わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

現代陶芸 261 俵萠子(五十の手習い)2

2015-08-26 21:55:19 | 現代陶芸と工芸家達
陶芸は60、70代の年配者であっても、新たに始める事ができます。但し、電動轆轤では早い時期

(遅くても50代)から始めなければ、上達は期待できません。丁度自動車の運転免許の取得が若者に

有利な事と相通じます。

俵萠子(たわら もえこ): 昭和5年(1930年)12月7日 ~ 平成20年(2008年)11月27日

 尚、本名は萠子と書きますが、ネット上等では萌子と表示される事が多いです。

1) 陶芸に興味を持った切っ掛け。

 ① 最初に作ったのは、紫陽花の葉を押し当てた木の葉皿でした。

 ② 弟子入り。

  ) 最初は独学で挑戦します。

  ) 独学の限界を感じ、プロの陶芸家に弟子入りを望む。

  ) 弟子にしてくれる陶芸家は中々見付かりませんでした。

   a) 基本的に陶芸家は、特別な場合(自分の子供など)を除いて弟子は採りません。

   b) 師匠を求めている最中で、色々なタイプの陶芸家が居るのを発見します。

 以上までが前回に述べた事です。

   c) 弟子入り志願を断れ続けます。

    俵さんに向いていると思われる陶芸家の門を、叩き入門を要請しますが、ことごとく断られて

    しまいます。尚、男性の陶芸家に絞ったそうです。

    断られた理由として、自身で幾つか述べられておられます。

   ・ 「女の弟子を採らない」と言う答えが、圧倒的に多いとの事です。

   ・ 「陶芸は力仕事であり、若い男性のみ弟子にします。」

   ・ 「窯場は神聖な場所で、女人禁制です」、「相撲の土俵と同じです」

   ・ 「女房が反対するので、女の弟子は採らない」と言う陶芸家もいた様です。

   即ち、女である事と60近い年配である事が、断る大きな理由であった様です。

2) 念願の弟子入り。

  プロの陶芸家への弟子入りを諦めかけていた頃、熊本県八代市の隣町に講演の為訪れます。

  八代市には、高田焼(八代焼)きと言う焼き物があり、その窯元の一つを訪れる機会ができます。

 ① 窯元酒井雅女さんと出会う。

  a) 窯元の主は、伝統的な窯元の十一代目の女性でした。俵さんは窯元が、女性である事が

   大変不思議であった様です。なぜなら、伝統的な窯元では、男子のみの一子相伝と伝えられて

   いると思っていた為です。酒井雅女さんは、俵さんより年上の人でした。

  b) 「何でも教えるからうちに来なさい」(実際は熊本弁であったそうです)の一言で弟子入りを

    決意します。俵さんは独学で苦労し、プロの陶芸家に弟子入りを希望しているが、断れ続けて

    いる事を話すと、上記の様な言葉を掛けて頂いたそうです。

  c) 月に一度4~5日の休暇を取り、飛行機で熊本へ、1988年から4年間通う事に成ります。

    それでは、俵さんの修行した時間はどの位だったのでしょうか?。勿論本人は語っていま

    せんが、大よその見当がつきます。

    一度に月4日間陶芸に従事しているとし、1日8時間として月32時間になります。

    これを4年間(12X4=48ヶ月)とすれば、32x48=1536時間になります。

    一般に、1000時間で一通り陶芸の事は、こなせる様になり、1500時間で人に教える

    事が出来ると言われています。当然、指導の仕方や、学ぶ者の素質や年齢によって左右され

    ます。それ故、俵さんは、人に教える事の出来る程度の技量を習得した物と思われます。

 ② 他の多くの陶芸家から、助言を受ける。

   著名人である俵さんが、本格的に陶芸を始めた事が判ると、多くの人や陶芸家たちから助言を

   受ける様に成ったそうです。電動轆轤は、熊本でも習いましたが、その他の人々の助言を受け、

   上達したそうです。

  尚、他人の助言には、とても役立つもの、余り参考に成らないもの、毒にも薬にも成らないもの

  更には、有害のものまであります。有名人や著名な陶芸家の助言が必ずしも、役に立つとは

  限りません。その為、取捨選択を間違わない事です。陶芸は人によりやり方が違いますので、

  助言された事で迷ってしまう事も珍しくありません。その為、初心者はあれこれ意見を聞かずに

  一人の先生の教えを守る事が、陶芸技術の速い習得になる場合が多いです。

以下次回に続きます。
   
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現代陶芸 260 俵萠子(五十の手習い)1

2015-08-25 17:34:24 | 現代陶芸と工芸家達
俵萠子(たわら もえこ): 昭和5年(1930年)12月7日 ~ 平成20年(2008年)11月27日

 大阪府大阪市出身の社会評論家、エッセイスト、作家。大阪外国語大学フランス語学科卒業。

 産経新聞記者を経て女性、家庭、教育などを中心にした社会評論家として、テレビに多く登場して

 います。更に、小説家としても活躍し、日本初の準公選で、東京都中野区教育委員を歴任しています

 俵さんは、五十歳を過ぎた1986年頃より、陶芸に興味を抱き正式に師事して陶芸を学び、群馬県

 勢多郡富士見村の赤城山(大鳥居から十数分の場所との事です)に、「萠子窯」を開設し、1995年、

 夢工房と名付けた工房と、美術館を兼ねた「俵萠子美術館」設立します。尚、若い頃に絵画も

 学ばれており、再度絵画の勉強も始め、陶芸の絵付けに応用しています。

1) 陶芸に興味を持った切っ掛け。

  1983年(昭和58年)に執筆や畑仕事をしようと、父親の故郷の赤城南麓に土地を購入します。

 ① 最初に作ったのは、紫陽花の葉を押し当てた木の葉皿でした。

  1985年頃、知り合いの元校長先生が、益子の粘土3Kgと陶芸セットを携え、中野の自宅を訪ねて

  きます。余談ですが、粘土は東急ハンズの包み紙に包まれていたそうです。

  その場でテーブルに新聞紙を敷き、元校長の指導の下、2kgの粘土を叩き延ばし、厚さ1cm

  の粘土板(タタラ)を作ります。庭にある紫陽花の葉を採り、葉脈側を下にして粘土板に押し

  当て、葉の形と葉脈を粘土に刻み付けます。更に周囲(縁)のギザギザを線の通りに切り取り、

  5枚の木の葉皿を作ります。 落款(らっかん=印)を押すと様に成っていました。

  後日、デパートの陶芸コーナーで焼成して貰い、木の葉皿を受けと取ってから、陶芸の虜(とりこ)

  に成ったそうです。

 ② 弟子入り。

  ) 最初は独学で挑戦します。

   当時職業を持ち、多忙を極める暮らしでは、決まった日時で開催される、陶芸教室やカルチア

   センター、陶芸科のある大学などに通う事は、仕事の関係で困難でした。

   それ故、独学で学ぶ事を決意し、陶芸の入門書やビデオ購入し陶芸に励みます。

   小さな電気窯も購入し、数回焼いたそうです。

  ) 独学の限界を感じ、プロの陶芸家に弟子入りを望む。

   独学で勉強しますが、判らない事だらけでした。粘土の処理、高台の削り方、釉の濃さ、

   釉の掛け方など、書籍やビデオで表現された意味もチンプンカンプンの状態で理解できずに、

   2年程経ちます。一向に上達しないのを感じ、プロの陶芸家に弟子入りする事を真剣に考え

   始めます。

  ) 弟子にしてくれる陶芸家は、中々見付かりませんでした。

   a) 基本的に陶芸家は、特別な場合(自分の子供など)を除いて弟子は採りません。

   なぜなら、自分の持っている技術や知識を弟子に教える事で、師匠に利益が無いばかりか、

   将来競争相手になるかも知れない存在になるからです。

   一般には、その窯場の下働きとして採用され、他の同僚や親方から技術を見て盗む事で、

   陶芸技術を手に入れる事になります。親方や同僚が手を取って教えてくれる訳ではありません。

   それ故、弟子として認める訳では有りません。(本人が弟子と思うのみです。)

  b) 師匠を求めている最中で、色々なタイプの陶芸家が居るのを発見します。

   ・ どんな些細な事でも丁寧に説明してくれる陶芸家。

   ・ 「それは企業秘密です」と肝心で大事な事は、明らかにしない陶芸家。

   ・ 教えてくれるのだが、大事な事はその陶芸家がやってしまい、中々やらせて貰えない陶芸家

   ・ 何でも教えてくれるのですが、決してその人と同じ程度まで技術が磨けないと感じさせる

     陶芸家。

   ・ その他、自由に創作させる人、拘束する人、自分の考えを押し付ける人、特殊の技術の

     持ち主、細かく指導する人、放任形の人、指導の仕方の上手な人、下手な人、個性が

     強すぎる人、積極的に作品を発表する人、代々陶芸家の伝統的な窯元など、百人百様です。

    当然、俵さんは自分に合う師匠を求める事になります。

  c) 弟子入り志願を断れ続けます。

以下次回に続きます。
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素朴な疑問 175 作品の名前の付け方とは2?

2015-08-23 19:45:17 | 素朴な疑問
1) 名前の付け方。

 ① 基本的な名前の付け方。

  ) 産地: 作られた国(但し国内の場合は省きます)、窯場なども産地です。 

    (以上までが前回の話です。)

  ) 様式、釉の種類、技法の種類。

    焼き物の呼び名は基本的には自由です。但しその特徴を現す様な名前を付け、他とは区別

    する必要があります。名前を並べる順序は特に決まりはありませんが、以下の順序で付ける

    事も多い様です。

   a)  様式: 縄文式、弥生式、器(せっき)、楽焼、焼締、初期伊万里、古九谷、ペルシャ

    陶器など。その時代を代表する様式や、特別な産地での作品は、ひっくるめて一つの様式を

    表している事も多いです。

b) 釉の種類: 青磁、天目(黒、柿、油滴、曜変、禾目など)、織部、黄瀬戸、萩、唐津、

     瑠璃、塩釉、自然釉などです。当然ですが、一般的な釉の名前では無く、ご自分で新しい

     釉を開発し、命名ける事も多いです。

     例、紫匂志野(加藤唐九郎)、鬼萩(人間国宝 三輪休雪)などが著名です。

  c) 技法: 象嵌、粉引、刷毛目、掻き落とし、飛鉋(かんな)、透彫り、練込など。

    ご自分で開発した技法。例 楠部彌弌(くすべ やいち)氏の彩埏(さいえん)など

  d) 模様: 染付(青華)、赤絵、色絵、唐草文、牡丹文、鳥文、魚文、焼締、火襷(ひだすき)

    装飾の絵柄が複雑で複数ある場合で、幾何学文様の他、鳥や花などの文様がある時、

    「花鳥文」や「山水松竹梅文鳥」など羅列する事も多いです。

    中には中国の故事から取ったと思われる、図柄の命名もありますので、ある程度の知識も

    必要になります。

  e) 器形: 四方(よほう)、半月皿、木の葉皿、俎板(まないた)皿、片口、手鉢、水指、

    四耳壷、蓋物、陶筥(とうばこ)、花生、向付などです。上記は一般的に使用されている名前

    ですが、この範疇に入らない作品も多いです。その場合、ご自分で命名しても何の問題も

    ありません。

  f) その他: 抹茶々碗などに多い「銘 」、作品の寸法、持ち主(個人)、美術館などの

    蔵所、○○写しなどがあります。尚、寸法は縦、横(径)、奥行き全てを表す事も有ります

    が、一部のみを表記する場合も多いです。○○写しとは著名な作家の作品を手本てして作った

    作品で、コピー、偽物とは区別されるものです。例、古染付写し、仁清写し、乾山写し等が

    挙げられます。

   これらの事項を全て満たす名前では、長く成り過ぎですので、適度の表現に留める事が無難

   です。

  以上で、名前の付け方の話を終わります。

  

  

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質問15 マット釉の釉の剥がれとカオリンの焼 の関係

2015-08-16 17:25:41 | 質問、問い合わせ、相談事
H O N 様より以下の質問をお受けましたので、私なりにお答えしたいと思います。

 (便宜上質問を二つに分けて考えます。)

  ◎ マット釉のカオリンの焼

1) 朝鮮カオリンを29%含む自作のマット釉で、本焼きすると釉が縮れて素地が露出します。

  C M Cを5%足しても改善しないので、更にCMCを増やすか、もしくは朝鮮カオリンの何割かを

  焼にしてみようかと考えています。どちらが良いでしょうか?

2) 市販の焼カオリンは1200度で焼いて粉砕してあるとの謳っているのですが、高価なので、

  自分でやろうかと考えてます。しかし、これだけを1200度で焼くのももったいないので、素焼き

  の800度で焼いてもそれなりの効果はあるでしょうか?

  尚、焼くときはサヤに入れて焼く予定です。


明窓窯より

1) の質問

 ① CMC(化学のり)を釉に添加するのは、釉を素地に密着させる為です。

  但し、施釉後に素地から釉が剥がれるのを防ぐ事が主目的で、高温で焼成中では釉の剥がれを

  防ぐ事はほとんど効果が無いと思われます。 CMCは有機物質ですので、高温では焼失すると

  思われます。

 ② CMCの使用方法をメーカーのカタログで見ると、0.3~0.5%程度と表記されています。

  それ故5%の添加量は多過ぎると思われます。多く添加すると害があると云う記事もあります。

 ③ カオリンは磁土や粘土の素地に入れる事も多い素材です。即ち土の一種ですので、素地との

   相性は良く、CMCを入れなくても、良く密着すると言われています。

   それ故、カオリンを焼 して添加する方法が最良です。

2)の質問

 ① 焼成で釉が剥がれる(縮れる)主な原因は、素地と釉の収縮率の差で、釉の縮みが大きい為

   です。即ち、一般に市販されいてる素地の収縮率は、12~13%程度と言われています。

   一方カオリンの収縮率は1200度程度で12%程度と言われていますので、一見問題が

   無い様に見えます。しかし生掛けの際には問題がなくても、素焼き後の施釉では問題になり

   ます。即ち素焼きで素地は5~6%程度は縮んでいますので、本焼きでは7%程度しか縮み

   ません。それ故、カオリンとの収縮差が5%前後発生します。この差が釉剥がれの原因に

   なります。

 ② カオリンを29%添加するのは、一般的に20%以下とするのに対して、大量の割合になり

   ます。カオリンは土の一種ですので、他の釉の成分が高温になるとガラス化し液体にり、

   素地に張り付くのに対し、カオリンはほとんどガラス化せず液化もしません。更に大きく縮み

   ますので、張り付かずに剥がれる事になります。

 ③ カオリンを焼する事は、予め収縮させる事になり、素地との収縮差を無くす事になります。

   市販されている焼カオリンが1200℃の理由は、出来るだけ大きく収縮させる為です。

   当然それ以上の温度の方が大きく収縮するのですが、1200℃以上になるとカオリンの中に

   含まれる不純物と化学変化(不純物がガラス化して結合)を起こしますので、好ましくない

   からです。

 ④ 質問にある素焼き程度の温度(800℃)で焼したカオリンも有効か? との事ですが、

   十分有効に使う事が出来ます。但し1200℃に比べ収縮率が低いですので、多くの割合の

   量を添加する必要があります。場合によっては100%添加しても良いのではないかと思い

   ます。低い温度の焼 の方が砕き易い利点もあります。但し、カオリンを細かくし過ぎると

   収縮率も大きくなります。12%程度の物が、粗目のカオリンでは8%程度の収縮になると

   言うデータもあるとの事です。それ故、焼せずに粗目のカオリンを使う方法も有るかも

   知れません。尚、どの程度の粗目が良いかのデータはありません。

 ⑤ 今回の質問とは直接関係しませんが、釉が縮れたり、剥がれる原因に釉の厚掛けがあります。

   それ故、施釉時に若干薄く掛ける事で、縮れや剥がれを無くせる場合もあります。

以上、参考にして頂ければ幸いです。
  
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素朴な疑問 174 作品の名前の付け方とは1?

2015-08-13 14:24:45 | 素朴な疑問
・ 青磁釉銅彩石榴文角皿(せいじゆ どうさい ざくろもん かくざら)

・ 白泥流し鉄絵壷(はくでいながし てつえ つぼ)

・ 糠白釉赤絵大皿(ぬかじろ あかえ おおざら) 以上 田村耕一氏の作品

・ ザムザ氏の散歩

・ 雲の記憶

・ 金環蝕(きんかんしょく)         以上 八木一夫氏の作品

・ 彩埏(さいえん)春日 花瓶

・ 彩埏 鉄線 佳日 花瓶

・ 彩埏 釉裏紅 桃果 透盂         以上 楠部彌弌(くすべ やいち)氏の作品

・ 子持つき彩文水差(こもちつき さいもん みずさし)

・ 人頭形把手つき壷 (じんとうかた とってつき つぼ)

・ 赤絵式壷                 以上 古代ギリシャ

・ 柿右衛門 色絵 山水菊牡丹図深鉢(さんすい きくぼたんず ふかざら)

・ 柿右衛門 色絵 傘人物三方割大壷(かさじんぶつ さんぽうわり おおつぼ)

・ 柿右衛門 色絵 葡萄栗鼠文向付 (ぶどう りすもん むこうつけ)  

                         以上 酒井田柿右衛門の作品。

上記は、当方で所持している書籍から適当に抜書きした作品の名前です。


陶芸に限らず美術品には名称(名前)が付けられています。有名な作品では、その名前を聞いた

だけで、その作品の形や色が思い出せる場合が多いです。ご自分で作った作品であっても、公募展、

展示会などに出品すれば、名札を付ける事が多く、場合によっては必須条件となります。

その名前は単に思い付きで付ける場合もあります。当然命名権は作者にあるのですが、古い時代で

作者が不明な場合などには、どなたかが付ける事になります。その名前が適していれば、以後その

名前で呼ばれる事が多いです。

特に茶道に於ける抹茶々碗類には、「銘」と呼ばれる物があり、著名な茶人などが名付け親になる

事も多いです。

・ ご自分の作品に名前を付ける際に、何らかの参考に成れば良いと思っています。

1) 名前の付け方。

 一般に名前は漢字で表記する事が多いです。近年では、記号や横文字で表記する事も多くなって

 きました。それ故、文字の種類については、適当でも何ら問題には成りません。

  著名な作品の名前は単に思い付きで、漢字を羅列している訳ではなく、一定のルールの付け方が

  有ると思われます。名前は単に呼び名(銘)だけでなく、その作品の特徴を現している場合が

  多いです。 書籍(美術書)などを見ると、作品紹介は、名称(銘)、産地、釉の種類、文様の

  種類、技法、作品の形、制作年代、作者(古い時代は無名)、蔵所(持ち主)等が主に記されて

  います。当然ですが、名前を付ける際、この全てを網羅している必要はありません。

  ご自分で制作した物も、公募展や個展などで世に発表する際には、名前を付ける必要があります。

  どの様に名前を付けるかによって、作品のイメージも変化します。特に近頃は、陶芸に限らず、

  全ての物にはネーミングが、その作品の価値を高める大切な役目を果たしています。

 ① 基本的な名前の付け方。

 作品は、一般的には漢字を使っています。その文字をどの様な順序で並べるかは、はっきりした

 基準はありませんが、慣例的におおむね次ぎの順序で記される場合が多いです。

  ) 産地: 作られた国(但し国内の場合は省きます)、窯場なども産地です。

   外国の場合: 中国(唐、宋、)朝鮮(高麗、李朝)ペルシャ、ドイツ(マイセン)

   国内の場合: 備前、信楽、伊賀、萩、唐津、九谷、志野、薩摩、益子、相馬などです。

   ・ 近年は、産地が分散し、容易に取り寄せる個人が人も多いですので、産地を表記しない

    場合も多いです。

   産地の違いは、素地(土)の違いでもあります。その産地特有の土を使っているはずです。

   特に、現在の様に簡単に移動できなかった土ですので、確実にその産地の近くから採取されて

   います。更に、土が違えばその制作方法にも差が出や易いです。その土に対応した作り方も

   有るかも知れません。それ故、産地が判れば制作方法も判る事も多いです。

  ) 釉の種類、技法の種類。

以下次回に続きます。
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素朴な疑問 173 大きな作品はなぜ難しいか8?

2015-08-11 21:52:41 | 素朴な疑問
11) 分離して焼成してから組み立てる方法。

  陶壁の様に巨大な焼き物は、分離して焼成します。その為、焼成後に組み立てる必要があります

  焼き物は焼成する事で収縮し、場合によっては、変形が起こる事も多いです。その為組み合わ

  せが「ピッタリ」するとは限りません。多くの陶壁は平面よりやや盛り上がった立体構造の

  物が多いですので、「ピッタリ」合わなくても、それほど目立つ訳ではありません。

  尚、陶壁以外の一般的な作品は、焼成後に組み立てる例は少ないです。

 ① 裏打ちのある作品。

  組み立てる際、隣同士の端面のみでの接着は、糊代が少ない為強度的に弱くなります。

  出来れば、裏面より他の物質で裏打ちすれば、より強固に接着できます。

  その裏打ちした状態で壁面に取り付ければ、完成になります。

  ) 陶壁の場合、壁面に取り付ける事に成りますので、壁自体が裏打ちの役目を果たす事にも

   成ります。その壁の材料が何であるかによって、作品を支える強度も変化します。

  ) 一般には、コンクリートの壁が多い様です。

   鉄筋コンクリート製の壁であれば、かなりの重量のある作品を吊るす事も可能です。

   陶壁の作品の接着面は、糊代を多くする為に、適度の凹凸が付けられています。陶壁とコン

   クリートの接着剤としてモルタル(セメントと砂と水)類を使う事が多いです。

  ) 漆喰(しっくい)による接着。   

   注: 漆喰とは、消石灰を主成分とする塗り壁材の事で、空気中の炭酸ガスを取り込み硬化

    します。古代エジプト、ギリシャ、ローマ、万里の長城、我が国の寺院、城郭、蔵などで

    多く使われています。近代(現在)でも多用されています。特別な接着剤は不要です。

   漆喰は壁と作品を接着するだけでなく、作品同士も強固に接着する事が出来ます。

  ) 現在では新素材による接着方法があるかも知れません。

   但し、上記素材が数世紀に渡り、堅固に持続する事が証明されているのに対し、新素材が

   数十年~数百年も効果が持続するかは、不明な部分が多いです。即ち実績に乏しいのです。

 ② 陶壁などは、多くの人が集まる公共的な建物に設置される事が多いです。

   又人の頭より高く掲げられます。それ故、地震などの自然災害に対しても、亀裂や一部落下、

   崩壊することなく保持されていなければ成りません。

12) まとめ。

 ①  大きな作品は、力仕事になります。更に、多大な時間も必要になります。

 ②  スペースの問題もあります。

   大きい作品故、通常より広いスペースが必要です。例えば制作場所、乾燥場所、一時保管場所

   などが必要になります。狭い場所では制作に、不自由をきたします。

 ③  作品の種類によって、制作方法の選択(手ひねり、轆轤又はその両方、鋳込など)をする

   必要があります。制作方法の違いは、出来上がる作品に異なる印象を与えます。

 ④ 大きい作品は、制作時、乾燥時、移動時など色々な場面で、作品が割れたり、壊れたりする

   失敗が多いです。それ故、一発勝負には危険性が伴いますので、失敗した時の予備対策を

   しておく必要があるかも知れません。

 ⑤  作品を焼ける十分容積の大きい窯が必要です。特に窯詰めにはくれぐれも慎重さが必要です。

 ⑥  無事に焼き上がったても、作品の運搬、展示、据付などで多くの問題が発生する事も稀では

   有りません。

 最後に、大きな作品は出来上がってしまえば、必ずしも、一般にはそれほど役に立つ物でもあり

 ません。 一度は挑戦する価値は有りますが、特別な以外は多く作る必要も無いと思われます。


取りとめも無い話に成ってしまいましたが、以上で「大きな作品はなぜ難しいか」の話を終わります。
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素朴な疑問 172 大きな作品はなぜ難しいか7?

2015-08-06 22:05:57 | 素朴な疑問
9) 大物の作品を窯詰めする時の注意。

 ① 大物を窯に運ぶ時と窯詰め時の注意。

 ② 焼成で必要な温度まで上昇させるには、窯に適量の作品が無ければなりません。

  ) 大きな作品はどうしても、窯に隙間が出来易いです。(以上までが前回の話です)

  ) 作品をどの位置に置くか。

   b) 高さ方向に余裕がある場合。

    背の高い壷や、大皿などの作品の場合。棚板の関係で窯の上部に置く事が多いです。

    棚板が一枚敷きの場合は問題になりませんが、2、4、6枚敷きと成るに従い、大きな作品

    を焼く事 が可能になり、隣同士の棚板まで使う事になります。その為、上部に棚板を重ね

    支える支柱が必要な部分に使えなくなり、その上に作品を置く棚板を、有効に置く事が

    出来なくなります。もし最上部の棚板上に作品を置く事が出来れば、支柱を立てる必要も

    無く、隣同士の棚板を使う事もできます。大物の作品の下部には、大物ではない他の作品を

    詰め込む事ができます。

   c) 底が狭く「逆ハの字」状の作品では、底周辺に隙間ができますので、ここも有効に使い

    たいです。やや背の低い作品を底の周囲に置く事も出来ます。

    基本的には、作品を詰め込めるスペースは、なるたけ有効に使う事が、窯詰めの「コツ」と

    なります。

   d) 狭い窯の中では、大物の方向転換が難しいです。

    窯詰めでは、何らかの事情で一度セットした作品の向きを、変える必要に迫られる場合が

    あります。小さな作品では何の問題も無く行える作業でも、大物と成れば事情が異なります

    下手に移動させて作品に傷を付けたり、破損させる事も起こりがちです。

    最初予想していた事でも実際の窯詰めとなると色々問題が発生します。

    燃料を使う窯によっては火表と火裏が出る場合があります。「火表」は火力が強く釉も

    十分熔けますが「火裏」では、火力も弱く還元焼成に成り易いですが、「窯変」と呼ばれる

    現象が現れ易いですので、裏表の選択に苦労するかも知れません。

10) 大物に釉を均一に掛けるのは、かなり難しいです。

   一般的な施釉の仕方は、均一にする為「漬け掛け」で行う事が多いです。但し、大物の場合、

  漬け掛けるには、大きな容器と大量の釉が必要に成ります。それ故、この方法は一般的では

  有りません。釉を均等に掛ける一番良い方法は、スプレー掛けかも知れません。少ない量で

  済みますし、比較的均一に施釉する事が可能です。但し、施釉する環境と「スプレーガン」が

  必要です。場合によってはコンプレサーがあると更に便利です。

 ・ スプレー掛けの利点は、濃淡を比較的容易に行う事が出来る点です。スプレーは時間を置いて

   から数回掛ける事になりますが、回数によって濃淡の差が生じます。

 ・ スプレー掛けで注意する事は、塗り残しを無くす事です。物の陰に入り、釉が掛からない場合

   が生じる事もあります。

 ・ 環境とは、噴霧された釉が周囲に飛び散っても良い部屋や、換気扇を有する施設などです。

   釉その物は有害でなくても、吸い込む事は有害です。吸い込む危険性が無くても、衣服などに

   釉が掛かるのも避けたい処です。それ故、釉が四方に広がらない様に、三方を囲い手回し

   轆轤上に乗せるなどで吹き付けます。適当な部屋や喚起が出来ない場合には、屋外で施釉

   する事です。

11) 分離して焼成してから組み立てる方法。

以下次回に続きます。
  

  
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