世界中の神話の多くに大洪水が記されています。 中国 インドネシア ポリネシア シュメール、バビロニアのギルガメッシュ 旧約聖書 ギリシャ アイルランド ゲルマン アステカ インカ ホピ マヤ ヒンヅゥー.......神の怒りによる大洪水は人類の共通の記憶であるかのようです。
日本の神話 古事記において海幸彦・山幸彦のくだりに彷彿とさせるものがありますが、世界の神話に共通する洪水がないことが不思議であると思われてきました。”民俗学の愉楽”のなかで谷川健一さんは明確にこう述べています。
.....世界各地で神話として語り告がれてきた大洪水は何千年も前に実際に起こり、人類のはるか昔の記憶に刻まれたものであろう。古事記、日本書紀に記された日本の神話も、大洪水神話の流れから生まれたものだと考えられる。『ただし、日本の神話は大洪水のあとから始まる。』......イザナギのミコトとイザナミのミコトは、天上から矛で海をかきまわし、その先から滴り落ちた塩でできたオノコロ島に降り立った。オノコロ島で夫婦となったイザナミ、イザナギは国を生むのである。......
そういう見方があったのか!? たしかに.....そうです。もともと古事記・日本書紀は編集された(改変された)神話でした。大洪水以前が削られていたとみなせば ピタリ収まるところに収まる、思わず手を打ちそうでした。
谷川さんは大洪水をカットした理由をこのように推測しています。.....記紀編ぼの目的は天皇家の起源と正当性を内外ともに知らしめることにあったのだから、大洪水の罪を皇室に負わせることはできなかった。そこで意図的に洪水に至る人間の罪と、それに対する神の罰が省略された。
おもしろいですね。この本には、こうした発見が随所に散りばめられています。谷川さんは「民俗学は神と人間と自然の交渉の学である」と述べられていました。社会的にいきわたった通説や常識をくつがえして、日本のなりたち、つながっている世界の成り立ち 宇宙の成り立ちの真実をさぐる新鋭気鋭の試みが待たれます。
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