だし素材を入れていた海苔の缶は全部で4缶、
かつお節削り器とともに、木のトレイにのせていました。
置き場所は、ガスレンジに遠く、しかし、すぐ手の届く場所に。
缶に入ってたのは次のだし素材四天王。
①掃除をした煮干し。
②削りかつお
③使いやすいように大きさを変えて切った昆布、
③干し椎茸
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さて削りかつお。
削りかつおは、たまに市販品の100g入りを買い足すこともありましたが、
ほとんどは、わたしか母が削っていました。
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同世代の人とかつお節の話になると、
「削ってた。あれは子供の仕事だった」
と、懐かしがります。
兄や弟が削ってた絵が浮かばないのですが、
あのころは、男の子に台所仕事の手伝いはさせなかったのかも。
かつお節削り、男の子向きだと思いますけどね。
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かつお節削りは嫌いではありませんでした。
なんでもそうですが、
上手になると、自分なりの楽しみを見つけるようになりますしね。
わたしの場合、
削るときのシュイ、、シュイ、、シュイ、、シュイ、、という音は、
刃と鰹節の奏でる楽器のようで、
気持ちのよい音だと思っていました。
自らの呼吸にあわせて、シュイ、、シュイ、、と削っていくと、
鰹節をつかみ、押さえている掌から腕、腕から肩、肩から後頭部に爽快感が伝わり、
気分がすっきりするのです。
しかも、削るたびに、あの、鰹節特有の呈味アミノ酸
そうです、イノシン酸の香りが深さを増し、
削りはじめると、いつも箱いっぱいに削っていました。
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脂がまわるから、と、
母は、その日の使う分だけを削る主義。
シュイ、シュイ調子に乗って削っていると、
「もう、ええよ、もう、いらんから」と、制止しました。
余ったのは、缶に。
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だし取りで、
鍋に削りかつおを入れたときは、
真剣で、
じーーっと、鍋の前で頃合いをみていました。
このときは、なにか話しかけても
「あとにして」。
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1度だけ、
たった1度だけ例外がありました。
中3のとき、台所をのぞいて、
「幾何100点だった」と言ったら、
だし取りしてたのに、箸をもったまま、
「ホント????」と、飛びだしてきました。
し、し、失礼な!
そんな大事件かいな。
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かつお節削り器は、下の箱の方が壊れ、
2台買いなおしたのを記憶しています。
鉋(かんな)の台木は、つやつやして、いい味だしてました。
もったいないなぁ、って、思ってました。
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夕方、玄関をあけたときに漂っていた
昆布と削りかつおのだしの香り、
そのだしを使って作った温かな煮物、汁物は、
家族をまとめる力があった、と、今思うのです。
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おいしい料理の基本はおいしいだしにあります。
「天然だしとのめぐりあい」、これからも続きます。
これからです。
点や線で続けます。