尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

大田区の東京都議補選結果を考える

2023年06月10日 22時17分20秒 |  〃  (選挙)
 6月4日に東京都議会の大田区選挙区補欠選挙が行われた。大田区では4月に区長選が行われ、都議2名が立候補して失職になった。大田区の都議の定数は7名だが、地方議会では欠員が2名以上出たときに補欠選挙を行う規定がある。ただ、区長選、区議選が終わったばかりだからか、投票率は25.35%と極端に低かった。普通なら都議補選など全国的な意味はないし、全都的意味も特にない。ただ、今回は衆院選近しの観測もある中、自民と公明の関係が東京で破綻した影響がどう出るかという問題があった。また「維新」「都民ファースト」も候補を立て、応援には各党幹部が訪れて選挙戦は過熱したという。
(結果)
 結果は上記画像のように、元職2人が当選した。区長選で落選した森愛(無所属=立民、共産支援)が4万8千票強でトップ。鈴木章浩が4万ほどで2位。続いて維新新人が3万票、都民ファースト新人が2万票ほどだった。有力候補4人の票はそんな感じだった。これは元職の知名度が高かったと考えられるが、「維新」も様々な問題が報道された影響があるのかもしれない。関西はともかく、低投票率の場合「維新」の名前だけでは当選出来ないということだろう。「都民ファースト」は小池知事が応援に入ったというが、もともと森愛が都民ファーストの都議だった影響もあっただろう。

 2021年に行われた前回都議選では、共産、維新、立民、自民、公明、都民、公明の順番で7人が当選していた。次点以下に、都民、自民、自民と並び、この落選した自民の上位が今回当選の鈴木章浩。当選した「都民」が森愛で、当選した自民の鈴木晶雅は現在の区長。落選した「都民」候補が今回も出た奥本有里で2万373票で次点だった。今回も2万710票で、ほとんど同じだった。立憲民主党で当選したのが、「筆談ホステス」として知られた斉藤里恵。前回の自民票を足すと、5万8千票強。共産+立民で6万票強。公明は2人合計で、4万8千票。維新は約3万票、森愛は2万5千票だった。前回投票率は43.6%。今回は4割以上減っ。
(当選した森、鈴木都議)
 公明党は前回衆院選(2021年)の比例区で、約4万2千票を獲得している。現職が2人いるので、今回はどこも支援しなかった。ところで、自公の関係は新たに増える選挙区の候補者擁立をめぐって悪化して、東京では関係断絶を宣言したばかり。公明は大阪4,兵庫2の6選挙区で、維新と協力してきた。ところが大阪で府議会、市議会ともに過半数を得た維新は「公明との関係は一度リセット」と言っている。もし維新が6選挙区に候補を立てたら、関西の公明は全滅しかねない。そこで水面下で東京で維新を支援する代わりに、関西6選挙区に維新は候補を立てないという裏取引があるのではないかと言われていた。

 そのため、自民内には大田区で公明が動いて自民が落選でもしたら、連立政権も解消だなどという声さえあった。公明が1万票でも維新に回していれば、トップ当選して自民落選である。この投票率を見れば、公明党はどこも支援せず公明支持層は棄権に回ったと考えるべきだろう。ただ、今回は2人当選だからいいけど、小選挙区の衆院選では公明の支援がないと自民候補は野党に競り負ける可能性がある。そのことを見せつける選挙結果になり、今回選挙の「見えない勝者」は公明党だったと言える。

 大田区では4月の区議選でも、自民候補が多数落選していた。次点以下には、自現、公新、自現、自現、共現、共現、政女新、国民新、共新、自新、自元、自新と並び、自民党が6人も落選したのである。特に現職候補を3人落としている。自民は13人が当選していいるものの、地盤沈下の傾向が見られる。公明、共産が落ちると注目されるが、足立区議選でも見られたように自民党の低落傾向もある。直近の衆参選挙の比例区を見ると、自民党は10万4千票ほどを取っている。今回の歩留まりは非常に悪いが、これは今回の候補が2014年の「都議会セクハラヤジ問題」を起こした人だということを有権者が覚えていて、浮動票が入らないのだろう。国政選挙はまた違ってくるが、自民党の足元も揺らいでいるということは、ちょっと気にしておいた方が良い。
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