読書日記 嘉壽家堂 アネックス

読んだ本の感想を中心に、ひごろ思っていることをあれこれと綴っています。

邪馬台 北森鴻・浅野里沙子 新潮文庫

2014-03-09 23:09:34 | 読んだ
北森鴻の「蓮杖那智シリーズ」である。
小説新潮に「鏡連殺」として連載されていたが、連載途中の2010年に亡くなってしまった。

あの時は本当に残念だった。
これからという時だった。

本書は、その途中の部分から北森の公私にわたるパートナーだった浅野里沙子書き継いで完成させたものである。
ほぼ三分の一が浅野の受け持った部分である。

ということから、私としても心残りがあった作品で、それが完成されたということで、大いに期待をして読んだのであった。

北森鴻の作品群における私の好きな主人公は、本作の「蓮杖那智」、旗師・冬狐堂シリーズの「宇佐見陶子」、香菜里屋シリーズのマスター、それから佐月恭壱、雅蘭堂・越名集治といるが、今回の『邪馬台』では、蓮杖那智、宇佐美陶子、越名集治が登場する。
そして、物語は冬狐堂シリーズの「狐闇」の続きでもあるようだし「暁の密使」も参考になっていて、邪馬台国の謎に迫っている。
更に「阿久仁村遺聞」という本当にあるかのような古文書が、いわゆる「狂言回し」のようになっている。

邪馬台国の謎といえば、これまでは「魏志倭人伝」をどう読み解くか?というところで論じられていてたが、本書は蓮杖那智シリーズであるからして「民俗学」の見地から考える。
そうすると今まででは考えられない結論が登場する。
これは「スゴイ」と思った。

物語は邪馬台国の謎ばかりではなく、阿久仁村遺聞を巡っての明治期からの大きな陰謀、そして現代のおける殺人事件の謎が絡む。
したがって、よく整理しないと、何がどうかかわっているのか、だからどうなのか、ということが分からなくなる。

私も読みながら時々いらいらしていた。
というくらい壮大な構想に基づくものである。

著者が生涯のテーマとしていたような「暁の密使」にかかわることと「邪馬台国」を組み合わせて、さらに自分の著作の主人公たちを集めて作った物語、ということを感じると、なんだか著者自身が「遺作」ということを念頭に書いていたのではないか、思わされる。

そして、これでもう蓮杖那智や宇佐美陶子にもう会えなくなるのかと思うと、ものすごく残念で悲しいのである。

ちなみに、今まで読んだ邪馬台国の謎を巡る物語の中では、一番納得のいくものであった。

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