わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

素朴な疑問 245 釉薬同士に相性はあるのか2?

2016-06-30 21:29:06 | 素朴な疑問
3) 相性が問題になるのはどうゆう場面か?

 釉は単体で施釉する事を前提にして調合されています。その為、異なる釉同士を重ね合わせると、

 思わぬ結果を招く事もあります。又、基本的には、釉同士を混ぜ合わせて施釉する事はしません。

 ① 厚掛けによる相性の良し悪し。 以上までが前回の話です。

 ② 焼成温度の差のある釉の相性の良し悪し。

  基本的には同じ温度で焼成する釉(ある温度範囲内の釉)を使います。しかし実際には、焼成

  温度にかなりの差がある釉を使う事もあります。

  例えば、1180℃の釉と1230℃の釉を重ね掛けし、1230℃で焼成する場合などです。

  この場合には、1180℃の釉は熔け過ぎる感があり、成分によっては流れ落ちる可能性もあります

  但し、どちらを先に掛けるかによって効果が変わります。即ち、1180℃の釉を下(先)に塗ると

  早く熔ける為、上(後)に塗った釉は素地との密着度が弱くなりますので、釉全体が下に引き

  ずられる事もあります。逆の場合には、下の釉の焼成温度が高い為、表面のみが流れる状態に

  なります。

 ③ 流れ易い釉を重ね掛けする場合、流れ易い釉と流れ難い釉との相性。

  ⅰ) 流れ易い釉同士を重ね掛けすると、両方の釉が混じり合いながら、下に流れ落ち易くなり

   ます。一般には筋状又は波状に流れる場合が多い様ですが、混ざり合った模様は予想不可能な

   模様に成る事もあります。この組み合わせでは、棚板まで釉が流れる恐れがありますので、

   底周辺の施釉は出来るだけ避けるか、底との隙間を多く取っておく必要があります。他の方法

   として、片方又は両方の釉を若干薄く掛ける事です。厚く掛けると流れる量も増えます。

   更に、混じりあった釉の色も単体の場合とは異なります。特に白っぽい釉と他の色の付いた釉

   を重ねる場合、濃い釉の色が本来の色より薄くなり勝ちです。例えば、器の下部に白マット釉

   を上部に黒マット釉を掛けた場合、上部が黒で下部が白になり、両方が掛かった(二重掛け)

   部分はグレーに発色します。又、黄色釉に青磁釉を掛けると、二重にかかった部分が若草色に

   発色する事もあります。

  ⅱ) 流れ易い釉と流れ難い釉の組み合わせでは、流れ難い釉を下に塗り、流れ易い釉を上に

   塗ると安全ですが、逆にすると全体に流れ落ちます。

   流れ難い釉の代表的な物の一つに志野釉があります。この釉は他の釉に対し相性はすこぶる

   悪い様です。下記⑦で述べる様な、色々なトラブルの原因に成りますのでなるべく単体で使う

   事をお勧めします。

  ⅲ) 流動性のある釉には、焼成温度を若干下げるか、寝らし時間を短くして、流れ落ちるのを

   防止すると良いでしょう。

 ④ 色釉の上に透明釉を掛けた場合。

  色釉の一部をマスキングし、その部分に下絵付けを施す事は良く行われています。下絵付けの

  部分には、透明系の釉を掛ける必要がありますので、色釉の一部は二重掛けになります。

  二重掛けした部分と、単色の色釉の部分では焼成で色の変化は余り見られません。場合によって

  は色釉の全体に透明釉を施す方が、施釉の行為が簡単かも知れません。

 ⑤ 光沢のある釉と光沢の無い釉との相性。

  どちらを下に掛けても、二重に掛かった部分には光沢が発生し易いです。即ち、光沢の釉の方が

  優勢になる事が多い様です。

 ⑥ 結晶釉と結晶釉でない釉の二重掛け。

  二重に掛かった部分では、結晶が起きない可能性が大きいです。

 ⑦ 重ね掛けで起こり易い事柄。

  釉の剥がれ、釉の流れ、釉の色の変化等に付いて述べて来ましたが、その他に、釉に「あばた」

  や「気泡」の発生、釉の「煮え」が発生する場合もあります。

  主な発生原因は、釉が均一に熔けず一部の熔け過ぎ(煮え)、熔ける温度に差がある(あばた)

  二重掛けのタイミングの悪さ(気泡)などがあります。

4) 二重掛けの方法と、タイミングに付いて。

以下次回に続きます。
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素朴な疑問 244 釉薬同士に相性はあるのか1?

2016-06-28 17:43:14 | 素朴な疑問
釉を単一で使用する際には、適正に熔け、滑らかで艶やかな表情を呈する釉であり、何ら問題に成ら

ない場合でも、複数の釉を重ね合わせて使うと、問題に成る事が多いです。即ち、釉同士には相性が

存在します。

作品全体を一色で色付けする事もありますが、多くの場合2~3色を使う事で、見た目にも変化が

あり、より華やいだ感じに仕上げる事も多く見られる装飾方法の一つです。

その際、釉同士に相性の良し悪しがある事に気が付く事があるはずです。即ち、釉に関して何らかの

トラブルが発生する事も有りますし、逆に思わぬ効果を生み出す事も起こりえます。

但し、市販の同じメーカー同士の釉を使う場合には、ある程度相性が考慮されている釉が多いのです

しかし同じ名前の釉であっても、メーカーによって成分が多少異なりますので、メーカーが異なる

場合には、同じ様に重ね掛けを行っても、以前の様にはならず、相性が良くない結果を招く事も

あります。

更に、ご自分で調合した釉同士の相性が、良いと言う保障はありません。実際には試して焼成して

確認する事になります。相性の良し悪しには色々なパターンが想定されますので、順次述べたいと

思います。尚、釉と素地との相性の良し悪しもありますが、この件はここでは取り上げません。

1) 釉薬の相性が良いとはどうゆう事か?

 ① 釉がお互いに干渉する事が少なく、自分の個性のみを主張している場合には、相性が良いと

  思われます。この様な事例は少ないです。何故ならば、重ね掛けするのは、何らかの効果を期待

  して行う行為だからです。お互いに干渉させたくないならば、重ね塗りする事なく施釉すれば

  良い事になります。

 ② 釉同士が熔融し、その中間色を発生させる場合や、好ましい新たな色が出現する現象も相性が

  良い事になります。但し、重ねる順序によっては、良い結果に成ったり、悪い結果になったり

  する場合がありますので、重ねる順序も重要になります。例えば、銅を添加した釉では、焼成中

  に銅が揮発する現象が起こります。それを抑える為、他の釉を重ね掛け、銅の発色を良くする

  方法があります。これを逆に重ねでは効果がありません。

 ③ 焼成温度の異なる釉であっても、一方が他の釉の熔ける温度を下げる現象も相性が良いと見て

  良いでしょう。熔け難い釉薬でも、下に焼成温度の低い釉を掛けると、上の熔け難い釉を溶かす

  事もあります。但し、逆の場合余り効果は期待できません。又、マット系の釉に光沢のある釉を

  掛けると、下地のマット釉も光沢を持つ様になる事もあります。

 ④ 結晶釉の結晶を促進させる釉も相性が良い釉になります。

   同様に還元焼成を促進させる釉も、相性の良い釉と言えます。

 ⑤ 釉同士では有りませんが、下絵と釉との相性の良し悪しもあります。下絵が「ぼやける」たり

   「絵柄の流れ」を引き起こす釉は、絵と相性が悪い釉となります。

2) 相性の悪い釉同士を二重掛けすると、思わぬ効果を生み出す場合もあります。

  一般的には、釉剥げなどの悪い結果を引き起す事が多いですが、大胆な亀裂模様に成ったり、

  釉の表面を荒し、従来には無い「ゴツゴツ」した釉肌を作り出す等、見る人によって良し悪しの

  判断の分かれる釉となる事もあります。一般に失敗から新たな発見を導き出すのは知られた事

  ですが、釉に付いても言える事です。それ故、相性の良い方向に改良するのも大切ですが、

  逆にどんどん相性を悪くする事で、新たな発見が得られるかも知れません。

3) 相性が問題になるのはどうゆう場面か?

 ① 厚掛けによる相性の良し悪し。

  釉を重ねて施釉する事は、釉が厚く掛かる事になります。一般に釉を厚く掛け過ぎると、釉剥げ

  や、釉の流れ易さと言う欠点になります。しかし厚く掛けても、釉同士の剥がれや、亀裂、

  表面の釉の荒れや気泡の発生などが起きない状態であれば、一応相性が良い事になります。

  勿論、釉の濃度と焼成温度にも関係しますので、一度の失敗で相性が悪いと決め付けるのも

  問題です。

 ② 焼成温度の差のある釉の相性の良し悪し。

以下次回に続きます。

  
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素朴な疑問 243 サイン(銘)は何処にどの様に入れれば良いか2?

2016-06-27 21:34:18 | 素朴な疑問
前回からの続きです。

3) サインは釉の種類や釉の色や、釉を厚く掛ける事で、消えてしまう場合もあります。

  サインの上に釉が厚く掛かった場合、字が「ぼやけた」り、釉に埋もれてしまう場合があります

  その為、サイン周辺の釉を薄くしたり、サイン上の釉を軽く拭き取る事です。釉を部分的に薄く

  するには、予め水を含んだ筆などでサイン周辺を濡らす事で達成できます。但し流れ易い釉

  (結晶釉などに多い)を使うと、流れ落ちた釉がサインに掛かる場合もありますので、釉を掛け

  る際、塗る範囲に注意が必要です。

4) サインの天地を逆にしない事、及び左右のバランスも考慮する事。

 ① サインを手書きする場合にはほとんど問題に成りませんが、方向性のある作品に、印などを

  捺す場合、天地を逆さに捺す事も決して稀ではありません。印面は反転していますので、特に

  間違い易い印鑑もあります。

 ② 一般的には、上部(天方向)のスペースを多く取り、下部(地)のスペースを少なくします。

  なるべく左右の隙間を同じにしたいです。

 ③ 釘彫り等のサインでは、縦書きと横書きがあります。更に縦書きでも垂直でなく若干斜め方向

  に書く(傾斜を付ける)事もあります。手書きし彫り込む際に、サインの周囲が毛羽立つ事が

  あります(バリとも言います)。このバリは、手書き直後ではなく、ある程度土が乾燥した時

  に削り取るか、素焼き後に紙やすり等で削り取ります。そのまま放置しておくと、バリの先端が

  尖り(とがり)手や指を傷付ける事にもなります。

 ④ 一般的な作品では、サインまで見る人は少ないです。

  但し、芸術(美術)的にまで高められた作品では、サインが重要な働きをします。勿論贋作の

  疑いを晴らす役目もしますが、著名な作家であれば、サイン一つでその価値も飛躍的に高める

  効果があるからです。

5) 取っ手や耳、注ぎ口などを有する作品の場合、作品に方向性が出ますので、サインを入れる際

  入れる方法に注意が必要に成ります。

  ① 取っ手(持ち手)のある作品の高台内にサインを入れる場合、特に片手で持つコーヒーカップ

   の様な器では、持った状態で口縁を向こう側に倒してサインを入れます。

   高台脇に入れる場合には、取っ手の根元近辺に入れます。但し取っ手の手前側に入れる方法と

   向こう側に入れる方法があります。

  ② 徳利や片口など注ぎ口を有する器では、底にサインを入れる際には、注ぎ口が真下に向けて

   反転した位置でサインを入れます。又、高台脇に入れる場合には、注ぎ口と反対側、又は真横

   に入れると、良いでしょう。

6) 蓋物の作品では、本体側にサインを入れ、蓋側には入れないのが一般的です。

  焼成する際、蓋をした状態で行いますので、蓋が行方不明に成る事は少ない様です。

7) サインを強調する場合には、掘り込まれた部分に、呉須などの下絵絵の具で絵付けを施す場合

  もあります。一般にはサインは目立たない状態で施しますが、あえて目立たせる為に行う事も

  あります。サインが模様の一部と成っている場合などです。

8) サインは一個とは限りません。(基本的には一個ですが・・)

 ① 作品に応じてサイン自体を変えたり、書体を変えたりする場合もあります。又、作者の年代と

  共にサインを変える事もあり、心境の変化で変える事もます。特に手書きのサインであれば容易

  です。ご自分で作った印であれば、容易に作り変える事も可能です。印面が摩滅した場合や、

  欠損した場合には作り換えた方が無難です。

 ② 大小の印を使い分ける。作品の大きさに対し、サンイが大き過ぎる場合には、小さな印を使い

  大きな作品には、大きめの印を捺すなどの方法です。

9) サインはフルネイム(姓名)で入れる事は少ない様です。

  伝統ある窯元では、代々名前を引き継いでいる所も多く、同じ名前のサインもあります。

  しかし、一般的には名前の一文字や、屋号などのマークを使う事が多いです。

  近年では、アルファベットのサインさえ見受けられます。

最後に、ご自分だけの窯であれば、サインを入れるかどうかは自由ですが、共同で使う場合には必要

になります。又サインに対する決まりもありません。民藝と呼ばれる作品群には無銘の作品が多いの

ですが、近年ではほとんどの作品に銘(サイン)が入っている物が多い様です。

以上にて銘(サイン)の話を終わります。
 
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窯を築く 6 窯の設計 5

2016-06-23 11:30:33 | 陶芸の窯を築く
前置きが長くなりましたが、いよいよ窯の設計に掛かりたいと思います。  

3) 窯の設計。

  必要な用具は、A4又はA3の方眼紙(1mmが良い)、鉛筆、定規、コンパス等です。

 ① 窯の種類と構造と形を決める。

  ここでは主に本焼用(素焼も可)の窯について述べます。楽焼用の窯に付いては、後日述べる

  予定です。

  ⅰ) 窯の種類とは、電気、ガス、灯油、薪などの燃料(熱源)の違いです。

  ⅱ) 燃料の差によって、窯の構造と形が変わります。

    窯の形は矩形(四角)の物が多いですが、小型の電気窯では丸い形の物もあります。

    電気窯を除く窯では、倒炎式が一般的ですが、小さな楽焼窯では、直炎式が多いです。

    倒炎式の窯では、天井部分がアーチ状に成っています。又、扉の取り付ける位置と、扉を

    開く方向も考慮しておく必要があります。例えば、前扉型の場合、右開きと左開きがあります

    当然、窯詰めや窯出しがし易い方向が良いのですが、敷地の関係で決ってしまう事もあります

  ② 窯の内寸を決める。(窯の容量、容積を決める)

    一度にどの様な大きさの作品を、何個焼成したいかによって決まります。

    勿論、容積の大きな窯であれば、余裕なのですが、窯が大きくなり、場所と費用、時間が掛り

    更に作品の量も当然増え、中々窯が一杯に成らず、定期的に作品を焼き上げる事も難しくな

    りますので、適量の容積に決めます。

   ⅰ) 棚板の大きさを決め、一段に何枚使うか(何枚敷)を決めます。

    棚板は同じ大きさの物を揃える事です。棚板は使っているうちに、ひびが入ったり、割れたり

    する物ですので、ある程度消耗品であるとも言えます。その為同じ大きさであれば何時でも

    手持ちの棚板で、取り替える事が可能になります。後で述べますが、棚板の使用する数は

    常に一定と言う訳では有りませんので、数に余裕を持たせて下さい。

   ⅱ) 棚板の数は1、2、4、6、8枚それ以上の中から選ぶ事に成ります。

    一般は1~4枚程度が多い様です。

   ⅲ) 窯の底の大きさ(内寸)を決る。

    a) 棚板と棚板の間は指一本程度の隙間を開けて、敷き詰めます。

    b) 棚板と窯の内側の壁との隙間を決める。

      バーナーの焚口の無い壁との隙間は指1~2本の隙間が必要です。

      焚口のある側では、バーナーヘッドよりやや大きい穴が必要ですので、この穴の大きさ

      プラス2cm以上の隙間が必要です。焚口が左右両方にある場合は、隙間は二倍になり

      ます。

    c) 前扉の場合には、扉との隙間も2cm以上が必要です。

     敷き詰めた棚板の周囲にこれらの空間(隙間)を設ける事で窯の底の内寸が決ります。

   ⅳ) 窯の底の外寸を決める。

    軽量断熱耐火煉瓦をどの様に積み上げるかによって、外寸が決まります。即ち壁の厚さを

    決める事に成ります。煉瓦の大きさは、230x115x65 mm です。

    a) 一番薄い壁にする場合には、65mmと成りますが、これでは、余りにも薄すぎ熱が

     閉じ込め難く、温度上昇も思う様にいかず、窯の冷えも速過ぎると思われます。

     そこで、更に外側に安価な煉瓦(B-1等)を重ね合わせ130mmの壁にします。又は

     安価な煉瓦の変わりに耐熱製のシリカボードを使います。これだと厚みも25mm程度です

     ので壁の厚みを65+25=90mmと薄くする事が出来ます。

    b) 更に窯の壁を厚くするには、厚さが115mmの方向に積み上げます。

     外側に安価な煉瓦を重ねるとすれば、115+65=180mm。又は115+115

     =230mmとなります。尚、耐火煉瓦の230mm方向で積み上げれば、壁の厚みは

     230mmとなりますので、外に安価な煉瓦を積む必要は無くなりますが、高価な耐火

     煉瓦の数が増え、費用が嵩む事になります。

    c) 窯の内寸に壁の厚みを加えた物が、窯底の外寸に成ります。

     但し、燃料を使う窯では、煙突が必要になります。煙突を何処に設置するかによって、

     窯底の外寸も変わります。即ち窯と一体化するか、別体にするかです。一体化する場合には

     外寸も増える事になります。

   ⅴ) 煙道、煙突の設計。

以下次回に続きます。
    
     
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素朴な疑問 242 サイン(銘)は何処にどの様に入れれば良いか1?

2016-06-19 20:23:04 | 素朴な疑問
作品に自分の名前やマーク、窯元の名前などを入れる事は、現在では当然の行為と思われています。

サイン(銘)には作者の印、染付けや上絵付けで記した書銘、釘や籤(ひご)などで掘り込む刻銘、

その他に印章を捺した物があります。又その書体も千差万別です。

江戸時代の野々村仁清が自分の作品に、最初に銘(サイン)を入れたと言われています。真偽の程は

不明です。それ以前では、「窯印」があっても個人を指すサインは無く、今は著名な作品であっても

無名の人の作った作品となっています。但し、作られた時代や作られた土地などはある程度確定で

きます。

現在は多くの人が共同で使う窯や陶芸教室などでは、サインが無ければその人の作品として特定

できませんからサインを入れる事は、必須条件です。

勿論サインでなく、マークであっても作り手が特定できれば、どの様な印でも問題は無いのですが、

完成した作品とし、場合によっては、後世に残る作品であれば有るほど、「キッチリ」したサインが

必要になります。勿論作品のどの位置に入れるかは、作者の自由ですが、出来れば読み易いサインで

読み易い位置に入れる事です。更に、真似され易いサインではなく、特徴のあるサインの方が当然

良い訳です。但し、だからと言って、目立つ処に入れるのも善し悪しですし、出来れば避けたい場所

もあります。尚、当然ですが、外から容易に見る事の出来ない器の内側などは、サインの役目があり

ません。

1) 出来るなら避けたい場所。

 ① 作品には正面とみなす部分が有るのが一般的です。正面にサインを入れるのは、なるべく避け

  る事です。目立ち過ぎるサインは、出しゃばり感があります。但し、サインは作品が生乾きの

  時に行う事が多く、施釉し焼成するまで正面が決定できない場合が、生じる可能性もありま

  すが、なるべく生の状態の時に正面を決める事も大切です。

 ② サインは表立って表す事は少ないです。

  表立った場所とは、皿類や丼状の器の内側などで、無意識でも自然に目に入る場所です。

  但し飾り皿として使う場合には、内(表)側に入れる事もあります。又、大きな目のサインや

  強調された目立つ形のサインも出来るだけ避けたい事項です。当然ですが、サインは作者を特定

  する物ですので、他人と似通った物も敬遠したいです。

 ③ 陶や石、木製の印鑑を使う場合には、印を押す際に力が入り、その結果作品が変形する場所は

  避けたいです。具体的には、壷や花瓶類の袋物と呼ばれる器の底や高台内です。

  捺印は、素地が完全に固まる前に行う必要があります。その為、この様な位置に捺印すると、

  底が変形したりします。但し、針や竹ひご等を用いて掘り込みサインを入れる分には問題あり

  ません。底や高台内にサインを入れたい場合、施釉時に呉須等の下絵付けの要領で、筆書き

  する事もあります。書銘といいます。

2) 一般的にサインを入れる場所。

  正面を避ける為、作品の横方向(正面に対し略直角)に入れると無難です。特に耳の付いた器や

  花器の場合、耳の下側に入れる事が多いです。

 ① 高台脇に入れる。抹茶々碗や袋物と呼ばれる作品などに多い例です。

  印を押してサインを入れる場合、高台脇は比較的肉厚に成っており、近くに底がありますので、

  作品が変形する事は少ないです。又作品を引っ繰り返す事なく、サインが確認できます。

 ② 裏底に入れる。平皿の様な場合には、裏底の中央又は右下に入れる事が多いです。

   角皿は、タタラ状の粘土板の周囲を持ち上げて、縁を作る方法が一般的です。サインは縁作り

   の前に入れる事です。平皿に脚(高台)が付いている場合には、高台内に入れます。

 ③ 高台内に入れる。作品を伏せた状態で初めて、サインが確認できます。書銘が適します。

   作品によっては、高台内が狭い為、多くの字数が入りません。

以下次回に続きます。
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窯を築く 5 窯の設計 4

2016-06-15 14:59:30 | 陶芸の窯を築く
窯を作るに当たって、必要な事柄は図面化する必要があります。

2) 設計時に用意する物。

 ① 各種の参考資料。    

  ⅰ) 手に入る窯の材料をリストアップしておく。

   a) 窯作りの資材

    耐火煉瓦(軽量)、耐火モルタル、シリカボード、耐火ウール(ファイバーブランケット)、

    煙突(ステンレス製)、耐火アルミナセメント、扉用鉄板、耐熱塗料、蝶番(扉用)、

    火格子(薪窯の場合)、ガス又は灯油バーナー(バーナヘッド付き)、ブロアー(灯油用

    送風機)、電熱線、各種配線用素材、ブレーカー、スイッチ類、ベニア板(発砲スチロール)

    その他。鏝(左官用こて)、水準器、水糸、巻尺、曲尺(かねじゃく=直角度を見る)、

    金鋸、溶接一式又はネジとナット等があります。

今日からの話はここからです。

  チ) ガス又は灯油バーナー(バーナーヘッド付き)、ブロアー(送風機)に付いて。

   ・ ガスバーナーには、都市ガス用とプロパンガス用があり、各々自然燃焼方式と強制燃焼

    方式があります。都市ガスの場合は強制燃焼式が多い様です。都市ガスの利点は燃料の補給

    を必要としない事です。当然ですが、都市ガスが来ている地域に限定されます。

    強制燃焼方式は燃料(ガス)圧を上げ、ブロアーで空気を強制的に供給し、短時間で炊き

    上げますので、経済的とも言われています。ただし、自然燃焼式よりも、騒音は大きく成る

    のが欠点です。尚、ブロアーには100V電源が必要になります。

   ・ 自然燃焼方式は、空気取り入れ口より必要な空気の量を吸い込みますので、燃焼時間が長

    くなりますが、焔が軟らかい感じになりますので、釉も趣の有る色艶になると言われています

   ・ バーナー一基には、火口が一個の物と二個の物があります。容積の大きな窯では二個の

     バーナーを複数個設置する場合もあります。

   ・ ガスバーナーは、ベンチュリー式と呼ばれる鋳物製の物が多く使われています。で

    形状は真直ぐの物とバーナーヘッド部分(耐熱セラミック製)が直角に曲がった物(L字形)

    があります。当然取り付ける方法が異なります。即ち、真直ぐな物は、窯の横方向から、

    直角な物は下から差込む事に成ります。

     注: ベンチュリー式は、火口が一個で構造が簡単で安価なガスバーナーです。ノズルから

      ガス噴射により、大気中の空気が自然吸引され、燃焼用一時空気を取り込みます。

      空気の取り込み量を無段階に調整する回転盤が手元にあり、酸化や還元焼成する事が

      出来ます。

   ・ バーナーの点火方法も、自動と手動着火方式がありますが、ご自分で窯を築くのであれば

    手動の方が構造が簡単になります。尚、後で述べますが、ガスの配管は専門業者に任す事に

    なります。尚、灯油用のバーナーの場合には自動スパーク点火が無難です。

  ・ 窯の容量により、バーナーの数も変化します。バーナーは窯のメーカーから購入できますが

   バーナーのみを販売しない所もあります。 又、バーナーの種類は色々あります。以下の様に

   ネット上で、メーカーとバーナーを見付ける事も可能です。

  ・ 灯油用ロータリーバーナー: 回転させることで油と燃焼用空気が同期し、同時に燃焼気化

   室に送られる構造になっています。

   低圧空気噴霧式オイルバーナ: 全自動、半自動の物があります。

   ガンタイプオイルバーナー。

 尚、灯油バーナーはガスバーナーより選定が難しい様ですので、採用すつに当たっては、メーカー

 等と良くご相談の上決めてください。

以下次回に続きます。
      
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窯を築く 4 窯の設計 3

2016-06-11 15:18:21 | 陶芸の窯を築く
窯を作るに当たって、必要な事柄は図面化する必要があります。

2) 設計時に用意する物。

 ① 各種の参考資料。    

  ⅰ) 手に入る窯の材料をリストアップしておく。

   a) 窯作りの資材

    耐火煉瓦(軽量)、耐火モルタル、シリカボード、耐火ウール(ファイバーブランケット)、

    煙突(ステンレス製)、耐火アルミナセメント、扉用鉄板、耐熱塗料、蝶番(扉用)、

    鉄枠用鉄骨、火格子(薪窯の場合)、ガス又は灯油バーナー(バーナヘッド付き)、ブロアー

   (灯油用送風機)、電熱線、各種配線用素材、ブレーカー、スイッチ類、ベニア板(発砲

    スチロール)、その他。鏝(左官用こて)、水準器、水糸、巻尺、曲尺(かねじゃく=直角度

    を見る)、金鋸、木槌、溶接一式又はネジとナット等があります。

    イ) 耐火煉瓦と軽量断熱煉瓦

    ロ) 耐火モルタルは、耐火煉瓦SK-32、34用の専用接着モルタルです。

    ハ) シリカボードと安価な断熱レンガ。

  以上までが前回のお話です。

    ニ) 耐火ウール(ファイバーブランケット)、ファイバーロープ、ファイバーキャスト

    ・ ウールは窯の扉周りなど、可動部分が重なり、隙間が生じ易い処に貼り付けて、熱の

     放出を防ぐ目的で使用する、綿状の耐熱材です。はさみ等で容易に切断できます。

     耐火温度は1300℃です。大きさは600X1200mmで厚みも6と12mmの物があります。

    ・ ファイバーブランケット接着材。煉瓦に接着させる接着剤で焼成する事でより強く接着

     します。

    ・ ファイバーロープは窯の扉用に開発された物で、窯の扉のパッキンとなる物です。

     長さが1m程度で、直径が25と50mmの物が有ります。

    ・ ファイバーキャストは、ファイバーをペースト状にした物で、窯の隙間や煉瓦の欠損

     部分に充填して使用します。

   ホ) ベニア板(発砲スチロール)、角材。

    窯の天井を耐火煉瓦をアーチ状に組上げる際、下から支える部材として使います。

    アーチ組上げ完了後、焼却できるのが理想ですが、街中では環境上不可能ですので、取り

    壊す事に成ります。

   へ) 鉄骨(鉄枠)、鉄板などの金属部材。

    窯は耐火煉瓦のみで築く事も可能ですが、現在では鉄骨や鉄板などを使い、窯を地面から

    浮かせ、下からバーナを差し入れる構造にしたり、窯全体を鉄枠で周囲を固め、窯を地震や

    爆発などの事故から守る方法がとられるのが一般的です。又扉も鉄板の上に耐火煉瓦を取り

    付けた方が強度的に強く、開閉の為の蝶盤などを強く取り付ける事ができます。更に、

    ガスや灯油バーナを取り付ける際にも、金属部分があった方が安定感もあり、強度的にも

    強くなります。その他にも、窯を築く土台の部分は、鉄筋を入れたコンクリートがより安全

    です。

   ト) 電気窯では、発熱体の電熱線が必要になります。

    窯製造メーカーのカタログを見ても、交換用の電熱線は販売している様ですが、電熱線単体

    を販売している処は見当たりません。

   ・ ネット上で電熱線を検索すると、幾つかにメーカーが表示されます。

     例えば 坂口電熱(株)や(株)石川製作所等です。

     必要な電熱線の特性として、最高使用温度 1300℃以上が必要で、高温での使用を目的

     とし、且つ折り曲げなどの加工がし易い物です。又電熱線は100~200回程度の焼成寿命で

     場合によっては、電熱線の交換が必要に成りますので、出来るだけご自分で修理できれば

     理想的です。

   ・ 坂口電熱(株)製品として、カンタル発熱体(鉄・クロム・アルミ)

     カンタル A-1: 最高使用温度 1400℃

      熱処理、セラミックス、ガラス、鋼、電子産業での高温工業炉

     カンタル AF: 最高使用温度 1400℃

      高温工業炉および石英管封入赤外線ヒーター、高温家庭電熱機器

     カンタル D: 最高使用温度 1300℃

      炉温 1000℃~1100℃までの工業炉、家庭電熱機器

     尚、 坂口電熱(株)には、熱電対やデジタル温度計も市販されています。

      窯メーカーでも市販されていますが、価格は倍増します。

      (余談ですが、小生も秋葉原にある坂口電熱(株)で熱電対関係の部品を購入しました)

   ・(株)石川製作所の製品として

     NO.30 (FCHW-1): 鉄クロム 第1種 1300℃ 特に高温での使用を目的としています。

     高温強度はニッケルクロムより劣りますが長寿命です。

   ・ 電熱線はバーナーで熱してから、ペンチを使って折り曲げる必要があります。

     常温で曲げると、折れてしまうとの事です。又、電熱線は硬いので、切断する際には、

     番線カッターが必要です。

   ・ 電熱線購入に当たっては、メーカーと良く相談して決めて下さい。

以下次回に続きます。      
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窯を築く 3 窯の設計 2

2016-06-09 16:22:20 | 陶芸の窯を築く
窯を作るに当たって、必要な事柄は図面化する必要があります。

2) 設計時に用意する物。

 ① 各種の参考資料。    

  ) 手に入る窯の材料をリストアップしておく。主にメーカーのカタログが参考になります。

   a) 窯作りに必要な資材。

    耐火煉瓦(軽量断熱)、耐火アルミナセメント、耐火モルタル、シリカボード、耐火ウール

    (ファイバーブランケット)、煙突(ステンレス製)、扉用鉄板、耐熱塗料、蝶番(扉用)、

    火格子(薪窯の場合)、ガス又は灯油バーナ(バーナヘッド付き)、ブロアー(灯油用

    送風機)、電熱線、各種配線用素材、ブレーカー、スイッチ類、その他。 

    鏝(左官用こて)、水準器、水糸、巻尺、曲尺(かねじゃく=直角度を見る)、金鋸、

    溶接一式又はネジとナット等があります。

    イ) 耐火煉瓦と軽量断熱煉瓦

    ・ 耐火煉瓦は耐火度に応じてSK-34等と番号が付いています。

      窯や炉に使われる耐火煉瓦は、32又は34番です。当然34番の方が耐火度が高く

      なりますので、34番を使う事をお勧めします。

      32番は園芸材料店でも、新品、中古の物が市販されています。中古品は窯を壊した

      後に出た産業廃棄物の一部ですが、表面がやや凸凹している為、風合いがあり、園芸用

      に使用されています。尚、耐火度は1200℃と表示されていますが、楽焼や陶器を焼く窯

      であれば十分です。

    ・ 耐火煉瓦は安価ですが、窯全体に使うとすれうと、大変な重量になります。

      重たい耐火煉瓦は耐火性のある粘土を焼き固めた物で、加工は困難です。

      小さな窯の場合を除いて、窯の一部として使う事が多いです。(詳細は後で述べます)

    ・ 煉瓦の大きさは、230x115x65 mm です。1丁からバラ売りされています。

    ・ 軽量断熱煉瓦は、多孔質で、その容積の80%は気孔である事から、軽量で作業性が

      良く、優れた断熱保温能力を発揮し、窯の内側に張る煉瓦として向いています。金鋸で

      容易に切断加工する事が可能です。耐火度によって、色々なランクの物がありますが、

    ・ ガス、灯油窯には、1200℃用の RA-12、1300℃用の RA-13、1400℃

      用のRA-14、1500℃用の RA-15 が一般的です。煉瓦の大きさ230x115x65mmです。

      耐火煉瓦より高値になります。大きな陶芸材料のメーカーから販売されています。

    ・  電気窯用の内側は耐火断熱煉瓦、JIS規格のB-5を使います。レンガの大きさは

      他の煉瓦と同じです。

    ・ 耐火アルミナセメントは、不定形な耐火煉瓦を作る事ができます。

      1kgに対し、水170~200ccを加え良く練り込み、型枠に流し込み乾燥させて作ります。

    ロ) 耐火モルタルは、耐火煉瓦SK-32、34用の専用接着モルタルです。

      耐火度は1770℃程度です。

      断熱耐火モルタルは、RA-12、13、14の断熱耐火煉瓦用のモルタル接着剤です。

      耐火度は1400℃程度です。

      尚、モルタルの使用方法に付いては後日お話します。

    ハ) シリカボードと安価な断熱レンガ。

     窯の外側に張る断熱材です。窯に温度を蓄える為には、窯からの放熱を少なくする必要が

     有ります。又、結晶釉で結晶を成長させる為には、窯の冷えを遅くする必要もあります。

     その為には窯の壁を厚くしたり、シリカボードを張って熱の発散を抑えます。

     安価な断熱煉瓦JIS規格のB-1と2が一般的です。尚この煉瓦は水に弱く雨に当たる

     と溶け出しますので、注意が必要です。大きさは他の煉瓦と同じです。

    ・ シリカボードは、珪酸カルシウムを主体 とする特殊な製造方法により生産したボードで

     耐火度は650℃と1000℃の二種類があります。一般には650℃で十分です。

     表面は軟らかいですので、加工は簡単で、カッター等で切断できます。撥水性(水を弾く

     事)の有る物と、無い物があります。大きさは、303x610x25(又は65)mmです。

     陶芸材料メーカー等で市販されています。

以下次回に続きます。
      
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質問24 1100度で溶けるマット釉の調合

2016-06-05 16:17:45 | 質問、問い合わせ、相談事
上杉様より以下のご質問をお受けしました。

マット釉についての質問です。

1100度で溶けるマット釉薬はどのように調合したらいいのでしょうか? 教えてください。

 ◎ 明窓窯より

基本的には1100℃で熔ける基礎釉(透明釉)を作り、マット化させる為に別の材料を添加します。

もしも、上杉様が1100℃で熔ける基礎釉を、すでにお持ちの場合には、上記と同じになります。

基礎釉は、ご自分で調合する方法と、市販又はお持ちの1100℃で熔ける釉を、使う方法があります。

当然後者の方が、容易で簡単に調合できます。

1) 市販の釉を使う場合。(又は1100℃で熔ける基礎釉をお持ちの場合)

 陶器用の一般の釉は、1180~1250℃程度で使用する事が多いのですが、メーカーによっては

 1000~1150℃で使用できる石灰系透明釉が市販されています。これを使うと便利です。

 ① マット釉には、添加材によって以下の釉などがあります。(概ね、白い釉になります。)

  ) カオリンマット釉

   基礎釉:カオリン = 100:15 (単位はgです。以下同じ。外割り)

    カオリンが増えると、よりマット性が増しますが、粘土質に近づきますので、固い感じの

    釉となります。カオリンの種類によって風合いも変化します。

    カオリンを熔かす為に、合成土灰を入れる場合もあります。

  ) 白マット釉

   基礎釉:マグネサイト = 100:15

    マグネサイトを増やし過ぎると熔け切らずに、結晶を起こし白い斑点と成って現れます。

    マット性を増す為に、天草陶石を添加する場合もあります。

  )チタンマット釉

   基礎釉:酸化チタン = 100:10

    酸化チタンは強力な結晶剤です。白濁してパール状に輝く独特の結晶ですが、表面は艶消し

   (マット)状になります。

   以下の釉を作るには、基礎釉に対しどの程度添加するかは、ご自分で試して下さい。

  ) ジルコンマット釉 

    珪酸ジルコンは強力な乳濁材です。僅かな量で十分です。光沢を無くす為、他の材料を添加

    する必要がある場合が多いです。

  ) スズ(錫)マット釉

  ) タルクマット釉

  ) その他。鳳凰マット釉など   

 ② 白以外のマット釉を作りたい場合には、更に鉄や銅、コバルトなどの金属を数%添加します。

  ) 黒マット釉

   基礎釉:マグネサイト:ベンガラ = 100:20:10 

  ) 緑マット釉

   基礎釉:マグネサイト:酸化銅  = 100:20:7

  ) 青系マット釉には、1%以下の酸化コバルトを添加します。

2) ご自分で基礎釉を作る場合。

 ゼーゲル式から導き出します。かなり難しい計算になりますので、十分覚悟して取り組んで下さい。

 ① 1100℃はゼーゲルコーン(錐)番号で1aに相当します。

   (注:ゼーゲルコーンは、窯中の温度を測定する用具です。一度しか使えません。)

  これは、コーンが軟化した状態を表しますので、釉として使用する為には、更に100℃程度下の

  番号で調合する必要があります。即ち1000℃と成りますで、錐番号では05aに相当する釉と

  しなければ成りません。

 ② 05aの化学組成は以下の様に成ります。

    MgO:CaO:Na2O:K2O:B2O:Al2O3:SiO2

  = 0.257 :0.428 : 0.229 : 0.086 : 0.457 : 0.571 : 3.467(モル=分子量)

   重量換算すると次の様になります。

  = 10.36 : 24.00 : 14.19 : 8.10 : 70.05 : 58.22 : 208.33 (g)

   注: MgO(マグネシウム): 1モルは40.31 (g)

      CaO(カルシウム) : 1モルは56.08 (g)

      Na2O(ナトリウム) :  1モルは61.98 (g)

      K2O(カリウム)   : 1モルは94.20 (g)

      B2O(バリウム=ホウ酸): 1モルは153.3 (g)

      Al2O3(アルミナ)   : 1モルは101.96 (g)

      SiO2(シリカ、珪酸) : 1モルは60.09 (g)

  ③ 釉を作る主な材料。

   ) 福島長石:基礎釉の中心的な素材です。「シリカ成分」を多く含み、主にガラス質を

    形成します。「シリカ成分」を多く含む素材には、天草陶石や、合成藁灰などがあります。

   ) カオリン及びその仲間達(蛙目粘土など):「アルミナ成分」を多く含み、釉に粘りを

    与え、素地との相性を良くします。

   ) 各種灰類及び炭酸バリウム、マグネサイト等: 釉を熔かす「アルカリ成分」を多く

    含む素材です。尚、酸化亜鉛(華)も同じ働きをします。

   以上の素材を使い1100℃の基礎釉を作ります。

尚、福島長石やカオリン、各種灰の成分は単体で構成されている訳では無く混合物ですので、構成

 成分が判っていなければ、計算できません。その為の資料が必要になります。

 この件をここで述べると長くて、膨大に成りますので、上杉様でお探し下さい。必ず見つかるはず

 です。

最後に、以上述べてきた事柄を元に釉を作る場合、実験(試し焼き)を繰り返す必要があります。

以上、、マット釉を完成させて下さい。
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