わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

素朴な疑問 126 辰砂釉とは?

2015-04-29 22:38:13 | 素朴な疑問
1) 辰砂(しんしゃ)とは、本来天然に存在する「朱」の硫化水銀(HgS)の事ですが、辰砂釉

 は硫化水銀を利用した釉と言う訳ではありません。基礎釉に酸化銅を添加し、更に還元焼成

 する事で朱紅色に発色する釉を言います。その発色の違いによって、牛血紅(ぎゅうけつこう)

 火焔紅(かえんこう)、桃花片(とうかへん)と呼ばれています。

  注:・ 牛血紅は辰砂の中で代表的な色で、牛の生血の様に派手で力強い赤色(ルビー色)に

     成っています。1700年頃に景徳鎮で作られたと言われています。我が国では宇野仁松氏

     (1864~19337年)が作った釉が著名です。尚、赤い色の調子によって、鶏血紅(けいけつ

     こう)や猪肝紅(ちょかんこう)と呼ぶ場合もあります。

   ・ 火焔紅は燃盛る炎の様に、真紅の上に藍紫色の煙がたなびいている様子に成っています。

     藍紫色の他に、白紫色の場合もあり青味を帯ます。この釉には、酸化チタン(ルチル)

     や硫酸バリウム、酸化錫(すず)などが添加され、これらの微細な結晶が釉に浮いている

     為に、光が分散、反射され紫や青味を帯びると考えられています。

   ・ 桃花片は海棠紅(かいどうこう)とも呼ばれ、穏やかな薄い紅色に発色する物です。

     酸化銅が0.3~0.5%程度と極めて少量です。但し、焼成方法が極めて難しく作るのは

     非常に困難との事で、作品の数も少ないそうです。

 2) 釉の配合は、基本的には、織部釉と同じです。違いは、辰砂は還元焼成で、織部釉は酸化

   焼成で緑色になります。

  ① 銅を含む釉は、酸化焼成で緑系に発色します。これは、酸化第二銅(CuO)の色です。

    還元焼成では、酸化第一銅(Cu2O)となり、美しい赤色に発色します。

  ② 銅を含む釉には、生釉とフリット釉がありますが、辰砂釉は生釉を用いた釉をいいます。

    フリット釉の場合の朱紅色は、一般に銅赤釉と呼んでいます。

  ③ 辰砂釉の赤色が映えるには、素地が白い方が効果てきです。

    一般には、素地の色を問題にしませんが、素地の色も大切です。

  ④ 酸化銅の含有量と色調。

    最も良い色を出すには、銅が釉の0.5~0.5%程度の量が必要です。但し次に述べるように

    銅は高温で揮発しますので、2%程度の銅を添加します。銅の割合が増えるに従い、色が

    濁ってきます。10%を超えると、黒色になります。

  ④ 辰砂釉の掛け方。

   銅を含む釉やその化合物は、高温で容易に揮発し消失する性質があります。

   そこで、若干異なる釉を二種類用意し、二重に掛けて揮発を抑えると共に、積極的に還元焼成

   を行うのが良いとされています。

   ) 素地に近い層には、酸化銅と高温で還元作用を起こす酸化錫を1%程度添加した釉を

     使います。

   ) 上の層には、酸化錫1%を含み、酸化銅を含まない釉を掛けます。

   ) 勿論焼成は還元焼成で行います。そうする事で綺麗な赤が出ると言われています。

以下次回に続きます。

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素朴な疑問 125 釉薬の性質を変えるには7?

2015-04-27 20:28:28 | 素朴な疑問

① 石灰三号釉をベースに他の基礎釉を作る。(前回の続きです。)

 ⅰ) 結晶釉を作る。

   結晶釉とは、釉の内部又は表面に目に見える程の大きさの結晶が現れた釉です。

   小さ過ぎて目に見えなくとも、顕微鏡などで確認できる程度の結晶の場合、艶消し

  (マット)釉になります。大きな結晶を作る一般的な酸化物は、亜鉛、チタン、鉄、

   ルチールなどがあります。酸化物の種類によって発色も変化します。

   a) 亜鉛結晶釉: 酸化亜鉛は亜鉛華(あえんか)と呼ばれて市販されています。

    石灰釉に含まれる珪酸と結合して、珪酸亜鉛と呼ばれる大きい扇状の結晶と

    なります。結晶釉の中で最大の結晶を作るとも言われています。

     石灰三号透明釉:酸化亜鉛(亜鉛華) = 100:20~25

    他の結晶釉と比べ、亜鉛華の添加量は格段に多くします。

    尚、酸化ニッケルを1%(1g)添加すると、緑色の釉になります。

   ・ 一般に、作品の何処に結晶が出るか、を予め予想する事はできません。

    出た所勝負になります。

   ・ 亜鉛華を10%程度添加した場合は、結晶釉には成りませんが、融点を下げる

    働きがあります。釉の熔ける温度を下げる一般的な方法です。

   b) チタン結晶釉: 酸化チタンは安定した強力な結晶剤です。

    白濁した(または少しマット化した)パール状に輝く細かい結晶釉です。

     石灰三号透明釉:酸化チタン = 100:10

   c) 鉄結晶釉(鉄赤釉): 茶色地に赤色の結晶が出る釉です。

     石灰三号透明釉:酸化鉄:マグネサイト :骨灰 = 100:15:7:12

     酸化鉄は弁柄を使う事が多いです。

   d) ルチール結晶釉: ルチール結晶釉は朱金地釉と呼ばれる、朱赤の地に金色の

    結晶が生ずる釉です。酸化ルチールは、「金紅石(きんこうせき)」と呼ばれ、

    鉄分を含むルチール鉱物です。酸化チタンと同様な結晶を作りますが、

    鉄分が含まれる為、酸化焼成では乳濁したクリーム色に、還元焼成では青味

    掛かった乳濁釉になります。

     石灰三号透明釉:酸化ルチール = 100:10

   e) 茶金石結晶釉:茶褐色の地に金色の砂鉄の様な細かな結晶がキラキラと輝く

    結晶釉です。

    石灰三号:酸化鉄:酸化チタン:マグネサイト:亜鉛華  =100:10:11:13

     酸化鉄を黒浜(砂鉄)に置き換えると、更に変化に富んだ結晶が得られます。

   尚、結晶を成長させる為には、徐冷をすると良いと言われています。徐冷の方法は

   結晶釉によって若干の違いがありますが、おおよそ焼成温度より100~200℃

   程度低い温度で数時間保持すると良いとの事です。

   但し、上記調合例は、窯の焚き方など色々な条件で、結晶の出具合も変化しますので、

   一つの参考として読んで下さい。

   (必ずしも、結晶が出来る事を保障するものではありません。)

以下次回に続きます。

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素朴な疑問 124 釉薬の性質を変えるには6?

2015-04-25 22:41:38 | 素朴な疑問
8) 市販の石灰系透明釉を他の釉に変化させる。

 ① 石灰三号釉をベースに他の基礎釉を作る。(前回の続きです。)

  ) 黄瀬戸、織部、瑠璃(るり)、青磁釉を作る。

   a) 黄瀬戸釉は、透明感のある黄色に仕上がる釉です。鬼板などで下絵付けした上に施釉

     する事で、絵付け文様も表現できます。

     ・ 石灰透明三号:弁柄 = 100:2 (重量比、以下同じです。)

     ・ 石灰透明三号:黄土 = 100:10

     ・ 石灰透明三号:弁柄:松灰 = 100:2:40

     ・ 石灰透明三号:黄土:松灰 = 100:10:40

    黄土は鉄分を含む土ですが、鉄分の含有量は弁柄のおよそ1/5程度です。

    黄土を添加する事で、ややマット感のある釉肌になります。

    松灰(天然、合成)を添加する事で、釉調に深みが出、柔らかい感じになります。

    尚、天然の灰の方が、成分に「バラ付き」が多いですので、釉調の変化が大きいです。

   b) 織部釉を作る。

    織部釉は人気のある釉です。特に酸化銅を添加した釉で酸化焼成した作品は、青織部と呼ば

    れています。但し、銅は還元焼成すると桃色(ピンク)、赤紫、赤色に変化します。

    これらを織部釉と区別して辰砂釉と呼びます。

    ・ 石灰透明三号:酸化銅 = 100:5~7

    ・ 石灰透明三号:酸化銅:松灰 = 100:5~7:40

    酸化銅のみを添加した釉は、透明感のある釉になりますので、緑色の発色が弱くなる傾向が

    あります。更に松灰を添加した釉は、釉に細かい気泡や貫入が入る為、光が複雑に屈折し

    趣ある釉に成ります。更に、熔け易くなり若干流れ易くもなりますので、部分的に釉溜りが

    起き、色の濃淡も現れます。

    注: 酸化銅は、窯の焼成方法によって、色々な色に発色します。例えば、緑、青、黒、

     紫、赤紫、ピンク、赤色などです。逆に、焼成の度に変化する為、扱い難い顔料とも

     言えます。

   c) 瑠璃釉を作る。濃い青色や紺色の釉になります。

    ・ 石灰透明三号:酸化コバルト = 100:0.3~1

    ・ 石灰透明三号:酸化コバルト:弁柄(又は黄土) = 100:0.3~1:2

    酸化コバルトのみの添加では、鮮やかな青色で趣の無い色になると言う人もいます。

    弁柄などの鉄分を添加すると、釉は緑色掛かった釉になり、落ち着いた色になります。

    酸化コバルトは強烈な色ですので、少量添加するだけで十分です。

    現在の酸化コバルトは、合成品です。更に高価でもありますので、古代呉須などで代用でき

    ます。但し、呉須には不純物も含まれていますので、若干多目に添加します。

    瑠璃釉を厚く掛けると濃い紺色になります。尚、酸化と還元焼成による発色の差はほとんど

    ありません。

   d) 青磁釉を作る。鉄分を少量加え、還元焼成する事で青緑色に発色します。

    ・ 石灰透明三号:弁柄 = 100:0.5~2

    ・ 石灰透明三号:弁柄:炭酸バリウム = 100:0.5~2:20

    炭酸バリウムを添加すると、釉中に細かい気泡が出、深みのあり趣のある釉になります。

以下次回に続きます。
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素朴な疑問 123 釉薬の性質を変えるには5?

2015-04-24 21:56:58 | 素朴な疑問
8) 市販の石灰系透明釉を他の釉に変化させる。

 石灰系透明釉は、安価でごく一般的に使用されている釉です。ご自分でも調合できますし、市販の

 物が、各メーカーから出ています。

 透明釉には一号釉(1280℃=SK-9)と三号釉(1230=SK-7)が著名な種類で、光沢のある

 綺麗な透明に熔けます。貫入が無い様に調合され、下絵付けをした作品に使われる事が多いです。

 ① 石灰三号釉をベースに他の基礎釉を作る。

   市販の釉も年々価格が上昇しています。出来れば一番安価である石灰系の透明釉を利用して、

   自分で調合して、別の釉に仕立て上げればより経済的であり、ご自分の釉を作り出す事も

   できます。 尚、以下の配合は外割りです。即ち透明釉100gに他の材料を指定の割合

   (グラム=g)を添加する事です。

  ) 灰釉風の透明釉をつくる。

    灰釉(かいゆ、はいゆ)は、民芸風の雰囲気を作りだす効果があります。石灰系の透明釉

    より、雅味(おもむき)のある色になります。即ち、灰には主に石灰分やシリカ分が含まれ

    ます。その他に、各種のアルカリ(マグネシウム、ナトリウム、カリウム)や、微量な鉄分

    マンガン、リン酸、炭酸カルシウムなどの不純物が含まれています。その為、淡い色の

    付いた透明釉になります。酸化焼成の場合は黄色味を帯、還元焼成では青味が出易いです。

    当然、灰の種類(天然又は合成の松灰、栗皮灰、樫灰、くぬぎ灰、土灰など)によって

    若干の色の差が出ます。 石灰透明釉:各種灰=100:40

    但し、藁(わら)灰の場合には、透明に成らず乳濁し易いです。

  ) 白マット釉を作る。

    マグネサイトを添加し、結晶作用によってマット化します。

    石灰透明釉:マグネサイト=100:15

  ) カオリンマット釉を作る。

    粘土質のカオリンを添加し、熔け不足気味の白いマット釉を作ります。

    石灰透明釉:カオリン=100:15

  ) 乳濁釉を作る。

    マグネサイトを添加し、結晶作用によって乳濁化します。

    マグネサイトは5%程度を添加すると、乳濁が始まります。但し添加量が増えると、マット

    化してしまいます。  石灰透明釉:マグネサイト=100:5

  ) 黒釉、黒マット、飴釉、そば釉、黒そば釉薬を作る。

    主に鉄分である弁柄(酸化第二鉄)を添加します。釉の種類によってその割合や、他の材料

    を添加します。

   a) 黒釉(黒天目): 酸化焼成では、光沢のある真っ黒い釉に焼き上がります。

     還元焼成では、茶色風になり易いです。釉を薄く掛けた場合も、茶色風になります。

     尚、黒さを出すには、黒色顔料を添加したり、マンガンを入れると良いと言われています

     石灰透明釉:弁柄=100:10

      注: 黒色顔料は、鉄分、マンガン、コバルト等の着色金属から出来た物で、化学的に

       安定した材料ですので、釉に混ぜると黒が増します。

   b) 黒マット釉:黒釉に20%のナグネサイトを添加し、マット釉に変化させます。

     石灰透明釉:弁柄:マグネサイト=100:10:20

   c) 飴(アメ)釉: 素地の色により、明るい茶色から黒っぽい茶色になります。

     石灰透明釉:弁柄=100:7

   d) そば釉: 飴釉の中に金色の結晶である、斑点が表れる釉です。厚く掛けると斑点の結晶

     は大きくなります。

     石灰透明釉:弁柄:マグネサイト=100:7:5

   e) 黒そば釉: 黒釉に金色の結晶である、斑点が表れる釉です。

     石灰透明釉:弁柄:マグネサイト=100:10:5

以下次回に続きます。
   
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素朴な疑問 122 釉薬の性質を変えるには4?

2015-04-22 22:03:16 | 素朴な疑問
5) 釉の煮えの改良方法。

  釉の煮えとは、焼成後に釉が作品上を薄く流れ去って、光沢の無い斑点状態のピンホールが

  発生した状態を言います。原因は、部分的に温度が高い場合や、炎が一部に集中して釉が熔け

  過ぎた場合に起こります。

  この場合、窯の中の温度を均一にする為に、窯詰めの方法を変えたり、場合によっては窯の

  改良で対処する方法もありますが、ここでは、釉で対処する方法をお話します。

 ①  熔け過ぎを是正する方法。

  釉のアルカリ成分の量を一定にして、アルミナと珪酸(シリカ)の比率を変えずに、量を増や

  せば熔ける温度を上げる事が出来ます。即ち、現在の釉にアルミナ成分とシリカ成分を増やせば

  良い訳です。

 ② 釉の粘度を高くする。

  酸化亜鉛(亜鉛華)や石灰、マグネサイトは、釉の粘度を上げる働きがあります。

6) ブク(気泡)が発生する時の対処方法。

 ブクとは、釉の表面に泡状の気泡が凸状に現れる現象です。又、ピンホールが集まったものと見る

 事もできます。

 ① ブクの原因。

  ) 施釉する際、素地との間に空気(気泡)が入り込む為や、釉の中に気泡が存在する場合

    に起こります。特に小さな穴が付けられている作品では注意が必要です。

  ) 釉と釉の間にガスが閉じ込められる場合。

    二種類以上の釉を重ねて施釉する際、熔融温度に差があれば、先に熔けた釉からガスが

    発生し、これが、上の釉で閉じ込められる場合があります。

  ) 釉に含まれる灰類の「灰汁(あく)」が存在する為。

    注 灰汁とは: 植物を焼いた灰を水に浸して得られる上澄み液の事です。

     ナトリウム、カリウム、マグネシウム等を含み、アルカリ性を示します。

     古来、洗剤、漂白剤、染色などに使用されていますが、焼き物では灰汁は、悪さをする

     物質です。

    天然の灰類は、釉に使う為に灰汁抜きを行います。アルカリの含有量が少量の場合には、

    水に溶けますが、多目の場合は、灰汁抜きが不十分の為、完全に水に溶けず、残る事に

    成ります。

 ② 解決方法。

  ) 釉の濃度が濃い場合や、粘性が強い場合、釉の中に細かい気泡が残る事があります。

    細かい気泡であっても、高温では膨張しブクを発生させますので、濃度や粘性の調整を行い

    気泡が残らない様にします。又、小さな穴の中まで、釉が入り込む必要があります。

  ) 熔融温度に差がある場合、温度差を無くす様に調合する。(釉を熔け易くする方法などは

    本ブログで既に述べていますので参考にして下さい)

    又は、先に、熔け難い釉を塗ってから、熔け易い釉をその上に、掛ける事です。

  ) 灰汁抜きをしっかり行う。

    市販の灰はしっかり灰汁抜きが行われていますが、ご自分で作った天然の灰は、不十分の

    場合がありますので、調合する前に水に付けながら、何度もに水を交換し灰汁を抜く事です

7) 釉のあばた(痘痕)現象の対処方法。

  「ブク」が大きく単発的なのに対し、「あばた」は釉の表面に、「にきび痕」の様な細かい

   凸凹が出来る状態の事です。

 ① 原因は、以下の事が考えられます。

  ) 釉に硫黄成分が含まれている場合、

  ) 不純な顔料や酸化物が含まれている場合、

  ) 過度に温度上昇させた場合などで起こります。

 ② 対策方法。

  ) 釉に硫黄分がある場合、痘痕の他に気泡が存在し、その外側は乳濁状態になります。

    この釉で還元焼成すると、痘痕の状態は酷くなりますので、酸化焼成する事です。

  ) 不純な金属酸化物には、クロム、ニッケル、アンチモン等があり、これらが多く含まれた

    釉では、大きな気泡が発生し易いです。マンガン、コバルト、ニッケルを含む釉では、

    高温状態で、酸素のやり取りが頻繁に行われる結果、気泡(ガス)が出来易くなります。

  ) 高温の窯の中では、ある種の酸化物は他の酸化物に置き換わります、その結果その際、

    素地との関係が変化し、素地からガスが放出し痘痕や気泡(ブク)が発生する場合があり

    ます。

以下次回に続きます。

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素朴な疑問 121 釉薬の性質を変えるには3?

2015-04-21 16:13:36 | 素朴な疑問
3) 釉の光沢が強過ぎるのを減らしたい場合と、光沢を増したい場合の処理。

  現在使っている釉が、光沢があり過ぎて、釉の色彩に落ち着きの無いと感じたり、光沢を少なく

  したいと思う時があります。逆にマット(艶消し)感が強過ぎ、若干光沢を付けたいと思う時も

  有るかも知れません。その様な場合どのような物質を添加したら良いかが判れば、実行したく

  なります。

 ① 光沢に関係する物質。

  一般に良い釉と言われるのは、「光沢があり良く熔けている状態」になった物と言う人もいます

  それ故、市販されている釉も、光沢のある物が多いです。しかし、光沢の無い(又は少ない)

  釉を好む人もいます。

 ) Al2O3-SiO3図から判る事。

   注:Al2O3-SiO3図(アルミナーシリカ相関図)とは:アルミナ成分とシリカ成分の割り合い

    で、釉の性質がどの様に変化するかを表したグラフです。

  アルミナ成分が多くなるほど、マット調が強まり、シリカ成分が増すにつれて、光沢のある釉

  になります。更にシリカ成分が増すと、乳濁釉になります。乳濁釉も光沢があれば光沢釉に

  分類されます。それ故、シリカ成分を多く添加すると、光沢のある釉になります。

  逆にアルミナ成分を増すと、マット系に近づきます。

 ) 光沢があり過ぎた場合、光沢を押さえる方法。

  a) アルミナ成分である、「カオリン」や「天草陶石」を加えると、失透感が出て光沢が押さえ

    られます。

  b) 「マグネサイト」や「酸化チタン」等、結晶を起こす物質を少量加える事で光沢を押さえる

    事が出来ます。

 ) マット感が強すぎる場合、少なくする方法。

   マット調になる原因は、熔け不足、結晶が発達し過ぎた為、アルミナ成分が多い等が挙げられ

   ます。

  a) アルカリ類を増やして、釉の熔け不足を解消する。

   一般に、灰類を使用します。特に合成土灰を添加します。又、亜鉛華を添加し熔け不足を解消

   させます。

  b) 結晶釉の場合、窯焚きの仕方によって、結晶の促進を抑える事ができます。

   結晶釉では、窯の冷却時にある温度範囲で徐冷する事が多いです。それ故その徐冷の温度

   範囲を短時間で通過させると、結晶の成長が抑えられます。

  c) 酸化リチユムは0.5%程度を添加するだけで、釉の光沢を増し、機械的強度も増します。

4) 「釉飛び」、「釉切れ」と「めくれ」

   いずれも、焼成で素地表面より釉が弾いたり、めくれて剥がれたりする現象です。

  ① 原因としては、釉が収縮し過ぎて素地から浮き上がれ事です。

   その他に、埃(ほこり)や何らかの粉末(釉、紙やすりクズ等)が作品に付着したまま

   施釉した為です。又、素地と釉の間に空気などが入り込み、焼成で釉が浮き上がる事も

   あります。更に、釉を二重掛けした際、二度目の釉の水分を一度目の釉が吸い込み、膨張し、

   釉を剥がす事もあります。

  ② 「釉飛び」は貫入と反対現象と思われています。即ち釉よりも素地の方が収縮率が大きい時

   に起こります。焼成温度を幾分下げる事でも解決できます。

  ③ 対策。

   釉に問題がある場合と、施釉方法に問題がある物に分かれます。

   ここでは、釉に問題がある(釉を改良すれば防げる)場合を取り上げます。

  ) 釉の接着力を強くする。

   一般に、釉にCMC(化学のり)を使い、接着力を与え剥がれ難くします。

  ) 釉の縮みを少なくする。

   微粉末の珪酸を加える。又は酸化錫(すず)を少し加える事で改善されます。

5) 釉の煮えの改良方法。

以下次回に続きます。

 
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素朴な疑問 120 釉薬の性質を変えるには2?

2015-04-19 21:49:34 | 素朴な疑問
1) 釉の熔け過ぎ、熔け不足対策。(前回の続きです。)

 ⑤ 熔け不足の原因。

  ) 釉の主成分は長石ですが、熔融温度が高い為、単体では熔けません。そこで、アルカリ類

   を添加して、融点を下げるのが一般的な方法です。勿論、珪酸を減らす事でも対応できますが

   既存の釉から取り除く事は困難ですので、アルカリ類を増やす事に成ります。

  ) アルカリ類の種類。

   a) 石灰系の釉では、アルカリ成分に石灰を用いています。灰系の釉ならば、各種の灰が

    使われています。それ故、石灰や、松灰、藁(わら)灰、樫(かし)灰、栗皮灰、土灰等を

    添加すれば、釉は熔け易くなります。尚、灰類には天然の物と、合成の物があります。

    釉を熔かす作用は似たり寄ったりです。

   b) アルカリ類と同じ働きをする物質に、上記の他に酸化亜鉛(亜鉛華)や炭酸バリウム、

    マグネサイト等があります。特に、亜鉛華は良く使われる熔剤です。透明釉などの融点を

    下げるのに最適です。炭酸バリウムは、熔かす力が強く、釉に粘りを与え貫入を少なくする

    作用があります。添加量が増すと細かい気泡が発生し、乳濁釉になります。

    マグネサイトは、結晶作用を伴いますので、熔融剤としてよりマット系の釉に添加(5%程度)

    する事が多い物質です。

2) 釉の貫入(小さなひび)を減らす方法と、「ひび釉」を作る方法。

  「ひび」があると、汚れ易くなると言う欠点もありますが、その「ひび」に適度の茶渋が付き、

  趣きある様子に成りますので、必ずしも悪い訳ではありませんが、一般には「ひび」が無い方が

  良いと言われています。

 ① 釉の「ひび」は素地と釉との収縮率の違いによって起こります。即ち、釉の方が素地より

   大きく縮む為に起こる現象です。(釉>素地の関係です)当然その差が大きい程ひびが大きく

   沢山出来る事に成ります。「ひび」は釉に起こり、素地まで「ひび」が入る訳ではありません

 ② 「貫入(ひび)」を少なくする方法。

  ) 珪酸分の多い釉は、粘りが少ない為、小さな「ひび」が入り易いです。

   釉に粘りを与える為に、アルミナ成分である「カオリン」や「蛙目粘土」、「天草陶石」

   などを添加します。添加量は10%程度です。又「炭酸バリウム」を少量(5%程度)加える事で

   「ひび」を少なくする事が出来ます。

  ) 錫(すず)を少量加える事で、「貫入(ひび)」を少なくできます。

  ) 釉を厚く掛けると「ひび」が入り易くなります。それ故、やや薄く掛けるる事で、減らす

    事も出来ます。

 ③ 「ひび」が入った釉を「亀裂釉」といいます。

   薩摩焼や相馬焼き、粟田焼き等は「ひび」が入っているのが、魅力で「ひび」は景色の一つに

   成っています。「亀裂釉」は、「鮫肌釉」や「柚子(ゆづ)肌釉」、などとも呼ばれ、

   「ひび」の程度によって、氷裂紋(ひょうれつもん)、魚子紋(ぎょしもん)、牛毛紋

   (ぎゅうもうもん)たどと命名され、珍重されています。

  ) アルカリ成分を多くする。(アルミナ成分を少なくする)

   アルカリ成分として、炭酸バリウム、マグネサイト、各種の灰(天然、合成)などがあります

  ) 釉を厚く掛ける。青磁は釉を厚く掛ける為、二度三度と塗り重ねますと、「貫入」が

    入り易くなります。

  ) 窯の扉を早めに開け、冷却を早める。

    本焼きの窯出しの際、作品が外気に晒されると「チンチン」と言う音がします。

    これは、釉に「ひび」が入った時に起こります。即ち釉が縮み亀裂が入った音です。

    この音は窯出し後、数日間続く場合があります。窯の扉を早めに開けると、「チンチン」と

    なる音は数が増えます。

  ) 亀裂では有りませんが同じような現象に「梅皮(かいらぎ)」や「虫食い」の現象が

    あります。これは、釉が極端に縮んだ結果です。「梅皮」は抹茶々碗の高台脇や高台内に

    出来る小さな釉の塊群です。「虫食い」は作品の端に出来る釉飛の事です。

    (尚、釉飛に関しては、後日お話しする予定です。)

以下次回に続きます。
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素朴な疑問 119 釉薬の性質を変えるには1?

2015-04-18 22:20:27 | 素朴な疑問
常日頃使っている釉でも、特に不都合ではないが、少し変えたいと思う事も多いと思われます。

釉の知識のある方ならば、ご自分で調合し、思う通りの釉に改造できますが、市販の釉を使っている

場合には、どの様にすれば良いかと、思い患う事もあるかも知れません。又、手持ちの釉を使い

何かを添加して、別の釉を作り出したいと思っている方もでいるでしょう。

今回のテーマは、その様な方に対し、少しでもお役に立てる事柄を述べたいと思います。

1) 釉の熔け過ぎ、熔け不足対策。

 ① 市販の釉には1230℃で焼成する物以外に、1180℃、1200℃、1250℃、1280℃、1300℃等と

  表示されているのも多いです。これ以外の温度表示されている釉もあります。

  但し、陶芸の窯は容量の大小の他、燃料の差、酸化還元の差、焼成時間、作品の量と窯詰め仕方

  など、多くの要素によって、常に一定に焼成できる訳でもありませんが、より安定した釉に

  したいと思うのは人情です。

 ② 釉の性質にもよりますが、多くの場合熔けの過不足は、焼成温度の調整で対応できます。

  但し、同じ窯で複数の釉を使う場合には、窯の最高温度は変える訳には行きません。そこで、

  熔け過ぎを防ぎ、熔け不足を解消する為に、別の何かを添加する事で解決する必要があります。

 ③ 熔け過ぎる釉と、熔け不足の釉の表情。

  ) 熔け過ぎる釉で問題に成るのは、釉が作品の表面を流れ落ち、棚板まで達する事が最大の

    問題になります。途中で止まる分には、模様として見れば良い訳です。

  ) 釉には元々流れ易く調合された釉があり、市販されています。又、流れる事で本来の色調

    が現れるものもあります。例えば、結晶釉と呼ばれる釉は、釉が流れて移動する事により、

    結晶が成長すると言われています。又、織部釉も若干流れる事で綺麗な色に発色すると

    言われています。

  ) 熔け不足の表情としては、光沢釉であるにもかかわらず、熔け不足でマット調になる

    場合があります。更に、表面が滑らかに成らず、「ザラツク」感じとなります。尚、この様

    なマット状の釉では、器に汚れが付き易いとも言われています。又、水漏れの原因になる
   
    場合もあります。

 ④  熔け過ぎの原因。(ここでは、焼成温度に付いては除外して考えます。)

  ) 釉の基本的構造は、主に釉を熔かす成分(アルカリ類)、固める成分(珪酸類)、粘る

   成分(アルミナ類)の三要素から成っています。それ故、熔かす成分を少なくするか、固める

   成分を増やせば良い訳です。但し、一度調合された物から、何かを減らす方法は困難ですので

    固める成分か、粘る成分を増やす事で対応します。

  ) 固める成分の珪酸はSiO2で表わし、「シリカ」と呼ばれる物質で、珪石や珪砂、石英、

   水晶などに多く含まれています。一般的には、珪石や珪砂を使います。これらは、陶芸材料店

   で、容易に入手できます。又、珪酸は熔融温度を上げる働きもあります。

   但し、加え過ぎると、艶消し釉になります。

  ) 粘る成分のアルミナ分(Al2O3)を添加する事により、流れ過ぎるのを抑える事ができ

   ます。アルミナ成分は、長石やカオリン、粘土、黄土等から採るのが一般的ですが、添加する

   際には、水酸化アルミニュウムを使用します。これは、素地と釉の密着を良くする働きがある

   からです。長石やカオリンの添加では、釉の濁りも少なく、艶消しになる事は少ない利点が

   あります。

  ) 釉の調整以外でも、流れ過ぎを防止する事が可能です。

   即ち、施釉を厚く掛けると、釉は流れ易くなります。それ故、若干薄く掛ける事です。

   又、窯の中で比較的温度の低い場所があれば、そこに窯詰めする事で、釉の流れ落ちるのが

   防止できます。

 ⑤ 熔け不足の原因。

以下次回に続きます。
 
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素朴な疑問 118 陶芸での失敗事例22?

2015-04-17 21:40:35 | 素朴な疑問
8) 作品移動時の失敗。(前回の続きです。)

 ⑦  窯詰め、窯出し時の失敗。

  ) 本焼き後の窯出しの失敗。

   a) 本焼きの窯出し方法は、素焼きの窯出しとほとんど同じです。

    但し、作品の釉が熔けていますので、若干の違いがあります。

    窯の扉を開ける瞬間は、何回本焼きしても、緊張するものです。今回は順調に温度も上がり

    窯焚きは上手くいったと思っていても、いざ窯の扉を開けるまでは、結果が判明しません。

    扉を開け一目見れば、焼きの良し悪しが判断できます。例え、一部のみしか見えなくても、

    まだ見えない部分の状態が把握されるからです。

   b) 最初に目に入るのは、釉の色です。勿論、作品の形が崩れるている場合や割れている事も

    有りますが、稀な事です。一般には、釉の良し悪しで判断します。それ故、窯出しは昼間の

    日中に行う事が大切です。夜間や電灯の光等では、釉の本来の色が見え難いからです。

    勿論、太陽の明るい光の下で色を見る事もありますが、一般には、日陰の状態か曇天の時が

    良いと言われています。尚、色の確認は、窯出し後に時間を掛けて見ることで、別の発見が

    ある物です。

   c) 釉の流れ具合の確認をします。

    流れ易い釉の場合、適度に流れ望みの作品に成る事もありますが、作品の表面を流れ落ち

    棚板まで到達している作品もあります。この様な時は、棚板から上手に剥がさないと、

    作品が壊れます。特に、「鏨(たがね)」等で無理やり剥がすと、棚板に接している作品の

    一部が割れて「ギザギザ」に成ります。

    棚板には、「アルミナコーチング」と呼ばれる物質が塗られています。これは棚板を高熱

    から守る役目もありますが、主に釉が棚板まで流れた際に、このコーチング材を境に棚板

    から剥がせる為でもあります。即ち、流れ落ちた棚板の裏側から、木槌などで叩き衝撃を

    与えると、コーチング材が作品側に付き、棚板から剥がす事ができます。

    但し、この付着物を取り除くには、「グラインダーやダイヤモンドヤスリ」で削り取る必要

    があります。この作業は意外と大変です。尚「ダイヤモンドヤスリ」は100円ショップで、

    色々な形状の物が市販されています。

    作品を剥がした棚板は、コーチング材が剥がれ、地肌が露出しますので、コーチング材を

    塗り、補修します。補修の際棚板の表面が凸凹しますので、紙やすり等で、平坦にしておか

    ないと、次回の焼成で、作品が水平に置けません。

   d) 望みの釉の色が出なかった原因や、釉が流れ落ちた原因など、施釉の方法や窯焚きその他

    での思い当たる処がある場合には、次回以降の参考にする為、それをノートに記し、

    その対策を考える様にします。但し、意外と原因は判明しない場合が多いです。

   e) 本焼きした作品の底は、「ザラツイテ」いるのが普通です。勿論、素地の肌理の細かさに

    よってその差があります。この状態ではテーブル等を傷付ける恐れがありますので、

    必ず砥石(といし)を掛けたり、作品同士の底を合わせる「共擦り」し、滑らかにします。

    但し、「紙やすり」では綺麗に出来ません。

   f) 水を長い時間入れる花瓶類では、水漏れの予防をする必要があります。

    但し、水が「ポタポタ」漏れ出す場合には、水漏れ防止剤でも止まりません。

    この場合には、再度施釉して本屋焼きする事です。

    水漏れは単に底のみとは限りません。即ち、器の胴体部分から、汗の様に吹き出る場合も

    有ります。但し、胴体からの水漏れが少量の場合、空気中に蒸発してしまう為、気が付か

    ない場合もあります。又、食器類の畳み付き部分は、施釉しませんので、陶器では若干水を

    吸い込みます。又、高台内に施釉しない抹茶々碗等もあります。その為、乾燥不十分で

    作品の底を中心に「黴(かび)」が生える事もあります。これらの作品には、市販されて

    いる水漏れ防止剤を流し込んだり、筆で塗ったりします。必ず、食器用を使う事です。

    水漏れ防止剤を塗った場合、乾燥させる為、一昼夜は必要で、その間水洗いや水で濡ら

    したりすると、水漏れ防止剤の効力が失われます。

以下次回に続きます。
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素朴な疑問 117 陶芸での失敗事例21?

2015-04-16 22:19:06 | 素朴な疑問
8) 作品移動時の失敗。(前回の続きです。)

 ⑦  窯詰め、窯出し時の失敗。

  ) 本焼きの窯詰め時の失敗。

    本焼きは素焼きより、500℃程度高い温度で焼成し、しかも、なるべく温度差が出ない様に

    しますので、窯詰めの方法にも配慮が必要です。

   a) 窯には、その窯特有の癖(くせ)があります。

    例えば、窯の中で、望みの色に仕上がるのは、この場所と限定される場合があります。

    但し、その場所は釉の違いによって、色々の場所に点在する事になります。

    それ故、施釉した作品は、施釉の種類によって、その場所に詰める必要があります。

    窯によっては、比較的温度の高い場所や、低い場所、酸化焼成になる場所や、還元が強く

    出る場所もあります。窯の大きさが大きい程この傾向は強く出ます。

    最適な場所は狭い場合が多く、同じ釉の作品が多い場合には、一部を次の窯焚きに回すか、

    次点(次に良い)の場所に窯詰めする事になります。

   b) 釉の色は似たり寄ったりですので、間違わない事です。

    特に、施釉が終わった状態では、中々判別が出来ません。概ね(おおむね)白色系、茶褐色

    緑色系、青色系、黄色系、黒色系に別れますが、例えば、白い色の釉には、透明釉、乳白釉

    藁白釉、白萩釉、志野釉、白マット釉など多彩で、各々焼成する場所が異なる場合があり

    ます。当然、施釉してから窯詰めまでの間には時間的な「ズレ」がありますので、何らかの

    方法で作品に釉の名前(又は記号)を付けておく必要があります。

   c) 作品間と、作品と窯との間には、適度の隙間が必要です。更に、作品を詰め過ぎない様に

    する事が大切です。逆に「スカスカ」に隙間が空いた時にも、温度が上昇しない場合が

    多いですので、何らかの対策を考える必要があります。

   ・ 詰め過ぎの場合には、火や熱風の通り道を塞ぐ結果、均等に熱が伝わらずに、焼き不足の

     作品になり易いです。火(炎)を使う場合、倒炎式の窯が多く、一度天井まで上った炎は、

     天井で反射し、窯の下部に向かいます。天井部分に隙間がないと、炎は確実に反射して

     くれません。又、作品間に手の指一本程度の隙間があると、炎はその間を通り、下部へ

     流れていきます。この現象を「炎が伸びる」と言い理想的な焼成になります。

   ・ 作品の量が少ない場合には、作品を暖める熱が作品に消耗されずに、どんどん外に逃げて

     しまいます。更に、作品の総蓄熱量も少ないですので、窯の中には熱が留まらず、無駄に

     外に廃熱する事になります。この場合、ダミーの物を置く事です。即ち、棚板を支える

     支柱などを隙間に立てるのも一つの方法です。

    ・ 指一本の隙間を設ける利点は、作品の位置を変える時都合が良い為でもあります。

      即ち、一度窯詰めした作品を、何らかの理由で、他の場所に移動する場合も珍しくあり

      ません。その際、作品を隣の作品にぶつからない様に取り出すには、指の入るスペース

      が必要になります。

    ・ 余談ですが、窯の壁が薄い場合にも、熱は壁を通して外部に逃げ、温度が中々上昇

     してくれません。   

   d) 窯の構造によって窯詰めの方法が異なります。

    窯には、上扉型、横扉型、及びシャトル型などがあります。即ち、上扉型は上部より作品を

    詰めますので、当然一番下から順番に詰め、積み上げる事になります。窯の容量にも寄り

    ますが、上から覗き込む様に作業する事に成ります。

    横扉型は棚板が前後に敷かれた場合は、奥から詰める事になります。窯の底の高は、かなり

    低い位置になります。それ故、体を丸める様にして作業する事になります。これらの窯では

    必ず死角が出来、作品の位置関係も推定で判断する事になります。更に、窯詰めする姿勢も

    上体を下にしたり、頭を低くしたりする、背をかがめる必要があり、窮屈になります。

    当然、作品を並べる際にも不安定に成り易いです。作品はしっかり保持する必要があります

    これに反し、シャトル型は窯の外に詰める台を引き出し、前後左右の四方と上部から窯詰め

    する事がで、死角がありません。一番作業が楽で全体が見渡せるのは、シャトル型です。

    シャトル式では、台を移動させますので、不安定な状態で窯詰めする事は出来ません。

    又、窯に入れる時に、作品が窯の壁にぶつからない様にするのは、当然の事です。

  )本焼き後の窯出しの失敗。

以下次回に続きます。
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