わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

8 熔融剤による金属元素の色変化

2019-05-01 17:58:08 | 色と陶芸
釉を構成するシリカ(主に長石)や酸化アルミニュウムを、より低い温度で熔かす為に、CaO3

やNa2CO3、K2Co3、MgO等の物質を熔融剤として混入するのが一般的です。

尚灰釉も各種灰を主原料にしますが、灰の中には上記物質が複合的に含まれています。

更に釉に色を付ける為に、各種の金属(顔顔料)を混ぜ好みの色釉を作ります。

金属の発色は、酸化還元などの焼成方法によっても違いが出ますが、同じ金属でも熔融剤の違

いによって発色に違いがある事は、以前より知られている事実です。

1)色釉は酸化焼成が一般的です。

 ある種の金属は還元焼成によって、全く発色しなかったり、発色が悪くなります。場合に拠

 っては全く異なる色に成るからです。尚、市販されているその様な釉(多くの釉では、酸化

 還元に関係なく発色場合もあります)には、窯の雰囲気が酸化焼成か還元焼成でする様に

 注意書きが付いています。

 例えばピンク釉を掛けても、還元では全く発色せず透明釉の様になる事もあります。

 マンガンを着色剤で使う場合、還元焼成では、汚い灰色になりますし、銅は酸化では緑色に

 なりますが、還元では美しい赤色(辰砂色)に発色します。

 尚、陶芸では、還元焼成が好まれる傾向にあります。還元焼成で思っていない色に焼き上が

 る事が多いからです。又酸化焼成と異なり色の変化が大きく、窯を炊く度に表情が変化しま

 す。還元焼成でえ安定的に発色させるのは、極めて難しいです。

2) 色釉を作る場合、窯の温度範囲内に収まっていないと、色が飛んでしまいます。

 低い温度では、釉が十分に熔けず、高過ぎる場合には、金属が蒸発したりして、色が出ま

 せん。市販の釉では、焼成の推奨温度が明示されています。但し、SK-7(1230℃)sk-8

 (1250℃)と表示されている場合もあります。

3)色釉には、厚く掛けるないと所定のお色に発色しない場合と、薄掛けるの方が良い色に

 発色する釉があります。この場合、厚掛けすると、色は濃くなります。更に厚掛けすると

 汚い色になる物さえあります。

4)カリ(K2O等)は長石系の釉では、最も使われる熔融剤です。

  ナトリウム(ソーダ)と置換でき、ほとんど同じ様に作用しますが、カリの方が若干熔け

  易くなり、光沢も増します。更にカリの方がソーダよりも安定した発色になります。

  カリとソーダでは、金属によってわずかながら色の差がでます。

  金属     カリ        ソーダ

  銅      空色青       トルコ青

  クローム   草緑        黄緑

  コバルト   青(草色っぽ)   青(緑色っぽい)

  マンガン   暗黄        紫

  鉄      帯褐黄色      褐色

5)長石の種類を変えると発色が変化するのは、カリ長石とソーダ長石の違いによります。

  又、ソーダはアルカリ類(塩基成分)の中で最も熱膨張率が大きい為、多量に混入すると

  貫入(ヒビ)が入り易くなり、更に、風化による耐久性が減少します。

以下次回に続きます。

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7 金属が釉に熔ける理由 2。

2019-04-17 17:01:44 | 色と陶芸
4) 金属は二種類以上を混ぜ合わせると、融点が低くなる傾向があります。

 代表的な物に青銅があります。歴史的にも古くから知られた方法で、鉄器以前は青銅器の

 時代が長く続いていました。これは鉄や銅等を熔かす事が難しかった事と、青銅器が美し

 かった、事及び錆(さび)に強かった為です。

 銅に錫(すず)を10~20%程度混入し、青銅を作りますが錫を混入させる事で200℃

 程度融点を下げる事が出来、これを型に流し込み、複雑な形の作品を造っていました。

 釉でも、アルカリ(又は土)金属(Na,K,Mg,Ca等)を混入させ、熔ける温度を下げていま

 す。尚、釉は一種のガラスのです。ガラスは水や金属類と異なり、明確な融点は存在しませ

 ん。釉を加熱し行くと、釉を構成する粉末が次第に柔らかくなり、ついにガラス状に成って

 熔け出します。ちなみに、ガラスは化学では個体ではなく、液体として扱います。

 金属(結晶)は原子が規則正しく並んでいる原子の集合体です。

 原子同士がお互い引き合う力が働いています。これを結合(又は凝集)エネルギーと言いま

 す。このエネルギーの元は、原子核の外を回る電子の力です。電子は-(負)の電荷を持ち

 +(正)の電荷を持つ原子核と、クーロン力で引き合ってい円運動をしてます。

 加熱して行くと、電子の動きは活発になり、クーロン力を振り切って自由に動き回る様にな

 り、金属の結晶構造も崩壊し、緩やかに熔ける事になります。

 (尚、ここでは詳しい話は難しくなりますので省略します。)

5) 釉に添加されるアルカリ金属類は、電子を活発に動かす原動力になります。その添加す

 る割合と種類が多く成れば成程、より低い温度で活発に動かす事になります。

 アルカリ金属類の種類が多く成れば、相乗効果が重なりより強力な熔融剤となります。

 熔融剤をより強く働かせる為には、温度をある温度以上に上昇させる事ですが、更に、釉の

 原料であるシリカやアルミナ類、及び熔融剤を細かく粉砕する必要があります。

6) 前述した様に、釉は一種のガラスですので、ある温度で一気に熔ける事はありません。

 釉の表面から内部に向かって少しづつ軟化して、ガラス可し最終的に熔解します。

 それ故、ある程度の時間が必要になります。この時間が焼成の最後工程である、「寝らし」

 です。この時間を長く採れば釉も十分に熔け、必要な色や光沢が出る事になります。

 必要な焼成温度になっても、この時間を短くすると焼き不足となります

 焼け不足になると、ガラス質の表面が「ザラツキ」光沢も無く、釉の色も正規の色に成りま

 せん。この様な場合、再度焼き直す事えで所定の艶や色を取り戻す事が出来ます。

以下次回に続きます。
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7 金属が釉に熔ける理由 1。

2019-04-06 20:32:11 | 色と陶芸
釉の原料は、シリカ(SiO2)と酸化アルミニュウム(Al2O3)と熔融剤(RO)であるアルカリ

(Na.K.Ca.Mg、各種灰等の塩基分)の混合物です。シリカもアルミも金属です。

シリカ単体での融点は1685℃では、アルミニュウムの融点は2050℃です。熔融剤を入れる事

で1200~1300℃程度まで融点を下げる事になります。上記シリカとアルミではその混合比率

によって乳濁色にする事は可能ですが、一般的には透明になります。

釉に色が付く理由は、素地に含まれる鉄分の他、微量な金属が釉に熔け出すためですが、意図

的に釉に鉄や銅、クロム、酸化亜鉛、錫やコバルト等の金属類が入っている事で、これらが釉

に熔け出、発色を促します。金属の種類と量によって色々な色を出す事が可能です。

又、同じ金属であっても、焼成時の酸化、還元などの窯の雰囲気でも、金属の発色は異なりま

す。特に酸化鉄を含む釉は、黒、茶色、焦茶色、赤、緑、黄色、場合によっては白など多くの

色を出す事が出来ます。

金属の融点は焼き物の焼成温度(ほとんどは1300℃以下)より、はるかに高い場合が多いで

す。例えば、鉄の融点は酸化物の違いによりますが、少なくとも1500℃以上です。

銅の融点は1064℃と比較的低いですが、酸化クロムは2000℃、酸化コバルトは1935℃、酸化

亜鉛は2000℃、酸化錫は1625℃といずれも、焼成温度より高くなっています。

 (尚、一般に酸化物は金属元素より融点は高く成ります。)

それ故、1250℃前後で焼成する焼き物では、一見金属が釉に熔けないと思われるかもしれま

せん。しかし、釉に金属類を混入し、釉内に熔け出させ色を付ける事は普通に行われています

では、何故に熔け出し、又何度位で釉中に熔け出すのでしょうか?。

1) 結晶が析出する温度が、熔け出す温度と考えられます。

 結晶釉では、最高焼成温度より、徐冷する事により釉内の金属が熔けに難くなり、余った金

 属が釉内に蓄積し続き、次第に結晶化を起こする事によって起こると考えられています。

 それ故、結晶化が起こる周辺の温度が金属類が釉に熔け出す温度と考えられます。

 尚、結晶の構造の違いによって結晶も見た目に違いがでます。

2)色は光の反射の波長によって決まります。

 全反射の場合には、白色になり、全く反射しない(光が吸収される)場合は黒色になります

 但し、正反射(入射角と反射角が等しい)の場合には光沢がで出ますが、乱反射の場合には

 艶消し(マット)状になります。但し反射は焼き物の表面以外に,釉中に熔けている成分

 によって引き起こされる事もあります。特に結晶に当たった光は、その金属の種類に応じて

 大きな屈折や反射に変化を起こします。その為、金属毎に光沢や色に差がでます。

 正反射の場合、釉の表面が平滑ですが、乱反射の場合、表面に細かな凹凸が有ったり、

 釉の中の結晶の影響を受ける事もあります。 

3)常温では、金属は強固な結晶として強く結び付いています。

 金属類が釉に熔けるためには、この結合を断ち切り、結晶を壊さなくてはなりません。

 高温にする事で、この鎖を断ち切る事にするのですが、先に述べた様にかなりの高温が必要

 になります。この鎖を断ち切る作用をするのが、塩基類(熔融剤)になります。

 その他複数の金属類が共存すると、お互いに影響し合い融点が低くなる傾向があります。

 更に、熔融剤を有効にする為に、微粉末状にして混入する必要があります。

 又発色を良くする理由と、釉に金属が熔け易くし、更に釉に均等に熔ける様にする為でもあ

 ります。

以下次回に続きます。

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電気窯、ガス窯、薪窯 3

2019-03-09 17:34:08 | 色と陶芸
前回からの続きです。

5 薪窯

 ① 薪窯とは、燃料が薪(まき)で主に赤松を使っています。但し、松脂を多く含む赤松は

  高価ですので、窯が高温に成ってから使用し、低温の場合には、他の薪(樹木は問わず)

  を使います。

 ② 陶芸の世界では、多くの人が薪窯の作品に魅せられています。電気やガス窯では決して

  出来ない色艶のある色合いになるからです。勿論、電気やガス窯で工夫すれば薪窯の作品

  に類する作品に焼き上がる事も可能です。

  但し、近年薪で焼成する事は、かなり困難になっています。それは、環境の問題だけでな

  く、費用(薪代)と労力(焼成時間が長くなる=数日を要する)がガスや電気に対し、桁

  違いに大きいからです。一般に薪窯は現地で制作します。経験のある人であれば、耐火

  レンガを積み上げて制作する事が出来ますが、窯を築く職人に依頼して築く事が多いです

  勿論築く場所も環境も含めて慎重に選ぶ必要があります。当然都市部では消防法で許可さ

  れません。

 ③ 窯も他の窯より大型になります。登り窯(連房式)が著名ですが、単房の物もあります

  ガスや灯油、電気の無い頃の窯は、全て薪窯になりますので、古い時代の作品は全て薪で

  焼成しています。薪窯を個人で持つ事は難しく、多くは共同窯が多いです。

 ④ 薪窯で焼成したい方は、窯の持ち主に依頼して、窯に入れて貰うか、窯を借りる事にな

  ります。窯を貸してくれる所(勿論有料で)も探せば見つかると思います。

  場合によって薪の調達から窯の炊き方も指導してもらえる所もあり、初心者のグループで

  も薪窯で作品を焼く事も出来ます。

 ⑤ 薪窯の窯詰めには、さや(匣鉢)に収めて焼く方法と、裸で窯詰めする方法があります

  即ち、薪(赤松)の灰が作品に降り掛かる方法と、灰が被らなくする方法です。

  現在では後者の場合では、薪窯よりも電気窯の方が向いています。但し藁による火襷

  (たすき)では匣鉢に収める事が多いです。

  又、作品に釉を掛ける場合と、掛けない方法があります。特に後者を「焼き締め」と言い

  ます。釉を掛けない場合には、必ずしも素焼きを行う必要はありません。

  焼き締め陶器の魅力は何といっても、灰被りの状態によってその表情が大きく変化し、

  一つとして同じ物が存在し無い事です。但し、自然の降灰のみに頼るだけでなく、予め

  作品の一部に灰を振り掛ける方法をとる方もいます。

 ⑥ 薪窯は必ずしも成功裡に終わるとは限りません。むしろ焼き不足や焼斑(むら)等不

  完全な焼成も多く見られます。

  一番の問題は、十分温度が上昇しない事です。燃料(薪)を闇雲に投入しても温度は上昇

  しません。むしろ不完全燃焼を起こし、温度が下がる事さえ起こりえます。炎の色具合や

  空気量をこまめな調整(煙突の引きの具合)によって、温度上昇に持って行く必要があり

  ます。その他、窯詰めの方法や、窯を炊く季節や薪の乾燥具合など多くの要素も関係して

  きますので、薪窯に挑戦される方は十分な準備が必要になります。当然他の窯よりも費用

  と労力が多く掛かる事になります。

以下色に付いての話は、次回に続きます。
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電気窯、ガス窯、薪窯 2

2019-02-25 17:53:42 | 色と陶芸
4) 同じ釉でも電気窯、ガス窯、薪窯では焼き上がりの色や光沢に違いがあります。

  ⑤ 電気窯とガス窯の作品の色合いの違い。(前回の続きです。)

   釉の色合いの違いは、熱源の差と熱の伝わり方の差による物です。

   特に熱の伝わり方の差が大きな影響を与える事になります。

   熱の伝わり方は、伝導、対流、放射(輻射)があります。

   ⅰ) 陶芸の窯での伝導による場合は、棚板から作品に熱が伝わる際に起こります。

    但し、昇温中では作品の熱容量が小さく、棚板の方が熱容量が大きい為、棚板より作

    品の方が早く温度上昇しますので、棚板より作品の方に熱が伝わる事はほ殆どない

    状態です。

    但し、窯の冷却中では、熱容量の少ない作品の方が早く冷えますので、棚板から作品

    に熱は伝わる事になります。

   ⅱ) 燃料を使用する窯では、主に炎(焔)の対流によって熱が伝わります。対流は作

    品の間(隙間)を通り抜ける際、作品に熱を伝えます。その為、炎の通る適度の隙間

    が必要です。隙間は指一本程度が良いと言われています。狭過ぎでは炎が流れず、

    熱は作品に伝わりません。広過ぎると炎の熱は無駄に流れ去ってしまいます。

    一般に燃料を使う窯では、倒炎式が多いです。即ち、壁の側面から天井まで上昇した

    炎は、反転して底の方に流れ、底周辺に設けられた煙突の入り口に向かい排出します

    尚、一部は天井まで登らず、作品間を通る流れも起こっています。

    炎の熱も一様ではありません。即ち熱の高い所と低い所が混在してります。

    更に、炎に含まれる酸素の量にも偏りがあります。一般に赤い炎は酸素が少なく、青

    白い炎では、酸素分しが多くなります。前者が還元炎、後者が酸化炎と呼ばれる物で

    す。還元炎は酸化金属(地球上の金属のほとんどは、空気中の酸素によって酸化物に

    なっています)を元の金属の色に戻します。この複雑な炎の状態によって釉も複雑な

    影響を受け、変化の富んだ色合いに成ります。炎の温度が高いのは、中性炎と言われ

    ています。

   ⅲ) 電気窯では特別に還元を掛けなければ、即ちガス等を注入しないければ、放射

    (輻射)によって熱が伝わります。放射は空気中では熱を発生せず、物(作品)に当

    たって初めて発熱します。更に、放射は直進性を有しますので、作品が他の作品の物

    陰に入った場合、陰の部分には十分熱量が届かなくなります。特に熱源より遠いと

    供給される熱量は不足ぎみに成ります。そこで容積の大きな窯では、他の窯とは違い

    天井や後ろの壁、扉などにも発熱体を設ける事が多いです。

    実際の焼成では熱量を受けた作品の部分から、伝導により熱が他の部分に供給され、

    同じ温度になろうとします。

    上記の様に、熱の高低差は存在しますが、変化のある炎がありませんので、燃料の窯

    と違い、色も変化に乏しく一定(平板)になり易いです。

  ⑥ 窯操作の違い。

   近年電気窯が多数使用されています。これは、煙突を必要とする窯よりも、環境や窯操

   作が簡単な事に関係しています。煙突のある窯では排気にも気を使う(一酸化中毒に

   注意)事もあり、電気窯では、屋内に設置でき特に排気に気を使う事は少なくなります

   特にマイコンによる自動燃焼が可能になり、一度所定の作業内容をセットすると、プロ

   グラムに従い焼成を終わらせる事が可能に成っています。

   又、電気窯は容積の小さな場合に向いています。通常の100Vの電源で使用できる

   物もあります。より電力を必要な場合には単相(100V)200Vで使用する場合もあり

   ます。尚、電熱線(発熱体)は消耗品です。ある程度使用したら交換する必要がありま

   す。使用条件や使う頻度によって寿命が異なりますので、詳しい事はメーカーにお問い

   合わせ下さい。更に、電熱線や窯材料(耐火レンガやグラスウール等)は市販されてい

   ますので、電気窯を自作する事も可能です。

以下次回に続きます。

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電気窯、ガス窯、薪窯1

2019-02-18 16:57:13 | 色と陶芸
前回からの続きです。

4) 同じ釉でも電気窯、ガス窯、薪窯では焼き上がりの色や光沢に違いがあります。

 陶芸では窯は、熱を閉じ込め、温度を上昇させる為に必要不可欠な物です。

 窯にはガスや灯油、薪などの燃料を必要とする窯と、燃料を必要とせず、電力のみで熱量を

 供給する窯があります。一般には焔(ほのお)の出る窯と焔の出ない窯と言われています。

 窯を築くには、いずれも耐火レンガを使います。但し、構造には大きな違いがありますので

 一つの窯で代用する事は、かなり難しいです。

 これらの窯の大きな違いは、空気(特に酸素)以外の要素が関与するかしないかの差です。

 即ち、燃料に含まれる成分も重要な役割を担います。

 更に煙突の有無にも関係して、焼き上がりの色や光沢にも大きく関係する要因です。

 ① 本焼きの焼成では、火の温度が何度であるかよりも、作品自体が何度に保たれているか

  が重要です。これを熟成温度と言います。

  即ち短時間でどんどん温度を上昇させ、所定の温度にしても、品物が焼成される訳では

  ありません。ある一定の温度をある程度の時間保持し続ける事が必要です。

  焼成とは、原料である粘土や長石、珪石、絹雲母などが加熱によって化学変化を起こし

  これらの組成鉱物の変性作用とみる事ができます。

  釉の熟成には釉の均一な調合と、釉の組成原料や原料粒子の細かさも重要です。

  但し楽焼では短時間で温度を上げ、表面の釉を熔かすだけですので、焼成時間も短くなり

  ます。

 ② 燃料に含まれる成分とは?。

  電気窯の場合、空気に含まれる酸素のみですが、ガスには、酸素以外に炭素、水素が含ま

  れ、薪の場合には、更に水分と微量な植物成分(有機物や微量な金属類)を含み、焼成の

  残渣となる灰類も含まれます。

  これらは、窯の中で化学変化を起こし、炭酸ガスや一酸化炭素を発生します。

  これらは窯焚き中に連続して供給され続けます。又焼成には水分も大切な役目があると云

  わています。

  都市ガスやプロパンガスは、炭化水素が主原料の為、焼成中に水素と酸素が化学変化を起

  こし、水を発生するとも言われています。施釉の際、水分も含まれますが、高い温度に

  なると、ほとんど蒸発してしまう為電気窯では、水分は無くなっていると思われます。

 ③ 電気窯は炉内は余分な燃料成分が無い為、雰囲気は清浄に保たれていますので、磁器の

  焼成に向いています。雰囲気は酸性又は若干の還元になり、炉内が一定になり易い為、

  安定した色合いを得る事が出来ます。更なる還元を掛けるには、外部よりガスや炭を供給

  する必要があります。近年、マイコンを搭載した窯が増え、ほとんど自動的に焼成できま

  すので、焼成は比較的容易に成り、盛んに使用されています。

  但し色合いを要求される陶器では、余り望ましくないと見なされる事もあります。

 ④ 薪窯は焼き締めを行う事が多く、施釉陶器は少ないです。

  施釉せずとも、薪窯独特の色に仕上がります。特に薪窯に適する粘土も市販されています

  薪の成分の他に灰(赤松)も関係し、更に、藁(わら)などを用いて火襷(たすき)模様

  を作り出す事もできます。この様な色は他の窯でも工夫すれば出ますが、完全に同じ様な

  色合いにはならないそうです。

  この方法に付いては、陶芸の技術書などに掲載されている物を見かけますので、それらを

  参考にして下さい。

 ⑤ 電気窯とガス窯の作品の色合いの違い。

以下次回に続きます。
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5 反射と乱反射

2019-02-11 21:57:44 | 色と陶芸
焼き物の表面からの反射光によって、色の表情も大きく異なります。

一般には光沢釉と非光沢(マット)釉と呼ばれる状態です。尚その中間に半艶消し釉もありま

す。施釉された焼き物の表面は、ガラス質で覆われています。特別釉を厚くする青磁釉などを

除く釉の厚みは1mm以下が多いです。

滑らかに熔けた釉では反射は、ガラスの表面、ガラスの中間、及び素地とガラスの界面で起こ

ります。この反射は主に表面のみに起こる場合と、表面と中間で起きる場合、及び境界面を含

めて全ての場所で起こる事もあります。反射光同士は、お互いに干渉し合い、複雑な光と成る

場合もあります。ガラス層の中間には、釉から析出した金属類の結晶や、気泡などが含まれる

釉もあり、その面で反射もします。

1) 艶釉、一般的な釉(光沢釉)。

 一般的な釉は、光沢のある物が多く、マット系の場合は〇〇マットと名前が付けられている

 場合が多いです。

 ① 艶釉や光沢釉の場合、釉は高温で完全に熔けた状態でガラス化し、冷却により固まっ

  た物です。即ち釉の表面が均一に熔け、素地に密着して平滑に成り反射しています。

  又、表面に曇りもない無い状態にも成っています。

  尚、釉のガラスと一般的なガラス(ビンやグラス類)とは、若干性質が異なります。

 ② 光沢釉は、透明釉だけで無く、結晶釉でも乳白(濁)釉でも起こります。

  結晶や気泡などが内部にとじ込まった状態でも、器の表面が平滑であれば、光沢が出ます

  又、釉の中に存在する物質からも光の反射が起こり光沢釉に成ります。

 ③ 艶釉は、特に光沢のある釉で、艶黒釉が代表的な釉で市販されています。

  一般的な光沢釉よりも、表面より強く反射します。光沢を強くするには硼酸(ホウサン)

  や硼砂などを少量添加すれば良い様です。

2) 半艶釉、艶消釉(マット釉)。

  器の表面が平滑でなく、荒れていたりするとマット釉になります。表面が平滑でないと光

  は乱反射し艶消しとなります。表面の荒れ具合によって、艶消し半艶消しとなります。

  又、釉の中間に結晶や分相がある場合、その部分で乱反射し艶消しとなる場合があります

   注:分相とは、性質の異なるガラスが、水と油の様に混ざり合わずに、存在している

   状態です。

  ① 表面が平滑でない場合は釉の成分による物と、釉の熔け不足の場合や熔け過ぎがあり

   ます。熔け過ぎでは、表面から釉が流れ出したり、釉や素地から気泡などが発生し、

   表面に痘痕(あばた)を作り、凹凸の影響で乱反射を起こすからです。

   a)アルミナ(Al2O3)成分が多い程、更にシリカ(SiO2)成分が少ない程い、十分に熔

    けていても、艶消し(半艶消)釉になります。これはSio2ーAl2O3性状図からも読み

    取れます。手持ちの粘土を混入させても、マット釉を作る事ができます。

   b)釉が十分に熔け切っていない場合、ガラス質は中途半端な状態になり、表面に細か

    凹凸がありザラ付き、光が乱反射します。 更に、熔け不足が部分的な場合、一つの

    作品でも光沢のある面と、光沢の無い面とが同時に存在する事もあります。 

3) 釉の色は焼成時間が長い程、趣のある色合いになります。

 基本的には、釉が完全に熔ければ良いのですが、短時間で熔かした釉は「テカッテ」いる感

 じで、陶芸の世界では、余り良しとしない風潮があります。

 それ故、長時間かけて焼成し、趣のある色艶に仕上げる事が行われています。

4) 同じ釉でも電気窯、ガス窯、薪窯では焼き上がりの色や光沢に違いがあります。


以下次回に続きます。
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4 粘土の色に違いがある理由1。

2019-01-19 17:48:55 | 色と陶芸
真っ白な粘土(磁器土)がある一方多くの粘土には色が付いています。

但し、生の状態の土の色が、高温で焼く事で同じ色に焼き上がる事は珍しく、別の色に成る事

が多いです。

1) 粘土は火成岩から作られる。

2) 火山岩は風化が進み易く、砂質土状や粘土化し変質します。
  
3) 粘土類に含まれる不純物によって色に違いが出る。

 ① 天然の粘土に含まれる物質

 ② 鉄化合物

 ③ 腐食した植物が含まれる粘土。

  黒い粘土であっても、焼成すると白色になる土もあります。泥炭や腐食した腐葉土の様に

  植物が含まれる場合です。有機物は焼成してしまいますので、黒色になる成分は消失して

  しまい、素地その物の色が出るからです。但しこれら異物は十分細かし、篩を掛けていま

  すで制作上で問題が起こる事は少ないです。(以上までが前回の話です。)

 ④ 別の色の付いた土を混入させて作ります。

  尚、市販されている土も単味の場合は少なく、ほとんどの土は、轆轤挽し易い様に、又

  作り易い様に他の土を混入し調整されています。多くの場合、同じ様な色の土を混ぜて

  います。又、異なる色の土を混ぜ合わせ、好みの色の土を作る事に可能です。

  例えば、白い土に天然の赤土を入れ、混ぜる量によって、黄色~茶色~灰色~黒色へと焼

  き上がりの色を調整する事も出来ます。  

4) 人為的に着色した粘土。

  自然界ではめったに見られない青や赤、ピンク色も、酸化金属などの顔料を入れる事で

  色の付いた土を作る事も可能です。陶芸材料店に行けば、練り込み用と表示された着色剤

  が多種類市販されています。又金属粉を混入させれば、好みの濃度の色土を作る事も可能

  です。市販されている顔料の色は、焼成してもほぼ同じ色に焼き上がります。

  手持ちの鬼板や弁柄、酸化コバルトなどの下絵付けとして用いられる顔料も、混入させて

  色土を作る事ができます。注意点は、上記顔料は十分水で溶き、斑(むら)や粒々が出来

  ないにして、練り込まないと、斑(まだら)色に成ってしまいます。

  更に、上記顔料類は、轆轤挽にとっては良い結果になりません。即ち、多量に混入すると

  土の伸びが悪くなり、更には乾燥時に「ひび割れ」を起こし易くなりますので、混ぜる量

  は試行錯誤をして決めて下さい。顔料によってもてその割合に差があります。

  その他の注意点として、混入した顔料の色と必ずしも同じ色に焼き上がらない場合も多く

  酸化還元などの焼成条件によって、焼き上がりの色も若干変化します。

5) 土の色は釉の発色にも影響を与えます。

  透明釉では、当然釉の色は土の色になりますが、その他の釉であっても、土の色は釉の

  発色に大きく関係しいます。

  鮮やかな発色を期待するのであれば、白っぽい土を使うべきです。やや「クスミ」があり

  落ち着いて地味な色に仕上げるには、濃い目の色の土を使うと良いでしょう。

  但し、素地に混入させる量(割合)は色の種類によって差があります。即ち、少しの量で

  強く発色するコバルト類は少量で済みますが、黒色に近い色にするには、弁柄等の酸化鉄

  等を多量に入れる必要があります。勿論混入する顔料は一種類である必要はありません

  混入する顔料の種類が多くなるに従い、土の色は汚くなる(無彩色)傾向にありますので

  多種類の顔料の混入はなるべく控えた方が良いでしょう。

以下次回に続きます。
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4 粘土の色に違いがある理由。

2019-01-09 17:43:04 | 色と陶芸
真っ白な粘土(磁器土)がある一方多くの粘土には色が付いています。

但し、生の状態の土の色が、高温で焼く事で同じ色に焼き上がる事は珍しく、別の色に成る事

が多いです。

1) 粘土は火成岩から作られる。

  火山活動によって生成された溶岩は、花崗岩(御影石)や流紋岩と呼ばれ、岩石は粘土の

  原材料に成ります。両者の違いは成分は同じですが、溶岩が地中深くでゆっくり冷えて固

  まるのが花崗岩で、地表近くで急速に冷却された岩が流紋岩です。その為花崗岩は均一な

  構造の為固く、表面を研磨すると美しい石材になり、墓石などで利用されています。

  主な成分はカリ長石 (正長石,微斜長石) 、酸性斜長石、石英から成り、10%以下の有色

  鉱物(金属不純物など)を含みます。この不純物は産地によって異なります。

2) 火山岩は風化が進み易く、砂質土状や粘土化し変質します。
  
  雨風熱水や動植物等の影響で、風化を受けた花崗岩等はもろく崩れて、バラバラにり易い

  です。更に風化が進行すると一部は粘土化し、又は砂質土状に変質します。

  これが「まさ土」です。花崗岩が風化し易いのは、膨張率や収縮率の高いという物理的性

  質があり、また、流紋岩は粒状構造の為、緻密さに欠け、結合が意外に弱い性質がある為

  です。風化分解された岩石は、主に長石、雲母、珪酸からなり、更に細粒化し粘土鉱物

 (カオリナイト、イライト、加水ハロサイト、キプサイト)に変化し、砂質土状のまさ土と

  なります。

3) 粘土類に含まれる不純物によって色に違いが出る。

 ① 天然の粘土に含まれる物質

  長石、珪砂(石英)、雲母、などは主成分ですが、不純物として鉄化合物、マグネシア

  チタン、石灰石などが入っています。混合割合は、産地毎に違いがあります。この事が

  その産地の土の性質を決める事になります。

 ② 鉄化合物

  ⅰ) 白く焼き上がる粘土でも、鉄化合物(主に酸化鉄)は含まれていると言われていま

   す。一般には非常に細かな状態で、粘土中に分散しています。酸化鉄が多く含まれるの

   は赤土と呼ばれています。但し赤土は焼成でも赤い色を呈する場合と、黒く焼成する場

   合があります。

   酸化焼成の場合、1%以下の含有量で白色粘土になります。焼成しても白色です。

   1~4%程度で象牙色から黄色に変化します。4~7%程度で赤く焼成します。

   それ以上になると、どんどん黒色が増します。

  ⅱ) 還元焼成の場合。

   同じ酸化鉄を含む土でも、酸化焼成と還元焼成では、発色に差がでます。
  
   還元焼成では酸化鉄が少量の場合には、明るい灰色又は灰色掛かった色を呈します。

   4%以上になると、暗灰色又は青色を呈します。酸化第一鉄では、灰色又は青色です

  ⅲ) 鉄化合物は熔媒として働き、焼締り温度を下げたり、収縮率を増す働きがありす。

 ③ 腐食した植物が含まれる粘土。

  黒い粘土であっても、焼成すると白色になる土もあります。泥炭や腐食した腐葉土の様に

  植物が含まれる場合です。有機物は焼成してしまいますので、黒色になる成分は消失して

  しまい、素地その物の色が出るからです。但しこれら異物は十分細かし、篩を掛けていま

  すで制作上で問題が起こる事は少ないです。

以下次回に続きます。

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3 色の種類によって人は特別な感覚を抱く

2018-12-31 14:42:45 | 色と陶芸
3) 色によって人は操られている。

 色は人の感覚に大きく影響を与え、特別な意識を醸し出す働きがあります。

 暖色系と寒色系があり、更に明度の大小等によって幸福感、安定感、重量感、鎮静効果の他

 物の大小(見た目の違い)を狂わせる効果を演出します。

 ① 暖色系と寒色系、明度の差の効果。

  暖色系は、赤、橙、黄、紫の範囲内の色をいいます。

  寒色系は、緑、青緑、青、青紫、紺の範囲内の色と白です。

  ⅰ) 赤い色は火の色や太陽を連想させ、暖かい感じを抱かせます。鮮明な赤系は血液を想

   像する為、気持ちを高ぶらせ「興奮感」を与えます。それ故、エネルギーを与える色で

   スポーツに関する用具や会場設備等では欠かせない色と言われ、多用されています。

   ・ 黄色系は「元気にさせる色」と言われて「希望、幸福、健康」等人に幸福感を与え

    る色です。仏教やヒンズー教では、最高の色とされているとの事です。

   ・ 橙色は「爽やかさ、暖かさ、明るさ」を感じさせる色です。スーパーマッケトでは

    果物や野菜などの瑞々(みずみず)しさを感じさせ、新鮮さをアピールします。

  ⅱ) 暖色系は前に迫ってくる感じで、「進出色」又は「膨張色」とも呼ばれ、同じ大き

   さの他の物より、実際に大きく見えるそうです。

  ⅲ) 青で代表される寒色系は、水、氷、雪を連想させ、冷たい感じを与えます。

   寒色系の青は、「後退色」又は「収縮色」と言われ、遠くにある様に見えます。

   即ち、実物より小さく見せる効果があります。彩度の低い青系は「鎮静効果」がありま

   す。青系の空間では、時間がゆっくり進み、遅く感じられとの事です。

  ⅳ) 光を反射する白色(明度が高い)は、重さを軽く感じさせ、黒色(明度が低い)は

   重く感じさせます。ダンボールが白色なのは、運ぶ人に軽く感じさせる為と言われてい
 
   ます。

 ② 安全色彩について。

  JIS規格で指定された、公に用いられる色があります。

  交通標識や消火栓、災害防止や救急体制などに関わる色で、目立つ色で注意を喚起する

  色です。主に赤、黄赤、黄、緑、青、赤紫、白、黒の8色です。

  ⅰ) 道路標識では、路面に引かれた白、黄色、進行方向を示す、青と白、通行止めや

   信号機の止まれや速度制限標識、駐車禁止などは赤、鉄道等の遮断機は黒と黄色、緊急

   停止ボタンは赤で塗られています。

   ⅱ) 消火栓は赤、注意書きは黄色です。救護施設は緑色で表示されています。

    安全誘導(非常口表示)、担架の位置、安全旗、救急箱などは緑色で統一されていま

    す。放射能関連の貯蔵施設や、管理区域、廃棄作業では赤紫が使用されます。

 ③ 「配管系の識別表示」もJIS規格で定められています。

  石油や化学プラント等の様々な配管系では、作業の安全と危険を防止する為、作業者が

  識別し易い様に管に色彩が施されています。

  青は水、暗い赤は蒸気、白は空気、薄い黄はガス、灰紫は酸又はアルカリ、茶は油、

  薄い黄茶は電気の管や弁、継手を表します。

  ・ 船舶配管の識別。

   青は清水、緑は海水、鼠色は圧縮空気、銀は蒸気、赤は燃料油、黄は潤滑油、黒は酸素

   橙は電線管を表します。

以上は色に付いての一般的な話で、陶芸とはほとんど関係ありませんでしたが、次回から陶芸

に関する色に付いてお話したいと思っております。

以下次回に続きます。
  
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