南斗屋のブログ

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弁護士の懲戒事例〜2021年7月号から

2021年07月22日 | 法律事務所(弁護士)の経営
(はじめに)
日弁連の会誌「自由と正義」には、懲戒処分の公告が掲載されます。弁護士の懲戒処分には、戒告、業務停止、退会命令、除名の4つがあります(弁護士法57条1項)。
2021年7月号掲載分から、気になったものを紹介します。この号には7件の懲戒処分の公告が掲載されていますが、いずれも処分は戒告でした。

(義務的研修を受講せず)
事例1 2015年に受けなければならなかった研修を受けなかった。弁護士会の会長が2017年3月に勧告、2018年及び2019年に命令を行ったが、それでも研修を受講しなった。⇒戒告
【感想】
 義務研修を受講しないことを理由とする戒告です。弁護士は概ね5年に1回、弁護士倫理に関する研修を受けなければならないことになっています。2021年6月号でも同様の事案を紹介しましたが、7月号でも1件掲載されていました。

(着手金返還に伴うトラブル)
着手金の返還に伴うトラブルで懲戒となった事例が2件ありました。
事例2 ある事件を受任し、着手金5万4000円を弁護士は受領した。3か月後に委任契約が解除となったので、弁護士は依頼者との間で1万円(相談料)を控除し、残金4万4000円を返還する約束をしたが、依頼者から返金要求をされても、懲戒の判断の見通しがつくまで返金をしなかった。
⇒戒告

事例3 ある訴訟事件を受任した弁護士が、依頼者からメールで辞任を求められ、着手金から10万円を差し引いた金額の請求を依頼者から受けていた。弁護士は、実名のツイッターアカウントから「死ね」「殺される」等の表現を用いたツイートを発信した。
⇒戒告
【感想】
 いずれも依頼者から途中で委任契約の解除を求められたケースです。
 委任契約は、いつでも解約できるのが原則ですから、解約を求められたら、金員の精算を行って終了とすればよいはずですが、着手金の一部を返さなかったり、ツイッターで不適切な発言をしてしまったことで懲戒とされています。
 なお、事例3では、「正規の金が払えない言うなら法テラスにいきなさい」というツイートも処分の理由の要旨に記載されていることからすると、ここには「死ね」や「殺される」という言葉は入っていませんが、不適切なツイートであると認定されたのではないかと思います。

(委任契約書作成せず)
委任契約書を作成しなかったことでの懲戒事例がありました。
事例4 Aの財産について管理の依頼をその子Bから受けたが、Aは事理弁識能力にかける状況にあったのに、A本人の意思を十分に確認せず、また、委任契約書を作成しなかった。
⇒戒告
【感想】
 弁護士は、事件を受任するに当たり、弁護士報酬に関する事項を含む委任契約書を作成しなければなりません(弁護士職務基本規程30条1項)。同条には、例外事由も規定されていますが、例外事由がない限り、委任契約書を作成することは弁護士の義務です。
 当たり前のことなのですが、まだまだ順守されていない弁護士がいるようです。



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