南斗屋のブログ

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高次脳機能障害の認定~東京高裁判決から

2008年03月10日 | 高次脳機能障害
高次脳機能障害の知識が広がりを見せてきており、裁判例でも高次脳機能障害の裁判例が増えてきました。

高次脳機能障害の症状というものは多彩です。
例えば、記憶・記銘力障害、集中力障害、遂行機能障害、判断力低下、病識欠落などという認知障害といわれるものが、高次脳機能障害では生じると、どの本でも書かれていますが、ほかの病気でもこのような症状が生じることがあります。

ですから、これらの症状にあたるからといって、高次脳機能障害とはすぐには言えないわけです。

では、どうやって高次脳機能障害か否かを裁判所が認定するかといいますと、重要なポイントとしては
①事故後からおこったものであるか、事故後継続しているものであるか
②意識障害が一定期間継続していたか
③CT、MRI等の画像所見が認められるか
といったところがあげられています。

③の「CT、MRI等の画像所見」については、CTかMRIで「脳室拡大、脳萎縮又は器質的な脳損傷について画像資料が認められることが必要」という裁判例が出ました。
(東京高裁平成20年1月24日判決自保ジャーナル1724号)。
ここに「器質的な脳損傷」とあるのは、脳挫傷や、頭蓋内血腫などのことをいうようです。

つまり、東京高裁判決では、画像所見として
・脳室拡大がある
・脳萎縮がある
・脳挫傷痕や頭蓋内血腫があったこと
のどれかが必要といっているのです。

画像の検査としては、脳血流検査(SPECT)などもありますが、東京高裁判決は
"SPECTで血流低下が認められれば、脳に機能的な低下があることになる。
しかし、脳の一局部で血流が低下したからといっても、それは脳の気質的変化とは限らない。
なぜなら、うつ状態であっても機能低下というのは生じるからだ。"
という内容の判断をしています。(内容を私なりに要約しました)

その他T2スター画像や、拡散テンソルMRIについても、東京高裁判決は触れていますが、この点については割愛します。

このようなCTやMRIの画像の重要性については、平成19年2月の自賠報告書でも指摘されていましたが、東京高裁レベルでもこの報告の結論が認められたことに意義があると思います。


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