わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

質問46 本焼きでの割れの原因

2020-10-30 14:51:28 | 質問、問い合わせ、相談事

田中様より以下のご質問をお受けしましたので、当方なりの回答を致します。

 

自窯で13回本焼きしました、12回目までは割れると言う経験がありませんで

したが今回半磁器土5つの(マグカップ、お皿など)うち4つ割れていました、

原因は1成型がまずかった2釉薬が内、亜鉛結晶釉、外、萌黄交趾と言う少し

流れやすい(亜鉛結晶釉よりは流れはまし)透明感のある釉3乾燥のしかた

(釉薬を掛けて4時間後焼いた)、今まで素焼きでヒビが入ったことはありまし

たが本焼きは無かったので少しショックです。

もう一枚お皿も(たたらで半磁器)カンが入ったような割れ方でマグなども同じです。

もう一度同じものを挑戦はしたいと思っていますが不安です、注意点などござ

いますでしょうか。

手轆轤で成形(比較的表面は綺麗と思います少し水が多かったかも)、1250度

で亜鉛結晶釉の温度設定、因みに同窯で陶土は割れておりません。

 

明窓窯より

割れた作品を拝見していないので、詳しい原因は不明ですが、一般的な説明に成りますので、

ご了承下さい。

焼成で起きる割れには、焼成中に起きる場合と、冷却時に起こる物に分かれます。

冷却時に起こる場合は、割れの断面が綺麗であり、釉が断面に付着していない事等から

判ります。今回の割れた断面を良く見て下さい。

冷却時の割れは冷め割れと呼ばれ、焼成時の冷却スピードに関係します。

一方焼成時の割れの場合、断面にややザラツキが有ったり、釉が断面の縁に付いている

場合が多いです。

今回のご質問は、後者の事の様に思われますので、焼成中の割れに付いてお話します。

1) タタラを使った作品(皿、マグカップ)を半磁器土で制作との事ですが、割れの主な

 原因は、土の締りが弱い為と思われます。

 ① 面積の大きいタタラ製の板状の作品は「ひび」が入り易い。

  タタラを作る際、素地を叩き板等で強く叩き締めます。上下方向だけでなく、板の全周の縁

  も手の親指や、厚みのある板で板の内側に向かって、縁が持ち上がる程度押し土を締めます

  その後、なめし皮等で縁(特に角部分)を拭き押した痕を消し滑らかにします。

   縁の小さな傷も本焼きでは、大きな傷に成ります。

  ⅱ) 板状の皿に脚を付けると、作品は変形したり割れを起こし易いです。

   なるべく脚は付けない方が安全です。

   又、皿の周辺を持ち上げる事で、変形や割れを防ぐ事が出来ます。

   持ち上げる量が大きい程効果が有ります。尚、持ち上げた部分が本焼きすると、

   下に落ち、高さが低く成ります。

  ⅲ) タタラを筒に巻いてマグカップを作る際にも、上で述べた方法で土を締めてから

   筒などに巻いて形を造る事です、マグカップの取っ手も土を締めてから形を造り

   取付ます。

  ⅳ) タタラの場合、作品によっては繫ぎ目が生じますので、繫ぎ目の処置が悪いと

   その繫ぎ目から「ひび」が入る事もあります。繋いだ痕が出ない様に綺麗に仕上げるか

   繫ぎ目をあえて二重にする方法もあります。その他接触面積を大きく採る(断面を斜めに

   カットする等)とより割れ難くする事です。

2) 今回半磁器土で発生したとの事ですが、他の素地でも同様な事が起こる可能性が

  有りますので、上記の点をご注意下さい。

  素地の種類に拠っては、同じ方法でも安全な場合と、不安定な素地がりますので

  多くの素地を試す事をお勧めします。

尚、上記方法を行っても割れが発生する場合があります。それは、

① 素焼き時に既に「ひび」が入っているのを見逃した場合。

② タタラが均等な厚みでない場合。

③ タタラが正方向又は長方形の様に綺麗な形ではなく、複雑な形(不定形)の場合。

  特に縁に切れ込みを入れると、そこからひびが入り易いです。

④ その他:成形時に部分的に力が入った等。

3) タタラ以外で作品を作る際、手捻りの場合肉厚に差が出ると、割れが生じ易いです。

 手捻りの方法も、紐作り、玉作り等色々な方法が有りますので、作品の大きさ等を考え、

 適宜選ぶ事です。

陶芸では、作品の割れは、常に付き纏う事柄で、原因も多肢に渡りますので、その都度原因を

考えて下さい。

以上 お役に立つか分かりませんが、参考にして頂ければ幸いです。   

コメント (1)
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