波紋

一人の人間をめぐって様々な人間関係が引き起こす波紋の様子を描いている

オヨナさんと私   第95回

2010-05-28 09:21:17 | Weblog
彼女との時間は何時も楽しい。オヨナさんの生活も少しづつ変化が出てきた。今までは
自分だけのことを考えた時間だったが、これからは彼女との時間をどのように過ごしていくか、そしてそれが二人の歩く道につながるのではないかと思いえるようになってきたからだ。いつからか、どのようにしてか、そんなことは分らない。成り行きであり、自然の流れの中でしかない。でも何か将来に大きな希望と夢が生まれてきた思いでいる。
「今までいろいろな人と交わりを持ってきたと思うけど、嫌なこともたくさんあったと思うけど、」「そうね。一番悲しいことは相手の人のことを思って話していることが、理解してもらえないことね。でもそれも私が悪いこともあると思っているの。充分理解しているつもりでも、分っていないこともあるし、その人の立場で賛成できないこともあるから、あえて
厳しいことを言うときもあるわ。そうするとやはり分ってくれないと心が通わないことになってしまって気まずい思いに終わる事が良くあるの。」「人って良く考えると、本当に弱く、悲しい存在だと思うよ。そして何が大切かって考えるんだ。」ヨナさんの真剣な様子に彼女は少し緊張が走った。「結局、人間に一番大切なことは愛だと思うんだ。」その言葉は
力強く、自信に満ちていた。「だけどこの愛という言葉で言われるこの事がとても難しくて本当の意味を理解することが出来ない。だからそれはすぐこわれて、愛が憎しみに変わることが多い。そんな例はたくさんある。じゃあ、本当の愛とは何で、どんなことをいうのだろう。親が子供に対する愛、男が女に注ぐ愛、愛はいろいろな形で存在しているが、何かの拍子で簡単にこわれてしまうものが多い。それも愛かもしれないが、所詮は自分にとっての愛であって、本当の愛ではない。だから自分にとってよくならない愛は形を変えてしまうことになる。そんな気がするよ。」そこで何かを考え、思い描くように黙った。
「ヨナさん、今度私と福島へ行ってみない。私、案内するわ。良い温泉がたくさんあるの。」嬉しかった。自分から誘って行きたいと思っていたが、なかなか言い出せなかったことを彼女から誘われたのだ。「ありがとう。僕からも言おうと思っていたんだ。」
「いつでも良いよ。君の都合のよいときに早速計画しようね。」何もいわなくても二人の心に通うものが出来ていた。そんな二人を暖かく包むように夕焼けが照らしていた。