引頭佐知(いんどうさち)の料理ブログ

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尾道にて。

2011年09月30日 | ときどき日記

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18日

尾道での宿泊は、海岸べりの住吉神社前のホテル。

北前船の寄港した岸の前にあります。

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8時半、ホテルをチェックアウトし、

開店前の今川茶舗へ直行することにしました。

店主・今川吉広さんは高校時代の生物研究部の部長。

わたしが当時所属していた部活は美術部でしたが、

ある日のぞいた生物研究部の部室でおたまじゃくしを

飼っているのを見つけ、しょっちゅう見に行ってるうちに

部員扱いに。大学の研究室にみじんこを観察しに行くとか、

鳥取の大山に登山するなど、イベントにはよく参加してました。

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今川茶舗はホテルから徒歩10分の距離です。

キャリーバッグをゴロゴロひこずりながら海岸通りを

歩いていると、

海岸から1本入った十四日町のビルの角で、

時折CMでみかける引き売りの魚屋「ばんより」のおじさんに

遭遇。

「あれ?おじさんコマーシャルに出とってでしょう?」

笑ってうなずくおじさん。

箱の魚は、ちぬ、こち、おこぜ、はぜ、海老、たこ、穴子

10cm未満の甲いか・・・・・。

「懐かしい魚ばっかりじゃね。とくに、この海老と穴子。

好きじゃった、よう食べたわ」

「みんな、朝、獲ってきたんよ」

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9時前。

久保町(水尾町)の今川玉香園に到着。

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いつもなら8時にはシャッターが開いているのに、

閉まっており、あれ?、と思ったら

シャッターが1枚、身の丈ほど開いており、

のぞいてみると、暗い中で店主がお茶を詰めています。

「おーーい、おっはようさんっ!」

「・・・・・・・? 

おーーー! なんじゃ、帰って来たんか。

奥で待っとってくれ、配達してくるけ、7分で戻る」

「ええよ、7分ね」

奥には書棚と6角形の囲炉裏風のカウンターがあります。

戻って来るや、菓子器に和菓子が盛られ、

香りのよいお煎茶で一服よばれます。

6年ぶりですが、昨日も来たような感覚。

シャッターが開いていないので、暗い店内。

話題は、世間話ではなく陶芸の話で話がはずみます。

こういう話のできる人、周囲にいなくなりました。

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「ところで今日の予定は決まっとるんか?」

「10時から12時まで、山波の森迫君のとこに行って、

いちじく食べて、いちじく畑を見せてもらうことになっとる」

「ほうか、とう柿(いちじくのこと)、好きじゃったのぅ。

荷物はこけー(ここへ)置いとけ、送ってったらぁ。

家はどこか知っとるんか」

「山波。山波のJAで待ち合わせしとるんよ」。

長男智弘さん出勤。

わたしのカメラのバッテリーが切れたので智弘さんの

カメラを借りていちじくを撮りに行きます。

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山波のJAに着くや、真ちゃんの車も到着。

車から降りてきた真ちゃん「おう!」「元気そうじゃね」

挨拶はこれでおわり。

10数年ぶりか、いや、もっとか、

真ちゃんとも、昨日まで会ってた感じ。

高校の同級生、森迫真一くん

通称、真ちゃん。

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尾道特有の細い坂道を車で登ります。

「ちょっと家で食うてから、畑行こうや」と真ちゃん。

「あ、うれしいうれしい!」

下が、尾道のいちじくです。

粉を吹いたような皮、きれいでしょう?

「種類は「蓬莱柿(ほうらいし)いうんよ」。

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長い間、食べたかった尾道のいちじくです。

収穫時期はお盆後から9月末まで位だそう。

もうそろそろ終盤とか。粒も小粒になっています。

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さて、いただきます。

皮が薄いのですが、もぎたてなのですーーっとむけます。

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半分に割りますね。

数年前の全国農業新聞に、尾道のいちじくの味が日本一と

いう記事がありましたが、

これが尾道のいちじくです。

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「真ちゃんおいしいねぇ、甘ったるうのうて。

もぎたてのせいか、さわやかだわ」

「先月じゃったら、もちーと(もっと)うまいんじゃけどのぅ・・・。

今年は雨が,よぅ降ったし、しかもこの間の台風でやられて

台風以降、今年はよーない。雨にあたると商品にならんのよ。

たまらんで、ほんま」。

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畑に着きました。

小山のような畑。下はいちじく畑で、上のほうは八朔。

「見てみ!上向いとるやつ、横向き、下向き、向きが色々じゃろ。

同じじゃないんよ。

雨が降って商品としてダメになるんは上を向いとるやつ。

ほれ、左のこれ。こりゃあ雨がふりゃ、雨をもろに受ける。

今九州の方に来よる台風が、こっちに来たら確実にダメになる。

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樹は接木で増やすんじゃが、ここに細い枝を挿すんよ」。

「へーー、小さい穴じゃね」

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「ほうよ、こんくらい細い枝挿すんよ」。

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「これは接木して3年。

なんぼかなっとろう?いちじくは、3年目から実をつけるんよ」。

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あちこちに、にらが自生しています。

「春は、葉が、もちーと幅があって元気ながのぅ、

だんだん、こぎゃあに細うなる」。

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しかし、地面はふわふわふかふか。

1歩1歩踏みしめて歩かないと倒れそう。

しかもさわると温かい。

「すごいふかふかの土じゃね。何入れとるん?」

「そりゃ、わしなりに努力しとるで。

全部は言われんのう、ヒミツじゃ(笑)」

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真ちゃんは、東京で学生生活の後、広島マツダで営業マン

として働き、退職後、実家の農業を継ぎました。

学生時代、同級生男子の多くが真ちゃんのアパートを訪れ、

真ちゃん手づくりのごはんを食べたりしてました。

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「退職して農業やってみてわかったけどのぅ。

農業は趣味なら楽しい、ほいじゃが農業で食うていくんは、

ほんま厳しい。順天の日ばーじゃないけのぅ。

何ヶ月もかかって世話して育てたもんが全部収穫できるわけ

じゃない、それがつらいわのぅ。

特にいちじくは軟(やわ)いけ、台風じゃ、雨じゃで、カンタンに

落下したり腐っていくけ。

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真ちゃんの車の窓から見る、右手の尾道と左手の向島(むか

いしま)。向島の海岸べりには、数社の造船所が軒を並べて

います。湖みたいでしょう?

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今川茶舗に到着。12時です。

シャッターも開き、国旗がゆれてます。

今川茶舗は、昔から、祝日にはかならず国旗を立てます。

白い車の後ろには明治時代からの、今川家の蔵があります。

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敬老会のボランティアから帰ってきた奥さんもいますね。

「いま、帰ってきたんですよ。

お昼、2人でなにか尾道らしいもの食べに行ったら?」と奥さん。

あーーでもない、こーーでもない、の結果、

おそばやさん「そば鴻」に。

大阪のこんぶやさん土居さんのお知り合いです。

「だしは、すべて土居さんおすすめのもので取っています」と

ご主人。

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今川先輩は

「一応言うときます。

尾道の麺ゆうたら、うどん。

そばは食わんけ、わしは、そばの味はわからん。

そばはわからんが、だしはわかる」。

「どれにしよう・・・」

「麺はだしじゃ。ごちゃごちゃ色んな具が入ったんは嫌いじゃ。

具の味がだしに混じってだしの味がわからんけ。

一番、具の少ないんがええ」

「同感!」

というわけで、こちらを。

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3種のおだしの味、しっかり味わえました。

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そば鴻さんを後にして、

今川先輩は、

「おかしなもん使うてないいうことが、わかるだしじゃった。

天然のだしは、あとに残らん、あとくちがええ」

わたしのだし取り教室の話など、一切話してないのですが、

西のちゃんとした人の、普通の会話です。

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ご挨拶したいところもありましたが、休日ですし、

時間の余裕がないため、次回伺うことに。

わたしの好きな今川茶舗のお茶、極上「青柳」と紅茶。

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下は、長男・今川智広さん企画のイベントです。

今川家の蔵で催されます。

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