尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

ベッケンバウアー、中岡哲郎、西嶋勝彦他ー2024年1月の訃報②

2024年02月09日 22時43分14秒 | 追悼
 2024年1月の訃報特集2回目。ドイツ(旧西ドイツ)のサッカー選手、監督のフランツ・ベッケンバウアーが1月7日死去、78歳。「皇帝」(カイザー)と呼ばれたサッカー界の巨人で、訃報は日本でも大きく報じられた。1974年ワールドカップ西ドイツ大会で主将を務めて優勝した。その後代表監督となり、1986年は準優勝、1990年ワールドカップイタリア大会では優勝した。選手、監督双方で優勝を経験したのは二人目とされる。守備選手でありながらボールを奪ったら攻め上がる「リベロ」のポジションを確立させた。近年マラドーナ、ペレなど伝説的サッカー選手が次々と亡くなっているのは残念。日本でも知名度が高く、名前にちなんで「別件バウアーですが」などという表現があったぐらいである。
(ベッケンバウアー)
 技術史家の中岡哲郎が6日死去、95歳。大阪市立大学名誉教授。活躍していた時代には相当の知名度があったと思うが、訃報は非常に小さかった。言論活動をしていたのはネット時代以前なので、顔写真が出て来ないぐらいである。『工場の哲学』『技術文明の光と影』『日本近代技術の形成』など一般向け著作多数がある。現代の工業化社会に警鐘を鳴らす人だったと思うけど、読んでないからよく知らない。研究者の訃報をまとめると、マルクス経済学者の大内秀明が9日死去、91歳。東北大名誉教授。宇野弘蔵やマルクスに関する多くの著作があるが、最晩年には宮澤賢治やウィリアム・モリスを論じていた。ドイツ文学者の谷川道子が9日死去、77歳。東京外国語大学名誉教授。ドイツ現代演劇が専門で、ブレヒトやハイナー・ミュラーの著作を多く翻訳している。
(中岡哲郎著『近代日本技術の形成』)
 弁護士から2人。袴田事件再審弁護団長西嶋勝彦が9日死去、82歳。この人の生涯を調べると、若くして加わった八海事件に始まり、仁保事件、徳島ラジオ商事件、島田事件など戦後を代表する冤罪事件の弁護に加わってきた。島田事件が再審無罪を勝ち取った後に袴田事件に加わり、94年から弁護団長を務めていた。もうすぐ終わる前に亡くなるのは無念だろう。もう一人、山本博弁護士が17日死去、92歳。この人は弁護士以上にワイン評論家として著名で、多くの著作がある。日本にワイン文化を定着させた最大の功労者。僕もワイン本で名前を記憶している。本職は戦後を代表する労働弁護士で、何しろ砂川事件弁護団に始まり全逓中郵事件など戦後の代表的労働事件を担当した。日本労働弁護団名誉会長。そして21世紀には主に翻訳家として活動、エド・マクベインやロバート・B・パーカーなどハードボイルドの翻訳をしていた。それも名前を見たことがあるが、同一人物とは知らなかった。
(西嶋勝彦)(山本博)
 アマスポーツ界の「ドン」が二人亡くなった。田中英寿が13日死去、77歳。青森県出身で早くから相撲で活躍。日大に入学して、69、70、74年と3度アマチュア横綱になった。プロ入りしたら大関は間違いないと言われたが、アマを続けて80年に現役引退、83年から日大相撲部監督となった。高見盛、舞の海、遠藤など多くの人気力士を育てた人である。国際相撲連盟会長、日本オリンピック委員会理事、副会長も務めたが、2005年に「週刊文春」に暴力団との交際が報じられ辞任した。ところでこの人を皆が覚えているのは、2008年から21年まで日大理事長を務めていたからだ。そして数々のスキャンダルが報道され脱税で逮捕、起訴された。元日本ボクシング連盟会長の山根明が31日に死去、84歳。奈良県をボクシング王国と呼ばれるまでに育て、2011年ボクシング連盟会長となり、翌年に終身会長となった。二人は交友があり、2018年4月に山根が日大客員教授になっている。しかし、田中に先立ち、2018年に多くの不祥事が告発され年末に連盟から除名された。二人ともさすがの「面構え」がテレビ映えしていた。
(田中英寿)(山根明)
 財界では、元アサヒビール会長の福地茂雄が29日死去、89歳。99年に社長、2002年から2006年まで会長を務めた。しかしこの人が知られているのは、本業以上に2008年から11年に第19代NHK会長になったからだ。当時の古森経営委員長と親しく、就任には反対意見も強かった。元リコー社長で経済同友会代表幹事を2007年から2011年に務めた桜井正光が24日死去、82歳。リコーで初の技術系出身社長で、11年間務めて業績を大きく伸ばした。今調べたら都立墨田川高校出身だった。

 昨日の書き忘れだが、作家の利根川裕(とねがわ・ゆたか)が29日死去、96歳。『宴』(1966)が評判となった他、映画化された『喜屋武マリーの青春』(1986)など著書多数。またテレビ朝日の深夜番組『トゥナイト』の司会を1980年から94年まで務めた。経済評論家の山崎元が1日死去、65歳。個人投資家向けの判りやすい本を多数書いた。保守系では日本会議会長を務めた田久保忠衛が9日死去、90歳。時事通信外信部長などを歴任。他に大きく騒がれた訃報に、漫画家の芦原妃名子(25日死去、50歳)と「桐島聡容疑者を名乗る人物」(29日死去)の訃報があるが、今はよく判らないので書かないでおきたい。

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