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自治体が固定資産税を取り過ぎたときの返金の根拠

2022年09月05日 | 地方自治体と法律

(固定資産税の課税ミスの例)
固定資産税の課税ミスは、年間相応の件数が新聞にも掲載されています。
最近のものだけでも次のようなものがありました。
・北上市(岩手県) 固定資産税の課税ミスで1991年度までさかのぼり還付へ(8月19日付朝日新聞デジタル)
・小浜市(福井県) 29年にもわたり固定資産税課税ミス(7月29日付NHKニュースウェブ)
・川越市(埼玉県) 固定資産税課税ミスで18人から税金過徴収(5月25日付埼玉新聞)
 固定資産税を過徴収してしまった場合、過徴収分を返金するのはどのような根拠に基づいているのか見てみましょう。

(地方税法による還付)
 5年以内については、地方税法により還付が可能ですので、還付の手続での返還となります。(地方税法17条の5 )。

(過誤納金が5年よりも前の場合)
 この場合は地方税法による還付ができません。還付は5年以内のものに限られるからです。
 自治体に過失があれば、国家賠償法による損害賠償請求が可能です。
 もっとも、住民にとっても自治体にとっても損害賠償請求で処理をするのは、手間も暇もかかります。
 住民側としては損害賠償請求をする資料を揃えたり、交渉したりしなければなりません。
 自治体にとっても同様の手間がかかる上に、損害賠償の金額を定めるのは議会の議決事項となるのが原則ですから(地方自治法96条1項13号)、これまた手続きが重くなります。
 そのため、「固定資産税等返還金支払要綱」というような要綱を定めて返還金を支払う自治体があります。
 
(返還金支払要綱の概要)
 固定資産税等の返還金支払要綱は、自治体によって内容が多少異なります。
 要綱の名前自体「返還金支払要綱」だったり、「過誤納金償還金支払要綱」だったり、「過誤納金補てん金支払取扱要綱」だったりしますが、ここでは木更津市(千葉県)の固定資産税等返還金支払要綱によって概要をみておきます。
 返還金の支払を受けることができる者(返還金支払対象者)は、還付不能額に係る固定資産税等を納付した者です(要綱3条)。地方税法で還付を受けることができない場合に限って、この要綱を適用し返還金を支払うことになります。
 支出の根拠については、「市長は、返還金を地方自治法232条の2の規定により支出する。」という規定が置かれています(要綱2条)。地方自治法232条の2というのは、「普通地方公共団体は、その公益上必要がある場合においては、寄附又は補助をすることができる。」という規定ですから、法律上の性質としては「贈与」であるということです。法的な性格は、損害賠償に対する支払ではなく、贈与であるということが特徴で、このような規定は各自治体だいたい共通しているのではないかと思います。
 木更津市では、「還付不能額の算定対象年度は、還付不能となる年度以前15年度を限度とする。」としています(要綱4条2項)。何年前まで遡って支払うかについても、各自治体によってばらつきがみられます。損害賠償の場合は、民法改正前ですと20年前まで遡れるのですが、固定資産税支払いの文書の保存期間の問題もあるので、各自治体によってばらつきがでるのかと思います。
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