南斗屋のブログ

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準高次脳機能障害

2008年03月12日 | 高次脳機能障害
前回、脳外傷による高次脳機能障害と認定される為には、画像所見が必要であるとする東京高裁判決(平成20年1月24日判決自保ジャーナル1724号)を紹介しました。

この東京高裁判決、結論としては被害者が高次脳機能障害であることを否定しているのですが、今後高次脳機能障害を認定する上で重要なヒントを残してくれています。

それは「準高次脳機能障害」と呼ぶべきものです。

東京高裁判決は、この内容を明確に言い切っているわけではありませんが、私なりにこの判決から読み取れる準高次脳機能障害の内容は次のとおりです。

①事故の当初から、典型的な脳外傷による高次脳機能障害で生じるような認知障害等の症状がある
②認知障害等について、裏付けられるような所見が存在する(東京高裁の判決では、拡散テンソル画像の異常や脳の血流低下、機能低下といった所見が存在していました)。
③症状が改善する傾向にあるのが高次脳機能障害なので、神経心理学検査が増悪傾向にある場合は、準高次脳機能障害は否定する方向に考える

このような考えのもとに東京高裁判決は「脳外傷による高次脳機能障害に準ずるものとしての後遺障害」を考えているようです。
このような「準高次脳機能障害」という考え方自体が妥当なのか、妥当であるとしてその内容が東京高裁判決の内容でよいのかは、これから議論すべきところではないかと思います。
被害者の方にとって、最も気をつけなければならないポイントは①のところでも書いた「事故の当初から」というところです。
東京高裁判決のケースでは
・被害者がもの覚えが悪くなったと言っているのは、事故から2年8ヶ月後である。
・脳血流低下等の検査は、事故から7年以上も経過して後のことである
として、事故と症状との因果関係を否定しています。

疑わしい症状が存在したならば、それをしっかり証拠に残すということ、具体的には病院を受診してカルテに症状を記載してもらい、検査を受けるということが必要になります。


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