25~43度)を調整し、濾過して陶器の甕(かめ)に3ヶ月

      ほど貯蔵します。 泡盛は、素焼きの南蛮甕に貯蔵されされますが、数年~数十年と

      貯蔵する場合もあります。期間が長いほど、独特の「ガス臭」が消え、まろやかで深みの

      ある味になります。

       注: 南蛮甕(なんばんかめ)とは、琉球王国の時代より使用されている甕で、鉄や

         マンガン等の金属を含んだ土で焼き上げたもので、気孔が多く酒が呼吸し、更に金属が

         触媒になって熟成が程よく出来るどの事です。

  ⑦ 黒糖焼酎と蕎麦焼酎、その他の焼酎

   ) 黒糖焼酎: 黒糖は沖縄や奄美大島などで栽培される、サトウキビの汁を煮詰めて作ります

      但しこの地方で採れる黒糖は上等の為、砂糖や菓子の材料になり、焼酎として使用する

     のは、輸入物との事です。

   a) 黒糖焼酎を造る事が許されているのは、奄美諸島(奄美大島、喜界島、与論島、徳之島、

      沖永良部島)のみです。各島によって、仕込みの水や原料の配合などの差があり、微妙な

      差があるとの事です。

   b) 米麹を使い、甘味とコクのある「すっきりした」飲み口の酒です。

      燗(かん)にしたり、お湯で割ったりしてチビリチビリ呑むのが楽しみの一つです。

 ) 蕎麦焼酎: ほのかな蕎麦の香りと、多少の苦味、さっぱりした口当たりの酒です。

    この焼酎には、魚介類の独特な匂いを消す作用があり、料理を摘みながら呑むのが良いと

    言われています。蕎麦は地味の痩せた場所に成育し、2~3ヶ月の栽培期間で収穫できます。

    蕎麦の本場である、信州(長野県)や宮崎県で多く作られています。

    尚、蕎麦から直接麹菌を作る事が出来ず、米麹や麦麹を使用します。

  ) ゴマ、人参、紫蘇(しそ)焼酎

     でんぷん質の植物ならばどんな種類であっても、焼酎の原料になる話を前回にしました。

     近年、各地の名産品を原料にした焼酎が作られる様に成りました。

     基本的には、米や麦を原料にする蔵元が、蔵元独自の焼酎を作り出す為、兼業で造って

     いるのが実情の様です。しかし、この中から、次代を担う焼酎が出ないとは言えません。

 

以上にて、酒に付いての話を終わります。話は大分脇道に入り込みましたが、次回より、本題の

酒器の話に入ります。

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