わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

懐石道具 (向付2、黄瀬戸)

2010-06-10 22:55:34 | お茶と「茶の湯」と茶道具(茶陶)
茶道具の、向付の話を、続けます。本日は、「黄瀬戸の向付」です。

懐石道具の中で、飯茶碗や、汁茶碗など、漆器製の器が多く、陶磁器製の向付は、大変目立ち、

華が有ります。

黄瀬戸釉は、古く鎌倉時代に、始まったとも、言われています。

室町時代にも,透明性の黄釉の掛かった、茶碗が瀬戸や美濃で、焼かれていました。

桃山時代に入ると、油揚げな様な、失透性の黄釉の掛かった、黄瀬戸が焼かれる様になります。

 ・ 桃山時代の黄瀬戸には、茶碗として作られた物は少なく、多くは向付として、焼かれた物を

   転用したものです。

    (銘:難波=なにわ、の黄瀬戸茶碗も、元々は、向付であったと、思われています。)

黄瀬戸は、桃山時代、1573~95年の短い 間に、優れた器を残し、姿を消していきます。

1) 黄瀬戸向付の特徴

  ① 形はシンプルな、円筒形(半筒状)や、丸い(円形)物で、志野の向付と異なり、意図的に

    歪ませる事は、ほとんど無く、形の種類は、多くはありません。

  ② 轆轤挽きし、薄く作られています。 高台は、削りで、低い輪高台が、多いです。

    又、口縁が、端反(はたぞり)に成っている物も、多いです。
   
  ③ 装飾は、胴に一本、凸状に紐が巻かれている(胴紐と言う)作品や、胆礬(たんぱん)と呼ばれる

    装飾があり、「あやめ手」と言い、細い線描きの、草花文が施されています。

   ・ 黄瀬戸の中でも、古い物には、印花の様な、菊や桜の花を、判で押した、押文が

     多用されています。

   ・ 胆礬は、外側から、内側に、緑色が抜けている、抜け胆礬が、珍重されます。

  ④ 釉は、木灰による、灰釉で黄(又は、黄褐色)色で、釉肌も柚子肌で、油揚げを思わせる物を、

    「油揚げ手」と呼ばれ、明るい光沢のある、貫入の入った黄釉です。

  ⑤ 向付は、五客揃いが、一般的です。必ずしも、絵柄(模様)を統一する必要は有りません。

2) 粘土について

  ① 土は、美濃や瀬戸で産出する、白い色の、「五斗蒔土(ごとまきつち)」です。

  ② この土は、生乾きや、素焼の時に、乱暴に取り扱うと、割れが入る事が、あります。

  ③ 又、粘土はさくいため、焼き上がりも、柔らか味のある雰囲気が、残りますが、水を含み易い

    特徴もあります。但し、最近は改良された粘土も出ています。

  ④ 高台すべてに施釉をし、カビや汚れ等の発生を防ぎます。

    使った後は、良く乾燥させた方が良いです。

3) 現代の黄瀬戸

   現存する、桃山時代の黄瀬戸の作品は、少ないですが、昭和初期以降、加藤唐九郎初め、

   各務周海氏など、黄瀬戸を作っている作家も、多いです。

次回は、「織部の向付」に付いて、述べる予定です。
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