わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

焼き物は壊れ物 15 素焼き3

2013-12-31 16:54:35 | 焼き物の材料(原料とトラブル)

2) 素焼き時、及び本焼き時の粘土の質的変化について。

  ① 結晶水の喪失。

    陶磁器の原料に使われている全ての粘土類は、窯で加熱して行くと、ある温度で結晶水を失い

    ます。結晶水を失う温度は、粘土類を構成している種類によって違いがあります。

   ) カオリナイトは、450~500℃程度で結晶水を失い、カオリンになります。

     この温度範囲の違いは粒子の細かさ、昇温スピード、及び密度(締め具合)によって左右

     されます。即ち、粒子が細かく、昇温スピードが遅い程、低い温度で結晶水は失われます。

   ) 原料の種類によって結晶水の失われる温度が違います。

     絹雲母や葉蝋石(Al2O3・4SiO2・H2O)は500~600℃で結晶水が放出されます。

     石英は573℃、白雲母は700~800℃で無水雲母に成ります。

   ) 結晶水が失われる温度近辺では、窯の温度の上が鈍いです。

      水を蒸発するには大量の熱が必要に成ります。即ち、熱が粘土類に吸収される、吸熱反応

      になりますので、温度上昇は鈍ります。

   ) 結晶水が失われると、体積が収縮又は若干膨張します。

     a) カオリンは収縮し、絹雲母や葉蝋石は膨張します。

     b) この収縮又は膨張する範囲内では、作品の内外からストレス(歪)が起こります。

       この状態で無理に温度上昇すると、作品に「ひびや切れ」が発生します。

     c) 結晶水が失われれば、一応膨張は収まりますが、更に温度上昇を続けると、収縮が

       起こる様になります。(詳細は後日お話します。)

   ) 結晶水が失われ、更に温度を上げて行くと、機械的強度が増します。

      カオリンの場合、約 600℃で色も白色又は黄味を呈します。

      この状態では、粒子の熔融は起こらず、水を吸収する多孔質になっています。

   ) 原料の種類を見分ける方法(熱分析)。

      加熱する事で、熱の吸収と発熱の温度状態を測定し、特有な温度曲線から種類を見分ける

      方法ですが、専門家以外はこの様な測定はしないのが普通です。

   ② 素焼き時の注意点。

      素焼きの失敗は、今まで述べて来た様に、水蒸気爆発の他に幾つか有ります。

    ) 窯詰め方法。

     a) 素焼きは本焼きと異なり、重ね焼きが可能な焼成方法です。その為、本焼きの二倍程の

      作品を窯詰めする事が可能に成ります。但し重ねる段数が2~4段位が妥当でしょう。

      重ねてから窯詰めではなく、窯の中で重ねる事で、重みによる割れを防ぎます。

      又、隣同士で接触しても問題は無いですが、窯詰めや窯出しの際、指が入る程度開けて

      置くと、作業がし易いです。

     b) 入れ子の状態で重ねる場合、口縁同士が接触しない様にします。

       但し、甕(かめ)などの口の広い作品は、同じ大きさであれば、一方を逆さにして口同士を

       接触させ、積み上げる事もあります。

     c) 轆轤挽きした大皿や、タタラ作りの板皿など寸法の大きい作品は、壷などに立て掛けて  

       窯詰めした方が、割れの発生を抑え為、若干望ましい様に思われます。

        (但し、人によっては、効果が無いと見る人もいます。)

    ) 素焼きの焼成方法。

     a) 素焼きは、水蒸気を多量に発生させます。それ故、窯の扉や覗き穴などを完全に

       締めず、水蒸気を逃がす必要があります。

       一般に、結晶水が抜ける500℃程度まで開けておけば十分です。

     b) 温度の上昇は出来るだけ遅くします。

       但し、200~330℃程度の範囲内の場合で、それ以外はある程度スピードアップが

       可能です。       

     c) 焼成時間は窯の種類、窯の大きさ、作品の大きさと量、作品の乾燥度合いにより異なり

       ます。700~800℃まで、早くて3時間(2時間で焼成できる窯もあるそうです。)~8時間

       が妥当な所です。乾燥さえ十分に行えば、意外と短い時間で終わらせる事もでき

       ます。たまには、何時もより短い焼成時間で試すのも悪くはありません。

     d) ガスや灯油などの燃料を使う窯では、重ねた部分に燃え残りの黒い炭(煤、炭素)が

       残り易いです。この炭は本焼きすれば綺麗になくなります。但し下絵付けを施そうと

       すると邪魔な存在です。少なくとも絵付けしようとする部分の上には、作品を重ねない様に

       します。

     e) 素焼きはどうしても、窯の温度分布が一定しません。又一定にする必要もありません。        

       窯の温度を一定に保持する為には、「寝らし」の時間を長くとる必要がありますが、

       700~800℃と温度範囲が広いですので、燃料の節約の為にも、窯の中の最低温度が

       700℃を超えたと思われる温度で素焼きを終わらせる事です。

       勿論、予め窯の温度分布の癖を、知る必要があります。

以下次回に続きます。  

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焼き物は壊れ物 14 素焼き2

2013-12-30 20:33:35 | 焼き物の材料(原料とトラブル)

1) 素焼きをする理由 (前回の続きです)

  ② 素焼きは施釉と密接に関係しています。

   ) 生掛け焼成は作品が破損し易い為、完成数が少なくなります。(歩留まりが悪い。)

   ) 生掛けの問題点(素焼きの利点)

      陶芸では一般に、素焼き後に施釉する事が多いと述べましたが、陶芸家の中には好んで

      生素地に施釉する人も多く存在するのも事実です。その理由として、素地との密着度が

      良い事が挙げられます。即ち、生素地では釉の中にある水分が、素地の表面から吸い

      込まれる際、その水分が素地の表面の一部を溶かし、釉と粘土が融合する為密着度が

      良くなります。即ち、素地の表面に釉が食い込みます。

      但し、素焼きの場合でも表面に気泡が多く存在する為、釉の一部は素地に食い込みます。

      ・ 生素地での施釉や本焼きで焼成する際には、慎重に作業する必要があります。

        それ故、一般には余りお勧めできません。

     c) 生掛けで起こる問題点。

       化粧土には、生素地用と素焼き用を使い分ける必要がありますが、釉には使い分ける

       必要はありません。

      イ) 生素地は、素焼き素地より水に弱いです。

        施釉する方法には色々ありますが、一般的なのが「漬け掛け」、「流し掛け」です。

        いずれも、大量の水に晒す事になります。それ故、生素地の場合には、なるべく短時間で

        作業を終わらせるか、 時間を置いて数回に分けて、徐々に施釉する必要があります。

        例えば、袋物の場合や大皿の場合、内側を施釉したら直ぐに外側を施釉すると、作品が

        崩れる場合が有ります。丁度、化粧土を粉引きの方法で塗ると、作品が崩れるのと

        同じ原理です。

        ・ 但し、スプレー(霧吹き)掛けの様に、徐々に釉を塗る方法で行えば、水分も少なく

          上記の問題も解決出来ます。

       ロ) 生素地は素焼き素地より、強度が低く、乾燥が遅く、吸水性も劣ります。

         素焼きは結晶水までも取り除いた状態になっています。それ故、再度水に晒されても

         元の粘土にも戻る事は有りませんし、機械的強度も格段に強いです。

         更に、生素地では、水を吸うと体積が若干膨張し、機械的強度も落ちます。

         施釉中に一気に膨張すれるので無く、水分が素地に浸透するに従い、膨張量が徐々に

         増えます。その際には釉は水分が無くなり融通性はありません。その為、膨張と共に、

         釉の表面に「ひび割れ」が発生し、最悪表面より剥離する恐れもあります。

       ハ) 本焼き中に釉が剥離し易い。

         素地に吸水性が劣る事は、水分の放出性も劣る事になります。

         即ち放出には時間が掛かる事になり、長時間水蒸気が釉と素地の間に供給され続け

         る事になりますので、これは、釉と素地を剥離する方向の力となります。

       ニ) 生素地に施釉した場合、水分が抜け切る400℃程度までは、ゆっくり昇温させ

         ないと、作品が爆発する可能性が大きいです。(素焼きの昇温速度と同じにする事)

         一方、素焼き後に施釉した作品では、例え素地中に水分が残っていたとしても、

         素地中の気泡や釉中の隙間を通って、速やかに外に排出されますので、どんどん

         昇温させても、爆発の危険性はありません。         

2) 素焼き時、及び本焼き時の粘土の質的変化について。

以下次回に続きます。  

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焼き物は壊れ物 13 素焼き1

2013-12-29 22:24:19 | 焼き物の材料(原料とトラブル)

陶芸では一般に素焼きを施した後に、施釉(釉掛け)を行います。

1) 素焼きをする理由 

 ①) 素焼きとは一般に低い温度で焼成する事です。

   ) 現在では素焼きは600~900℃の範囲内ですが、普通の陶器は700~800℃で焼成

      する場合が多い様です。

     a) 粘土類は450~500℃程度で結晶水が抜けると言われています。(無水物となる)

       結晶水が抜け、更に高温に成ると、粘土類は質的変化を起こし、再度水に漬けても、

       元の粘土類の粘りや可塑性等の性質を、取り戻す事は出来ません。

       (詳細は後日お話する予定です。) それ故、最低でも600℃は必要に成ります。

      b) 温度が高く成る程、機械的強度が増しますが、吸水性が減少し、施釉がし難くなります

         ので、余り高温には出来ません。それ故一般的には800℃程度が妥当な温度です。

   ) 歴史的には、窯が発明される前の「野焼き」の状態で焼成された土器類も、素焼きと呼ば

     れる程度の焼成温度です。それ故、土器が発明されたおよそ12,000年前から素焼きは

     存在している事に成ります。尚、土器類は世界各地で作られています。

   ) 窯が発明され、高温で焼成できる様になっても、素焼きは行わずに直接焼成していました。

       勿論、今でも焼き締め陶器は素焼きはしません。

   ) 釉が発明(発見)された以降も、しばらくの間は生掛け後に焼成していました。

      ・ 生掛けとは: 素焼きをせずに乾燥させた素地に、直接施釉する方法です。

      一説には、素焼き後に施釉する方法は、明治以降に西洋から伝わったと言われていますが

      真偽の程は不明です。

 ② 素焼きは施釉と密接に関係しています。(施釉しなければ素焼きは必要ありません。)

   ) 生掛け焼成は作品が破損し易い為、完成数が少なくなります。(歩留まりが悪い。)

   ) 生掛けの問題点(素焼きの利点)

     a) 生掛けの場合も、十分素地を乾燥させてから、釉を掛けます。

       水に溶けた釉が、作品の表面に載る為には、釉と共に水分を吸収しなければなりません。

       その故、素地が十分乾燥している事が必要です。

     b) 生素地と素焼き素地では、大きな違いがあります。

      イ) 生素地では結晶間や結晶水など、水分を含んでいますが、素焼き後ではほとんど

        水分は有りません。

      ロ) 生素地では、水分を吸収すると膨張しますが、素焼き後では膨張する事はありません

      ハ) 素焼き後では、粘土中に無数の気泡が存在し、水分や水蒸気の流通を妨げません。

          一方生素地は気泡が少なく、流通を阻害しますので、急激な温度上昇による蒸気圧が

          高くなり、爆発の危険を孕みます。

      ニ) 素焼き後の吸水性のある素地は、施釉後の乾燥を早めます。

          以前に乾燥とは表面より水分が蒸発すると事と述べ、例外もありますとお話ししま

          したが、 この施釉後の釉の乾燥が例外と成ります。

          即ち、濡れた表面の水分は、急速に素地の中に吸い込まれる事で、見る見るうちに

          乾燥し、釉掛けした部分が直ぐに持てる状態になります。吸い込まれた水分は

          じっくり表面より抜け出る為、釉の濡れは起こりません。

       ホ) 施釉する際、吸水性が良いので厚めに掛ける時でも、短時間で作業を終える事が

           出来ます。又、機械的強度がありますので、生掛けよりも安心して作業ができます。

       ヘ) 施釉後は十分乾燥させなくても、本焼き作業が可能です。

          上記の様に気泡を多く含む為、粘土内に発生した水蒸気も容易に、表面まで抜け

           出す事ができますので、爆発の危険もありません。

     c) 生掛けで起こる問題点。

以下次回に続きます。 

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焼き物は壊れ物 12 乾燥のメカニズム3

2013-12-28 21:31:35 | 焼き物の材料(原料とトラブル)

2) 乾燥のメカニズム(仕組み)について。

  ③ 乾燥中の水の移動に付いて。

   生素地の乾燥は、完全に解明された訳では有りませんが、以下の様に進むと思われています。

   ) 水分を多く含む「ドベ」や泥漿(でいしょう)状態の粘土類の粒子は、多量の水の中に浮いて

      いる状態です。 先ず、粒子の周囲の水分が、粘土類の表面より、外に吸い出され表面

      より乾燥し、硬さが増します。次第に内側まで乾燥が進みます。この間、水分は自由に

      動き回る事ができます。

   ) 作品が作れる程度まで乾燥すると、板状の粘土層間の水分が抜け出します。

      この場合には、水分は粒子間を通る事は少ない為、比較的早く乾燥が進ます。

      乾燥と伴に粘土の可塑性は失われ、体積も急速に収縮します。

   ) 最後の段階で、粒子間の水分が抜け出ます。この段階になると、収縮はほとんど起き

      ません(変形も起きない)。 粒子同士が接触し、隙間の無い状態では、収縮する余地は

      ありません。 乾燥が進むと、どんな粘土でも白、又は白っぽくなります。

      但し、水分が抜け出る為には、粒子の間を通る必要があります。密に詰まった粒子間は

      中々水分を通しません。特に肉厚な作品でが、乾燥に日数を要します。

     a) 一気に乾燥させるより、休ませながら乾燥させた方が経済的で、結果的に早く乾燥する

       と言われています。

     b) 表面の乾燥速度と、内部から滲み出た水分量の差が、等しい程度が理想的です。

     c) 実際には、表面の乾燥が早く、滲み出る量は粘土粒子の妨害によって、時間が掛る

       場合が多いです。 それ故、表面を乾燥させた後、内部より滲み出す水分で、表面が

       濡れる程度に成ってから、再度表面を乾燥させる事を繰り返し、全体を乾燥させます。

   ) 素焼きの場合。

     a) 大気中と違い、窯の中で周囲から熱せられた粘土類は当然熱を持ちます。

       水は100℃で沸騰すると言われています。それ故100℃程度では表面から、盛んに

       水蒸気を発散します。

     b) 作品内部でも温度上昇に伴い水蒸気が発生します。但し、内部は粒子が通気(水)性を

        阻止する為、表面より圧力が高く、沸点も高くなります。

     c) 水蒸気(又は熱水)は外に逃げようとしますが、水を通しにくい粘土の為、容易に表面まで

        たどり着く事は出来ません。この様な状態で更に温度を上げると、蒸気量は増え続け

        その圧力が増す事になります。    

     d) 粘土の粘着力(粒子間の力)と蒸気の圧力のバランスが崩れると、一気に粘土を破壊

        します。破壊力は密閉されればされる程、威力が増します。それ故肉厚の作品の方が、

        破壊力は強いです。破片は周囲の作品にぶつかり、破損する場合も多いです。

      e) 上記の爆発を抑えるには、作品の芯まで十分乾燥させる事と、温度の上昇を出来る

         だけゆっくりさせる事です。

    ) 一度素焼きの終わった粘土は、温度を急に上昇しても、上記の様な爆発は起こりません。

       素焼きの効果に付いては後日述べますが、ここでは爆発について簡単に説明します。

       ある一定以上の温度で素焼きが行われた粘土類は、内部に気泡(隙間)を豊富に抱えて

       います。これは粒子間の水が蒸発した跡です。その為、水(又は水蒸気)を通し易くして

       います。内部で発生した熱水や水蒸気は、容易に表面まで移動でき、内部に溜まる事は

       有りません。即ち爆発する程の圧力には成りませんし、更に、素焼きで粘土は生より数倍

       機械的強度が増しています。それ故、急な温度上昇でも何の問題も起こりません。

以下次回に続きます。

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焼き物は壊れ物 11 乾燥のメカニズム2

2013-12-26 16:28:17 | 焼き物の材料(原料とトラブル)

2) 乾燥のメカニズム(仕組み)について。

  ② 自然乾燥と急速(強制)乾燥。

   ) 強制的に水分を抜き取るのが急速乾燥です。    

    c) 外部から水分を吸い取る方法。

     イ) 代表的な技法に鋳込み成形があります。泥漿(でいしょう)した粘土類を石膏など水を

       吸収する型に流し込む(鋳込む)事で、同じ様な形の作品を多数作る方法です。

       乾燥した石膏型は、鋳込んだ直後から水分を吸い取りますので、型に接した部分から

       乾燥が起こります。その為、時間の長さによって、乾燥する厚みが変わります。

       中空の作品でも、外側のみの型があれば良く、必要な肉厚に成ったら、中の泥漿を

       外に流し捨てれば、空洞の作品に成ります。

     ロ) 再生した土を泥漿化し、乾燥させて再利用する場合には、素焼きの鉢などを利用して

        水分を抜く方法が使われます。更に、轆轤挽きで成形に失敗した土を再利用する場合

        には、石膏板や板の上に薄く伸ばし、水分を吸い取らせて、水分を強制的に抜く方法

        は、しばしば見受けらえる光景です。

     ハ) 熱した灰の中に入れて水分を吸収する方法。

        「ぐい呑み」程度の小物を、急速に乾燥させる為に、灰を利用した乾燥方法です。

        乾燥した灰は吸水性がありますので、作品全体を埋めます。作品に付いた灰は容易に

        払い取る事が出来ます。熱した灰ではより急速に乾燥します。

        但し、大きな作品には不向きな方法です。

    ) 窯の中で乾燥させる。

       素焼きを行う場合、作品が十分乾燥していないと、作品が爆発し粉々に成り、周囲の作品

       なでも被害を受けます。尚、窯の傍にいれば、鈍い爆発音を聞く事が出来ます。

       それ故、乾燥が不十分な作品は素焼きが出来ません。しかし、乾燥させる十分な時間が

       無い場合が多々あります。その様な場合には、作品を窯詰めし200℃程度に窯を暖め

       一晩放置すると、素焼きに耐える程度に乾燥すると言います。

        尚、小さな電気窯があれば、必要な作品のみを乾燥させる事が出来ます。

      a) 窯の中で爆発する理由は、温度上昇と伴に作品は暖められます。

         暖められるに従い表面より水分が蒸発し、内部の水分も表面に吸い出されます。

      b) 問題は表面に到達する速度が、内部に発生する熱水する量に追い付かない点です。 

         即ち、スムーズに水分が表面から蒸発すれば問題に成りませんが、蒸発スピードより、

         内部の蒸気量が大きいと、水蒸気爆発を起こします。

         但し、素焼き後に施釉した場合とは条件が違いますので、急な昇温でも爆発は起こり

         ません。この件については、後日お話する予定です。

      c) 素焼きの際、爆発する温度は、230~280℃程度の範囲です。(私の経験値です。)

        尚、窯入れ時の乾燥具合や、作品の肉厚、更には昇温速度などによってこの温度

        範囲は左右されます。それ故、200℃程度では、爆発は起こらないと考えらます。

         ・ 素焼きでは300℃を無事経過したら、爆発の危険性は少なく、ゆっくり昇温させる

        必要は無くなります。但し爆発するだけの水分が無くなったと言う事で、素地にはわずか

        に水分が残り、400℃程度で完全に抜ける言われています。

         ・ 結晶水はこの温度(400℃程度)では抜けません、更に高温に成ります。

           結晶水に付いては後日お話します。

   ③ 乾燥中の水の移動に付いて。

以下次回に続きます。     

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焼き物は壊れ物 10 乾燥のメカニズム1

2013-12-23 20:38:32 | 焼き物の材料(原料とトラブル)

2) 乾燥のメカニズム(仕組み)について。

  一般に水分が本体から抜け出て、表面が乾く事を乾燥と言いますが、例外もあります。

  例外の話は後にして、本題に入ります。素地の乾燥が必要に成るのは、成形時や削り作業時の他

  化粧掛け等の装飾時です。又素焼きの際には十分な乾燥が是非とも必要に成ります。

 ① 表面から乾燥する。

  ) 水を通す物質は、水分を含むと全体を均一にしようと、周囲に拡散する性質があります。

    表面から入った水分は中心に向かって濡れていきます。但し、粘土など粘着性のある物質は、

    水の通りを邪魔しますので、中央に浸透するまでに時間が掛ます。

   ) 逆に乾燥は表面の水分が無く(又は少なく)なると、均一に成る様に奥から表面に水分が

      移動し、徐々に表面を濡らします。最後には中心部まで乾燥します。この水の移動の速さが、

      乾燥の早さを左右する重要な要素です。

    a) 粘土は上記水の移動が比較的遅い物質ですので、乾燥に要する時間は比較的長いです。

       粘土の粒子の細かい程、吸水性も大きく多量に水分を蓄えます。更に、水の流れを阻止

       し易い為、乾燥も遅くなります。

    b) 当然、肉厚の物の方が乾燥は遅くなります。細くて薄い物ほど、乾燥が早く進みます。

      次々に内部からの水が供給されない部分は、他の部分より乾燥が早まります。

      例えば、カップなどは、本体より取っ手など本体から離れ部分が早く乾燥します。

  ) 表面積の大きい程、乾燥が早まります。

     外気に晒される面積に比例して、乾燥は早くなります。

    a) 作品の角部分から乾燥します。

      角張った作品では、その角から乾燥が進みます。例えば、高台を削る場合、削り終わる 

      直前に、高台の畳み付き部分の内外を「面取り」する必要があります。

      「面取り」する事で隅部を斜めにカットし、角を取り除きます。この行為は高台を持った時に

      手が痛いのを防ぎ、使用時にテーブルを傷つけない役目もありますが、乾燥による

      「割れやひび」の発生を予防する役目もありますので、必ず実行する事です。

    b) 作品は上部から乾燥します。この件に関しては以前にお話していますので、参考に

       して下さい。乾燥を一定にする為、時々上下逆さにすると良いでしょう。

    c) 特別肉厚でなく、数mmの肉厚で適度の大きさの一般的な作品では、4~7日程度で、

      素焼きに適する乾燥になると言われています。

 ② 自然乾燥と急速(強制)乾燥について。

  ) 日陰の屋内で大気中に放置するのが自然乾燥です。作品に無理なストレスが掛かりません

     ので、優しい乾燥の仕方ですが、時間が長くなるのが欠点です。

  ) 強制的に水分を抜き取るのが急速乾燥です。早く乾燥できますが、注意をしないと作品を

     歪ませたり、最悪破損する恐れがあります。

     強制的な方法として以下の様な方法があります。

    a) 天日干する。直射日光に作品を晒す行為です。

      素焼き直前に、天日干し完全にカラカラに成る様に乾燥させる事は、ほとんどの方が行って

      いるはずです。特に風があると乾燥度合いは進みます。

      但し、成形直後に天日干しする際には、均等に乾く様に時々日に当たる向きを変える必要が

      あります。一方向のみの天日干しは、片側のみ強く収縮し、必ず歪みが発生します。

    b) 熱風を当てる。ドライヤーなどで作品に熱風を当て、乾燥させる方法ですが、全方向から

      風が当たる様にする必要があります。電動轆轤などの上に載せ回転させながら、一方から

      熱風を当てると良いでしょう。尚、高温の熱風は作品にストレスを多く与えますので、弱い

      熱風が望ましいです。

    c) 外部から水分を吸い取る。

以下次回に続きます。

      

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焼き物は壊れ物 9 粘土の成形水量と乾燥4

2013-12-22 21:34:05 | 焼き物の材料(原料とトラブル)

1) 乾燥のトラブルに付いて。

  ⑤ 板状の粘土は、乾燥に従い反りが発生し、変形し易くなります。

    いわゆるタタラ作りと呼ばれる板状にした粘土を使て作った作品は、乾燥に伴いしばしば反りが

    発生します。反りによって板皿などに「ガタツキ」が出る事もあります。

   ) 反りによる変形には、規則性があります。

     作品は一般に内々に反ります。即ち、蓋の無い四角い箱の場合、4枚の側面(四辺)は

     いずれも内側に湾曲します。底面も内側に反り、中央が盛り上ります。

     土の種類は余り関係しません、多くの粘土で起る現象です。

   ) 作品の形状、肉厚の他、面の広さや辺の長さが関係します。

      辺の幅が狭く、長さが長い程湾曲は強くなります。

   ) 原因は、表面と裏面の乾燥の早さの違いで起こると考えられています。

     a) 長皿の様に薄い板一枚の場合、一般に上面(表側)を上にして自然乾燥する事が多い

       です。上面は常に空気に晒され、底面は床(台)に接して置かれ空気の流通も余りあり

       ません。その為、上面が早く乾燥し、表面の縮み量が底面より多くなります。

     b) a)の状態ならば、底が凹状になるはずですが、実際は底の中央は凸状になります。

       一見矛盾する様に見えます。しかし、表面の縮みは一様ではなく、縮む順番がある為、

       中央が凸状に成ります。

     c) 長皿の様に板状の作品は、空気に触れる面積の多い周囲から縮む事になります。

       皿の中央部は最後に乾燥します。縮む場合周辺の土が中央に引き付けられる力が

       働きます。その力は周辺部が一番強く、中心に向かう程弱くなります。

       中心に向かう力は、乾燥度合いが弱い中央に集中し、中心部が盛り上がります。

      d) 箱状の四辺の場合も、似たような働きとなります。

        箱の内側より外側の方が、湿度も低く空気に晒され、蒸気となって発散し易い為、

        乾燥が早く進みます。

   ) 予防策として、以下の方法があります。

     a) 予め変形する事を勘案して、逆方向に変形を加えて置く事です。

     b) 重しを置いて変形するのを、強制的に阻止する方法。

     c) 両面が均等に乾燥する様な環境下に置く事です。 例えば、裏面の乾燥を早める為に

       石膏板の上に置く方法や網状の布の上に置く方法、箱の場合は内側に弱い熱風を当て、

       外側より早く乾燥させる方法が考えられ、実際に実行している方もいます。

     d) 筋状のパーツ(リブと言います)を取り付ける。変形しそうな場所に裏面からリブを取り

        付けて補強します。

     e) 一番の解決策は、湿度の多い場所で長時間掛けて乾燥させる事ですが、時間が掛り

        過ぎる事と、それなりの設備(?)が必要になり易いので、一般的ではありません。

  ⑥ 轆轤挽きした作品も乾燥と伴に、捩れ(ねじれ)が発生します。

    ) 捩れの方向にも規則性があります。捩れは粘土の記憶性に起因します。

       轆轤挽きすると土は螺旋状に上に伸びて行きます。即ち、捩れながら伸ばされる事になり

       ます。粘土は乾燥すると、元の状態に戻ろうとする性質がありますので、捩れを解消する

       方向に変形します。

    ) 特に急激に強く捩れた形状の物は、それだけ多く戻ろうとし変形量も多くなります。

       顕著な例として、急須の注ぎ口があります。中空の細く長い形にする為、土を絞り込むので

       急激に捩れ易いです。この場合も、捩れが戻る事を想定し、ある程度傾けて本体に取り

       付ける事に成ります。

以下次回に続きます。

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焼き物は壊れ物 8 粘土の成形水量と乾燥3

2013-12-21 20:32:31 | 焼き物の材料(原料とトラブル)

1) 乾燥のトラブルに付いて。

  ① 乾燥による変形。  変形を起こす原因は、乾燥の不均一にあります。

  ② 乾燥による底割れ。弱い部分が引っ張られ亀裂が入ります。

    以上が前回までの話です。

  ③ 接着部分が剥がれる。

   ) 粘土は同じ種類の粘土を接着するのが基本です。なぜならば、土の種類が異なれば、

     乾燥速度や収縮率に差が有り、トラブルの原因に成るからです。

     接着方法には、何もせずに押し当てる事で接着できる場合と、接着面に水を挽いて圧着する

     方法と、刻みと「ドベ」(ヌタ等の呼び方があります。)を併用する方法があります。

     土の乾燥度合いに応じて選びます。

   ) 接着する側と、される側は同程度の乾燥具合である事が大切です。

      接着する工程のある代表的な作品に、急須の注ぎ口やカップ類の取っ手(握手)、角皿の

      脚などがあります。いずれも、乾燥させて底削りや形作り後に、取り付ける事になります。

      a) 異なる乾燥具合の作品に接着すると、接着面で剥がれ易くなります。

        即ち、接着面の水分が乾燥した作品側に移動し、接着面の乾燥が進み、土同士の

        粒子が馴染み難くなります。その結果、剥がれ易くなります。

      b) カップの取っ手など、乾燥の甘いものは接着後、接着面は問題なくとも、取っ手の途中で

        切断される事も多いです。取っ手の両端が固定され、取っ手の途中は乾燥収縮に追従

        出来ない結果です。 

  ④ 櫛目や透かし彫り部分など、装飾、加工後に亀裂が生じる場合があります。

    ) 櫛目は作品の端まで持って行かない事です。

       櫛目とは、櫛を用いて、作品表面を引っ掻き、数本の平行な溝を掘り込み模様にする

       装飾方法です。細い「V溝」に成りますので、表面積が増え乾燥が早まり、左右に

       分かれ易い形にもなっています。作品の端は他の部分より乾燥が早く始まります。

       その結果、他の部分より収縮が早く、溝部分は左右に股裂き状態になり易いです。

       それ故端より5mm以上端より離した場所から、櫛目を入れるべきです。

    ) 透かし彫りなど、作品に孔を開ける場合、孔同士の端と端の間は少なくとも5mm以上は

       離す必要があります。特に残り部分が細長い場合には、8mm以上が必要に成ります。

       出来れば10mmが欲しいです。(当然肉厚も関係しますので、状況に応じて決めます)。

       同様にして、作品の縁から数mm離してから孔を開ける必要があります。

       必要な間隔が取れない場合には、細い繋ぎ面(橋の部分)は、乾燥と伴に切断されます。

        (細い程、乾燥が早い為です)

    ) 透かし彫りの際、孔の隅に「R」(丸み)を付けます。

       角張った孔は、角から亀裂が入り易いです。一度出来た亀裂はどんどん成長し、

       長く伸びると伴に、幅も広がります。孔の角部の隅を丸くする事で、亀裂の発生を

       抑えます。同時に丸い「竹ひご」や丸い串等を、隅の「R」に押し当て、土を締めると

       より安全に成ります。更に「なめし皮」で切断面を仕上げ、細かい傷を消せば完璧です。

  ⑤ 板状の粘土は、乾燥と伴に反り、変形し易いです。

以下次回に続きます。 

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焼き物は壊れ物 7 粘土の成形水量と乾燥2

2013-12-20 22:18:43 | 焼き物の材料(原料とトラブル)

陶芸用の粘土類は、可塑性が大きい程、成型水量を多く必要とします。可塑性が大きい事は粘土

粒子が細かい事であり、粒子間により多くの水が蓄積されいる事です。

大気中に放置した粘土類は、可塑性の大きい物質ほど、乾燥が遅くなります。

1) 乾燥のトラブルに付いて。

  乾燥によるトラブルには、変形、剥がれ、ひび、割れ等があります。多くの場合、乾燥により粘土

  類が収縮する事に起因します。乾燥に伴い収縮しますが、その収縮速度が場所ごとに異なる為に

  各種のトラブルが起こります。

  ① 乾燥による変形。  変形を起こす原因は、乾燥の不均一にあります。

    大気中に放置した作品の乾燥は、全体が均一に進行する事は少ないです。

   ) 口縁から乾燥する。乾燥とは、縮む事です。

    a) 作品が偏肉(肉厚に差がある)の場合、肉薄の部分は乾燥し、肉厚の部分の乾燥が

      遅れます。特に口縁の部分に偏肉があると、成形時に丸い形の物でも、円形が歪み楕円形

       に成ります。

    b) 立体的な作品は上部(口縁)から乾燥が進みます。これは作品中の水分が重力で徐々に

      下に下がり、上部は下部より水分が少なくなる為です。

    c) 更に、口縁の肉厚は薄く、底に行くほど肉厚になる為です。

      立体的な作品を支える為には、これは極く自然な事です。

    d) 空気(大気)に触れている面積が、多い部分から乾燥が進みます。

      一般に、口縁は開放されている場合が多いです。即ち、内外上と三方向が大気に触れ

      乾燥も早くなります。一方背の高い作品では、外側は十分大気に触れますが、内側では

      不十分な状態です。更に、底の部分は外側が床(又は台)に付き、循環する大気に触れま

      せんので乾燥が更に遅れます。

     e) 上記の問題を解決する方法は、イ) 急な乾燥は避ける。 ロ) 時々上下(天地)を逆さに

        する。 ハ) 濡れた布で覆い、一部のみの乾燥速度を抑える等があります。

  ② 乾燥による底割れ。弱い部分が引っ張られ亀裂が入ります。

   ) 肉厚の差による、乾燥の不均一によるトラブル。

     a) 肉厚が厚い部分は乾燥は遅く、肉薄の部分は乾燥が早く進みます。

       乾燥すると土は縮みます。その際、周囲の土を引っ張りながら体積を少なくし、強度を

       増します。

     b) 肉厚の厚い部分は、乾燥が遅れ、肉薄の部分より軟らかい状態ですので、周囲から

       引っ張られ、一番軟らかい処より、亀裂(ひび)が発生します。

     c) 最初の亀裂は目に見えない位、微細なものですが、全体の乾燥が進むにつれて、亀裂の

        幅は広がります。亀裂は常に発達する様に作用します。

      d) 特に起こり易い部分は底(高台内)の内側です。亀裂が更に発達すると、内側から

        外側へ、「S字状」の貫通した亀裂が出来ます。

    ) 水分が器の一部に溜まる。

       轆轤挽きで多い現象ですが、成形の最後に器の内側の底の水を、確実に取り除いて

       いない場合に起こります。スポンジなど底に押し当て完全に水分を取り去ります。

       原因は上記と同じで、水で濡れた部分は他より乾燥が遅い事にあります。

     ) 上記の予防策を施しても、底割れの現象は度々起こります。

        問題は、土が十分締まっていない事です。土が締まるとは、粘土の密度を上げる事です

        底面の上又は側面から強い力を加え、圧縮する事で土を締める事が出来ます。

以下次回に続きます。    

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焼き物は壊れ物 6 粘土の成形水量と乾燥1

2013-12-19 22:28:32 | 焼き物の材料(原料とトラブル)

1) 粘土で成形する際、丁度良い含水量を成形水量と言います。

   当然成形方法によって、水分量は変化します。成形方法には、乾式成形、半乾式成形、半湿式

   成形、可塑性成形、過度に軟らかい状態での成形、泥漿鋳込み成形があります。

   工業的には乾式、半乾式、半湿式、泥漿鋳込みの方法で成形されますが、陶芸では、可塑性、

   過度に軟らかい状態、泥漿鋳込みの方法が取られる事が多いです。

2) 轆轤成形に適する水分量。

   可塑性成形(手捻り、轆轤)には、15~30%程度の含水量が良いとされていますが、轆轤

   成形では25%程度が、最適な水分量と言われています。当然作品の大きさ(高さ)や土の種類、

   硬さの好み、制作者の技量によって左右されます。

3) 鋳込み成形に適する水分量は、20~50%とされています。

4) 結晶水について。粘土には、上記成形水量の他に、化学的に結合している水、即ち、結晶水が

   存在します。粘土成分には14%程度の結晶水があると言われています。

  ① 成形水量は、大気中に放置すると徐々に蒸発乾燥し減少します。乾燥速度は大気の気温、

     湿度、風の有無、更には粘土の粒子の粗さ等に左右されます。

     但し、大気中では、天日干しし、完全に乾燥してしている様ても、成形水量が0%に成る事は

     ありません。

  ② 結晶水は、大気中で自然蒸発する事はありません。

    粘土物資は、450~500℃で加熱する事で、結晶が壊れ結晶水が失われます。

5) 粘土の乾燥。

  ① 大気中での乾燥。

    粘土は成形直後から乾燥が始まり、硬さを増し、機械強度も強くなります。

    ) 乾燥すると硬くなる理由。

     a) 粘土は板状の薄片が層をなしている構造です。(前回お話しました。)水を加えると、

       その層の間に浸透し、潤滑剤として働き可塑性が出て、作品を作る事が出来ます。

     b) 水の蒸発に伴い、層の潤滑剤が失われます。

       粘土の粒子間が接近し収縮すると伴に、粒子間の引力も強くなります。

       その結果、引っ張り強度や曲げ強度が増します。

     c) 蒸発には、粘土粒子を取り巻いている薄い皮膜状の水分が蒸発するのと、薄片の層に

        ある水分の蒸発があります。

       イ) 前者の場合には、被覆状の水分が蒸発する為、隣り合わせの粒子が点接触するまで

          乾燥が進みます。粒子が粗い場合には、粒子間に隙間が生じその隙間に、水分が

          残ります。

        ロ) 後者の場合には、前者より容易に水分が抜けます。

     ) 何処まで乾燥が進み、収縮するのか?

        粘土の粒子同士が接触した段階まで乾燥は進みます。その際粘土につでは、成形水量

        は14%程度で、乾燥による収縮率は8%程度です。これ以降自然乾燥が進んでも、

        収縮量は進みません。素焼き後でも収縮率8%は維持されます。

        尚、14%程度の乾燥具合は、削り作業の最適な条件だそうです。

     ) 作業前に土を練る効果。

        イ) 陶芸では、作業前に何らかの方法(手、土練機など)で土を練ります。

          一般に、土の硬さの調整や空気を抜くなどの効用が言われますが、もう一つ大切な

          役目があります。それは収縮方向を均一にする働きです。

        ロ) 粘土は薄片が層をなしているとお話しましたが、二次元構造では、粘土の結晶が

           一方向に並んだ状態に成ります。即ち、層方向の面接触と、薄片内の粘土の結晶の

           並び方に差がでます。この事は乾燥や焼成収縮が結晶の並び方で、大きく変化する

           事になります。(変化率が場所によって2倍になる事もあるそうです)

         ハ) 土を良く練る事で、結晶の並び方をランダム(無秩序)にし、均一に収縮させ、

            変形やひび、亀裂の発生を抑えます。

以下次回に続きます。

            

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