わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

素朴な疑問 315 陶芸の手順とは32(本焼きの手順12)

2017-11-21 11:57:30 | 素朴な疑問
陶芸に限らず、何事にも手順があります。手順を忘れたり、手順前後の誤りにより、思いも拠らない

結果を招く事は多いです。

7) 窯出しに付いて。

  窯出しは緊張と不安もありますが、どの様に焼き上がっているかの期待もある作業です。

  何度経験してもこの感覚は変わりません。

 ①  窯出しの準備。

 ② 扉を開けて内部を観察します。

 ③ 窯出しの実施。

  ⅰ) 窯の上部から取り出すのが一般的です。

  ⅱ) 棚板一枚に載せてある作品を全て取り出したら、その棚板を取り除きます。

   (以上までが前回の話です。)

  ⅲ) 窯出しには時間を掛ける事。  

   急いでいるからと言って、窯の中の作品を次々と外に出すのは、勿体無い事です。

   なぜなら、窯焚きを終えた窯の中には、貴重な事柄が多く残っているからです。

   イ) 同じ釉を掛けた作品でも、同じ色艶に焼き上がっている事は稀です。

    量産的な工業作品ならば、同じ様に焼き上がらない事は大きな欠点に成りますが、少量の

    作品を焼く個人の窯では、焼き上がりが異なるのは極自然な事とも言えます。更に言えば

    焼成する度に異なる表情の作品に仕上がる事が、窯焚きの醍醐味とも言えます。

   ロ) いつもと同じ様に焼成しても、焼き上がりが異なる主な理由は、窯詰めの際の作品の

    位置が違う事です。

    当然ですが、窯内のその位置は作品一個が置けるだけです。その周囲も同じ様な環境です

    ので似通った色艶に成りますが、一番良い位置から「ずれる」事で差が出易いです。

   ハ) 釉の種類によって良い色艶に焼きあがる場所は自然に判ってきます。

    何度も本焼きを繰り返すと、この釉はこの位置又はこの周辺が良いと言う事が次第に判る

    様になります。但し絶対この場所が確実と言う場所はありません。そこが窯焚きの難しさ

    です。良く焼けた(良い色が出た)場所は、場所を記録しておく事が大切です。

   ニ) 場合によっては窯変と呼ばれる色艶にに焼き上がる事もあります。

    常に出る事は稀ですが、何らかの偶然によって思わぬ幸運に見舞われる事もあります。

    多くの場合、一窯の中でよく出来たと思われる作品は、数個と言われています。場合によって

    全てが不出来の場合もあります。良くできた場合と不出来の場合には何らかの差があるはず

    です。次回の窯で成功させる為にも、窯詰め位置や作品の向き(方向)、焼成記録や窯の

    操作記録、その他のデータを突合せ原因を突き止める事が大切になります。勿論窯出し時に

    はその様な余裕はありませんが、窯出し時には、作品の良し悪しや色艶の変化等の記録を残

    すべきです。後で思い出そうとしても、よほど印象に残った作品でないと思い出す事が難し

    くなります。一々ノートに書く事が出来なくても、メモ用紙などに記載し作品に貼り付けた

    り、作品を並べたそばに置いて置くことが後々役にたちます。勿論一人で窯出しを行う場合

    には十分対応可能ですが、数人で行う場合には、連携プレーが大切ですので、どの様に窯出

    しを行うかは、予め相談して置く事です。

   ホ) 割れやヒビの入った作品は別の場所に置き、後でその処理方法を検討する事に成ります。

    助かる作品と助からない作品があります。この件は後ほどお話します。

 ④ 窯出し後の処置。

  ⅰ) 数人の作り手の作品を焼く共同窯の場合、人毎に作品を集める必要があります。

   共同窯でない場合には、作品毎に集めます。その際作品の大きさ別に仕分ける方法と、釉の

   種類毎に仕分ける方法があります。出来れば釉の種類別に仕分ける事をお勧めします。

   勿論、どの釉を使って焼き上げた作品であるかが、判っていなければ成りません。

   前に述べましたが、同じ釉であってもその表情は大きな差が出る事が多いです。特に還元焼成

   の場合が多いです。 薪窯となると一層変化が大きくなります。 

 ⅱ) 良く焼けた作品は、特に良く観察する事。


以下次回に続きます。
   
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素朴な疑問 314 陶芸の手順とは31(本焼きの手順11)

2017-11-14 14:27:42 | 素朴な疑問
陶芸に限らず、何事にも手順があります。手順を忘れたり、手順前後の誤りにより、思いも拠らない

結果を招く事は多いです。

7) 窯出しに付いて。

  窯出しは緊張と不安もありますが、どの様に焼き上がっているかの期待もある作業です。

  何度経験してもこの感覚は変わりません。

 ①  窯出しの準備。

 ② 扉を開けて内部を観察します。

  ⅰ) 作品ほ周囲に飛び散った破片がないかを外から確認する。(以上が前回までの話です)

  ⅱ) 焼き上がりの状態を見る。

   a) 釉が過不足なく熔けているかを確認する。

    本焼きで最重要事項は、釉が十分熔けている事です。但し熔け不足も熔け過ぎも問題です。

    イ) 熔け不足は、光沢のあるべき釉の表面が光沢不足や、下絵がはっきり浮き出ていない

     又は釉肌が「ザラヅイタ」状態に成っていませんので、容易に見出せます。

     熔け不足は窯全体の事もありますが、窯の一部の場所のみで起こる事が多いです。

     特に窯の下部では、他の場所より温度が低くなり易く、熔け不足が多くなります。

     原因は最高温度が低い為や、「寝らし時間」が短過ぎる為、窯詰めの際他の箇所より、

     一箇所に多く詰め過ぎる等が考えられます。即ち作品同士の隙間が少な過ぎる等。

     尚、熔け不足の程度にもよりますが、使用に耐えられない程度でしたら、再焼成します。

     又、熔不足の釉肌では表面が「ザラツク」為、汚れ易くなります。

    ロ) 熔け過ぎの場合、作品の表面より釉が棚板まで流れ落ちています。棚板まで流れ落ち

     なくとも、高台近辺が雫状に盛り上がっていますので、熔け過ぎを見付ける事は比較的

     容易です。問題なのは、熔け落ちた釉が棚板まで流れた場合です。作品が棚板にくっ付き

     作品を棚板から取り上げられなくなります。最悪作品を壊す事にも成ります。

     取り除く方法や棚板等その他の処理は後日述べます。

   b) 釉の発色状態を観察する。

    釉の確認は窯出し中でも観察可能ですので、必ずしもこの段階で確認する必要はありません

    イ) 釉の発色は酸化又は、還元焼成によって大きく異なります。

     焼成の際、いずれの方法で焼成するかは、予め予定を立てていたはずです。予想通りに

     焼き上がっているこを確認します。

    ロ) 結晶釉を使用した場合、予定通りの結晶が出ているかを確認します。

     複数の結晶釉を同じ窯で焼成した場合、一部は良いが他は良くない場合があります。

   勿論、これらは窯の扉を開けた際に見える範囲内しか確認できません。本格的な確認は窯出し

   後になります。以上の事柄を外から観察したら、いよいよ窯出しに掛ます。

 ③ 窯出しの実施。

  窯出しは、作品の状態を見ながら行います。又同じ釉でも、棚板の位置によって作品の表情は

  変化しますので、どの位置に置いた作品かを記憶(又は記録)しておく必要がありおます。

  窯より取り出すスペースは狭いですので、窯出しは一人で行い、他の人は搬出や作品を並べる等

  の補佐的な役目になります。勿論小さな窯であれば一人で全てを行います。

  ⅰ) 窯の上部から取り出すのが一般的です。

   但し、窯の上部は一番温度が高い状態ですので、手袋をしても熱い場合があります。上扉式

   でなく、横扉であれば冷えた下部から取り出す事もあります。但し棚板が邪魔になりますが・・

   取り出す際には、なるべく両手で支えて、作品を真上に持ち上げる様にします。釉が棚板まで

   流れ落ちていなければ、簡単に取り出す事ができます。

  ⅱ) 棚板一枚に載せてある作品を全て取り出したら、その棚板を取り除きます。

   その際注意する事は、棚板を下から支える支柱(3~4本)が棚板に張り付いている場合があ

   り、棚板を移動する時一緒に移動し、途中で剥がれ下の作品の上に落ち、作品を破損する場合

   があります。 それ故、棚板はゆっくり少し持ち上げ、支柱が張り付いていない事を確認して

   から、取り除きます。支柱が張り付いている場合には、棚板を少し浮かせてから支柱に小さな

   衝撃を与えると剥がれます。くれぐれも、支柱を作品の上やバーナー口に落とさない事です。

   取り除いた棚板は、棚板置き場に立て掛けて重ねて置きします。

  ⅲ) 窯出しには時間を掛ける事。  
 

以下次回に続きます。
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素朴な疑問 313 陶芸の手順とは30(本焼きの手順10)

2017-11-08 14:04:33 | 素朴な疑問
陶芸に限らず、何事にも手順があります。手順を忘れたり、手順前後の誤りにより、思いも拠らない

結果を招く事は多いです。

7) 窯出しに付いて。

  窯出しは緊張と不安もありますが、どの様に焼き上がっているかの期待もある作業です。

  何度経験してもこの感覚は変わりません。

  窯が十分に冷えたら(出来れば約100℃以下)、最後の段階である窯出しに移ります。

  最後の数十度が中々温度が下がりませんんので、扉や色見穴を開けて窯の中に空気を入り込ませ

  空気を循環させて温度を下げる必要も生じます。勿論急がないならば、30℃程度まで自然に冷や

  してから窯出しをすればより安心です。窯出しで行う事は以下の事柄です。

 ①  窯出しの準備。

  ⅰ) 窯が屋外にある場合と屋内にある場合では、条件が若干異なります。即ち屋外の場合には

   雨天や強風のある時はなるべく日延べした方が安全です。勿論屋外であっても屋根付きの通路

   が有れば風雨を避ける事もできますので、少々の悪天候でも決行が可能です。

  ⅱ) 窯の容量にもよりますが、窯から出した作品を並べるスペースが必要になります。

   風雨がなければ出来るだけ窯の近辺の場所が都合が良いです。勿論小さな窯であれば直接作業

   場に持ち込み、並べる事も可能です。ある程度まとまった量の作品であれば、それなりの

   スペースが必要になります。尚、この場所は窯出しの完了と作品の大まかなチェックが終わる

   までの一時的なスペースです。平坦な場所が理想ですが、やや傾斜のある時には、作品が転倒

   しない様に何らかの方法を取る必要があります。

  ⅲ) 場所が決れば作品を置く敷物が必要です。

   例えば窯の温度が100℃であっても、作品を窯の外に持ち出せば温度は急激に低下します。

   勿論、外気温にも影響します。それ故、敷物も化学繊維の物(塩ビ等)でも良いのですが、

   出来れば、ダンボールや新聞紙を敷物の上に敷いた方がより安全です。ちなみに塩ビは最高

   使用温度は約80℃と言われていますので、それ以上の熱が加わると孔が開きます。

   注意する事は、窯出し直後の作品をコンクリートの上に直に置かない事です。熱がコンクリ-ト

   に吸収され、接した部分が急激に冷え、割れを起こす事があるからです。

   理想的には木の板の上に並べる事です。

  ⅳ) 作品を重ねる為にスペーサーの紙(新聞紙、広告のチラシ等)を用意します。

   窯出しした作品の量が多くなると、直ぐに置き場所が無くなります。皿類などは場所を取り

   ますので、重ねる事でスペースを獲得します。作品同士を重ねる場合、直に重ねても良いので

   すが、より安全の為にも、スペーサーを入れる方が良いでしょう。

  ⅴ) 窯出しに要する人手数。

   小さな窯であれば、一人で十分ですが、作品の量が多くなったり、作品を置く位置が遠い場合

   数人の人がいた方が効率良く作業ができます。窯から出す人が一人と、出した作品を運ぶ人、

   作品を種類別に並べる人、場合によっては良く焼けた作品と不出来な作品を選別する人など

   の役割分担です。

 ② 扉を開けて内部を観察します。

  例え温度計が100℃を示していても、まだ熱気がありますので、作品は基より窯道具である棚板

  や支柱なども火傷(やけど)する位の温度がありますので、それらを直に触ら無い事で、手袋は

  必需品になります。作品を窯出しする前に確認しておく事項は以下のものがあります。

  ⅰ) 作品ほ周囲に飛び散った破片がないかを外から確認する。

   本焼きではめったに起こらない事ですが(素焼きでは起こり易い)、焼成中に作品が爆発する

   事があります。

   窯の中で爆発事故が起これば、破片が飛び散っていますので、直ぐに気が付くはずです。

   飛び散った破片はその周囲に悪い影響を与えますので、どの範囲まで飛び散っているかを確認

   する必要があります。尚、奥行きのある窯では、頭を入れなければ見えないかも知れませんが

   十分冷えていない窯の中に頭を入れる事には注意が必要です。

   更に、窯詰めの際、不安定な作品がある場合、窯の中で転倒し、隣の作品に接触していない

   かを確認します。

  ⅱ) 焼き上がりの状態を見る。

 以下次回に続きます。
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素朴な疑問 312 陶芸の手順とは29(本焼きの手順9)

2017-11-04 13:30:57 | 素朴な疑問
陶芸に限らず、何事にも手順があります。手順を忘れたり、手順前後の誤りにより、思いも拠らない

結果を招く事は多いです。

6) 窯の温度を下げる(窯を冷やす)。

  窯の温度を下げる行為も、窯焚きと見なされます。即ち、どの様に温度を下げるかによって、

  釉の発色に大きな違いが出るからです。又、窯の冷え方は窯の大きさや壁の厚みにも関係します

  ので、単に消火や炙りだけの問題では無く、窯毎に違いがあります。

 ⅰ) 窯の冷やし方には、急冷と徐冷があります。(以上が前回までの話です。)

 ⅱ) 還元冷却(還元落し)に付いて。

   釉の表面や無釉の焼き締め陶の表面に炭素を混入させ、黒褐色の色に仕上げる方法です。

   炭化焼成とも呼ばれています。電気窯の場合には外部より還元用のガスを注入します。

   a) 炭素成分が素地や釉に入り込む温度は、1100~800℃の冷却時です。温度が高過ぎると

    炭素が燃えてしまい、低過ぎると釉が固まり炭素を吸収しなくなります。この間還元雰囲気

    をを保持していなければ成りません。窯の冷却が進むと、窯中の炎の対流が弱くなり、

    部分的に還元が強くなり、炭素と釉が過剰反応を起こし、釉の表面が「かさつく」場合や、

    「ブク」(表面が泡立こと)が発生する事もあります。緩やかな対流にするには、窯詰の際

    ある程度隙間を設けて置く事です。

   b) 還元用ガスバーナーを使用する場合、バーナー口や色見孔から出てくる炎の色で還元状態

    を判断する事になります。バーナー口より炎が僅かに吹き出る程度が良く、強く吹き出る

    場合には、強過ぎる事になり燃料の無駄になりますし、炎が吸い込まれ状態では、還元作用

    が弱い事になります。空気量を調節し適度の炎にします。

  ⅲ) 冷め割れに注意。

   窯を冷やす時間が急な場合、作品が割れる事があります。特に600~500℃の間に起こり易い

   です。原因は素地中の肉厚の石英が、この温度周辺で結晶構造が変わり、急激に縮むからと

   言われえいます。冷め割れた断面には、釉が掛かっていません。更に、割れた断面の角が鋭く

   尖っていますので、冷却中に割れた事が判ります。

   a) 窯出し出来るまでの冷却時間は、窯を焚いた時間と同等又はそれ以上が必要であると言う

    のが一般的です。但し窯の大きさや壁の厚み、作品の量、釉の種類、素地の種類などの要素が

    関係しますので、必ずしも全ての窯に当てはまる訳ではありません。

   b) 窯の扉を開けて良い温度に付いて。

    一般的には100℃以下に成れば窯の扉を開けても、冷め割れは発生せず安心です。

    耐急冷性の素地であれば、300℃でも安全であると言う人もいます。当然窯出しには、

    窯中を扇風機等で強制的に冷やす必要があります。但し50℃以上では、軍手などの手袋を

    使用しないと、火傷(やけど)をしてしまいますので、注意が必要です。

  ⅳ) 窯の冷えと貫入との関係。

   急冷すると、釉に貫入(小さなヒビ)が入り易くなります。貫入が欲しい場合には、速めに

   窯を開け、貫入を望まない場合には、じっくり冷えるのを待つ事です。貫入は窯出し直後が

   多く発生しますが、窯出し数日たってから発生する事もあります。

   原因は、釉と素地の収縮差によるものです。即ち釉の表面が急激に冷やされ、素地よりも大き

   く縮む為です。「チンチン」又は「ピンピン」と乾いた澄んだ音がします。

   勿論釉の種類によって貫入の大きさや、網目模様も千差万別です。

   尚、貫入は必ずしも欠点とは言えません。「ヒビ」の入った釉を好む人もいます。

7) 窯出しに付いて。

 
以下次回に続きます。

  
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