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わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

続 釉(薬)について11(フリット3)

2018-04-30 16:43:36 | 釉薬に付いて 釉薬の種類 熔融剤
6) 顔料(着色材)

  陶芸材料メーカーや材料店では、釉に直接混入させて色釉が作れる各色の顔料が市販され

  ています。それ故、必ずしも御自分で顔料を調合する必要は無いのですが、何かの参考に

  して頂ければ幸いです。  

  顔料は酸化鉄、酸化同、酸化錫、酸化マンガン、酸化コバルト、酸化クロム等の金属類と

  長石、石英、カオリン、石灰石などを適宜混合させて作ります。

 以上が前回まで話です。

 尚、上絵付け用の顔料もありますが、ここでは、釉に添加する顔料に付いて述べます。

 ① 乾式混合と湿式混合。

  顔料を合成すのには、乾式と湿式混合の方法があります。

  乾式とは使用する原料を正確に秤り、水を用いずに乳鉢などで混合した後、匣鉢(さや)

  等に入れ規定の温度で焼成する方法です。湿式は水を用いて乳鉢などで混合した後、石膏

  型等で脱水後匣鉢(さや)などに入れ焼成する(フリット化)方法です。

  混合する際の注意点は、不純物が混入しない事と、微粉末にする際粒子の細かさに注意し

  ます。粒子の細かさによって発色(色調)も変化します。

  尚、顔料は必ずしも、フリットにする必要が無く、直接釉に投入する方法もあります。

 ② 着色剤

  ⅰ) 褐色系

   a) 酸化マンガンは、硼酸やアルミナを含む無鉛釉では、濃い紫紅色系の褐色を呈し

    ます。

   b) 酸化鉄が3~6%添加すると、茶褐色になる。酸化バリウムが入ると色はより濃く

    なります。更に亜鉛華が入ると、添加量によって、チョコレート色~茶色掛かった

    黄色の範囲で変化します。

   c) 酸化ニッケルは、硼酸やアルミナを多く含む無鉛釉では、褐色を呈します。

    但し、ニッケルの添加量は2%以下にします。ニッケルの含有量が少な過ぎると、

    灰色になります。釉の成分で酸化カルシウムを酸化バリウムに置き換えるか、酸化

    リチウムを、酸化カリに置換すると、色はより濃くなります。

  ⅱ) 青色

   a) 全ての青色には、コバルトの化合物が使用されます。

    色の濃度は、アルカリ成分と、コバルトの化合物によって左右されます。

   b) 鉛を含む釉では、温か味のある青色になりますが、無鉛釉では、冷たい感じの

    青色になり、色調も薄くなります。

   c) マグネシアと亜鉛華が入ると、青色の色調は変化します。

    特に亜鉛華が多いと、紫掛かった青になり、少ないと冷たい感じにの青となります

  ⅲ) 黄色

   a) 酸化鉄、酸化アンチモン、ルチルなどを添加する事で得る事ができます。

   b) 黄色や橙色はウラン化合物で作る事が出来ます。

    ウラン化合物には、酸化ウラン、ウラン酸ソーダがあります。

    酸化ウランの添加量は0.003モル以上が必要です。

    中位の石灰と亜鉛華を服務釉に、酸化バリウムと酸化ソーダが多く入っている場合

    は、黄色を呈します。更に硼酸や硼砂を含む場合には、緑掛かった黄色になります

   c) 酸化ウランは、酸化焼成で1,050℃以上で赤色から黄色に変化します。更に温度

    が高くなると、黒色になります。還元焼成では、灰色から黒色になります。

   d) 橙色は、酸化ウランが6~10%で、亜鉛華が多く、アルカリ(又はアルカリ土

    金属)を少なくすると、得られます。更に酸化錫(すず)を5%添加すると、褐色掛

    かった橙色になります。

   e) ウラン酸ソーダによる着色は、釉の組成によって、クリーム色、明黄色、黄色、

    暗黄色と変化します。ウラン酸ソーダの添加量が増えるに従い暗黄色になります。

    クリーム色(0.16%)、明黄色(0.6%)、黄色(1.4%)、暗黄色(2.2%)

  ⅳ) 赤色

 
   参考資料: 図解 工藝用陶磁器 -伝統から科学へー: 

         著者; 素木洋一(しらき よういち): 技報堂出版社

以下次回に続きます。
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続 釉(薬)について10(フリット2)

2018-04-20 19:20:11 | 釉薬に付いて 釉薬の種類 熔融剤
4) フリットの調合

 食器用の釉に鉛が入る事は、一部楽焼を除き使用が認められていません。

 その為、今日無鉛釉が使われています。しかしながら、現在でも酸化鉛に匹敵できる原料

 が見つかっていないのが実情であると言われています。酸化鉛の良い点は、著しく光沢が

 出、透光性があり、更に、顔料の発色と色調を良くする働きがあります。

 無鉛フリットは、流動性に乏しく表面を平滑にするのに時間が掛ます。更に焼成温度範囲も

 鉛フリットほど広くは取れません。顔料の発色もさほど良くもありません。

 但し、現在は酸化鉛の変わりに、硼酸や硼砂などが多く用いられ、遜色の無い物と成って

 います。

 ① 標準的な無鉛釉で使用される原料は以下の物です。

  硼酸又は硼砂、石英、炭酸ソーダ、長石、石灰石、カオリン、亜鉛華、炭酸バリウムなど

  です。

 ②  標準的なフリット釉の調合例。SK-2a(1120℃)~ SK-4a(1160℃)で作成

  ⅰ) 硼砂: 57 部  硼酸 1 部  長石: 56 部   石英: 54部 

     石灰石: 35 部  注:部は体積ですが、合計は100部には成りません。

  ⅱ) 硼砂: 22.2 %  長石: 16.6 % 炭酸ソーダ: 11.5 %  

     石英: 23.7 %  石灰石: 12.0 % カオリン:  11.0 %

     注: 割合は体積比です。合計で約100%になります。

  ⅲ) 硼砂: 14.7 %  長石: 16.9 % 炭酸ソーダ: 17.9 %  

     石英: 24.1 %  石灰石: 11.2% カオリン:  15.2 %

  ⅳ) 低熔融用のフリット

     硼酸: 21.4 %  炭酸ソーダ: 26.2 %  石英: 21.1 % 

     石灰石: 12.0%  カオリン:  14.5 % 硝酸カリ:4.8 %

5) フリット色釉

  釉は塩基成分(アルカリとアルカリ土金属の酸化物)と酸性成分(酸化物)が反応し

  ガラス質を生成した物です。更にガラス質の性質を調整するアルミナを加えます。

 ① フリットを用いた色釉が比較的広く用いられているのは、以下の理由によります。

  ⅰ) 塩基成分の種類と量を広く選択できる。

  ⅱ) 焼成温度範囲が広い。

  ⅲ) 硼酸が発色を良くする働きがある。

  ⅳ) 酸化鉛を使う必要が無い。

  但し、これらの効果は、顔料によって左右されます。

 ② フリット色釉を作るには。

  基礎になるフリットに顔料を混合する。又は、フリットを作る際に顔料を添加する方法を

  取ります。

6) 顔料(着色材)

  陶芸材料メーカーや材料店では、釉に直接混入させて色釉が作れる各色の顔料が市販され

  ています。それ故、必ずしも御自分で顔料を調合する必要は無いのですが、何かの参考に

  して頂ければと考え、調合例を挙げたいと思います。  

  顔料は酸化鉄、酸化同、酸化錫、酸化マンガン、酸化コバルト、酸化クロム等の金属類と

  長石、石英、カオリン、石灰石などを適宜混合させて作ります。

  各色の顔料に付いては次回にお話致します。

 
   参考資料: 図解 工藝用陶磁器 -伝統から科学へー: 

         著者; 素木洋一(しらき よういち): 技報堂出版社

以下次回に続きます。
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続 釉(薬)について9(フリット1)

2018-04-05 16:49:49 | 釉薬に付いて 釉薬の種類 熔融剤
フリット(frit)とは、余り耳にする事も無く、一般に使用される事は少ないですが、釉の文献

を読むと見出す事もあります。尚、楽焼の釉で使用される白玉(しらたま)はフリットです。

フリット(frit)とは、釉の一部(又は全部)の原料を予め熔融しガラス化させた物です。

これを他の釉の原料に混ぜて使用します。

1) フリットを利用する理由。

 ① 水溶性の釉の原料を釉に入れ易くする効果があります。

  釉の原料の内で、炭酸ソーダ、炭酸カリ、硝酸ソーダ、硼素酸、硼砂などや、その塩化物

  は水溶性ですので、直接釉の中に入れると素地に吸収され、釉の成分が変化します。

  更にそのまま焼成すると、素地が膨らむ等の弊害が発生します。この様な原料をフリット

  にし、ガラス化すれば素地に溶け込まなく成ります。

  但し、炭酸カルシウム、炭酸および酸化マグネシウムは、水溶性ですが、フリットにする

  必要は有りません。上記弊害が無い為と思われます。

 ② 人間に有害な釉の成分を無害化する。

  現在ではほとんど使用されていない鉛化合物などを、フリット化する事で無害にする事が

  できます。即ち、ガラスでコーテングする事で、酸などから鉛の溶け出すのを防ぎます。

 ③ 低温では反応が遅いバリウム化合物などは、フリット化する事で、多量に使用出来る様

  になり、焼成温度範囲も広がります。更に釉の発色にも好影響を与えます。

 ④ 同じ組成の釉であっても、生原料の成分よりも、高濃度にする事も出来、嵩(かさ

  =量)も少なくする事が出来ます。その為、生釉よりも薄く施釉する事が可能です。

  又、フリット化で化学反応は終了しています。その為、化学的には不活発ですので、

  素地や下絵具に対して、安定して使用できます。

 ⑤ フリットにする事で、釉成分を均一化する事が出来ます。

  生原料の粒子の大きさ、比重や形状の違いなどが著しく異なる場合、フリットにする事

  で均一化する事が出来、釉の分離沈殿を防げます。更に、均一の発色を促し綺麗な色に

  焼き上げる事が出来ます。

 ⑦ 予め溶融しておく事で、釉の原料からガス成分を取り除く事が可能に成ります。

  その為、気泡の発生を抑える事が出来ます。

2) フリットの作り方。

 ① 坩堝(るつぼ)を800℃程度に余熱し、調合物を入れ温度を上昇させ、原料がわず

  かに熔融させる。坩堝の内面に予め珪砂を塗っておくと良い。坩堝の代わりに匣鉢

  (さや)を使う場合もあります。その際注意する事は以下の事項です。

  ⅰ) 最初から坩堝に入れると、ソーダーやカリ成分は低温で先に熔け、坩堝に吸収さ

   れ釉の成分量が変化してしまいます。

  ⅱ) 硼砂を多く含む調合物は、加熱と同時に急膨張し、坩堝から溢れ出します。

   その為、坩堝に投入する際には、数回に分けて行います。 但し、無水硼砂(焼硼砂)

   なら問題ありません。 焼硼砂を作るには、鉄鍋に入れゆっくり加熱し結晶水を蒸発

   させい粉状態にします。

 ② ガラス状態に成ったら、水の中に流れ出させます。

  但し、アルカリ成分(塩基)に対し珪酸成分が少ない場合には、幾分水溶性があり、水

  に直接投入せずに、磨いた鉄板の上に薄く流し出し、扇風機などで空冷すると良いそう

  です。

 ③ 水に入れると白濁化し軽石状態になり粉砕し易くなります。

3) 陶芸材料メーカーでは、ガラス粉を販売しています。又ガラス釉なる物も市販されて

 います。ガラスや板ガラスの粉末も、フリットとして使用できますが、鉛や硼砂などが

 入っていますので、使用温度が高くなりますが、上手に使用する事です。特に色ガラス

 等は用途によっては、味のある釉を作れる可能性もあります。それ故、挑戦する価値が

 あるかも知れません。

以下次回に続きます。
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