わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

素朴な疑問 252 陶芸と健康被害に付いて5

2016-07-27 17:10:17 | 素朴な疑問
4) その他の健康被害に付いて。

 ① 怪我(けが)に付いて。以上までが前回のお話です。

 ② 窯の爆発事故。

  窯での爆発事故は、作品自体が爆発する場合と、ガス漏れなどで窯自体が爆発する場合が

  あります。前者の場合は主に素焼き時に起き、後者の場合は主にガス窯などで起こり易いです。

  ⅰ) 作品自体が爆発する場合。

   長年窯焚きをされた多くの方は、素焼きの際に爆発事故を何度か経験しているはずです。

   それ程一般的な事故とも言えます。

   この場合は、窯の一部が壊れたとしても、人を傷つける事は少ないです。主に乾燥の不十分な

   作品を急激に加熱した事が原因です。但し、素焼き後に施釉した作品では、急激な加熱によって

   爆発する事はほとんどありません。又、作品の中に空気の塊がある場合には、加熱と共に

   空気も膨張し爆発を引き起こします。これも素焼きの時に起きる事故です。

   a) 爆発はおよそ窯の温度が230~280℃で起こります。

    それ故この温度範囲内では、出来るだけゆっくり温度を上げていく事が大切です。

    この間は30分~1時間程度の時間を掛けて昇温させれば安全です。(窯の容量や作品の

    肉厚、乾燥具合によって時間が異なります。)

    300℃を超えれば、ある程度急速に昇温させても、爆発の危険性は低くなります。

    爆発は主に水蒸気爆発です。加熱と共に水分は蒸発し作品の表面より抜けていきます。

    表面より抜ける量が発生する量よりも多い場合には、爆発は起こりません。逆に発生量が多く

    なると、水蒸気が作品内に貯まり続け、圧力が上がりますので、最終的には爆発します。

   b) 一見完全に乾燥している様に見える作品でも、肉が厚い作品は中心付近が乾燥不十分な

    事が多いです。窯入れ前に天日乾燥させても安心と言う訳ではありません。

    又、当然ですが作品完成から時間が短い程、又気候によっても乾燥は遅れます。この乾燥の

    遅い作品を中心にして、素焼きを行う必要があります。

   c) 乾燥の不十分な作品は、約200℃程度で一晩窯に放置すれば、完全に乾燥すると言われ

    ています。 素焼きを急ぎたい場合には、便利な方法です。

   d) 空気の塊の場合には、肌理(きめ)の細かい素地の方が危険が大きいです。素地が荒い

    場合土の粒子間に隙間が出来、そこから空気が逃げて行き易いからです。

    菊練を十分行う事で爆発は防ぐ事は出来ます。轆轤作業では、空気の存在は簡単に見付ける

    事は可能ですが、その場所と空気を潰す事は慣れない方には、結構難事です。手捻りの場合

    誤って空気を閉じ込めてしまうと発見し難いのですが、空気の塊は肉厚の厚い部分に集り

    ますので、肉厚の部分には注意が必要です。針などで小さな穴を開けるだけで、爆発を防ぐ

    事も可能です。

   e) 作品が爆発すると、作品が粉々になるだけでなく、破片が周囲に飛び散り、周辺の作品に

    当たり、他の作品を傷つける事になります。電気窯の場合、電熱線に当たり断線する恐れも

    でます。又、破片が焚口周辺に飛び、焚口を塞ぐ恐れもあります。それ故、爆発の恐れの

    ある作品の周囲には、なるべく作品を置かない事と、周囲を支柱などで囲む事です。

    例え爆発しても周囲に破片が飛び散らない様に予防する事が大切です。

   f) 爆発は鈍い「ボッコ」と言う低い音を発します。窯の近くに居れば聞こえる音です。

    この音を聞いたら、電流の変化や焚口の炎や音の変化に注意する必要があります。

    大きな変化が無ければ、そのまま続行しても多くの場合問題ありません。

    心配であれば、窯焚きを中断し中を確認する事です。素焼きの温度もまだ低いですから、

    エネルギーの消費(無駄)は少ないはずです。それ故、爆発の危険性がある作品はなるべく

    確認し易い、窯の扉の近くに窯詰めする事です。

  ⅱ) 窯自体が爆発する場合。

以下次回に続きます。
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素朴な疑問 251 陶芸と健康被害に付いて4

2016-07-25 15:26:02 | 素朴な疑問
4) その他の健康被害に付いて。

 ① 怪我(けが)に付いて。

  陶芸で怪我を負うことはさほど多くは有りません。刃物による切り傷や、棚板の掃除や作品の底

  などにこびり付いた釉を取り除く際の異物が目に入る目の怪我、轆轤操作の際に発生する怪我、

  その他よる怪我などがあります。

  ⅰ) 刃物による怪我。

   陶芸でも刃物を使います。多くの場合、手捻りや作品を細工をする時が多いのですが、轆轤

   作業でも刃物は使われます。

   ・ 鋭利な刃物を使う場合は、大胆に面取り加工を施す際には、包丁などの刃幅があり、

    刃渡りが長い大型の刃物になります。当然切れ味が鋭い程、綺麗な面になりますので、

    良く研いだ刃物が必要になります。作品の乾燥具合によって切れ味に差がでますので、

    乾燥度合いも大切です。

   ・ カッターナイフや彫刻刃も良く使う刃物です。

    切ったり削ったり、穴を開ける等の細かい細工の際には便利な道具です。

    同様の働きをする物に「鉄へら」がありますが、切れ味はさほどよくありませんが、状況に

    応じて使い分けます。

   ・ ドリルの刃も真円を開ける時に使います。

     多くの場合、手で回して穴を空けますが、電動(手回し)ドリルに装置して使う場合が

     あります。チャキング(刃の装着)を正しくしっかりさせる事で不慮の事故が防げます。

    いずれの場合でも、刃物の前に手や指を置かない事が基本に成ります。更に不用意に力を

    入れ過ぎない事も大切です。

  ⅱ) 轆轤作業での怪我。

    轆轤作業に慣れていない方は、轆轤の天板(回転面)に物(用具など)を置いてしまいがち

    です。そのままのの状態で轆轤を回転させると、天板上の物は遠心力によって外側に弾き

    飛ばされ周囲の物や人に当たり、怪我が発生する事になります。又ドベ受けに物を置く

    スペースがある場合、何らかの理由で天板まではみ出し接触し、弾き飛ばされる場合もあり

    ます。置いた物が針やカンナなどの場合には、これらに当たって怪我をする恐れがあります。

  ⅲ) 不要な釉を剥ぎ取る時に発生する怪我。

   流れ易い釉を使った場合や、必要以上に厚掛けした場合、高台脇の釉を十分取り除かなかった

   場合、釉が棚板まで流れ落ち、作品と棚板がこびり付く事が起こり易いです。

   こびり付いた作品は、棚板の裏から木槌などで強く叩き取り除く事で、作品自体を壊す事なく

   剥がす事ができます。但し、作品の高台周りや棚板上には、釉がこびり付たままです。

   当然、これらを取り除く必要があります。

   ・ 作品の底、高台脇に付いた釉を剥がす方法。

    熔けて固まったガラス質の釉は、強固にこびり付いています。これを取り除くには、狭い

    範囲ならば、主に「ダイヤモンドやすり」を使います。鏨(たがね)などでも取る事が出来る

    場合もありますが、作品自体を壊す恐れがありますので、余りお勧めできません。

    取り除く範囲が広い場合には、「グラインダー」(電動)を使う事が多いです。

  ・ 棚板の掃除。

   棚板まで流れ落ちた釉は、綺麗に取り除く必要があります。汚れた状態で次の本焼きを行うと

   棚板上の釉が熔けて、作品が棚板に張り付いてしまいます。

   棚板はアルミナコーチング材で表面がカバーされています。それ故、カバー材と一緒に剥がす

   事になります。剥がすには金槌と鏨(たがね)を使います。鏨の先を釉の端に斜めに当て金槌

   で叩き、剥がし取ります。勿論グラインダーで行う事も可能ですが、鏨の方が小回りが利き

   便利です。棚板の掃除後には、アルミナコーチング材を塗っておく必要があります。

   尚、何度もアルミナコーチング材を塗り重て焼成すると、棚板の表面が凸凹してきますので、

   ヤスリやグラインダーで平滑に仕上げおきます。

  ・ 作業には眼鏡が必要です。

   釉は小さな欠片となって四方に飛び散りますので、目に入らない様に眼鏡が必要になります。

   防塵眼鏡が有効ですが、普通の眼鏡でも効果があります。出来ればマスクを着用すれば顔面の

   保護に成ります。

 ② 窯の爆発事故。

以下次回に続きます。

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素朴な疑問 250 陶芸と健康被害に付いて3

2016-07-19 15:45:21 | 素朴な疑問
1) 陶芸作業に於ける健康被害。

 ① 一般的な作業でも起こり易いのが、腱鞘炎(けんしょうえん)です。

 ② 轆轤作業で起きる健康被害に付いて。

 ③ 轆轤作業で、手の指や足が攣る(つる)時があります。又、手指が固まり動きが鈍くなる場合

   も起こります。

 ④ 轆轤作業で長い時間座った状態でいると、尻が痛くなる場合があります。

  以上までが前回の話です。

2) 釉に関する健康被害に付いて。

 釉に関する被害には、釉を構成する成分に由来する物と、その取り扱いによって発生する物があり

 ます。

 ① 釉の成分による健康被害は、以下の様に既に述べていますので、参考にして下さい。

  カテゴリ「陶芸の困り事」の中で、陶芸に於ける有害物質 1~15に記載されていますので、

  興味のある方はご覧下さい。簡単に紹介すると、鉛、銅、カドミウム等の重金属類や各種灰類

  その他有害な有機化合物などが取り上げています。

 ② 取り扱いが悪い為に起こる健康被害。

  基本的には釉は口に入れたり、粉末を吸い込む事は、重大な健康被害を引き起こす恐れがあり

  ますので厳禁です。

  ⅰ) 市販されている釉薬は、液体状の物と、粉末状の物があります。

   少量の場合は、前者が多いのですが、5、10、20、30Kgと大量に成るに従い、水分を

   含まない粉末状に成る事が多いです。当然、粉末状態の方が安価に成ります。

  ⅱ) 粉末状の釉に水を加えて適度の濃さにします。袋から出す場合や水を加える際、粉末が

   周囲に飛び散ります。マスクなどで吸い込むのを予防する必要があります。釉は岩石や金属類

   を微粉末状にして使いますので、吸い込むと珪肺(けいはい)病と言う肺病を起こす恐れが

   あります。更に珪肺は肺結核を誘発し易いです。

   注: この病気は珪酸を多く含む石粉等を吸う事で起きます。鉱夫や石工に多く見られる一種

     の職業病と見なされていましたが、陶磁器に携わる人にも多く見られています。

  ⅲ) スプレー掛け(霧吹き)の際にも、釉の飛沫が空気と共に吸い込み易くなります。

   スプレー掛けはコンプレッサーを使う場合と、霧吹きやスプレーを使用する場合があります。

   特に、口で吹く古典的な霧吹きの場合、マスクが出来ませんので、要注意です。

   屋外で施釉したり、作品の周りに囲い設けたりして飛沫の量を少なくする必要があります。

   マスクをする以外に、窓を開けたり、換気扇を回し新鮮な空気と入れ替える事が大切です。

  ⅳ) 施釉する前の素焼きした作品に、「紙やすり」を掛けて綺麗にする事があります。

   これは表面に付着した粘土片や、小さな傷を消すなどの際に行います。形を変える程削れる事

   はできません。この際でも削り滓(かす)は微粉末になりますので、吸い込む事は危険です。

  ⅴ) 室内を掃除する際にも、土や釉の埃(ほこり)が出易く、空気中に漂う事も多いですので

   予め水等を噴霧し、埃を立てない事も、健康上で大切です。

3) 窯焚きに伴う健康被害に付いて。

 ① 一酸化中毒に注意。

  一酸化中毒は、燃料を使わない場合(電気窯)には、ほとんど問題有りませんが、燃料を使う

  ガスや灯油、薪窯などは要注意です。燃料が燃焼する際空気不足にし(即ち還元焼成)、目的の

  釉の発色を狙う場合があります。一般に陶器では還元焼成の発色が好まれる傾向にあります。

  但し、電気窯であっても、燃料のガスを吹き込み還元焼成する物もありますので、その際には

  注意が必要です。

  一酸化ガズは、血液中のヘロクロビンと強く結び付く為、血液中の酸素量が減り酸欠状態になる

  現象で、死に至る事も稀ではありません。特に窯の中での話しなら良いのですが、窯から外に

  漏れ出すと危険です。屋内の場合が問題です。喚気が十分ならば一酸化ガスも空気中の酸素と

  結合し二酸化炭素(炭酸ガス)になり、無害となります。

  一酸化ガスは無色、無臭の為、気が付かない内に吸い込み意識不明に成り易いです。

 ② 塩素中毒に注意。塩素は毒ガスとしても使われています。

  普通一般に使われている釉で、有害な塩素が発生する事ほとんどありません。

  但し塩釉を施すと塩素が発生します。塩即ち塩化ナトリウムは、高温の窯の中で分解し、塩素と

  ナトリウムに分かれます。ナトリウムが釉として作品に降り掛り、独特の様相を呈します。

  塩素は煙突から外に逃がさなければ成りません。

  ⅰ) 塩は焼成完了直前に窯に投げ入れ、分解したナトリウムを気化させ、作品全体に降掛かる

   様にします。その為、窯の壁や棚板までも釉が掛かる事になりますので、窯も痛み寿命も短く

   なります。その為、人気の割合に対し、塩釉を行う人は少ない様です。

  ⅱ) 塩素の発生は本の短時間ですが、吸い込むと命取りになりますので、投げ入れたら直ぐに

   窯から離れる事が大切です。即ち時間との勝負となります。「グズグズ」していると危険が

   増大します。

4) その他の健康被害に付いて。

以下次回に続きます。
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素朴な疑問 249 陶芸と健康被害に付いて2。

2016-07-11 20:19:21 | 素朴な疑問
1) 陶芸作業に於ける健康被害。

 ① 一般的な作業でも起こり易いのが、腱鞘炎(けんしょうえん)です。

   以上までが前回の話です。    

 ② 轆轤作業で起きる健康被害に付いて。

  ⅰ) 腰を痛め易い。

   轆轤作業は腰を痛める事が多いです。又、すでに腰を痛めている方は、より悪化させない為の

   注意が必要です。現在腰痛などの持病の無い方も、その姿勢によっては腰を痛める事にもなり

   ます。問題は轆轤作業の姿勢と、それを長時間固定された状態になっている事です。

   腰を鋭角に折った極端な前傾姿勢の状態では、腰に強い負担を与える事になります。

   強い前傾姿勢はある程度「やむ得無い」かもしれません。問題は長時間その姿勢で固まっている

   事です。出来れば時々その場を離れて、腰を伸ばす事と、周囲を歩き回る事である程度危険を

   回避できます。熱中すると30分以上同じ姿勢の事も稀ではありません。

  ⅱ) 轆轤は体全体を使って挽く事を、心掛ける必要があります。

   轆轤作業は力作業と言われて来ました。現在では電動轆轤が主流に成っていますが、電動

   轆轤が出現する以前は、挽き手(制作者)が自ら手又は足を使って重たい轆轤面(天板)

   を回していましたすので、体全体を使った動きでしたが、電動轆轤では主に手先と回転速度を

   調節する「ペダル」等を踏む程度ですので、体全体を使う事も少なくなりました。それ故

   固まった姿勢が長い時間保持され易くなり、体を動かす範囲も狭まり腰痛の原因に成って

   います。

  ⅲ) 轆轤に対して正対(真っ直ぐ向き合う事)した姿勢にする事も大切です。

   轆轤作業中に見るべき所と、姿勢には深い関係があります。

   主に使用している両手の指先を見る事は多いのですが、見つめる先は作品の種類によって

   若干の差があります。

  ・ 袋物の様な作品では、器の内側は狭くなりますので、外側を見ながら制作します。

   その際、体を左方向(轆轤が右回転の時)に捻りながらの、前屈姿勢になり易いです。

   この姿勢は単なる前屈姿勢より、腰に多くの負担を強いる事になります。

  ・ 一方茶碗の様に口の開いた作品では、器の内側を見ながら制作する事になります。

   轆轤挽き後に底削りで外側を削りますので、整えた外形が必ずしもその様になる訳ではなく

   逆に内側は削り作業を行わないのが一般的ですので、内側の形がそのまま完成した形になり

   ますので、形に注意する必要があります。その為、器の内側を見る様にして轆轤挽きします。

   この正対した場合は同時に、体の捻れはほとんど発生させません。

  ⅳ) 頭の位置を高く保持する事は、前屈姿勢を緩め、更には作品全体が見渡せる事に通じます。

   又体の捻れも最小限に抑える事が出来ます。轆轤に慣れていない方は、土を上に伸ばす際、

   手のみに力が入り、頭も一定位置に成り易くなります。土を上に伸ばす際には、手の上昇に

   合わせて、目と作品の距離を一定に保ち様に、頭を徐々に挙げていく事です。

   即ち、背筋を徐々に伸ばし、土と頭の距離を常に一定位置にする事です。

  ⅴ) 前傾姿勢である事は、結果的には「ペダル」を踏み込む事になります。轆轤の回転は

  「どんどん」早くなります。この傾向のある人は、前傾し過ぎている可能性があります。

  ⅵ) 目の悪い方特に近視の方は、前傾に成り易いです。作品が見え難い為、頭を近付け過ぎる

   傾向があります。又照明不足で薄暗い環境でも、顔を近付ける事に成りますので、照明にも

   注意する必要が有ります。

 ③ 轆轤作業で、手の指や足が攣る(つる)時があります。又、手指が固まり動きが鈍くなる場合

  も起こります。

  ⅰ) 不必要な部分に力を入れ過ぎ、そのままの状態で長く作業していると、主に親指、人差し指

   及び、中指が攣る事があります。攣るとは痙攣の一種と考えられ、思う様に動かす事が出来

   なく成る事です。更に足の「ふくろはぎ」も攣る場合も少なくありません。

   原因は長時間、筋肉を緊張させているからと思われます。

  ⅱ) 手の指が固まる事も起こります。

   轆轤作業では、土殺しや土を上に伸ばす際、掌や指に大きな力を込める場合があります。

   特に大物を挽くさいには、大量の土を取り扱いますので、一段と力を入れる必要があります。

   同じ動作を続けていると、手の指が固り、直ぐには動きかず制限される事もあります。

   いずれの場合でも同じ状態で、長時間作業する事が原因ですので、なる別の動きを取り入れる

   事で予防ができます。

 ④ 轆轤作業で長い時間座った状態でいると、尻が痛くなる場合があります。

  がっちりした固めの椅子を使う事も原因の一つです。

  特に痔病を持った方は要注意です。又、泥が発生しますので、軟らかいクッション類を座布団

  に使う事も意外と困難な場合があります。基本的には作品一つ一つに付いては、素早く作業

  を終了する事です。一個挽き終わったらなるべく立ち上がり腰を伸ばす事です。

2) 釉に関する健康被害に付いて。

以下次回に続きます。
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素朴な疑問 248 陶芸と健康被害に付いて1。

2016-07-09 19:26:46 | 素朴な疑問
長く陶芸に携わる人の中には、陶芸作業を行う事で、健康を害する人もいます。勿論全ての人が

必ずしも当てはまる訳では無く、趣味で楽しむ程度の人であれば、ほとんど問題になりません。

被害の中でも直接人の生死に関係する、一酸化中毒や塩素中毒なども起こり、実際に命を落とした人

もいますので、健康被害について常々頭に入れて置く必要があります。

健康を害する要因は幾つかありますので、その要因を理解していれば予防が可能です。健康を害する

のは、作品を作る際に原因がある場合と、釉に含まれている有害成分、及び塵(ちり)や埃(ほこり)

等の環境に起因する物、更には窯焚きに関する物、その他の要因による物などが上げられます。

1) 陶芸作業に於ける健康被害。

 ① 一般的な作業でも起こり易いのが、腱鞘炎(けんしょうえん)です。

  手首や手の指、肘膝などの関節部分に起こる炎症を伴う痛みです。特に年配者は注意が必要です

  手捻りや轆轤作業に関わりなく発症する場合もあります。特に良く使う手の親指、人差し指、

  中指に多く見られます。

  ⅰ) 同じ動作を繰り返す事で起こり易いです。

   手や指、肘や膝等の関節を繰り返し、延ばしたり縮めたりする作業を行う事で発症します。

   勿論、力が一極に集中する場合には更に起こり易いのですが、その他どの様な場面があるかを

   見てみましょう。但し、持病を抱えていない事を前提にした話です。

   a) 土を練る動作の時に起こり易い腱鞘炎。

    土を使用する前には土を練り、固さを調節したり気泡を抜く為、又は複数の種類の土を

    均等に混ぜる為に土を練ります。尚、現在では土練機を用いる場合も多いですが、少量で

    あれば、荒練や菊練などの手練が理想的と思われます。但し、真空土練機でなければ土中の

    気泡を取り除く事は出来ませんので、菊練を行う事が多いはずです。

    練る回数は多いほど良いのですが、数十回、数百回と練ると、手首に負担が掛り、手首を

    傷める事に成ります。又、練る量が増えたり、大物を作る際に使う固目の土であれば、

    手首に掛かる負荷は大きくなります。

    土を練る方法には、前出の方法以外に、固目の粘土を指先を使い練って柔らかくする方法も

    あります。柔らかくすると同時に、異物の除去の働きもありますので、時間が掛かりますが

    実行している方も多いはずです。この際、親指と他の指を向かい合わせて磨り潰す様に使い

    ます。土が固い場合、使う指に力を入れ過ぎる事で、腱鞘炎を発生する恐れもあります。

   b) 土を叩き伸ばす行為で、手首に腱鞘炎を起こす事もあります。

    タタラ(陶板)を作る際、土を強く締めて割れの発生を抑える必要があります。その為平たい

    叩き棒(板)などを用いて、強く土を叩締めます。叩き棒は重い程効果があります。更に

    表面を平滑にする為に、円筒形の延ばし棒を転がして平らにします。叩き棒は重量があり

    ますので、振り下ろす際手首に負担が掛かります。延ばし棒を転がす際には、両手の掌

    (てのひら)を使い、土に押し付ける様にしますので、手首にも力が入ります。

   c) 紐作りの際には、上下の紐の境目を消す為に、主に親指を使い土同士を擦り合わせます。

    その際、親指は世話しなく動き、上下又は斜め運動を繰り返す事になります。又、土の厚み

    を薄くする際にも、親指と他の指を向かい合わせて、摘む様にして薄くし、上に伸ばして行

    きます。大きな作品であれば、親指の動かす回数は半端な数では有りません。休み休み作業

    をせず、根を込めて作業し続けると、親指が腱鞘炎を発症し易くなります。

   d) 発症した部分はなるべく安静にし、使わない事が一番ですが、完治するまでには、結構

    時間もかかり、そう簡単では有りません。

    手捻りの場合、手の指特に親指は、色々な動きをし作品を作る上で、大切な役目をします。

    腱鞘炎を発症すると陶芸作業を一度中断する事なりますので、手首や指に違和感を覚えたら

    なるべく作業を中断し、指を休めたり、湿布するなどで早めに対処し、悪化させない事が

    大切。です。  

 ② 轆轤作業で起きる健康被害に付いて。

以下次回に続きます。

 
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素朴な疑問 247 釉薬同士に相性はあるのか4?

2016-07-06 17:32:54 | 素朴な疑問
4) 二重掛けの方法と、タイミングに付いて。

  三重、四重と釉を重ね塗りする方法もありますが、基本的には二重掛け程度で抑えておくのが

  安全と思われます。勿論、一つの作品に3~6色程度の釉を使う事があります。その場合でも、

  釉の重なる部分は出来るだけ二重程度ですせたいです。多重に重ねると釉剥げ等の弊害が増大

  するからです。

 ① 二重掛けの方法。 以上までが前回のお話です。

 ② 二重掛けのタイミング。

  釉同士の相性の良し悪しは、施釉時のタイミングによっても発生する場合があります。

  即ち、どの様な状態の時に二重掛けすれば、失敗が少なく済むかと言う事です。

  ⅰ) 釉掛けする際、一重でも二重でも素焼きされている場合が一般的です。その他に、素焼き

   しない生掛けや、一度本焼きした作品に、もう一度同じ釉又は異なる釉を塗る方法(二重焼き)

   もあります。後者の場合は色斑(いろむら)や釉剥げ、薄過ぎる釉や色の悪さ等を補修する為

   に行う事があります。この中で一番危険な方法は、生掛けの方法です。一色でも問題になり易い

   ですのに、二重掛けでは更にトラブルが発生し易いです。

  ⅱ) 二重掛けのタイミングは、素地又は下に塗った釉の吸水性に原因があります。

   素地は十分に乾燥させた物を使い、施釉は一般に水に溶いた物を使います。尚各種灰等を水に

   溶かないで、粉末状の釉を振り掛けて使う事もあります。

   a) 一度施釉すると素地は水に溶けた釉を吸収します。素地が十分乾燥し、素地の肉厚が厚け

    れば、塗った釉はたちまち乾燥します。素地が肉薄の場合には、乾きが遅くなります。

    素地が水分を吸収する事で乾燥が起こり、水分が蒸発して乾燥した訳ではありません。

    尚、乾燥が遅い場合、ドライヤー等で乾燥させる事も可能ですが、なるべくゆっくり乾燥

    した方が安全です。

   b) 二度目の施釉は、最初の釉が乾燥した直後に行うと、良い結果が得られます。

    尚、釉の乾燥具合は、塗った直後の色や光沢の変化によって知る事が出来ます。即ち施釉し

    た直後は、表面に水分がある為光沢が有りますが、乾燥するに従い光沢は無くなって行き

    ます。又釉の色も乾燥と共に白っぽくなるのが一般的です。

   c) 乾燥不十分な状態で二度目の施釉を行うと、釉が厚く掛かりません。更に最悪の場合には、

    下の釉と共に流れ落ちる場合があります。流れた部分は全体に釉が薄くなります。

    流れ落ちる量は下地の乾燥が悪い程、大きくなります。尚、この現象を逆手にとって、

    釉に流れを付け模様にする技法もありますので、一概に悪い事とは言えないかも知れません

   d) 施釉が時間が経ち過ぎた場合には、上に塗った釉が時間と共に「めくり上がる」事もあり

    ます。 何らかの理由で、数時間後や丸一日経った後に二度目の施釉を施す事が有るかも

    知れません。この場合は下の釉が十分乾燥している為、上の釉の水分が急激に吸収され、

    二度目の釉幕の表面と裏面とで、乾燥の差が大きい為「めくり上がる」と思われます。

    即ち、下の釉に若干水分が残っている状態の方が、釉同士の密着度も良く、上手に施釉でき

    ます。場合によっては、霧吹きで少し表面を濡らす事もあります。

  ⅲ) 生掛けの二重掛け。

    生掛けが危険な理由は、完全に乾燥した素地が、釉の水分を吸収し膨張して作品を破壊させ

    る事です。それ故、余り乾燥していない素地であれば、さほど心配有りませんが、水分の

    吸収が少ない為、釉が薄くなり勝ちです。二重掛けすると更に水分を吸収する事に成ります

    ので、危険度が増します。但し、スプレー掛けの様に霧状にした釉を少しずつ吹きかけるか

    粉末状の釉(又は灰)を振り掛ける方法であれば、比較的安全です。又、二重に掛ける範囲

    を狭くするか、下に掛けた釉が完全に乾燥した後に二重掛けする事で、素地が水の吸収する

    のを少なくする事ができます。

  ⅳ) 本焼き後の二重掛け。

    本焼きした作品はほとんど吸水性を有しません。但し、無釉の場合(焼き絞めなど)には

    若干の吸水性を有します。吸水性の乏しい素地に釉を掛ける際には、一般的な施釉の仕方で

    は、十分二重掛けの釉が載りません。その為、極度に水分を取り除いた、濃い目の釉を筆

    (刷毛)で塗る事になります。又本焼きしてある作品に手や指などで触れると、脂分が付着し

     釉を弾く事になりますので、脂分を除去した後に行うとより釉の載りが良くなります。

     注意する事は、筆を引いて釉を伸ばす様にしない事です。筆の通った跡が残ります。

     なるべく置いて行くように施釉する事です。更に、釉が載り易くする為、CMC(化学糊)

     を添加する事もあります。又、上手に施釉できれば、下の釉と上の釉の相性は悪くは

     有りません。

   ⅳ) 外に放置されていた本焼きされた作品に二重掛けする場合。

     本焼きされた作品はほ、とんど水を吸収しせんが、長らく放置された作品には貫入など

     から水分や空気が吸い込まれている事も多いです。この様な状態の作品の上に施釉すると

     本焼で表面が凸凹する事があります。これは下の釉中や素地の中に水分や空気が閉じ

     込めらえ、上の釉が蓋をした状態になり、膨張した水蒸気や気泡が表面から抜けきらず、

     下の釉と上の釉を押し上げた結果と思われます。それ故、十分乾燥後に二重掛ける事が

     無難です。

二重が掛けを行う事は多いはすです。その場合、トラブルが発生した時にその原因を追究し、対処

して下さい。

以上にて、「釉薬同士に相性はあるのか?」の話を終わります。
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素朴な疑問 246 釉薬同士に相性はあるのか3?

2016-07-04 15:07:50 | 素朴な疑問
4) 二重掛けの方法と、タイミングに付いて。

  三重、四重と釉を重ね塗りする方法もありますが、基本的には二重掛け程度で抑えておくのが

  安全と思われます。勿論、一つの作品に3~6色程度の釉を使う事があります。その場合でも、

  釉の重なる部分は出来るだけ二重程度ですせたいです。多重に重ねると釉剥げ等の弊害が増大

  するからです。

 ① 二重掛けの方法。

  一般の施釉方法と同じと考えて下さい。即ち、漬け掛け、流し掛け、イッチン(スポイト掛け)

  スプレー掛け、筆(刷毛)塗りなどの方法です。これらの利点と欠点などに付いても述べます。

  ⅰ) 二重掛けする範囲。

   器全体に二重掛けを施す場合と、一部のみに施す方法があります。後者の場合には、掛け分け

   (片身分)と二重掛けに分かれます。

   a) 器全体に二重掛けを施す場合には、一方の釉を器全体に掛け、その後別の釉を全体に掛け

    る事になります。この方法ですと、下(先)に掛けた釉を完全に覆う事になりますので、

    下の釉自体の発色が望めなくなる可能性もあります。この方法は余り一般的ではありません

    本来持っているその釉の特徴を、否定する恐れが大きい為です。

    どちらの釉を先(下)に掛けるかによって、全く別の色に成る事が多いです。それ故必ず

    試し焼きしてから、本番になります。更に、発色にはお互いの釉の濃度も関係します。

   b) 掛け分けの場合には、一部のみが二重掛けになり、大部分はその釉本来の色になります。

    基本的には完全に分離したいのですが、境目が無釉であれば無難ですが、実際には僅かに

    二重に掛かる部分が出てしまいます。境目がどの様に発色するかは、両方の釉の種類に

    よって変化します。場合によっては、魅力的な色となる可能性があります。

    尚、完全に分離し境目を無釉にする方法もあります。施釉又は無釉の境目を直線にするか、

    曲線にするかによって、その部分が一つの模様と成る場合もありますので、一概に否定する

    事はできません。

   c) 一般的な二重掛けの方法は、一方の釉を全体に掛け、他の釉を部分的に掛ける方法です。

    二重に掛ける方法によって、二重掛けの効果が変わります。

  ⅱ) 二重掛けのやり方と効果の違い。

   a) 漬け掛け(浸し掛け)。 釉の容器に作品を直接漬ける方法です。

   ・ 利点としては、良く掻き混ぜられた釉であれば、どの様な形の作品でも、短時間で均等の

    厚みに施釉できる事です。

   ・ 欠点として、作品の大きさに合わせた容器が必要な事と、釉の量が「たっぷり」必要な

    事です。直径の大きな皿などは、それに合わせた盥(たらい)が必要ですし、背の高い作品

    には、深みのある筒状の容器が必要になります。更にこの方法では、釉と釉の境目が直線的

    に成り易くなります。

   b) 流し掛け(柄杓掛け)。 柄杓(ひしゃく)を用いて、器の内側や外側表面に施釉する

    方法です。

   ・ 長所として、釉の量が少なくてすむ事です。又、筒状の内側に施釉する際にも、柄杓で

    流し込む事が出来て便利です。又、施釉したい場所を選択的に選ぶ事ができます。

    例えば、波を打たせる方法もあります。但し、釉は下方に流れ落ちますので、流れ易い釉で

    は注意が必要です。又、柄杓の使い方で、施釉を曲線的に掛ける事も可能ですので、境目に

    変化を付ける事が出来ます。

   ・ 欠点として、柄杓の使い方によって釉に濃淡が出易いです。但し、薄いと感じたら更に

     釉を足して流して加える事ができます。当然ですが減らす(薄くする事)はできません。

   c) スプレー掛け(吹き掛け)。 霧状の釉を吹き付けて施釉する方法です。

   ・ 長所として、すこぶる小回りの利く事です。又、釉の量が必要最小限で済む事も魅力です

     更に、マスキングする事で任意の場所に好きな模様を施釉する事もできます。釉を数回に

     分けて吹き掛ける事で、釉の濃淡を調整できます。

   ・ 欠点として、スプレー(霧吹き)が必要に成ります。大量に釉掛けする場合にはコンプレ

     サーが必要になる事もあります。

   d) イッチン(スポイト)掛け。尚、化粧土でもこの方法が使われます。

    他の施釉の方法が面状に成るのに対し、細い線状になるのが特徴です。スポイトの先端部分

    の径によって線の太さも変わります。勿論使い方によっては、面状に施釉する事も出来ます

    細い線は自由に描く事が出来ますので、細かい作業も可能です。スポイトはケーキ作りの際

    に使用する「絞り袋」を、利用する事も可能です。

   e) 筆(刷毛)塗り。絵を描く様に施釉する事ができます。但し、施釉された上に重ね塗り

    する事は、釉に水分を取られ筆が良く滑りませんので、下手をすると逆に釉を剥ぎ取って

    しまいます。それ故余り強く筆えお押し付けない事です。更に筆塗りは釉の濃度が薄くなる

    傾向になりますので、筆の運びは「ゆっくり」する事です。
    

  ② 二重掛けのタイミング。

以下次回に続きます。
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