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婚姻費用を計算式で求めてみましょう

2018年04月04日 | 家事事件関係
【婚姻費用の計算式を知っておく意味】
婚姻費用は、婚姻費用の算定表というものが裁判所から発表されております。
東京家裁のホームページを見ると、「家庭裁判所において,養育費又は婚姻費用の算定をする際に参考として活用している資料です。」との説明がされておりますが、調停委員さんからは、「算定表で婚姻費用を決めるのが普通」などという説明がされることもあります。
それだけ実務上は大きな影響力のある算定表ですが、「4~6万円」「6~8万円」というように2万円刻みで表が作成されており、ピタリとした数字ではでません。
婚姻費用を1円単位で算定しても意味がないところもありますので、算定表で実務上も十分なのです。
ところが、審判などでは婚姻費用を計算式で出す裁判官もおります。
この計算式は、算定表の考え方を計算式で表したものなのですが。計算式の意味内容まで審判で細かく説明してはくれませんから、この点について解説をしてみましょう。
この計算式の考え方を覚えておくと、婚姻費用を1円単位で計算式で出すことができますので、表ではよくわからないとお考えの方にも役立つかもしれません。


【ケース】
以下のようなケースをもとに考えてみます。
夫婦と子ども1人(10歳)の家族で、妻が子どもを連れて別居して、夫に対して婚姻費用を請求する。
夫婦はいずれも会社員で、夫の給与収入は600万円、妻も600万円である。


【基礎収入を求める】
婚姻費用の計算は、給与収入から「基礎収入」というものを求めることから始まります。
この基礎収入というのは、 「婚姻費用や養育費を捻出する基礎となる収入」のことをいいます。
つまり、給与の中に「基礎収入」に当たる部分とそうでないものがあって、基礎収入」に当たる部分は婚姻費用に振り向けてくださいという意味です。
基礎収入以外の部分とは何かというと、「公租公課」、「職業費」および「特別経費」であると説明されています。
これを一つ一つ説明していくと煩瑣ですので、「税金とか仕事をしていくために必要な費用(被服費、交通費、 交際費)とかその他いろいろ生きていく上で支払わなければならないものを差し引くことは認めますよ」ということだと理解していただければよいのではないかと思います。
人によって生活スタイルが違うので、この差し引くべき金額は人それぞれで違うはずですが、そのようなことをやっていては計算ができませんので、「基礎収入の割合表」というものを利用するほかありません。
つまり、給与収入の一定割合を計算して基礎収入とするという考え方です。
この割合を4割として計算するものが多いようです。
そうすると、先ほどのケースでは基礎収入は次のように計算します。

1 給与収入
夫・・・600万円
妻・・・600万円
2 基礎収入の算定
給与収入が600万円、基礎収入の割合を4割として計算します。
夫=600万円×40%=240万円
妻=600万円×40%=240万円
夫婦合計で基礎収入は480万円となり、これが婚姻費用にあてるべき金額となります。
(写真の下に記事続きます)


(写真は本文と関係ありません)

【生活指数を使って基礎収入を振り分ける】
次に、この480万円をどうやって振り分けるのかということが問題となります。
一番わかりやすいのは、人数割りですね。
夫は一人で暮らし、妻は子どもとの二人暮らし。
よって、夫には3分の1、妻には3分の2というのが一つの考え方です。

しかし、その考え方で妥当でしょうか?
この考え方の前提は、子どもと妻とは同じ生活費がかかるということになりますが、子どもと成人とでは同じ生活費ということはないですよね。
とすると、この考え方で行くと夫側に負担が重くなってしまいます。
そこで、子どもの生活費が親と比較してどのくらいかかるのかという考え方をします。
これが「生活指数」と言われるものです。
裁判所が用いている生活指数は次のようなものです。

親の生活費=100
14歳までの子の生活費=55
14歳以上の子の生活費=90

これは、14歳までの子の生活費は成人の55%、14歳以上の子の生活費は成人の90%ということを意味します。
そうすると、事例での生活指数は次のようになります。

3 生活指数
妻側=155(100+55) ・・・①
夫側=100・・・②

この生活指数を使って夫婦の合計の基礎収入(480万円)を振り分けます。

4 妻が生活費として確保できる金額の算定
480万円×①/(①+②)=480万円×155/255=291万7647円・・・③
←この金額が妻が生活費として確保できる金額となります(年額)。

5 妻に支払われるべき金額
妻の基礎収入は240万円なので、夫から妻に支払われるべき金額は③から240万円を引きます。
291万7647円ー240万円=51万7647円(年額)
⇒月額とすると4万3137円

婚姻費用の計算の基本的な考え方はこのようなものになります。
この計算方法を知っておくと、婚姻費用や養育費というのがどのような考えに基いて決められているのかを理解することができます。
実際には、今回のケースのようにシンプルなものは算定表を使っても、結論はほぼ一緒になるのでこのような計算をするメリットはあまりありませんが、算定表では算定できないケース(例えば子どもが4人の場合)については計算を使って算定していかなければなりません。


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