デザインを決める前に織りの現場を見せてもらうことにした
絣締め機の説明はいくら聞いても見てもなかなか理解できなかった
絣締め機で織った糸をほどいて機にかける
織った糸の交差したところをハサミで切って外す(これじゃあわからないでしょう?)
信濃路の紬がいかに単純で美しかったかと感じた
この機に座っているのは男ばかりで
男の力でないと糸の締りが悪い
ここでは16反が同じ柄それだけ覚えておけばいいと思った
いよいよ機織りに
各家で仕事をしている場合が多い
風通りのいいところほとんど外と言えるような開放的な場所で織っている
一番古い織手さんのところに行った
「うん?」
手に模様聞いてはいけないなんて言う感覚がまったくない私は
「その手の柄は?」
ニッと笑っておばあさんは
「入れ墨だね」
結婚した婦人が手の甲にまるで絣模様のような入れ墨をする
添い遂げるという証なのだと教えてくれた
ぎょっとする私に手を差し伸べちゃんと見なさいと私の手に手を重ねる
模様にどういう意味があるのかと聞くが意味不明の言葉がかえってきて
訳す人もニタニタ笑っているだけなのできっと淫靡なことを言ってるのだろうと突っ込むのはやめた
一人ではなく
この先にも何人かの婦人の入れ墨の手に出会った
デザインが美しい一つ一つに意味があるのだと思うが聞いてはいけないこともあることを知る
でも婦人たちはその入れ墨に誇りを持っていた
そして針を持って絣の一つ一つを合わせていく
明るいところでないと狂ってしまうだろうし、また気持ちが穏やかでないと続かないと思った
男達は黒糖の畑、女たちは家で機織り
夜になると男も女も陽気に時を過ごす
都会では女が仕事をすることにやや肩を怒らせて突っ張っている人が多いが
こちらでは「働く」ことは当たり前の男女平等
しかもそれが自然
子どもたちは裸で親の周りを走り回ってる、放し飼いの鶏に混じって
5種類のデザインをおこし
といってもデザイナーではないので図案がかけるわけではないただオリジナルであるという程度
基本は自分が着るとしたらというあくまで着る立場からの勝手なデザインだ
それがすむと島の名所案内となった
編集長はそれが目的のようで彼は後に小説家になるのだがそのネタにもなったようだ
いきなり
特攻隊が出発した島影に連れて行かれた
「ここから出発したんですよ、二度と帰らない少年たちが」
瑠璃色の海、紺碧の空こんな美しいところから帰らぬ旅に出た少年たち
酷い
着物の取材に来てこういう現実はあまりにも落差がありすぎる
いや着物の歴史そのものが権力に翻弄されているのかもしれない
そんなことを思いながら私はその島影から遠くの海を見つめていた
(つづく)
絣締め機の説明はいくら聞いても見てもなかなか理解できなかった
絣締め機で織った糸をほどいて機にかける
織った糸の交差したところをハサミで切って外す(これじゃあわからないでしょう?)
信濃路の紬がいかに単純で美しかったかと感じた
この機に座っているのは男ばかりで
男の力でないと糸の締りが悪い
ここでは16反が同じ柄それだけ覚えておけばいいと思った
いよいよ機織りに
各家で仕事をしている場合が多い
風通りのいいところほとんど外と言えるような開放的な場所で織っている
一番古い織手さんのところに行った
「うん?」
手に模様聞いてはいけないなんて言う感覚がまったくない私は
「その手の柄は?」
ニッと笑っておばあさんは
「入れ墨だね」
結婚した婦人が手の甲にまるで絣模様のような入れ墨をする
添い遂げるという証なのだと教えてくれた
ぎょっとする私に手を差し伸べちゃんと見なさいと私の手に手を重ねる
模様にどういう意味があるのかと聞くが意味不明の言葉がかえってきて
訳す人もニタニタ笑っているだけなのできっと淫靡なことを言ってるのだろうと突っ込むのはやめた
一人ではなく
この先にも何人かの婦人の入れ墨の手に出会った
デザインが美しい一つ一つに意味があるのだと思うが聞いてはいけないこともあることを知る
でも婦人たちはその入れ墨に誇りを持っていた
そして針を持って絣の一つ一つを合わせていく
明るいところでないと狂ってしまうだろうし、また気持ちが穏やかでないと続かないと思った
男達は黒糖の畑、女たちは家で機織り
夜になると男も女も陽気に時を過ごす
都会では女が仕事をすることにやや肩を怒らせて突っ張っている人が多いが
こちらでは「働く」ことは当たり前の男女平等
しかもそれが自然
子どもたちは裸で親の周りを走り回ってる、放し飼いの鶏に混じって
5種類のデザインをおこし
といってもデザイナーではないので図案がかけるわけではないただオリジナルであるという程度
基本は自分が着るとしたらというあくまで着る立場からの勝手なデザインだ
それがすむと島の名所案内となった
編集長はそれが目的のようで彼は後に小説家になるのだがそのネタにもなったようだ
いきなり
特攻隊が出発した島影に連れて行かれた
「ここから出発したんですよ、二度と帰らない少年たちが」
瑠璃色の海、紺碧の空こんな美しいところから帰らぬ旅に出た少年たち
酷い
着物の取材に来てこういう現実はあまりにも落差がありすぎる
いや着物の歴史そのものが権力に翻弄されているのかもしれない
そんなことを思いながら私はその島影から遠くの海を見つめていた
(つづく)