尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

佐藤純彌、プレヴィン、ブルーノ・ガンツ等-2019年2月の訃報②

2019年03月18日 22時25分28秒 | 追悼
 2019年2月の訃報、2回目は映画関係者を中心にアート系にしぼって。まず映画監督の佐藤純彌。1932~2019.2.9、86歳。大作映画の監督として知られ角川映画で超大ヒットした「人間の証明」「野生の証明」を作った。しかし、最高傑作と言えるのは「新幹線大爆破」(1975)だろう。高倉健の新しい魅力を引き出し、脚本の面白さも光った。ただ今見るとアイディアは生きてるけど、人物像がちょっと古く犯人側のミスが多い。当初は評価されず、海外版がフランスで評価されたのは有名。次の「君よ、憤怒の河を渉れ」(1976)が文革後の中国で初の外国映画として大ヒットした。冤罪を自ら晴らそうと奔走する高倉健に中国人が共感したことが大きい。その後に日中合作で「未完の対局」(1982)を作ったが、これは日中戦争を正面から描いた良心的な佳作で感動した。 
 (佐藤純彌)
 同時代にそういう大作映画の監督として知っていたわけだが、むしろ思い出は別にある。東大文学部時代の演劇活動を、学生時代に一緒にやっていた故・前田愛先生(都市論などを取り入れた文学評論で名高かった)から時々聞くことがあったのである。あまり真剣に見てなかった監督だが、いろいろ大変なんだなと思った記憶がある。その頃、池袋の文芸地下でデビュー作の「陸軍残虐物語」(1963)を見たら、これがなかなか良かった。その後の大作はあまり見てないんだけど、「おろしや国酔夢譚」や「男たちの大和/YAMATO」を見てまあ悪くはなかった。

 最後はクラシックの大指揮者という印象が強くなったアンドレ・プレヴィン。2.28日死去、89歳。昔はジャズ・ピアニストや映画音楽で知られていた。それより、僕はこの人の名前を知ったのは、ミア・ファローの夫としてだった。ミア・ファロー(1945~)は、「ローズマリーの赤ちゃん」でブレイクし、その後「ジョンとメリー」「フォロー・ミー」「華麗なるギャツビー」などで、その線の細そうな感じがけっこう好みだった。実生活では、1966年~68年にフランク・シナトラ(29歳差)、1970年~79年にアンドレ・プレヴィン(子ども3人)、80年代から90年代にかけてウッディ・アレン(子ども一人、正式結婚はせず)と、ミア・ファローを通してアメリカ戦後文化史を書けるぐらいなのである。
 (プレヴィン)
 アンドレ・プレヴィンはまるでフランス人みたいな名前だが、実はドイツ生まれのユダヤ系。本名はアンドレアスである。1938年に家族とともにアメリカに移住した。早くからジャズ・ピアニストで知られ、その後ミュージカル映画の編集者として活躍した。その頃はアカデミー賞の作曲賞が劇映画部門とミュージカル部門に分かれていて、プレヴィンは「恋の手ほどき」「ボギーとべス」「あなただけ今晩は」「マイ・フェア・レディ」と4回も受賞している。60年代後半からクラシック音楽の指揮者としての活動が多くなり、世界各地のオケで指揮し、非常に多くの録音を残している。僕はそこらへんは聴いてないので評価できないが、N響首席客演指揮者もして日本との縁も深かった。

 ミュージカル映画を中心に多数の映画を監督したスタンリー・ドーネンが死去。2月21日死去、94歳。まだ存命だったのかと思ったが、もともとはMGMの振付師でジーン・ケリーの助手だった。ケリーとともに「踊る大紐育」「雨に唄えば」の監督にクレジットされた。これがドーネンの生涯の財産となった。その後単独で監督するようになり、「パリの恋人」「シャレード」「いつも二人で」などオードリー・ヘプバーン主演のオシャレな映画を残した。
 (スタンリー・ドーネン)
 ドイツじゃなくってスイスの俳優だったブルーノ・ガンツが死去、2月15か16に死去、77歳。死亡日は諸説あり、メディアにより違う。てっきりドイツ人だと思ってたら、スイス人だったのに驚いた。「ベルリン・天使の詩」で世界的に知られた。そして「ヒトラー 最期の12日間」でヒトラー役を演じて驚かせた。他にもいっぱい出ているけれど、誰でもまず思い出すのはこの2作品になる。意外なことに受賞歴がないんだけど、名優だった。
 (ブルーノ・ガンツ)
 イギリスの俳優、アルバート・フィニーが8日、死去、82歳。もともとイギリスの舞台俳優でローレンス・オリヴィエとも共演していた。60年代から英米の映画に出演、アカデミー賞に5回ノミネートされたが受賞はしなかった。「トム・ジョーンズの華麗なる冒険」「ドレッサー」「火山の下で」などで、今ではなかなか見る機会がない。その中で僕が一番思い出すのは、やはりアカデミー賞主演男優賞にノミネートされた「オリエント急行殺人事件」(1974)のポワロ役。イングリッド・バーグマンが助演女優賞を受賞した映画。その他21世紀になっても多くの映画に出ている。今回初めて知ったんだっただけど、フランス人の女優、「男と女」のアヌーク・エーメと2度結婚している。
 (アルバート・フィニー)
・女優の佐々木すみ江が死去、90歳。死亡日時未公表。
・放送作家の大濱徹也が4日死去、86歳。「8時だよ!全員集合」「夢であいましょう」「小沢昭一の小沢昭一的こころ」などの構成を手掛けた人。
・落語家の笑福亭松之助が22日死去、93歳。上方落語の最長老で、明石家さんまの師匠。
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