尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

『和田誠 映画の仕事』展と静嘉堂文庫美術館

2024年01月07日 22時21分35秒 | アート
 国立映画アーカイブで、ネオレアリズモの傑作『自転車泥棒』(ヴィットリオ・デ・シーカ監督)の修復版を見た。前に見ているが、ロケ映像が見事に蘇って見ごたえがあった。今回はその話ではなく、その後で7階の展示室に行って『和田誠 映画の仕事』を見たので、そっちを。和田誠さんのことは、亡くなった時の追悼(『和田誠さんを追悼して』)や大規模な和田誠展(『和田誠展を見に行く』)など、今まで何度も書いてきた。若い頃から見たり読んだりして影響を受けてきた。
(絵は『巴里のアメリカ人』)
 以前まだ「フィルムセンター」だった頃、そこで開かれた『ポスターでみる映画史Part 2 ミュージカル映画の世界』展では、和田氏所蔵のポスターが多数展示された。和田さん自身が解説するのも聞きに行ったが、調べてみると2015年3月14日のことである。ポスターを解説して回る和田さんの姿が目に浮かぶが、もう亡くなってしまった。さて、今回は『映画の仕事』と題されている。いろいろと展示されているが、主に2つ。一つは営々と描き続けた映画のポスターである。これは日活名画座などで描いた主にアメリカ映画のポスターと、『台風クラブ』や『二十世紀少年読本』などの日本映画の公開用のポスターである。
(チラシ裏面)
 なんと言っても楽しいのは、昔の映画のポスターだ。新宿の日活名画座で無償で描いていたもので、前に見てるものも多いけどとても楽しい。元の映画や映画スターを知ってるほど楽しめる。デフォルメされていて、誰だろうという人も多いけど。それにしてもヨーロッパ映画はほとんどなく、アメリカ映画が圧倒的に多い。西部劇やミュージカルも多いわけだが、思い出を読むとビリー・ワイルダーの『サンセット大通り』と『アパートの鍵貸します』が大好きだったとある。ヨーロッパ巨匠のアートより、ハリウッドが一番元気だった頃の洒脱が好きなのは、和田誠の全仕事に通底するものがある。
(『和田誠 映画の仕事展』)
 もう一つは映画監督和田誠である。和田誠はついに映画監督に進出し、1984年に阿佐田哲也『麻雀放浪記』を完成させた。ちょうど多忙な時代で見逃してしまったが、後になって見たらこれが凄い傑作だった。今回小ホールで上映されるので、見てない人も、もう一回見たい人も是非。ポスターももちろん本人が描いてるが、それよりも絵コンテとか製作ニュースなど貴重なものが出ている。また1970年の羽仁進監督『恋の大冒険』の資料も貴重だ。これは監督作じゃないけど、タイトルだけじゃなくアニメを取り入れたり、脚本(山田宏一、渡辺武信)にも加わっているという。また、初のアニメ短編『MUEDER』が場内で映されている。ところで、最近『怖がる人々』『真夜中まで』の上映機会が少なく、今回もやらないのは残念。
  
 その後、国立映画アーカイブからお堀端まで歩いて、明治生命館静嘉堂文庫美術館にも行った。静嘉堂文庫は三菱の岩崎家の収集品を集めたところで、以前は世田谷区の奥の方にあった。一度行ったときのことは、『静嘉堂文庫と松浦武四郎展』に書いた。2022年に明治生命館に移転し、それからは初めて。明治生命館も重要文化財の建物だが、その横から美術館に入れるようになっている。今は「ハッピー龍イヤー!」と題して、今年の干支にちなんで龍が描かれた陶器や絵が展示されている。一部に古伊万里や日本画もあるけど、ほとんどが中国のもの(景徳鎮などの焼き物)である。それはまあ素晴らしいものばかりだが、あまり関心はない。
(展示物)(橋本雅邦の重文『龍虎図屏風』) 
 橋本雅邦の『龍虎図屏風』は1955年に近代絵画の中で初めて重要文化財に指定されたというだけあって、さすがに立派なものだった。しかし立派というなら、龍とは関係ないけどやはり目玉の「曜変天目」の素晴らしさである。前も見てるけど、飽きないものだ。ところで解説を見ていたら、中国には「龍」の字を二つ並べた字があり、それどころか三つ、さらに龍の字を4つ、二段組み×2個並べた字もあるとのこと。「龍」一字だって結構面倒なのに、それを四つも重ねるとは。一番画数が多い字らしい。ここは地下鉄千代田線二重橋前駅に直結していた。映画アーカイブ展示室はシニア無料、静嘉堂文庫美術館は株主招待券で入ったので、ただでアート気分。もっと歩くかと思ったら、家と駅の往復入れて9千歩ぐらいだったのが残念だった。

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