わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

質問 31 新しい釉と着色剤に付いて

2018-02-27 18:04:28 | 質問、問い合わせ、相談事
「なかくき」様 より以下の質問をお受けしましたので、当方なりのお答え致します。


お聞きしたい事が二つありましてコメントさせていただきます。

一つは、最近気になる器に出会いまして、その器の釉薬についてです。

透明のマットで今まで触ったことがないような”しっとり”した触り心地の釉薬です。

よく観察してみると厚みがあり中にたくさんの気泡が閉じこもっていました。

その気泡は一つも表面に出て来ておらずピンホールになっていません。

こちらのブログの記事にあった「灰などの珪酸成分の多く含む原料を使うと気体物質がでる」と

ゆう情報を参考にいろいろ実験をしはじめたのですが初心者で全くうまくい状況です。

もう一つは、着色剤、顔料、呉須、練り込み顔料、上絵の具、下絵の具などの着色するモノの成分

の違いです。私の調べ方が悪くはっきりと違いがわかりません。

初心者の質問ですみません。ご教授よろしく願いいたします。


明窓窯より

1) 最初の質問ですが 当方では”しっとり”した触り心地の釉についての情報を得ていません。

  どのメーカーの釉なのか、又は個人の作家さんの釉なのかも不明ですので、お答えする事は

  出来ません。もしメーカー等の情報を頂ければ有り難いです。

2) 一般論ですが、新しい釉が登場した場合、第三者がそれと同じ物を作る事はかなり困難です。

  新しい釉を作り出す為に、数年又は十数年か掛かる事は稀ではありません。

  長い試行錯誤の末に、ようやく成功するからです。それ故、第三者はその釉を見たからと言って

  簡単に作り出す事は困難です。勿論釉のレシピを公表してくれれば良いのですが、苦労して

  作り出した釉のレシピを公表する事はありません。それ故、第三者が同じ釉を作る事は、容易

  な事では有りません。  

3) 気になる点は、「それが本当の釉であるなか?」と言う事です。

  厚みが有り、マットで内部に気泡を持ち、表面に気泡の抜け出した跡も無く、”しっとり”感

  の有る釉との事ですが、手に触れて見たのでしょうか?

  もしかしたら、ガラス質の釉以外の物の可能性は有りませんか?例えば、発泡性の塗料を吹き

  付けたり、プラスチックの様な物で表面をコーテングした物とか、気泡状の物を表面に塗って

  その上からニスや漆、塗料などを塗る等の方法を採用している可能性は皆無ですか?

  新しい釉に挑戦する前に、手に持って確認できれば良いのですが・・・

  もし本物の釉ならば、苦労する事を覚悟の上、挑戦して下さい。

  世の中には、紛らわしい物も多いですので、注意が必要です。

4) 着色剤、顔料、呉須、練り込み顔料、上絵の具、下絵の具などの着色するモノの成分の違い

  に付いて。

  ① 着色には、素地(粘土)や釉、更に絵付けがあり、次の様に分類されます。

   着色剤の主な原料は、各種の金属です。複数の金属を混ぜたり、金属類の添加量によって色

   も変化します。更に、焼成する温度や焼成環境(酸化、還元など)によって、発色も変化し

   ます。この金属類に釉の原料の一部を添加した物の中に、釉の着色剤として利用できます。

   ⅰ) 全てに利用できる着色剤

    そのままで、利用できる代表的な物が弁柄などの酸化鉄です。その他、酸化銅、呉須

    (酸化コバルト)等です。前二者は本焼き程度の温度で、素地や釉の中に溶け込みますので

    釉の発色剤として利用できます。酸化鉄は茶、黒、赤、緑(青磁)など多彩に発色します

    呉須は熔けは甘いですが、瑠璃色釉として利用できます。

    絵の具としても利用できます。即ち釉や素地との相性が良いからです。但し、上絵の具は

    低い温度(800℃程度)で焼成しなければ発色しません。    

   ⅱ) 素地のみに利用できる着色剤

    市販されているのが、練り込み顔料です。勿論化粧土にも使う事が出来ます。

    但し、釉の中に添加しても、綺麗な色釉には成りません。顔料がガラス状に成らすに、

    釉とは分離し粒子状に残り、釉の表面も荒れた状態に成ります。

   ⅲ) 素地と釉に利用できる着色剤

    下絵付け用の絵の具類(主に金属類)です。絵の具にはガラス質になる成分が含まれてい

    ます。但し、下絵の具には、使用できる温度範囲があり、素焼き程度の素地では発色しない

    色もあります。又、高過ぎる温度でも発色しません。又焼成の雰囲気で発色にも変化が

    あります。

   ⅳ) 絵付けのみに利用できる着色剤

    上絵の具として利用できる着色剤です。本焼き後の作品の表面の絵付けに使います。

    下絵の具より綺麗で鮮明な色(原色に近い色)がでます。鉄、銅、金、銀などの金属類に

    ガラスの成分を含ませた物で、本焼きの表面のガラス質と一体になる様(密着)に調合

    されています。但し低い温度のみ発色します。尚、何らかの接着剤が添加されている可能性

    があります。

  ② 着色剤の成分の差は、金属の熱的変化(熔け易さ)、釉との相性を良くする材料が添加さ

   れているか、高い温度又は低い温度でも発色する事が出来るか(その金属の特性)の差と

   言う事になります。

以上、参考にして頂ければ幸いです。
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続 釉(薬)について3(透明、マット、乳濁1)

2018-02-13 21:29:33 | 釉薬に付いて 釉薬の種類 熔融剤
釉はガラス質と述べましたが、それには三様の状態を呈します。

即ち、透明釉とマット(艶消し)釉、乳濁(白濁)釉です。後者を失透明釉と呼ぶ事もあり

ます。尚、各種色釉や結晶釉は、透明釉に金属色や結晶が出来た物で、広い意味で透明釉に

分類されます。

釉の原料は主に酸化アルミニウム、珪酸(シリカ)とアルカリ(塩基)成分です。

前二者はガラスの骨格を成す成分で、アルカリ成分は、釉を熔け易くする熔融剤と呼ばれて

います。

1) 釉として使用できるのは、アルミナ(Al2O3)とシリカ(SiO2)成分の割合によって決

 まります。

 ① 光沢が有り、良く熔ける透明釉。

  アルカリ(塩基)はROと表します。ROを一定にしたの場合、経験上より、

  Al2O3:SiO2 = 1:7~8(モル)ぐらいと言われています。

 ② 釉を調合する場合や、釉のレシピが表示されている場合、注意する事はその単位です。

   体積比、重量比、モル比のいずれかで表示されています。この単位を間違えると、当然

   混合割合が異なってしまいます。

  ⅰ) 体積比は、桝(ます)などや計量カップ等で測った量です。

   古くから行われている簡便な方法で、一升桝や一合桝など当時は用意に手に入る物が使

   われています。現在その名残が3(合)号釉、4(合)号釉等と呼ばれている物で、

   木灰などアルカリ成分を桝で量って混入し、熔ける温度を調節しています。

   古いレシピ本で採用されている事が多いです。

  ⅱ) 重量比は秤(はかり)で重さを計った量です。単位はグラム(g)、Kgです。

   現在でも比較的多くのレシピ本で見る事があります。但し精密な秤が必要です。

  ⅲ) モル比とは、各材料の原子量から分子量を導き出し、その分子量(g)が1モルと

   し、割合をモルで表した物です。現在ではより化学的(理論的)ですので、釉の配合を

   表すゼーゲル式として利用されています。

   例えば、AlO2はAl(アルミニウム)二個の原子とO(酸素)の一個から成る分子です

    Alの原子量は27で、Oの原子量は16です。それ故27x2+16x3=102(g)が1モル

    に成ります。

   同様にしてSi02=28+16x2=60(g)が1モルです。

    注: 以前は原子量=原子番号(周期律表の整数)でしたが、現在ではより精密に

    測定された結果、原子量は整数ではなく、下二桁まで数値が判明しています。

    それ故、厳密にはAlO2=101.94, Si02=60.02gと成りますが、近似値を使用して

    もほとんど問題になりません。

   モルを使う事は、現在ではより化学的(理論的)ですので、釉の配合を表すゼーゲル

   式として利用されています。

   各材料の分子量は計算でも出ますが、計算された表も有りますので参考にすると良いで

   しよう尚、陶芸材料に使われる幾つかの分子量(1モル)を記載します。

   ・ カオリナイト(Al2O3.2SiO2.2H2O)=258g

   ・ 長石(正、カリ)= 556.5g ・ソーダ長石=558g・ 灰長石=279g 

   ・ 石灰(CaCO3)= 100g ・炭酸カリウム=138g ・炭酸ナトリウム=106g

   ・ 炭酸マグネシウム=84.3g ・ 硼酸=61.8g ・ 亜鉛華(酸化亜鉛)=81.4g

   ・ ジルコニア(酸化ジルコニウム)=122.6g

以下次回に続きます。

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続 釉(薬)に付いて2(熔融と密着)。

2018-02-06 14:53:09 | 釉薬に付いて 釉薬の種類 熔融剤
前回、釉は液体のガラス質であると述べましたが、その熔け方もガラスならではの特殊な様態

を呈します。例えば、氷(固体)が解ける場合は、大気圧(一気圧)では、0℃と言う決

まった温度で解け始め、全体の氷が全部解ける(結晶が壊れて液体になる)まで、その温度は

変わりません。しかし、釉の場合は一定の熔ける温度は存在せず、温度上昇と共に、全体が

軟らかくなり徐々に光沢を帯び、熔け出します。

1) 釉が熔けるとは?

 一般的な施釉は、粉末状の材料を適宜調合し、水に溶いて素地に吸収させる方法をとります

 高い温度で焼成する事で、粉末状の釉は徐々に軟らかくなり、粉末はガラス化します。

 即ち、粉末同士がより強く結び付き、粉末様から液状に変化し、その隙間も極端に少なく

 なります。

 この現象が起こる温度範囲は広い幅を持ちます。当然、施釉した時とガラス化した時の釉の

 厚みでは違いが出ます。

 ⅰ) 熟成温度と熟成時間。

  良い釉(色、艶、結晶など)を得るには、焼く温度とその温度の持続時間が重要です。

  電気炉などで短時間で熔かした釉は、「テカル」感じ(固い感じ)に成ると言われてい

  ます。一方、熟成した場合には、「ソフト」な感じがすると言われています。陶芸では

  後者が好まれます。熟成時間が長くなると、釉は流れ出します。但し、熟成時間に関係

  無く、流れ易い釉を作る事も可能です。

 ⅱ) 結晶釉、窯変物などは、適宜の熟成温度と時間が必要です。

  熟成温度は最高温度を保持するとは限りません。特に結晶釉の場合には、窯の冷えに伴っ

  て結晶化が進みますので、その近辺で時間を掛ける必要があります。

  (即ち冷却は緩やかにする事)

 ⅲ) 釉は何処から熔けるか?

  熱の伝わり方は、伝導、対流、輻射(放射)があります。伝導は棚板などから起こる事も

  有りますが、割合は少ないです。燃料を使う窯では、主に対流により熱が伝わります。

  その場合釉の表面より素地側に熱が伝わると思われます。一方電気窯の様な炎の出ない窯

  では、輻射熱ですのでより大きい質量を有する部分にエンネルギー(熱量)が集まると考

  えられます。それ故、素地表面から釉側へ熱が伝わる事になります。

  但し、これはあくまで理論上で実際には、釉の層が薄い事もあり、素地側と釉側との時間

  差は、無視できる範囲内で、同時進行と見て良いでしょう。 

2) 釉が密着するとは?

 ⅰ) 釉は釉同士の熱的化学的反応だけでなく、素地の表面とも化学的反応を起こします。

  その為に、素地と強固に密着できると言われています。これを「釉が素地を食う」と言う

  そうです。

 ⅱ) 釉が素地を侵食する。

  素地の表面は多孔質で「ザラザラ」しています。多孔質でないと釉が巧く素地に乗りま

  せん。その多孔質の中に食い込みますが、その他、素地の表面で、素地や釉中のアルミナ

  成分や鉄成分が化学反応を起こします。この境界部分を反応層と言い、他とは異なる組成

  で、顕微鏡写真などで確認する事ができます。但し、釉が素地に浸透し過ぎると、思わぬ

  弊害もあります。

  a) 光沢を失い、釉が薄く掛かった状態になる。

   釉の種類の違いには余り関係せず、釉が薄くかかった場合には、薄茶、褐色、黄色

   掛かった褐色になります。表面も「ザラツキ」き光沢もありません。

  b) 原因は素地及び釉の両方に有ります。

   釉の場合には、釉の濃度が薄過ぎる場合や、結晶釉などの流れ易いく粘性が少ない

   場合です。素地の場合には、石灰やドロマイトを多く含む場合で、焼成時に発生

   する炭酸ガスにより多孔質が多くなる為です。

3) 釉の層はどうなっているか?

  一見全体がガラス質で覆われいる様ですが、おおむね素地との反応層、中間層、表層

  に別れます。結晶などはガラス質と共に、中間層に現れる事が多いです。表層は

  ガラス質で覆われます。

  志野釉の様に、気泡を多く含む釉は、釉の粘性が大きい為、表面より逃げ出せず、釉の

  中間層にじ込められます。又、この様な釉では、反応層は少なく、釉が直接素地に入り

  込み密着しています。

以下次回に続きます。

  

  
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続 釉(薬)に付いて1(釉の役割)。

2018-02-02 10:28:31 | 釉薬に付いて 釉薬の種類 熔融剤
今まで何度か釉薬(以下釉といいます)に付いて述べてきていますが、今回は別の視点から

お話したいと思います。但し、以前にお話した事と、重複する事も多いと思いますがご了承

下さい。

現在の焼き物の大部分は、焼締陶器を除いて、釉が施されています。それにはそれなりの

理由があるからです。

1) 施釉する利点とは。

 ① 釉とは何か?

  ⅰ) 陶磁器の素地の表面を覆うガラス質の物です。ガラス質の材料に熔融剤を添加し

   高温で熔融し薄い皮膜で密着させ、素地の弱点(欠点)を改善する働きをさせます。

   釉の厚みは釉の種類や、施釉の仕方によって異なります。1mm以下~数mmが多いです

   尚、一般のガラス(食器類や窓ガラス等)との違いは、釉には大量のアルミナ成分が

   含まれ点です。釉そのもにアルミナ成分が少ない場合でも、焼成中に素地からアルミ

   ナ成分が釉の方に溶け出しアルミナ成分が増えると言われています。

   又、ガラスは一定の結晶の構造や、融解温度を持たない為、物理的には固体では無く、

   液体に分類されています。但し、ガラスは結晶ではありませんが、添加した金属類が

   ガラス内で結晶を起こす、結晶釉は存在します。

  ⅱ) 素地と釉の違いとは?

   両方の原料(素材)は、おおよそ同じ物です。但し、軟化する温度(融点)に差が

   あります。その差は100℃以上が必要です。その為、釉には熔融剤(アルカリ成分)

   が多く含まれています。

   又同じ様な素材である為に、熱化学反応を起こし密着性も良くなります。

② 釉を施す利点とは?

 ⅰ) 素地の機械的強度を増します。

  粒子の粗い素地では、多孔性がありますので、外力に対して脆い(もろい)感じが

  あります。

  釉はその多孔に入り込み、孔を塞ぐ働きで強度が増します。又、ガラス本体は素地

  より固く、表面を覆う事で、傷などに対して更に硬固になります。

 ⅱ) 液体の透過を防ぎます。

  勿論、焼成温度によって透水性も左右されますが、しっかり焼成された作品は不透

  過性のガラス質で覆われますので、水漏れが少なくなります。但し、貫入等のある

  場合には、その隙間を通して水漏れを起こす事もあります。

 ⅲ) 化学的強度が増し、汚れにも強くなります。

  化学的強度とは、酸やアルカリ等から表面を守る力です。ガラスはこの様な物資うから

  化学反応を起こさず、安定した状態を取ります。但し、強アルカリに反応する事もあり

  ます。又、表面を平滑にしますので、汚れに対しても強く、例え汚れても、洗剤などで

  容易に荒い流す事が出来ます。

 ⅳ) 釉の最大の利点は、装飾性がある事かも知れません。

  即ち、希望の色で表面を飾る事が可能になります。金属類を添加する事で、ガラスに色

  を付ける事が出来ます。金属の種類によってその色も変化します。又、光沢がある物や

  光沢の無い物(マット)も選ぶ(作る)事も可能です。

 ③ 釉は自分で調合する(作る)事ができます。

  釉に付いての基礎的な知識があれば、比較的容易に作る事が可能です。更に、その材料

  も入手可能です。勿論、多くの試行錯誤の末完成させた物は、そのレシピは未公開です

  が、一般的な釉では、書籍やネット等で公開されている物も多いですので、参考にする

  事も可能です。又、既存の釉をある程度改良する事も出来ます。

以下次回に続きます。
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