尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

和田誠展を見に行く

2021年12月16日 22時43分32秒 | アート
 10月9日から12月19日まで開催の「和田誠展」が大盛況である。場所は東京オペラシティ アートギャリー(京王線初台)。新国立劇場は何度も行ってるが、実はこっちは初めてである。いずれ見ようと思ってるうちに閉幕も近くなってしまった。15日に出掛けてきたが、待ち時間30分だった。最後の週末は1時間じゃ済まないだろう。しかし、これほど大々的に和田誠の業績を一覧出来る機会はしばらくないかもしれない。亡くなった時には「和田誠さんを追悼して」を書いた。本としては「銀座界隈ドキドキの日々」、また「村上春樹とイラストレーター展」でも和田誠のイラストについて書いている。

 今回は全面的に撮影可能だった。カメラは持っていなかったので、スマホで幾つか撮ることにした。和田誠はイラストレーター、グラフィックデザイナーとして仕事をした人だから、作品はほぼすべてが「複製芸術」である。今回はポスターや本の表紙などが主な展示なので、撮影可なんだろう。そういう作品にも当然ながら「原画」はあるわけだが、それらは展示されていない。(遺された原画の多くは出身の多摩美大に寄付されたはずだから、そのうち原画展も開催されるかもしれない。)映画「麻雀放浪記」の撮影台本なども出ているが、会場のほぼすべては壮大なポスター展示になっている。
(会場入口)
 タバコの「ハイライト」のパッケージで知られ、後には「週刊文春」の表紙を1977年5月12日号から務めた。(没後の現在も和田の作品を使用している。)だから全日本人が和田誠のイラストをそれと意識せずに何度となく見ているはずである。でも僕の場合は、映画雑誌キネマ旬報に連載された「お楽しみはこれからだ」で和田誠に最初に親しんだと思う。これは過去の名画(ほとんどがアメリカのミュージカルや西部劇などが多かった)の名セリフ集である。ビデオもない時代に記憶だけで書かれたもので、絵とともに軽妙洒脱なエッセイが楽しい。
 (「夜のマルグリット」)(「イエロー・サブマリン」)
 会場に入ると、もう似顔絵の氾濫。それも60年代頃の映画や音楽が多い。もういちいち細かく見なかったが、圧倒される。「イエロー・サブマリン」はビートルズが音楽を担当したアニメ映画で、その映画ポスターが上の最後の画像。
 (「チャップリンの独裁者」)
 若い時代に新宿にあった日活名画座のポスターを無償で描いていたのは有名な話。そのポスターがよくぞ残されていた。次の会場入口にずらっと展示されている。こんな名画が安く毎週見られたのである。「チャップリンの独裁者」の会のポスターが上の画像。なんと50円だったのに驚き。今の物価に直せば、どのくらいになるだろう。
(和田誠寄席)(文春表紙集)
 「和田誠寄席」というポスターもあった。これは和田誠の新作落語集らしい。柳家小三治、春風亭小朝、五街道雲助ら超豪華メンバーである。1979年にレコードになっているとウィキペディアに載っている。その当時だと、まだまだ皆若かったはず。よくぞこんなものをやったなあ。演者も若かったのに、メンバーが凄い。和田誠と小三治の追悼で、もう一回やって欲しいなあ。日活名画座の隣がずらっと一面「週刊文春表紙集」。まあ、ここはザッと見ながら通過する。
(「ガラスの動物園」)(「熱海殺人事件」)
 演劇のポスターもたくさんあった。60年代、70年代の演劇ポスターと言えば、つい横尾忠則や粟津潔の「アングラ演劇」を思い出してしまう。しかし、和田誠が手掛けたのは、紀伊國屋ホールで演じられるような公演である。テネシー・ウィリアムズの「ガラスの動物園」は絵が素晴らしい。つかこうへい「熱海殺人事件」もあったが、紀伊國屋ホールだから横内謙介が見た舞台かもしれないなとつい思ってしまう。(「ホテル・カリフォルニア」参照。)もっとも何度もやってるはずだから、判らない。こういうポスターというのは、月日は書いてあるが、何年のものかが判らないのである。
(紙屋町さくらホテル)(圓生と志ん生)(父と暮らせば)
 それよりも井上ひさしの公演ポスターが多い。ああ、これも見た、これも見たと思い出が蘇る。こまつ座のポスターは、こんなに和田誠が手掛けていたのだったか。実はほとんど意識していなかったのだが、井上ひさしの公演ポスターはきちんと再評価しないといけない。
(スタン・ゲッツ五重奏団)(ピンキーとキラーズ)
 音楽のポスターも多い。和田誠が大好きだったジャズからスタン・ゲッツ。もう一つ「ピンキーとキラーズ」は今回絵として一番ぐらいに気に入った。和田誠が監督した映画関係、表紙絵を描いた本の数々も、もちろん沢山展示されている。しかし、割と知ってるものが多いから、画像を撮るのも飽きてきたので撮影しなかった。「怪盗ジゴマ 音楽篇」(1988)という和田誠製作・監督・作曲のステキなアニメがあるが、自然とそのテーマ曲を口ずさんでしまう。何だかスキップしたくなってくる。まあ心の中でだけど。自分の中で見た映画や演劇なんかを思い出してきて、幸せな気分になってくる。そんな展覧会だった。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 助成金、立民2議員は「問題な... | トップ | 映画「ドント・ルック・アッ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

アート」カテゴリの最新記事