尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

「入管法改正」と外国人労働者問題①

2018年12月09日 21時18分27秒 |  〃  (安倍政権論)
 2018年12月8日(土)に「入管法」(出入国管理及び難民認定法)「改正」案が参議院本会議において賛成多数で可決された。この法案にはその中身の問題とともに、国会審議のあり方を問題視する批判も多かった。法案には今後政令で決める事項が多すぎ、「政府一任法案」と野党は批判した。法案のベースになるはずの「技能実習生」に関する調査データの「不備」も多く見つかった。
 (参議院法務委員会の「採決」)
 もっと審議を尽くすべきだとする野党を押し切って、上記のような採決が衆参両院で行われた。これは通常の言い方で「強行採決」だと思うが、菅官房長官は「強行」ではないとしている。野党である「日本維新の会」が採決に加わっているから、「与党が全野党を押し切って採決した場合」のみを指す(と勝手に意味を自分で狭めた)「強行採決」にはならないということらしい。「維新」は閣内に大臣を送っていないけど、「憲法改正」を含む安倍政権の政策に協力する代わりに、大阪に「万博」と「カジノ」がやってくるということなんだろう(と邪推している)。

 恐らくこの筋書きは相当前に決まっていた。もともと「外国人労働者政策の転換」は、6月15日に発表された「経済財政諮問会議」の「骨太の方針」で公表された。僕は当然の道筋として、そうなるだろうと思っていた。「復興」を掲げながら「東京五輪」を実施する以上、労働力不足が深刻になるのは判っている。2013年9月に東京五輪決定時に書いた「2020年東京五輪問題④」で、「外国資本と外国人労働者」によって対応するだろうと書いた。ずいぶん前から、やがて外国人労働力をもっと受け入れるしかないというコンセンサスは政府内で形成されていたはずだ。

 それにしてはずいぶん遅いじゃないか、内容も決まってないじゃないかと思うかもしれない。しかし、人出不足が一番深刻になる2019年に実施するためには、どうしたらいいか。「もっと議論を」となれば「外国人労働者の人権問題」がクローズアップされる。外国人労働者の人権に配慮したルールになれば、それは「外国人移民」だとして、安倍政権のコアな支持層が離反しかねない。また単に「使い捨て労働力」が欲しい経済界も反発する。よって、2018年秋の臨時国会で「スカスカの法案」を強行するしかない。今回だって、自民党総務会での承認は難航した。安倍政権としては、これ以上「中身のある法案」にはできないのである。

 「水道法」や「漁業法」の「改正」も成立した。今まで僕も安倍政権を「極右」政権だと批判してきた。「日本会議」に共鳴する議員が安倍政権では重用される。それは「保守」じゃなくて、外国基準では「極右」の「歴史修正主義」だと言ったと思う。そういう面も確かにあるけど、今回の臨時国会で成立した「改正」は、むしろ右翼民族派が反発してもおかしくないような内容である。安倍首相は政権復帰後の初の施政方針演説で「日本を 世界で一番企業が活躍しやすい国にする」と述べた。そっちが優先だったんだということである。

 安倍首相の党内基盤は右派にある。トランプ政権やプーチン政権との外交、天皇の代替わりなどを控えて、右派の反発を抑えるためには、慎重な手続きがいるだろう。しかし、「経済界」と「アメリカ」の要請は、最大限に重視する。これが安倍政権の本質だった。そう見ると、今後詰められる外国人労働者受け入れ政策の具体的方針も、大体想像できるというもんだ。一応家族を呼び寄せ定住も可能なようなシステムを作るけれど、それは可能な限り難しい資格となるだろう。「日本人と外国人を差別しない」かもしれないが、それは「日本人も切り捨て可能な派遣労働者にする」という意味なのだ。(続けてもう一回)
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