わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

質問48 マンガンラスター釉について

2020-11-19 10:24:02 | 質問、問い合わせ、相談事

イノウエ様より以下のご質問をお受けしましたので、当方なりの見解を述べます。

 

◎ こんにちは。初めまして。釉薬について検索しておりましたら、こちらのページが

とても詳しくわかりやすかったので、教えて頂きたい事がありメッセージを書いております。

よろしくお願いします。

マットの黒地に燻し金のような表面を持つマグカップに水を入れるとキラキラしたものが

浮いてきます。何度洗ってもでてくるので、厚塗りの釉薬が剥がれてるのかなと心配に

なっています。

検索していたら、こちらで「マンガンラスター」をみつけ、この釉薬ではないかと

思いました。マンガンを多く(厚く?)かけると、焼成後に定着せずに剥がれる可能性は

あるのでしょうか?販売先は、マンガンを使っており、浮いてくるのは「スス」との

ことですが、どう見てもキラキラしているのです。体に有害だと嫌だなと思い使うのを

ためらっています。

ぶしつけに個人的な質問を失礼かと存じますが、回答を頂けると嬉しいです。

よろしくお願いします。

 

◎ 明窓窯より

1) 浮き上がった物が本当にキラキラした物かを確認する。

 水(又は白湯)をカップに入れ浮き上がったと思われる時の液体を、白色の皿等の

 器に移し変えて下さい。

 その際、やはりキラキラした物が存在すれば、何かの物質がカップから出て来た事に

 なります。もし出現して無ければラスターの釉の反射と思われます。

2) 例え熱湯であっても、商品として流通した作品が、釉が剥がれたり、溶け出る事は

 有りません。例え剥がれたとしても、剥がれた痕は釉が変色したり、ザラザラ感が出て

 確認出来ます。尚、完全にガラス化又はガラス質に包まれた物質は水では溶ける事は

 有りません。それ故、釉以外から来た事に成ります。

 又、マンガンは金属ですので、舌触りで判別できます。

3) 一番考えられる事は、カップの汚れです。

 カップをどの様な使用しているかの記載が有りませんが、コーヒーや紅茶、緑茶などでは

 茶渋等が付く事が多いですので、それらが析出したとも思われます。

 特に表面がザラ付く場合や、貫入(ひび割れ)がある場合等に起こり易いです。

 若しも、素焼きする事が出来れば、これらの汚れを燃やして取り除く事が出来ます。

 「スス」で有っても素焼き(700~800℃)で取り除く事が出来ます。

4) 油等の汚れの可能性が有ります。

 何度洗っても出現するとなると、水では溶けない汚れが考えられます。

 既に試しているとは思われますが、食器用洗剤で洗って脂分を取り除けるかも知れません。

◎ 結論 釉から溶け出した物質とは考えられ難いです。

 それ故、このまま使用し続けても、健康に問題が出るとは思われません。

以上 

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質問47 本焼きに付いて

2020-11-05 12:08:33 | 質問、問い合わせ、相談事

伊藤吉和様より、以下のご質問をお受けしましたので、当方なりの見解を述べます。

 

 ◎ 何時も貴ブログを参考にさせていただいてありがとうございます。

 素人サークルで市の設備、ガス窯にて陶芸をしています。指導者はいません。

 質門は950℃に達するまでの焼成の方法です。一番温度が上がる方法は中性炎と聞いてます

 が、酸化炎で焼くと書いてるいる本もあり、どちらが良いのか?

 又ガラス化する前の→酸化&還元に入るまえまでの焼成は、極端に言って還元・酸化・

 中性炎~どの焼き方でも良いように思えてきたんですが、それでよろしいのでしょうか?

 宜しくお願い致します。

 

◎ 明窓窯より

1) 釉がガラス質に変化するのは、950℃前後からとされています。

 キッチリ温度が一定でないのは、釉は一定の融点(熔け始め)が無い為です。

 ガラス質になる前までに酸化、還元、中性焼きを決める必要は有りますが、その前段階では

 伊藤様のおっしゃる通り、どの様な焼き方でも問題有りません。

 但し、窯にもよりますが、酸化から急に還元に変更しても、直ぐには変化せず、有る程度の

 時間が必要ですので、950℃丁度ではなく、ある程度前から準備した方が上手く行くと

 思われます。

2) 温度上昇時の窯の雰囲気は、酸化が良いのか、還元が良いのかの件。

 確実に言える事は、強酸化も強還元も温度上昇に寄与しません。

 強還元では確実に温度が低下します。強酸化も温度は上昇せず、排熱に伴い熱が煙突から

 外に逃げていきます。

① 最適の候補は弱酸化、弱還元、中性炎と成ります。

 窯の温度を上げるのは、一概に窯の雰囲気が全てではありません。

 窯の構造、大きさ、窯詰めの違い、作品の多さ、作品の大きさ、更にガスか電気か、

 又は、薪等の違いにより、同じ焼き方でも雰囲気に違いが発生します。

 更に、窯の容量(大きさ)によっては、窯全体が一様な雰囲気に成る事は少なく、

 窯の場所場所によって、違いが起きるのが普通です。

 ガス窯の場合、煙突の挽(窯への空気の流入量)の大小による事も大きく関係します。

 極端に言うとその窯特有の温度上昇の癖があります。この癖は窯焚きの頻度を増す事で

 次第に判明してきます。

② それ故、窯焚き時には、時間、温度、窯の雰囲気(炎、挽の強さで判る)等を記録し、

 更に、一目で判る温度上昇曲線を描く事をお勧めします。

 

◎ 結論、本焼時950℃付近までは、窯の雰囲気はどの様な状態でも大差ありません。

 最適な温度上昇は、各々の窯の状態や、窯焚き時の事情によって異なる為、どの雰囲気が

 最適とは、一概に言えません。ご自分で最適状態を試行錯誤して見つけて下さい。

 尚、当方の窯(プロパンガス)では、窯を炊くたんびに温度の上昇度合いは異なります。

 常に温度上昇には気を付けています。

 更に、窯焚きで一番大切なのは、目標の温度に到達させる事です。

 焼き過ぎよりも、焼き不足(釉が溶けない)に成ると窯焚き失敗ですので一大事です。

以上 参考にして頂ければ幸いです。

不明な点が有りましたら、再度ご質問下さい。

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質問46-2 本焼きでの割れ(冷め割れ)

2020-11-03 11:33:56 | 質問、問い合わせ、相談事

田中様より以下の追加のご質問をお受けしましたので、当方なりの見解を記します。


◎ 割れですがお話を伺っていますと冷却時の割れで間違い無いと思います、スパッと割れて

いますのと釉は流れていません、もう少し詳細に申し上げればよかっと反省しております、

窯はH40cmW35cmの丸い窯でちいさいので早く冷却されるのでしょうね

(いつも満杯で焼いています)、ならば冷却を遅らせる良い手はありますでしょうか、

また今はひも作りでその辺も問題ありかとは思っています(たまには空気が入ったりもします、

下手なんですね)。追加の質問で恐れ入ります。

 

◎ 明窓窯より

 冷め割れの原因は、急速に窯(作品)が冷えた事によって起こります。

 窯の大きさ(容量)や、窯の壁の厚みに左右され易いです。

 陶磁器は急冷、急熱に対して弱く出来るだけ避ける事が大切です。

 尚、土鍋など火に掛けても問題なく使用出来るのは、耐熱用の土が使われているからです。

 土鍋用でなくても、素地の中には、急熱急冷用の物が市販されていますので、

 その様な素地を使う事も一方法です。陶芸材料メーカーのカタログ等で確認して下さい。

 窯が早く冷える原因は二つあります。

 1) 窯の蓋を早く開いた場合。

  焼き上がりを早く確認したいと、十分冷えていない状態で窯の蓋を開き、外気が

  入り込んで窯が冷える状態です。

  ① 昔から、窯を冷やす時間は、窯を炊いた時間と同じ時間と言われていますが、

   これは大きな窯の場合で、小規模の現在では、必ずしも当てはまりません。

   現在では、焼成時間も冷却時間も大幅に短く成っています。

  ② 当方では、最低100℃以下に成った段階で窯の蓋を開けています。

   この温度でも手袋は必要です。時間に余裕が有りましたら、50℃程度まで下がる

   まで、待つべきです。

  ③ 100℃の状態でも、窯出し直後は「チンチン」と釉に貫入が入る音がします。

2) 窯が早く冷えるの防ぐ方法。

 ① 田中様の窯は電気を使用しいると思われます。

  徐冷する為に、冷却過程で弱く通電し急冷を防ぐが事できます。

  冷め割れは、600℃~500℃の間の急冷で発生すると言われ、原因は素地中の石英が

  この温度範囲で結晶構造が変化し、急膨張を起こす為と言われています。

 ② 窯詰めを検討する。

  窯は下部から冷却し、上部ほでゆっくり冷えます。

  それ故、割れ易い素地の作品は、窯の上部に窯詰めし、急冷を防ぐ方法も有ります。

 ③ 窯が早く冷えるのは、作品の量が少ない為でも有ります。

  作品の熱容量が少ないと、窯の内部は速く冷めます。それ故作品の量を多くすると共に、

  作品以外の熱容量の多い物を窯詰めすると有効です。作品の肉厚を厚くする事も大切です

  窯がいっぱいとの事ですが、上下方向などに作品が入らない程度の小さな隙間があるはず

  です。例えば、棚板を支える小さな支柱などを隙間に詰め込んだり、棚板の数を増やしたり

  又は棚板を二枚重ねにして使用する等の方法があります。

  棚板が高価であれば、手製の粘土板を作りる事で代用できます。

  その他、割れた作品の欠片(かけら)等(但し施釉の作品は溶着に注意)を詰め込み、

  熱量を長く保持する方法もあります。素焼きした大小の粘土玉を隙間に入れる事で

  熱容量を増やす事が出来ます。

  注:熱容量が大きいと、温まり難く冷め難く成る事です。

以上決定的な方法を提示できませんが、色々試行錯誤して試して下さい。

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