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米国の農作物の安さの理由は、至れり尽くせりの輸出補助金にある。
例えば、「CCP」という輸出補助金は、市場価格の低下による差損を補填するタイプの補助金で、差損を補填することで、安価な農産物を輸出し続けることを可能にする ものです。1995年から2009年まで出された輸出補助金総額は、実に2452億ドル(22兆円)にも及び、この膨大な輸出補助金により、米国の農作物の安さを維持している。
「米国はTPPで輸出補助金が禁止になることを恐怖している!」リ農と島のありんくりんンクより転載します。
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JAが米国の農業団体と意見交換した記録を見ると、意外なことには、米国の農業団体はTPPに熱心とはいえません。モンサントなどは大乗り気なのに対して、いささか引いた対応をしています。 「ホント言うとやってほしくないんだよなぁ」といった感じです。その理由はすこぶる明瞭です。
米国は、今まで自由貿易の旗手のような顔をしながら、実はトリッキーな手を使っていました。それが輸出補助金というやつです。
あのてこのてを使って1995年から2009年まで出された輸出補助金総額は、実に2452億ドル(22兆円)。
これらは、米国が農業輸出の目玉としている、トウモロコシ、大豆、小麦、米、綿花に7割が投入され、それ以外にもピーナッツ、ソルダム、乳製品、キャノーラ(菜種)などにも支払われています。(資料1参照)
まさに日本と縁が深い作物ばかりです。残念ながら、米国産トウモロコシがなければ日本畜産は明日にも壊滅しますし、大豆がなければ醤油、味噌ができず、小麦がなければパンもケーキも焼けなくなります。
これだけ偏ったシフトになっているので、米国の作柄に毎年日本の食卓は左右されることになりまます。もちろんリスク分散は考えてはいるのですが、なにせ安い。そして大量に確保できるというメリットのために米国に対する穀物一極依存はなかなか改まりません。
安さの原因は輸出補助金なのですが、農作物に特有の天候異変で市場価格が上がったり下がったりすることで農業収益が低下することを防ぐ意味合いがあります。いわばセーフティ・ネットです。
これには5種類の補助金枠があります。
①直接支払制度(Direct Payments)・・・土地の価値を評価に対して農業者に直接支払らわれるタイプの補助金。年間約50億ドル。
②CCP(Counter Cyclical Payments) ・・・うまい訳語が見当たりませんが、市場価格の低下による差損を補填するタイプの支払い。差損を補填することで、安価な農産物を輸出し続けることができるために、WTOで禁止されている輸出補助金に相当するとして国外からの強い批判を浴び続けている。
③マーケティング・ローンの提供・・・農産物の販売のための農業ローンを提供しLDP(ローン不足払い)になった場合に差額を政府が補てんする仕組み。
④ACRE(Average Crop Revenue Election Program) ・・・08年に登場した補助金枠で、価格、低収量収入の最低保証をする補助金。トウモロコシ、大豆生産者の全部が加盟していると言われる。
⑤作物保険 作物保険加入にあたっての政府補助金 ・・・農業共済加入に対して与えられる補助金枠。
至れり尽くせりですな。補助金漬けと揶揄されている日本の農業補助金など可愛らしいものです。おそらくTPP交渉では間違いなく日本が言わずともオーストラリアやNZあたりからの猛攻撃に合うことは避けられないでしょうね。
特に②のCCPはひどい。もしこれが日本のコメならば、天候不順で収量が低下したり、品質が悪いために市場価格が下がったら、その差損を政府が埋めてくれるということになります。
日本のコメは世界に冠たる高関税がありますが、これがあまりにも見え透いてバッシングの対象になりやすいのに対して、さすがは自由貿易の旗手、やることがまことに卑怯というか、シブイ。
実は米国の穀物は、熱波や洪水で年がら年中作柄が変化しています。こうまでよくやられるのを見ていると、米国農地や治水は相当にダメになっている なぁ、というのが私の感想です。
化学肥料と農薬一本で突っ走ってきた世界の穀倉は、間違いなく疲弊しきっている ように見えます。これによる作柄変動に税金をぶっ込んでやっとのことで安定した輸出を続けているというのが米国農業ではないでしょうか。
ですから今や、外すに外せない竹馬と化してしまっているのが輸出補助金制度なのです。
以上