わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

陶芸と金属類の関係3

2021-03-02 16:36:25 | 陶芸と金属類

3)金属が独自の色彩を持つ理由。

 各金属はその金属特有の色を発します。

 焼成する以前であっても、焼成後であっても、色を発しますが、焼成前と焼成後では

 同じ場合と、異なる場合が有ります。これは焼成によって高い温度に晒され熱的変化や

 酸化又は還元変化によって化学反応が起こり、色彩が変化する為です。

 ① 陶芸とは直接関係しないですが、金属には炎色反応と言うものがあります。

  ⅰ) 花火の発色は金属の炎色反応による物です。

   この現象は金属の電子が高温により熱エネルギーをもらう事で起こります。

   電子は高いエネルギーをもらうと、より高いエネルギー状態に移行します。

   これを遷移(せんい)と言います。この状態では不安定のため瞬時に元の状態に

   戻ります。その際、余ったエネルギーを光として放出します。

   光は電磁波の一種で波長(振動数)を持っています。エネルギーの強さは波長に反比例し

   紫>藍>青>緑>黄>橙>赤の順に成ります。波長は赤が一番長く、紫が最短に

   成ります。

 ② 金属によって色が異なるのは、結晶構造の違いによる物と思われます。

  物質はその種類に拠って結晶構造が異なります。結晶構造と言うのは、原子の並び方

  の事です。光線が結晶に衝突すると、金属類は、一部は透過する場合も有りますが、

  大部分は結晶原子によって反射されます。その際の反射の違いによって色に差が出ると

  思われています。

 ③ 金属の種類によって、金属の色はおおむね決まっていますが、金属を取り巻く環境

  によって、千変万化します。その為苦労して独自の色(光沢)を開発する人が多いのです。

  ⅰ) 例えば鉄は、純鉄であればステンレスの様に白銀色をしていますが、空気中では

   錆が発生し、赤、黄色、茶褐色、黒色等に変化します。これは酸化作用ですが、水中

  でも起こります。それ故、陶芸では窯の雰囲気や、温度、釉の調合(含有量)によって

   各種の色彩を作り出す事が可能に成ります。  

  ⅱ) 銅で有れば、赤銅色が基本色ですが、酸化作用によって青から緑色へ変化します。

  ⅲ) コバルトは濃紺、青色を基調にしますが、濃淡によって黒色にも出来ます。

  ⅳ) 黄色系であれば、チタンが入っている可能性があります。

    その他、陶芸で使用する金属類は多種に渡ります。

  ⅴ) 二種類以上の金属は高温で混ざり合い、合金を作ります。 

    合金は、発色にも影響します。  

2) 金属結晶釉と金属光沢釉

 ① 釉の冷却時に金属が析出し、結晶化するのが結晶釉に成ります。

  結晶の大小によって結晶構造が見られる物と、見た目では明確な結晶とは確認でき

  なくとも、金属顕微鏡で確認できる細かな結晶が存在すると判る場合が有ります。

  結晶釉と呼ばれる場合、大きな結晶を析出する場合が多いです。

 ② 結晶構造は金属の種類や、結晶時の温度環境や窯の雰囲気によって、千差万別の

  様相を呈します。

 ③ 金属光沢釉とは釉の表面に金属質の光沢が現れる釉です。

  勿論、光沢の無い又は光沢の少ない釉も有ります。これは梨地と呼ばれる場合が有り

  一般にマット釉と呼ばれる物です。

  尚、マット釉では、必ずしも金属が必要と言う訳では無く、ガラス質の成分により

  マット調にする事も可能です。

  光沢は、表面から反射する光の他、釉内の金属結晶からの反射による物です。

  釉内の結晶は大きさと、結晶周辺の色彩によって結晶釉の良し悪しが決まります。

  一方マット釉は表面と釉内に金属結晶が存在していても、表面が滑らかでなく

  細かい凹凸があり、「ザラツイタ」感じの手さわりで有り、光が乱反射してた結果

  光沢が出ません。

以下次回に続きます。 

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陶芸と金属類の関係2

2020-08-10 14:06:23 | 陶芸と金属類

2) 金属の種類は多いが、焼き物に関係する物質は有る程度限定されます。

 地球上で安定して存在する元素は、原子番号1番の水素(H)から92番のウラン(U)まで

 ですが、43番のテクネチウム(Tc)は半減期が短い為、地球上から既に蒸発し存在

 しませんので、元素は91種類に成ります。尚、93番以降の元素は、原子炉の中で

 人工的に作られた元素で、超ウラン元素と言います。

 この中で金属元素は、70種類程度です。

 ① 地球上の金属は酸化物が多いです。

  地球上では空気中の酸素と結合し、酸化物として産出されます。それ故元素のまま

  産出される事は稀です。

 ⅰ) 同じ元素と結合する物質は色々あります。

  例えば単に酸素(O2)のみに結合する物質や、水酸化物(OH)や炭酸化物(CO3)

  硫化物(SO4)、塩化物(Cl2)等と結合したりし、その結合物によって化学的に異なる

  反応(作用)が起こります。大きく変わる物も有ればほとんど同じ効果の物もあります。

  後者であれば代用が利き、手に入り易く単価の安い方の物質を使うと経済的です。

 ⅱ)粘土中に入っている金属類とは。

  a) 一番多い物質は酸化鉄です。主に赤土として産出されます。

   鉄分の含有量によって黄色から薄茶、茶色、濃茶色、黒色を呈します。

   市販されている赤土も産地によって特徴があり、焼き上がりの発色も異なります。

  b) 一般に赤土は焼成温度を下げます。

   即ち耐火度が弱く成ります。但し、収縮率を上げますので、焼き締り易く成ります。

  c) 関東地方に白い土が少ない理由。

   使用する粘土には、各々好みの物が存在するか、好みに合わない土も他の土と

   混合させて好みの土を作る事が可能に成った現在、又は他所から産出する土を容易に

   入手可能な現代では、当地で産出する土を使用する必要は有りませんが、

   出来れば当地から産出する土を何等かの方法で利用するのも、宜しいと思われます。

   関東ローム層は主に富士山や箱根山、浅間山、赤城山、妙義山、男体山等の噴火で

   一万年~数十万年前の間に降り積もった火山灰が風化し、粘土化した物と言われて

   います。火山灰には粘土質の成分が多く含まれています。

   即ちシリカ(SiO2)やアルミナ(AI2O3)成分で、その他に鉄分(FeO2)やMnO、MgO、

   K2O等の鉱物が細かなガラス質成分と共に存在します。

   その為、多くは赤褐色した鉄分を多く含む土です。各火山の違いにより、又は

   年代により、噴出物の性質に違いがあり、風化の仕方にも違いが出て、同じ関東地方

   でも産地によって土の色の濃さや、肌ざわり等に違いがあります。

   それ故、関東地方には白い土は少ないです。

   尚、関東地方の著名な窯場は、益子焼き(栃木県)、笠間焼(茨木県)です。 

以下次回に続きます。 

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陶芸と金属類の関係1

2020-08-04 11:30:19 | 陶芸と金属類

陶芸と各種金属類との間には密接な関係が有ります。

例えば、素地に混入して素地の性質を変えてしまう事も有ります。

又、主に釉に混ぜて、色々な色又は好みの色に発色する事が行われいます。

その他、絵付けとしての絵具に利用されたり、金や銀の様に装飾する為にも使われます。

金属にはその金属特有の物理的(結晶、強度等)、化学的性質(酸化還元等)を有しますので、

それらを理解する事は有意義な事と感じます。

今回より「陶芸と金属類の関係を」順次述べたいと思います。

1) 各地の粘土の差とは。

 磁土にも産地によってある程度の差が生じますが、粘土程の差が出ないのが普通です。

 粘土はその産地によってその性質も大きく異なります。その為その性質に有った作り方や

 焼成の仕方が異なり、出来上がり作品もその土地ならではの焼き物に成ります。

 ① 各地の粘土の違いは、その中にどの様な鉱物が含まれているかに拠ります。

  a) 粘土の基本的な鉱物は、シリカ(珪酸、SiO2)とアルミナ(Al2O3)です。

   これは、岩石の成分と同じで、特に陶土なり易い火成岩(花崗岩等)が雨風熱等により

   風化、微細粉砕化され、更には雨や川によって流失移動し堆積し粘土に成った為です

  b) この風化による微細化と流動堆積化の途中で、その土地に存在する各種鉱物と

   混在します。特に鉄やマグネシウム、カルシュウム、石英の他、アルカリ金属、アルカリ

   土金属等の希土類も含まれる場合も有ります。これらの含有物や含有量によって

   粘土の性質が決定されます。

  c) 焼き物に適する土は選別されます。

   上記の土全てが焼き物に適するものではありません。当然人為的に取捨選択しさらには、

   陶土として精製して使用する事に成ります。一般的には水簸(すいひ)の技法を取ります

   上記粘土に含まれる植物片や「ごみ」「有害な物質(水溶性のアルカリ類)」を取り

   除きます。

  d) 焼き物に適する土

   ⅰ) 可塑性(かそせい)が有る事。

    一度力を加え、変形させ、その力を取り除いてもその変形を保持する性質を可塑性と

    言います。その為には、「延び」が良い事と、「腰の強さ」が要求されます。

   ⅱ) 乾燥に強い事。

    素地を乾燥させると縮ます。その際「ひびが入らない」ことが肝要です。

    この「ひび」はほとんど修正不可能です。

   ⅲ) 良く焼きし締まる事。

    作品を高い温度で焼成する事で、素地は焼き締り、物理的強度が増し、使用に

    耐える物になります。当然高い温度に耐える必要があり、その温度範囲も広い事も

    大切です。焼き過ぎや焼き不足になる危険性が少なく成る為です。

   ⅳ) 焼き上がりが美しい事。

    施釉陶器でも、焼き締め陶器(無釉)であっても、美しく焼き上がる事がその作品の

    価値を高める事に成ります。

    特に施釉陶器では釉が良く熔け、素地に密着する事が大切です。

以下次回に続きます。   

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