チャコちゃん先生のつれづれ日記

きものエッセイスト 中谷比佐子の私的日記

着物が繋ぐもの 30

2018年10月07日 17時05分38秒 | 日記
「チャコうちで働かない?あんたの編集センス埋もれさせとくのもったいないよ」
よく夕飯目当てに現れる某女性誌の編集長
結婚して3年間専業主婦に落ち着いていた私の心を煽る
「何をさせようというのですか?」
「あの月刊誌でやっていた着物のページの再現はどう?
「着物ですか?」
「あのページは画期的だったと思うけどね」

H編集長は、各地の着物産地を回って自分の好きな着物をオリジナルで作りそれを誌面で販売するという提案だった
それの企画編集を全て任せる、ページは5ページ
ここまで具体的に言われれば受けたくなる
歴史から言ってこちらの雑誌の方が古いし部数も出ているやりがいありそうだ

その会社に行く
ピリリとしたお姉さん方が多い
H編集長も毅然としていて強面表情(我が家でご飯食べてる表情とまるで違う)
怖じけずいて尻込みしそうな私に一番年長者の女性編集者が
「チャコさんねあなたの記事読んだわいいページだったわね。さあここに座って」と彼女の横が私の席
「フリーでいたい」
を条件にしたのに机もらって縛られるのは嫌だな(ブツブツ)

「荷物置き場と考えたらいいわね」(恐ろしや心を読まれた)

一回目が大島紬となり先ずは編集長とともに奄美大島に赴く
大島紬というから伊豆大島だとばかり考えていたらえらい遠く。九州の先ではないか!
そんな辺鄙なところに着物を作ってる人がいるのだと想像もつかない
今回は年配編従者が秘書のごとく飛行機やホテル(一軒しかなかった!)の予約組合の偉いさんとの交渉全部テキパキとやってくれて私たちは大名行列(3人)殿様旅行

プロペラ機で桜島を旋回して先ず鹿児島に、その後更に小さなプロペラ機で奄美へ
むわーとした南国の風しかしサンゴ礁の美しい海
やっと日本に復帰したところでまだ煙突などに玉の傷痕が残っていた

組合で何百反という大島紬を見せていただく
母が大島紬が好きだったので柄に見覚えのあるのを持っていたら
「それは竜郷柄、そちらはバラ柄、それカルタ柄」と一つ一つ柄に名前が付いていて
竜郷は竜郷村で娘が結婚資金を貯めるために織っている
バラ柄は農具に使うざるの模様を擦り柄にした
カルタ柄はトランプ(大統領ではないカルタ)が島に渡ってきたとき面白くて絣柄にした
この絣はハブの柄
「ハブって?」
「毒蛇」
「キャッ!」と思わず放り投げると島の男たちは面白そうに笑う

つまり身の回りの目に見えるものを絣で表現したのだという
絣って何だ?質問ぜめの私に早くお酒飲みたい男たちは
「明日ゆっくり」と言って初日は終わる (つづく)

コメント
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