わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

作品の「割れ」、「ひび」対策(補修4)

2009-07-29 07:51:51 | 失敗と対策
前回の続を、述べます。

3) 素焼後の「割れ」「ひび」の補修。

 ④ 傷はそのままで、釉を掛け、窯詰めの工夫で、傷を消す(補修する)。

   即ち、本焼きでは、土が高温に晒され、若干、軟らかく成り、変形し易く成ります。

   この現象を利用します。(赤土など、高温に弱い場合には、最適な方法です。)

   本焼きすると、傷口は広がります。 但し 長皿の様に、長辺の1箇所に「割れ」、「ひび」が

   ある時には、その両端を、枕(スペーサー)を入れ、傷部分が、棚板から、持ち上がる様にします。

   即ち「ブリッジ状態」になります。本焼きで、このブリッジ部は、下に垂れ、棚板に付きます。

   その際、両端から、傷が狭まる方向に、力が加わり、傷が塞がり、且つ釉で、覆われますので、

   傷が目立たなく、成ります。

  ・ 尚、長皿以外にも、この現象を、利用して、色々試してください。

  ⑤ 何の対策もせず、そのまま本焼きする。

    本焼きすると、傷は最大に広がります。即ち、これ以上、傷が大きくならない状態で、

    初めて、補修をします。

    傷口に、シャモットや、接着剤を押し込み、その上に、釉を掛け、二度焼きします。

   ・ 又、「割れ」た本体と部品は、個別に釉を掛け、本焼きした後、陶磁器用の接着剤で、接着する。

     但し、個別に焼ける事が、条件に成ります。

     接着剤は、2液を混ぜ合わせる、エポキシ系が、強く接着します。

4) 本焼き後、又は、使用中の「割れ」の補修。

  ① 金継ぎの方法

    大切な作品を、何らかの理由で、壊してしまった場合、割れた部分に、金を載せて、補修します。

   ) 用意する物。

     漆(透明天然、合成うるし)、漆希釈液、(釣り道具やで、市販されています)、

     金粉又は、これに類する物(真鍮等の代用品)、真綿(絹で作った綿)、筆など

   ) 割れた部品が、多数に分かれている場合、欠品が無いかを、確認します。

     小さな片から順番に組み立てます。大きな物から、組み立てると、何処かに、

     隙間が出来てしまいます。

   ) 確認が出来たら、漆を接着剤として、組み立てます。希釈剤を使い、漆の濃さを、調整します。

      全てが、組み上がったら、上から、漆で覆います。

   ) 漆は、直ぐには、乾きません。その間に、金粉を落す様にして、漆の上に、置いて行きます。

      不用な金粉は、筆で払い、取り除きます。

     尚、本漆は「かぶれ」を、起す場合が有りますので、注意が必要です。

   Ⅴ) 更に、真綿で、金粉を軽く押さえ、接着します。

   金継ぎの方法は、抹茶々碗等の、景色として、珍重される事も多いです。

   漆は、熱にも強く、しっかり接着できます。


以上で、「割れ」「ひび」に付いての、話は終わりに致します。


割れ ひび 
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作品の「割れ」、「ひび」対策(補修3)

2009-07-28 17:15:52 | 失敗と対策
「割れ」「ひび」の補修方法に付いて、更に、話を進めます。

3) 素焼後の「割れ」「ひび」の補修。

  ① 割れた部品が、何もしなくても、安定的に、載ったり、下から支える場合

    (例、蓋のつまみが取れた、足、脚など、が取れた等です)

    釉を掛ける際に、移動しない様に、ごく一般的な糊(やまと糊など)で、固定してから、施釉します。

    但し、糊のはみ出した部分は、釉が弾きますので、余分な糊は、綺麗に拭き取ります。
 
    窯から出すと、釉で完全に、くっついています。

  ② 「シャモット」を使う。

   同じ土の素焼の作品を、「紙やすり」で削った後の粉や、壊れた作品を、粉々にした物、

   (即ちシャモット)を、CMC(化学のり)等の糊で、混ぜ合わせ、補修剤に使います。

   補修する物と、補修剤が、同じ様に素焼して有りますから、縮み率は、同じになります。

   即ち、補修後、本焼きしても、傷が広がる事は、有りません。

   補修したら、若干濃い目の、釉をかけます。透明釉を掛けると、傷が目立ちますから、注意。

  ③ 接着剤を使う。

    前回、2)で述べた方法と、同じで、陶芸材料店で、市販されている、本焼き用接着剤を、

    使います。これには幾つかの、問題(欠点)が有ります。

   ) 全ての傷が、補修できる訳では有りません。

      横や、下に取り付く物の補修(特に重く、大きな物)は、上手く接着出来ません。

      本焼き時に、移動する、恐れが有ります。(どの様に、移動するかわ、窯次第です)

      移動した部分は、しっかり固着し、「処置なし」に成ります。

     ・ 不安があったら、接着剤は、使わない方が、無難です。
    
      (上に載る形では、可能ですが、これなら、接着剤を使わなくても、他の方法で、

       補修が出来ます。)

   ) 補修した跡は、釉の載りが悪い。

      掛けた釉が薄くなり勝ちです。又、透明系の釉などは、接着剤の色と、素地の色との差が出て、

      補修部分が、目立ちます。

  尚、市販されている、全ての、補修用接着剤を、試した訳ではありません。

   私の、使った物が、以上の様な、状態ですので、念の為に、申し上て起きます。

   ・ 又、良い接着剤を、ご存知でしたら、お教え頂いきたいと、思います。


以下、次回に続きます。

陶芸失敗と対策




  
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作品の「割れ」、「ひび」対策(補修2)

2009-07-26 22:24:46 | 失敗と対策
前回に引き続き、「割れ」「ひび」の補修について、述べます。

 (何度も繰り返しますが、手間や、時間、出来上がりの良さを、考えると、作り直した方が、

  よほど、速く、綺麗に、上手く行きます。)

2) 製作後、乾燥時の「割れ」「ひび」の補修。

   乾燥と伴に、土は縮み始め、「割れ」や「ひび」がある場合には、どんどん傷が大きく成ります。

   この場合も、乾燥度合いによって、対処方法も変わります。

  ① 乾きが甘い場合、まだ土の色が、製作時と、余り変わらない時には、前記1)の方法で、

    対処できます。

  ② 乾燥が進み、土の色が変わって来たら、補修はかなり困難です。

    (最初に述べた様に、廃棄処分するのが、妥当ですが・・・)

    困難な理由は、補修部材と、本体との乾燥(縮み)具合の差によります。

    この差を、いかに少なくするかが、「対策の鍵」になります。

    対策として、以下の方法が有ります。

   ) そのまま素焼し、素焼後に、対処する。

      後日、素焼後の補修の項で、述べます。

   ) 外科的に、切開、切除して補修する。

    a) 削り取る。切り取る。

      一番良い方法は、「割れ」「ひび」などの、傷の部分を、完全に取り除く事です。

     (傷は、どんどん成長し、本焼きで最大に成ります。)

     この作業を行うと、当然作品の形が、変わります。

     形に余り影響の無い場所なら、積極的に、取り去ります。

    ・ 注意する点は、乾燥した土は、「もろい」事です。

      切ったり、削る際には、余分な所まで、壊さない事です。

      又、切り取った断面は、「ぎざぎざ」になっています。綺麗に仕上げて下さい。

    b) 切り取り、新たな部分をつける。

      底割れの場合や、「どべ」で貼り付けた部分(取っ手、パーツ)の「割れ」は、

      底又は、貼り付けた部分全体を、切り取ります。

     ・ 切り取る方法は、「金ノコ」等で、慎重に作業します。

       (乾燥していると、カッターなどは、役に立ちません)

     ・ 新たに、補修すべき形の、作品を作ります。乾燥させますので、若干大きく作ります。

     ・ 本体と同じ程度に、乾燥させます。(この事が、大切です。)

     ・ これを「どべ」で、接着します。「どべ」は、やや固めの物を、タップリ使います。

     ・ 繋ぎ面を、紙やすり等で、綺麗に仕上げます。

   ) 陶芸用(本焼き)接着剤を使って補修する。

      市販の本焼き(素焼)の陶磁器用、接着剤(ペーストなど)で、補修します。

      使い方は、説明書を読んで下さい。

      この場合、完全に2個以上に、分離して割れた方が、作業し易いです。

      「ひび」は、その隙間に、接着剤を入れる事に苦労します。

      但し、良い(完全な)接着剤は、有りません。

      この件に関しては、素焼後の補修に付いての項で述べます。


以下次回に続きます。

陶芸作品の失敗と対策



 
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作品の「割れ」、「ひび」対策(補修1)

2009-07-25 21:51:48 | 失敗と対策
作品に、「割れ」や「ひび」が出来た場合、原則的には、廃棄処分とし、新たに作り直す事を勧めます。

 (但し、製作途中の場合は、除きます。)

しかし、どうしても、その作品を、助けたい時には、補修する方法が有ります。

但し、どの段階での「割れ」、「ひび」かによって、その対処方法(対策)も異なります。

1) 製作途中の、「割れ」「ひび」の場合

   乾燥以前でしたら、容易に補修できます。

  ① 製作途中で、粘土が乾燥し始め、「ひび」が入る場合や、土を曲げたり、変形した時に出来た物は、

    濡らした「スポンジ」で、土に水を含ませ、指や「竹ベラ」で撫ぜて、「ひび」を消します。

    同じ土の「どべ」を、「ひび」に塗りこむ場合も有ります。

  ② 製作途中の「割れ」は、土を圧着させる方法と、土を足す方法が有ります。

   ) 「割れ」の隙間が狭い場合には、割れた両端を持ち、圧着させます。

     その際、隙間部に、筆などで、水や「どべ」を流し込みます。

     その後、左右の土を、指や「竹へら」で、「×、×、×」状に伸ばして、接着した後、

     指や皮で慣らします。

   ) 「割れ」の隙間が、やや広い(1mm以上)時には、土を足して補修します。

    a)  縁など端が「割れ」た場合には、紐状にした同じ土を、水で濡らし、「コの字」状にします。

      この紐を、縁の三方(内外上)に押し当てます。更に針(剣先)等を使い、割れた溝に

      押し込み、三方を、強く締め付けます。

     その後、余分な土は、直ぐに取り除くか、若干乾燥した後、削り取ります。

   b) 縁以外に、「割れ」がはいった場合

      「割れ」が裏側にまで、達している時は、裏表(又は内外)から、紐状にした土で、

      補修し、裏側に達していない場合には、表側のみから、補修します。

     何れも、溝に空気が残らない様にします。

     (水、「どべ」を付ける、溝に押し込む、両側から、締め付けるなど。)

  以上の方法で、製作途中の補修は、ほとんど問題有りません。

2) 製作後、乾燥時の「割れ」「ひび」の補修。

   乾燥と伴に、土は縮み始め、「割れ」や「ひび」がある場合には、どんどん傷が大きく長く成ります。

   この場合も、乾燥度合いによって、対処方法も変わります。

  ① 乾きが甘い場合、まだ土の色が、製作時と、余り変わらない時には、前記1)の方法で、

    対処できます。

  ② 乾燥が進み、土の色が変わって来たら、補修はかなり困難です。

    (最初に述べた様に、廃棄処分するのが、妥当ですが・・・)

    対策として、以下の方法が有ります。

   ) そのまま素焼し、素焼後に、対処する。

   ) 外科的に、切開、切除して補修する。

   ) 陶芸用(本焼き)接着剤を使って補修する。


 以下、詳細は、次回に述べます。

陶芸失敗と対策

    
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作品の「割れ」、「ひび」対策(不注意2)

2009-07-24 15:23:43 | 失敗と対策
不注意から起こる、「割れ」や「ひび」に付いて、話を進めます。

3) 乾燥時に、起こる。

  ① 不均一な、乾燥も、「割れ」「ひび」の原因に成ります。

    この件に関しては、以前に述べましたので、それを参照して下さい。

  ② 天日干し

    素焼する直前に、作品を「天日干し」して、十分乾燥させます。

    注意する事は、急な夕立などで、作品を濡らさない事です。

    乾いた作品は、急激に水を吸うと、本体が、溶けて壊れてしまいます。

    天気には十分注意する事です。

4) 施釉時に起こる

   釉薬を塗る際にも、注意しないと、作品を壊す恐れが、有ります。

  ① 以前、大き目の鉢に、漬け掛けで施釉する際、作品を全部沈めた後、両手で縁を持ち、

    引き上げたら、持った部分から、完全に「割れ」てしまいました。原因は、

    中の釉を捨てずに、そのまま持ち上げた為と、指跡を気にして、持つ場所が、端過ぎた為です。

  ② 漬け掛けの際、取っ手など弱い所を、釉の容器の底や、縁にぶつけ無い事です。

  ③ 多い事故は、作品を持つ場所が少なく、不安定な持ち方となり、施釉時に、落してしまう事です。

    釉の容器の中なら、割合安全ですが、施釉後に、外に落した場合は、壊れる恐れが有ります。

    持ち難い作品は、他の施釉方法を取るか、施釉の用具の使用を、考えて下さい。

5) 窯詰め、窯出し時に起こる。

  ① 窯詰めや、窯出しの際、棚板の支柱が落ちて、下の作品に当たり、破損する場合が有ります。

   窯詰めでは、作品の入れ替えは、しばしば行われます、その都度、棚板を外します。

   その際、上手に取らないと、支柱が動いて落ち、下の作品に、当る場合が有ります。

  ② 窯出しの際には、棚板と一緒に、支柱が「くっついて来る」場合が有ります。

    棚板に、「ぶる下がった」状態です。

    (特に、棚板に、アルミナコーチングを、塗布した直後の本焼きで、起こり易い)

    その支柱が、「ひかかり」、作品を下に落したり、急に棚板から、支柱が取れて、

    落下し、下の作品に当る場合が有ります。支柱が大きい場合は、特に問題です。

   何れも、棚板を取り去る時は、支柱の動きにも注意します。

  ③ 釉薬が流れ落ち、棚板に付いた場合、力任せに、剥がそうとすると、作品が「割れ」ます。

   ) 棚板の裏側から、木槌などで叩き、コーチング毎、剥がします。

     (取れたコーチング部分は、塗布して、補修して置きます。)

   ) 流れが少ない場合には、「タガネ」などで、少しづつ、剥がします。

   底に付いたコーチング(白っぽい)は、「ダイヤモンド、ヤスリ」で削りとります。

以下次回に続きます。   

陶芸失敗と対策



 
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作品の「割れ」、「ひび」対策(不注意1)

2009-07-23 18:01:11 | 失敗と対策
「割れ」や「ひび」は、作品の取り扱いの、不注意から起こる事も多いです。

1) 作品移動時に、起きる。

 ① 他の物に、ぶつかる、下に落す。

   出来上がった作品を、別の場所に、移動するのは、ごく普通の事です。

 ・ 乾燥前の状態では、作品を直に持たず、取り板の上に載せて、移動します。

   生の作品は、(基本的に)一個一個別々に、両手で、持ち運びます。

   複数個、同時に移動すると、思わぬ事態と成り易いです。

   十分広い作業場でも、轆轤周辺や、作業台周辺には、色々な用具や、他の作品が置いてあります。

   又、足元にも、椅子や、粘土、釉薬その他の物が、いっぱい有るはずです。

   それらに気を取られて、取り板を、斜めにしたりすると、不安定な作品は、揺れたり、

   最悪、下に落したりします。

   特に移動距離が、長くなるに従い、危険度が増します。

  ・ 整理整頓を心掛けても、中々上手くいきません。 安全な通り道を、確保したい物です。

    又、作品を、棚などから移動する際、他の作品や、棚の天井、壁などにぶつけない事です。

  ・ 素焼、本焼き後では、直接持つ様にします。(窯出し直後は、軍手を使います)

    複数個持っても、さほど問題ありません。(但し、大物は一個持ち)

    素焼後は、作品表面に「ザラツキ」が、有りますので、手が滑る事は無いと思います。

    本焼き後は、表面がガラス質ですので、若干滑り易いです。

    但し、作品同士は、接触しない様にします。

  ② 持つ所を、誤る。

    取っ手や、蓋のつまみは、本来、その部分を、手で持つ為に作ります。

    しかし、生や素焼後の、その部分は、出来るだけ、触らない事です。

    接着されている部分は、一体で作った(削り出し等で)物より、強度的に、弱いです。

    又、急須の様に、本体がある程度、重たい場合は、取っ手に掛かる力が強く働き、

    そこから、取れる恐れが有ります。

   ・ 持つ時は、片手を底に当てる様にし、他の手で、本体を支えます。

2) 作品の保管方法

   置き場所のスペースの関係で、作品を重ね合わせる場合が、多いです。

   作品を、不用意に、重ねて保管すると、「割れ」や「ひび」が入る恐れがあります。

 ① 生の作品を保管する方法

  ) 十分乾燥させてから、重ねる。

    乾燥が甘いと、上の重みに耐えかねて、変形したり、「割れ」「ひび」が起こります。

  ) 容器の縁で、上の重さを受けない。

    縁の一点で受けると、縁が割れやすいです。  

  ) 重ねる数は、2~3個にする。

    重ねる場合には、入れ子の様に、下から大、中、小の作品を、底で受ける様にします。

    又、直に重ねず、紙を一枚間に挟むだけでも、安全に重ねる事が出来ます。

    軽く小さな物なら、4~5個重ねる事も可能ですが、一般には2~3個にします。

  ) 皿など板物は、立て掛けて、重ねる。

    薄く面積の広い作品は、壁などに立て掛けます。

    但し、下に成る部分が、不安定に成らない様に、滑り(回転)止めを付けます。

    重ねる数は、5~8個程度可能です。(一個一個、紙で包むと、より安全です)

 ② 素焼した作品を、重ねる場合

   生ほど、気を使う事も、ありませんが、十分注意します。注意事項は、生に準じます。

   但し、変形や、強度が若干強く成りますので、重ねる数は、概ね二倍程度を目安にします。


以下、次回に続きます。

陶芸の失敗と対策 

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作品の「割れ」、「ひび」対策(乾燥2)

2009-07-21 18:15:45 | 失敗と対策
引き続き、作品の「割れ」「ひび」対策に付いて、お話いたします。

D) 乾燥時の「割れ」「ひび」対策

 ② 作品の一部(特に内側の底)に、水を貯めて置かない。

  a) 電動轆轤では、多量に水を使います。それ故、容器状の底に、水が溜まります。
  
    轆轤挽き直後に、この水を取らないと、濡れた部分は、周囲より乾燥が遅れ、周りの引く力で、

    「Y字」又は「I字」状の、亀裂が入ります。

    スポンジを使い、水を吸い取り、手が入らない作品は、スポンジジに、柄を付けます。

 ③ 「櫛目」、「透かし彫り」の際の注意

   装飾目的に、「櫛目」や、「透かし彫り」を入れ、表面に傷(?)を付ける場合が有ります。

   その際注意をしないと、「割れ」や「ひび」の原因を作ってしまいます。

  a) 「櫛目」を入れる際、作品の端まで入れず、最小でも5mm以上、残してください。

    端までつけた「櫛目」から、乾燥に従い、「ひび」が入り易いです。

  b) 「透かし彫り」の際にも、同様に、端から5mm以上、開けます。

    更に、「透かし」の穴同士の間隔も、出来るだけ、多めに取るのが、安全です。

    乾燥で「ひび」が、入る以前に、「透かす」作業で、「割れ」や「ひび」が、入り易いです。

  c) 「櫛目」も「透かし彫り」も、作業時の、乾燥度合いを考慮します。

    「櫛目」は、渇きが甘いと、作業は楽ですが、「透かし彫り」は、甘くても、乾燥し過ぎても、

     作業し難いです。

     特に、抜き工具(色々な形の物が、市販されています)を使う場合には、乾き過ぎると、

    「ひび」が、入り易いです。

  ④ 作品全体を、均等に乾燥させる。

   a) 作品の肉厚に差が有る場合、薄い部分に、「濡れた布」等を掛け、乾燥を遅らせます。

   b) 背の高い作品は、上部から乾燥します。

     それ故、上記の様に、「濡れた布」を掛けたり、霧を吹きます。

   c) 一方向からの、熱(日光など)や、風により、乾燥が進む場合、周期的に、

    作品を回転させてたり、天地を、逆さにしたりして、乾燥を均一にします。

   d) 乾燥度合いの異なる作品を、接着すると、その接着面に、「ひび」が入ります。

     乾燥の甘い方の、土の水分が、急速に接着面を通して、相手側に吸い取られる為です。

     それ故、後付けが必要な、「取っ手」や「摘み」などは、本体と同じ程度に乾燥させた後、

     取り付ける必要が、有ります。

  ⑤ 急激な乾燥は、出来るだけ抑える。

    理想的には、湿度の多い所で、じっくり乾燥させる事です。
  
    (陶器用の乾燥器に入れる、濡れた布を掛ける、作品に時々霧を吹くなど)

    出来るだけ、直射日光に当てたり、強い風や、熱風に晒さないで下さい。

    但し、上記の注意事項は、建前です。大物ならば、注意する必要が有りますが、

     一般的な大きさの作品では、少々乱暴に取り扱ても、「割れ」を起す事は、少ないです。


以下、次回に続きます。
     
     
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作品の「割れ」、「ひび」対策(乾燥1)

2009-07-19 22:40:04 | 失敗と対策
引き続き、作品の「割れ」「ひび」対策に付いて、お話いたします。

D) 乾燥時の「割れ」「ひび」対策

   土は、作品を作り終えると直ぐに、乾燥し、収縮し始めます。

   何度も繰り返しますが、収縮が「割れ」「ひび」の最大原因です。

  ① 作品の肉厚は、出来るだけ、均等にする。(乾燥の、遅い早いを、無くす為)

    手で触り、肉厚が確認出来る所は、必ず手で、厚みを見て下さい。

     肉厚に感じた所は、何らかの方法で、薄くしします。

    a) 土が軟らかく、変形出来る程度でしたら、指先に力を入れて、薄く伸ばします。

    b) 土が乾燥し始め、指では、変形出来ない場合には、削って薄くします。

      その際、削る場所は、内側なのか、外側なのか、又は両方なのか、判断します。

      削ると、形が変わります。

      形を見ながら、削る箇所を決め、厚みを確認しながら、行います。

      尚、厚みは、指で挟んで測ったり、スケールで、内外の寸法を測り、その差から、肉厚を判断、

      又は、作品を指で弾いて、音の高低(高いと薄い)で判断します。

    c) 電動轆轤で、作陶すると、底や腰の部分に、土が残り易いです。

     底削りの際、腰の部分も削り、肉厚を薄くすると同時に、全体を軽くします。

     「カンナ」で削ると、作品の表面が、轆轤挽きした肌より、荒れます。

     荒れた肌が、気になる方は、「ドベ」を塗り、水拭きします。

   d) 角張った部分は、角部の肉厚が、急激に薄くなっています。面取りして、薄い部分を、

     切り取るか、丸めて、R(アール)を設けます。

    ・ 電動轆轤作業の、糸で切り離す前に、作品の最下部に、「竹へら」で不用な土を、面取りし、

      綺麗な円を出します。

      この作業を怠ると、乾燥時に、底裏の周辺より、中心に向かって、「ひび」が発生します。

      この「ひび」は、乾燥が進むと伴に、段々中心に伸びていきます。

      それ故、「ひび」は、発生させない様に、します。

以下 次回に続きます。

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作品の「割れ」、「ひび」対策(生3)

2009-07-18 18:03:34 | 失敗と対策
引き続き、「割れ」「ひび」に付いて、お話いたします。

 「割れ」や「ひび」を、絶対に起さない事は、出来ません。

 何らかの条件(ハッキリしない条件)によって、起きたり、起こらなかったりします。

 前回上手に出来たからと言って、今回も上手くいくとは、限りません。

 それで、色々苦労する事に、成るのです。

 但し、起さない為の、幾つかの、予防方法(対策)は有ります。

C) 製作時の「割れ」「ひび」対策

   作品を作る際に、作業の仕方や、一寸した工夫によっても、予防できます。

  ・ 重要な事は、土を締める事です。(締めるとは、圧縮する事です。)

    締める事により、土の密度が大きくなり、引き合う力も、強く成ります。

    逆に、締めが甘いと、粘土の粒子間に、隙間が出来、「綱引き」に負けてしまいます。

    土を締める事は、手捻りでも、轆轤でも、かなりの予防効果が、有ります。

    逆に、土の締めが弱いと、「割れ」「ひび」の危険性が、大きいです。

  ① 手捻りの場合: 指、コテ、叩き板、伸ばし棒などで、 器や、袋物等は、土の内外を、

    板状の物は、上下から、しっかり締め付けます。

   特に、角皿の様に、薄くて面積の大きな作品には有効で、厚み方向だけでなく、

    周囲も中心に向かって、締めます。(締めた周辺部の、肉厚は、やや厚くします。)

  ・ タタラ板で、好みの厚さに、スライスし、板状の物(タタラ)を作ります、小物では、十分ですが、

    広い面積の場合では、締め不足です。

    更に、上からローラを掛けたり、「コテ」などで、全体を押し付けます。

   又、大きな面積の、締まったタタラを作るには、タタラ板を使わず、四辺に必要な高さ

   (3、5、8,10mmなど)の桟(さん)を入れ、 その中に土を入れて、叩き板で強く叩き締め、

   更にローラーで、平らに伸ばします。 

  ・ このタタラを、折ったり、湾曲させたり、変形させて、使う場合も有ります。

   その際、圧縮させながら、変形させると、「ひび」が入らず、変形面の肉厚も、薄くなりません。

  尚、唐津焼きで、叩きの技法が有ります。壷などの表面に、叩き文様を、付ける意味も有りますが、

   最大の目的は、土を締めて、「割れ」を防ぐ事です。

 ・ 市松模様のように、異なる色土を、繋ぎ合わせる際にも、繋ぎ面をしっかり締めて、接着します。

   この締めが弱いと、繋ぎ面から、「割れ」「ひび」が入ります。

 ② 電動轆轤の場合:

   大皿の底は、拳で叩き締めます。底割れを防ぐ為です。  

   他の作品の底は、指や、「コテ」を使い、底作りの際、土を轆轤面に強く押し付け、締めます。

  ・ 土を、上に伸ばすのも、土を内外から締めて、土を上に逃がす事ともいえます。

    内外からの力が弱いと、土が伸びないと伴に、土が十分に締まりません。
    
    口縁も、指で厚みが付く様に、締め、更に皮を使い、滑らかにすると同時に、 土を締めます。  
     
 以下、次回に続きます。

陶芸、失敗と対策 

割れ ひび 
 
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作品の「割れ」、「ひび」対策(生2)

2009-07-17 17:43:48 | 失敗と対策
陶芸作品で、一番の失敗は、作品が「割れ」たり、「ひび」が入る事です。

作陶の各段階(製作時、乾燥時、素焼時、本焼き時など)で、この現象は起こり、原因や対策も、色々有ります。

以下順次述べていきます。

1) 「割れ」「ひび」の原因

 ① 最大の原因は、素地(粘土など)が、縮む事によって、起こります。

   (生の作品の乾燥時と、本焼き時に、特に大きく縮みます。)

   土が縮む際、重要な要素は、縮み率(収縮率)と、縮み量(収縮量)です。

  A) 縮み率

   土の縮み率は、縦、横、高さ共、ほぼ同じと考えて下さい。

   (厳密には、高さが高いと、作品の重みで、縦方向の縮み率が、やや大きく成ります。)

   又、土の種類や、焼成温度によっても、率は変わります。当然、率の大きい程、危険は大きいです。

   (一般に、焼成まで、12~13%程度ですが、20%も縮む土も有ります。)

   ・ 作陶時の寸法や、釉薬とも関係しますので、使用する土の縮み率は、予め把握して置きます。
  
    a) 肌理の細かい土は、粗めの土より、率は大きい。

    b) 鉄分が入っている土(赤土など)は、率が大きい。

  対策: 土にシャモット(素焼の粉)や、砂を入れる事により、率を小さく出来ます。

      又数種の土を、ブレンドして、縮み率を、少なくします。

    c) 縄文土器などは、20~30%もの砂が、入っているのが、一般的です。

      これは、縮み率を、少なくし、「割れ」や、「ひび」の発生を抑えようとした証拠です。

   ・ 但し、シャモット等を、粘土に混入させると、手捻りでは、さほど問題に成りませんが、

     電動轆轤で、作陶する場合、手触りが悪く、土の伸びも悪くなり、造り難く成ります。

     それ故、混入量は、少なめにします。(10%以下)

  B) 縮み量

    縮み率は、一定でも、縮み量は、作品の大きさによって、変わります。

    即ち、大きな作品は、大きく縮みます。それ故、大きく作る必要があります。

    又、それだけ「割れ」や、「ひび」が発生する確率も、大きく成ります。

   それ故、大物を作る際は、肌理の粗い物、鉄分などを含まない土を使い、場合に拠っては、

  シャモットなどを、土に入れて、縮み率や、縮み量を減らし、「割れ」「ひび」を防ぎます。


以下次回に続きます。

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