尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

東京電力の責任問題①

2011年07月10日 23時14分20秒 |  〃 (原発)
 前にいずれ書くとしていた「東京電力」の責任問題をこの時点で簡単にまとめておきたい。なお、東電株主総会前後に、「東電経営陣」に経営責任があるということは書いておいた。経営者は利潤を出せない外部環境にあっても結果責任を負うが、それでも経営危機への対応、経営方針の見直しなどのスピード性や統率力などで評価を高める経営者もいっぱいいる。しかし、東電経営陣が原発事故への対応で見せたのは経営不在とも言える事態で、企業の信頼を大きく損なった。

 ところで法人としての「東京電力」そのものの責任に関しては、両方向からの議論がある。なお、「原子力損害の賠償に関する法律」(原賠法)でも、また一般的に公害等の企業責任を考えるときの「PPP」(汚染者負担原則=polluter-pays principle)から言っても、 事故被害賠償の責任がまず東京電力にあるのは間違いないので、それは考えるまでもない自明の前提として話を進める。

 議論の一つは、東電そのものに責任があり、もはや(何兆円にもなるという)賠償金を払えるメドはなく実質的には債務超過だからつぶしてしまえ、というものである。「東電が倒産して、誰が困るのか?」(佐高信、週刊金曜日7.8号)というのが代表的な言い方だが、その答えは原発事故被害者が困るのである。民主党政権は日航は法的整理したのに何故東電は救うのか?と言う人もいるが、本業で行き詰った日航と本業ではなく大事故で賠償責任を負うことで経営危機にある東電は全然事情が違う。会社が倒産すると、一般的には担保のある銀行等の融資や社員の給料などの労働債権が優先して保護される。一方債権者集会を開こうにも、被害は今も広がりつつあり損害賠償権を誰が持つのか今はっきりさせることはできない。これでは今法的整理に踏み込むと事故被害者が一方的に被害を受けかねない。

 100%減資して株主の責任をと言う人もいるが、これはおかしい。事故当日まで本業に大損失を予想する材料はなく、東電そのものの失態による事故ならともかく大地震による大損害を株主だけが引き受ける意味がわからない。東京都だけで現在の株価でも10億円以上の価値がある。所有している自治体も多いし一方的に減資されても困る。多くの人に関わってくる。そういうこともあるが、今後も電気はいるので、東電を倒産させるということは新東電を作って事業はそちらに移し、旧東電は賠償会社として実質国有化するという枠組みになる。この旧東電は普通の事業清算の場合と異なり、少なくとも50年程度は存続させなくてはならない。モチベーションの持てない管理会社を作ってもあまり意味はない。

 結局、水俣病を起こしたチッソのように、将来的には電力事業の再検討も含め分社化もありうるが、当面は東電と言う枠組みで賠償をしていくしかないというのが、常識的な結論だと思う。では「原賠法」をどう考えるか。問題はこちらなのだが、長くなったので一端切って明日に。

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