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疫病流行る・文政12年7月中旬・色川三中「家事志」

2024年07月22日 | 色川三中
疫病流行る・文政12年7月中旬・色川三中「家事志」

土浦市史史料『家事志 色川三中日記』の一部を現代語訳(大意)したものです。
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文政12年7月11日(1829年)
〈盆棚についてのお触れ〉
・盆棚は手近なところに作り、一灯提灯や灯籠を灯すことも、軒近いところではいけない
・ 子供たちには、小提灯などを持って灯すことは、絶対にさせない
町役人は昼夜、灰屋番は絶えず巡回し、火の元に注意する
#色川三中 #家事志
(コメント)
・盆棚(仏壇のお盆飾り)についてのお触れ。火事を心配しての諸注意が興味深い。軒近いところにするな、子どもたちに小提灯などを持って灯させるな、灰屋番は常時巡回、町役人も昼夜巡回等、徹底しています。やはりこの時代火事は怖い。
・「灰屋番」というのは、このお触れを見ると火元に注意する役のようですね。町役人が昼夜巡回なのに、灰屋番は常時巡回になっていますので。

【詳訳】
〈盆棚についてのお触れ〉
・例年のとおり、盆棚は手近なところに作ること。
・一灯提灯や灯籠を灯すことも、軒に近いところにしてはいけない。特に風が強いときは、早めに消すこと。
・香の火や灯明等についても注意が必要である。
・ 子供たちには、小提灯などを持って灯すことは、絶対にさせないようにすること。
右の通り周知徹底せよ。
町役人は昼夜、灰屋番は絶えず巡回し、火の元に注意すること。
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文政12年7月12日(1829年)晴
夕方、谷田部の佐助の町内の者が来た。「佐助の病状が悪化し、今晩にも命が尽きるかもしれない」とのこと。佐助の請人である新右衛門宅に佐助の証文を返した。
#色川三中 #家事志
(コメント)
谷田部の佐助は、谷田部の実家で病となり、状態はよくなかったのですが(7月6日条〜)、ついに危篤状態に。三中は、佐助が亡くなることを想定して、証文を返してしまっていますが、いくらなんでも早すぎでは…。


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文政12年7月13日(1829年)晴
七兵衛(従業員)が昼過ぎに茂木から馬で帰ってきた。瘧(マラリア)にかかったという。
佐助が死んだとの報は入らず。与兵衛も瘧にかかっている。利助は治った。従業員4人が病気で困った。今年は瘧がかなり多く、霍乱も多い。
#色川三中 #家事志
(コメント)
この時期、瘧(マラリア)や霍乱(コレラ等)が流行っています。従業員の七兵衛もマラリアに罹患。茂木は、現栃木県芳賀郡茂木町?でしょうか。従業員が次々に疫病にかかり、事業にも支障が出てきています。

〈その他の記事〉
・先日の江戸の大火の後、数日経った焼死者の遺体でも、親族が近づくと血が出て、焼け焦げた古い遺体でも湿り始めたという。これは事実であり、嘘ではないとのこと。
・先日、川口で水死者が2、3人でた。そのため、神龍寺和尚が川を施餓鬼した。多忙のため、詳細は省略する。

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文政12年7月14日(1829年)晴
昼過ぎに御奉行所の巡回あり。いつものように杖を持って角まで行く。御礼はなし。
#色川三中 #家事志
(コメント)
今日の記事はちょっとよく分かりません。御奉行所が町の状況を見るために巡回、それに町役人が同行することまでは分かるのですが、「杖を持って角まで行く」はよくわかりません。
杖が町役人の必須アイテムであることは、以前の記事(2月12日条)で出てきたのですが、それにどのようや意味がこめられているのでしょうか…。
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文政12年7月15日(1829年)曇
昼前に谷田部の徳左衛門(佐助の親)が来て、佐助は11日以降体調がやや良くなり、強い発作は起こっていないとのこと。徳左衛門は、わざわざその事だけ言いに来てくれた。酒を出して一緒に飲んだ。
#色川三中 #家事志
(コメント)
谷田部の佐助は病にかかって重篤な状態となり、12日にも命が尽きるかも…といわれておりましたが(7月12日条)、その後小康を保っています。そのことだけをいいに、佐助の父親が三中の元を訪れました(谷田部-土浦を往復するのは一日仕事です)。


〈その他の記事〉
・明後日(17日)に弟の金次郎を連れて鹿嶋へ売掛金の回収に行くことに決めたので、用意を始めた。
・昼に、菅間村の利助が来る。概ね体調回復したとのこと。何ということだろう。難治の病にかかった人が、今ここにいて、そのときには元気だった佐助の命は旦夕に迫っているのだから。
・祇園の夜、中町で騒ぎを起こした武士が、先日追放となった。中町町内にも科料が申し付けられた。今回、中町・東崎両町の町役人に町御奉行所様から、「このたび御上様(将軍)から御役義を仰せ付けられたのであるから、藩には綱紀を改めるようにと言ってある。町方も特に心がけて、御家中へ対して無礼がないよう、且つ風儀を悪くしないよう心懸けるように。また、このことは町役人から町民へも徹底せよ」との仰せがあった。
〈その他の記事のコメント〉
・土浦の祇園祭りは、先月(旧暦6月13日〜15日)に行われました。騒ぎを起こした武士がいたようで、追放刑となってしまいました。中町町内も科料となったのは、騒ぎとなってしまったことの責任を取らされているのでしょう。
土浦藩主土屋彦直(よしなお)はこのとき寺社奉行でしたので(文政11年11月1日条)、藩内の綱紀粛正に務めています。

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文政12年7月16日(1829年)晴或いは曇
・朝、大町の五頭玄仲老に谷田部佐助の様子を見に行ってもらうよう頼んだ(明日からは行商の為)。
・町組小頭の御用を勤めた後、名主の入江とのころに行き、明日の為に暇乞い。
#色川三中 #家事志
(コメント)
明日から三中は、弟と一緒に行商に出かけます。行商は1月(正月)と7月(お盆)に行っています。町役人に就任してからの行商は初めてです。この間は町役人の仕事ができませんので、名主に行商に行く挨拶(暇乞い)をしています。

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文政12年7月17日(1829年) 晴
〈行商出立〉
・残暑甚だし。弟の金次郎を連れて東方の得意先に行商に出発。嘉兵衛と利助は得意先の掛取り(売掛金回収)。利八は山口村の日向医師に掛取り。本日、安食の松金屋で泊り。
#色川三中 #家事志
(コメント)
・恒例の行商が始まりました。毎年行商は1月と7月。昨年の行商出立日も7月17日で、今回と同じ日です。初日の安食村(かすみがうら市安食)もルーティン。「松金屋」の名は初出かも。
土浦⇒安食

土浦市 to 安食の道祖神

土浦市 to 安食の道祖神


・安食村の出身者に水戸天狗党の三総裁の一人、竹内百太郎がいます。
竹内家はしょうゆ、酒の醸造、薬(神應丸)の販売を手がけていました。
百太郎は1831(天保2)年に同村で生まれ、青年期には水戸藩の藩校・弘道館で学ぶ。江戸で商売をする傍ら、北辰一刀流の千葉周作道場や西洋砲術家の佐久間象山にも師事。その後、天狗党に入り、党の筑波山挙兵に参加。藤田小四郎らとともに三総裁のひとりとなる。その後、天狗党は粛清され、百太郎も元治2年2月4日敦賀で処刑された。35歳。

〈その他の記事〉
・手野村(現土浦市手野町)の入口で老女に出会い、家に便りを頼んだ。
・有川のところで、六物新志、本草纂疏、遠西名物考の三冊につき話して時間を過ごす。東方では雷雨。
・残暑甚だしく、行き交う人々の臭いがとても不快である。遊女が多くの人と交わるのは、なんと辛いことだろうか、一般的に、人は初めて見る人には心を許せないものだ。女性は固く心を閉ざし、変化を嫌う性であるが、習慣によって変化していくものなので、何とも思わなくなるのであろうか。


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文政12年7月18日(1829年)巽(南東)の風、時折り雨。
〈行商中〉
(安食を出て)夕方に高浜に到着。大雨と暴風の恐ろしい状況で、この日は暮れた。
#色川三中 #家事志
(コメント)
行商2日目。一泊目安食(現かすみがうら市安食)⇒二泊目高浜(現石岡市高浜)。このルートも昨年と同じです。今日の天気は、大雨と暴風であり、行商も大変だったことでしょう。
安食⇒高浜

安食の道祖神 to 高浜

安食の道祖神 to 高浜



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文政12年7月19日(1829年)晴
〈行商中〉
(高浜を出立し)玉造泊
#色川三中 #家事志
(コメント)
行商3日目。高浜(現石岡市高浜)から玉造
へ(現かすみがうら市玉造)。これも昨年7月行商と同じです。
高浜⇒玉造

高浜 to 行方市役所玉造庁舎

高浜 to 行方市役所玉造庁舎



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文政12年7月20日(1829年)晴
〈行商中〉
(玉造に)滞留、銚子屋では馳走を出してくれた。
#色川三中 #家事志
(コメント)
行商4日目。玉造宿(現かすみがうら市玉造)に連泊(玉造連泊は昨年7月行商に同じ)。玉造周辺にお客さん(医師)が多く、連泊しないと回りきれないのでしょう。玉造の宿は銚子屋。2年前は「酒肴でる」との表現でしたが、今回の「馳走」と同趣旨でしょうか。

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